
離婚前提ですがなぜか溺愛の止まない結婚生活を送っています!?
著者:篠原愛紀
イラスト:つきのおまめ
発売日:2022年 9月30日
定価:610円+税
男っ気なしの平凡OL・萌衣は、両親から頼まれお見合いをすることになった。
相手は父の雇い主であり親友でもある社長の子息・寒椿庵という男性で、昔親同士が軽口で結婚の約束をしたからという理由で萌衣を指名したらしい。
萌衣はかつての口約束を真に受けていないか確認のためのお見合いなのだろうと思っていたのだが――。
「結婚してから口説けばいいと思っただけだ」
始まってしまった新婚生活は、恋愛経験値がゼロな萌衣には刺激が強すぎるようで!?
【人物紹介】
日向萌衣(ひゅうが めい)
26歳の平凡なOL。
有田焼職人の父を持つが、自身は器用ではなく別の職種に就いている。
竹を割ったような性格とよく言われる。
寒椿庵(かんつばき いおり)
有田焼の窯業界の老舗高級ブランド・『寒椿社』の社長息子であり次期社長。
現在28歳で、病で倒れた母を安心させるために結婚を決意した。
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*取り扱いサイトは、各書店に掲載され次第、更新されます。
【試し読み】
「職場にもまだ結婚したことを伝えてないのは、君が離婚を考えているからだろうけど」
腰に置かれていた手が離れ、両手でネックレスを外された。
「俺は君に惚れてもらうためなら、どんな手段も選ばない。重い男だからさ」
結婚式の時みたいに、彼が私の指に婚約指輪をはめてくれた。
人がざわめく駅前で、さっきまで酔っ払いに絡まれていた私を誰一人助けようとしない、それどころか避けられていたのに私をすぐに見つけて心配してくれている人。
彼の真っ直ぐな瞳を見て分かる。
この人は私を本当に大切にしてくれようとしている。
慈しむように、愛おしむように私を見ている。
キスだけでも私を蕩けさせる人。
はめてくれた指輪が重たく感じた。
何も言わない私を、彼は急かそうとしない。
「仕事もどうにかなったので、一緒に帰ろっか」
誰も私なんか本気でナンパなんてしないし、まだ二十時にもなっていない駅前なんて、危険でも何でもないのに。
「庵さん、庵さん」
手を差し出されたので素直に手を握ると、彼が小さく首を傾げ耳を傾けてくれた。
「私ってさ。干物女って自覚あるし、このまま誰かと恋愛なんて考えられないし、私に好意をもってくれてる庵さんが目の前に現れて、直感で動いてしまったんだけどさ」
諦めて努力もせず、親友の離婚の話もあって逃げていた。
「庵さんみたいに心がぽっとするような甘い台詞とか恥ずかしくて言えないけど、でも恋愛するなら庵さんがいいなって今、思った」
「今?」
「うん、酔っぱらいの前で颯爽と現れて、誰よりも私のことを心配してくれたのを見て、私も自分の気持ちから逃げてたら駄目だなって」
自分は縁がないと諦めてたのは、向き合って傷つきたくないからだったんだと今ならば分かる。
ここまで私のことを思って強引に結婚まで持ち込める彼は、昔の暗くてじめじめした寒椿家の少年ではない。
強かではないと生きていけなかったと思う。
彼が良い。
私の直感は間違えていない。
「庵さんは今の私を知らないだろうから、嫌われないように頑張ろうかなって思えちゃった」
守ろうとしてくれた庵さんの腕に手を回す。
あたたかい気持ちになったのでへへっと笑うと、彼も微笑み返してくれた。
「気持ちが向いてくれたのなら嬉しいけど、俺と恋愛をしてくれるってことね」
嬉しそうな彼は、改札口を通り抜けるかと思えば、そのままタクシー乗り場へ向かう。
「俺はお飯事みたいな恋愛はする気ないからな」
タクシー乗り場へ向かう矢先、建物と建物の狭い通路に引き寄せられ、額をくっつけられた。
私の気持ちが向いたならば、もう我慢しない。
彼の熱い瞳が近づいてくる。
私も恥ずかしくて、視線を彷徨わせた後覚悟を決めて瞳を閉じた。
彼ならば、いい。
彼で良い。
沢山の人が通る駅前で、私に手を差し出したのは、彼だけだったのだから。
唇に押しつけられた熱が甘くて、ホテルでの口付けを思い出した。
名残惜しげに離れた唇を見つめると、彼は小さく笑う。
「首に手を回して」
リードされ、言われたとおりに首に手を回すと今まで経験したことのないぐらい深い口付け。
「んっ」
鼻から漏れる声は、上手く息が出来なくて甘く苦しくなったから。
嫌ではない。
彼の香りを嗅ぎながら、甘く深い口付け。
背中に回った手が、腰まで撫でるように下りると、ぞくぞくと甘く身体が痺れていく。
彼の手の平から感じる熱に身体が騒いでしまう。
「早く帰ろうか」
余裕のない声が、なぜだが少し嬉しかった。
胸の鼓動も騒ぎ出した。
頷いて、髪を整えてからタクシー乗り場へ向かった。
***
彼と共に戻ったマンション。
鍵を開けて閉まるや否や後ろから抱きしめられた。
後ろから抱きつかれた腕に、私も指をからめ頬をすり寄せる。
スーツの絹擦れの音と小さく零れる荒い息が、心地良い緊張感を齎し、私も小さく息を飲んだ。
誰かと肌を重ねるなんて想像できなかった。
けれど優しく咲かせるような口付けが、耳に、頬に、首筋に、流れるように落とされると身体が痺れる。
何も知らないその先を期待して身体が甘く痺れていく。
振り返るように彼を見上げると、彼も私を覗き込んでくれた。
鋭く冷たい印象だった瞳は、最初から私には熱く真っ直ぐだった。
顎を軽く持ち上げられて、彼の唇が触れた。
そのまま壁に押しつけられ、いつもの優しい彼からは想像できないぐらい強引な口付けが振ってきた。
唇を割られ侵入してきた舌が、口の中を蹂躙する。私の反応を楽しむように、探られ少しでも反応をすると、そこを何度もなぞられた。
舌を吸われ、唾液が溢れて、クチュっと水音が響いた。
キスだけに集中していると壁に押しつけていた手が、肩をなぞり胸へ下りてくる。
片手で器用に胸元のボタンを外されると、開放的に胸元が開かれてしまった。
キスだけで精一杯だったのに、優しく胸を愛撫され戸惑う。
一度に色んな場所から刺激されると、足が震えてしまう。
必死で彼の胸にしがみつくと、今度は強く抱きしめられた。
「駄目だ。可愛い」
「っん。庵、さん」
首元を舐められ、がくんと膝を落ちそうになると腰を支えられた。
「君を抱きたい。――いや抱く」
止められない。
耳元で苦しそうに囁かれ、私もしがみつきながら必死で頷く。
これ以上どうなってしまうのかという不安と、けれど必死で求めてくれる彼がどこか可愛いくて、怖さは消えた。
抱きかかえられてベッドに下ろされ、見上げながらネクタイを解く音を、息を飲んで聞いていた。
彼の体重で軋むベッド。
私も何かしなくては、と自分で服を脱ぐのかと手を右往左往していたら小さく零れるように笑われた。
「全部任せて」
ブラのホックを外され、ベッドの隅に放り投げられると彼の匂いに包まれ抱きしめられながらベッドに沈んだ。
体中を愛撫されていくうちに下半身に重い熱が孕む。
触れられるだけで、下半身が落ち着かない。
太ももをもぞもぞしていると、彼の指が太ももを這った。
「ふふ」
彼が笑うので、思わず身構えると、彼は心底楽しそうに笑っている。
「緊張して、身体ががっちがちだよ」
「だって、は、初めてって」
言いながら、彼の唇に言葉を奪われた。
首筋を何度も甘く吸われ、上手く力が入らなくなると彼の指が胸の尖りを挟む。
彼の指が胸を愛撫する度に、身体の奥が濡れていくのが分かった。
下着に伸びた指で、下着の上からなぞられると、だんだんと水音が響いていくのが分かる。
下着越しに花芯を擦られ、腰が大きく動いてしまった。
焦らすように優しく動く指と一緒に、彼の甘い口付けが私の思考を犯していく。
上手く考えられない。ただ彼の動く指先に、身体が期待していく。
私の様子を伺い、怖がっていないのを確認してから、愛撫していた指先が下着の隙間から侵入する。
「ぁっ」
指一本なのに体を割るような熱に驚いて、腰を逃がしてしまうと彼が頭を撫でてくれた。
痛みはなかったのだけれど、指がこんなに熱を孕んでいると思わず、驚いてしまっただけ。
なのに、彼は起き上がると私の足を左右に開き、そこに顔を埋めた。
「い、おり、さんっ」
熱い舌が、中へ入ってくる。指よりも熱い熱が、中を、花芯を、何度もほぐすように挿入される。舌先で花芯を押しつぶされ、腰が浮くのが分かった。
何度も何度もほぐされ、シーツが濡れていくのが分かった。
舌が抜かれ、再び指が挿入された時、柔らかい舌よりも固く内襞を擦る刺激が、身体を支配していくのを感じた。
指先で優しく愛蜜を掬われていたが、指が濡れてから人差し指だけ挿入された。
内襞を刺激され足の指先が、シーツを巻き込みながらしなる。
熱い釘のように、ゆっくり指が入ると水音を立てながら暴いていく。
キスや胸の愛撫とは比べものにならない、彼の熱を感じて足がもぞもぞと動いてしまう。
指が二本に増やされ、中で広げるように動くと腰がしなった。
「んんっ」
彼の指が内襞を擦る度に、じわりと蜜が溢れていくのが分かる。
突起していく熱芯を親指でなぞられ、中の指で翻弄されていくと、知らない刺激で頭が真っ白になった。
「ぁっ」
自分の声とは思えないような甘い声が漏れ、彼の首にしがみついて与えられた刺激を逃そうと動く。
すると彼の左手が私の腰を掴み、快楽から逃れようとしていた私を捉えた。
「ひゃ、ぁっ」
人差し指が奥を擦る。
自分でも知らなかった奥の奥へ、侵入される感覚に甘く痺れて身体が震えた。
何度も何度も奥へ指が刺激を与え、じんじんと熱が下半身を襲っていく。
「ぇ、ぁぁんっ」
人差し指が奥のある部分を擦られた瞬間、身体が数回快感で跳ねた。
足で踏ん張っても逃れられない知らない刺激に、呆然としていると彼の指の動きが速くなる。
「あっひゃっんっま、まって」
両手で彼の腕を掴んでも指は止まらない。
奥に入って刺激を与えては逃げていく。
激しくなる律動に、知らない快楽が止まらず思わず首を振った。
「ま、まって、まって」
「大丈夫。目を閉じて奥を感じてみて」
彼の手が私の目を閉じさせた。
奥への刺激に、何かが破裂したような快感のあと何度も何度も痙攣した。
「萌衣さんは、ここが気持ちいいらしい」
息を整えていた私に、今度はゆっくりと指がその部分を押す。緩く優しい刺激の方が、全身を駆け巡る電撃のように長く痺れる。
気遣うように前髪を掻き上げられたので、頬を膨らませて気持ちを吐露した。
「私だけ頭真っ白になるのずるい」
「ずるい?」
「庵さんだけ余裕ある感じ、――んっ、もう!」
話しているのに指で刺激され思わず頬を抓った。彼がケラケラ楽しそうに笑っている。
それまでの甘い緊張感が和らいだけれど、私は強く睨んだ。
「中途半端に脱いでないで、庵さんも全部脱いで」
私だけするする脱がされ、彼は開けた胸元を披露しているだけだ。
私が乱暴に肩から服を脱がすと、中を愛撫していた指が抜けた。
じんじんとまだ中が刺激されているような感覚に、はしたなくひくついてしまうのが分かる。
引き締まった身体が露呈し、彼が脱いでいく姿に見とれてしまった。
「余裕はないんだけど、初めては大切にしたいなって必死かも」
彼が微笑むと、覆い被されて彼の下半身の固くなった熱棒を押しつけられた。
「ね、ちょっと怖いでしょ」
頭を撫でられ、どう反応して良いか分からず視線を彷徨わせた。
嫌とかではない。
庵さんの指や舌だけでへにゃへにゃになってしまっている私は、彼の滾った熱を受け止められるのか若干の不安はあった。
「でも私を触っただけでこうなってくれてるなら、その」
怖くは、ないかな。
恐る恐る手を伸ばしてみると、彼は苦笑する。
啄むように口付けされ、それが再開の合図だった。
最初はこそばゆくてクスクス笑っていたけれど私の笑い声と共に愛撫が始まった。
彼の手が太ももを撫でるだけで身体が震えてしまう。
私の身体、どうなってしまったんだろう。
初めてだとか怖いとか言いながら、身体の奥はしっかり反応している。
彼の指が、優しく奥を刺激する度に腰がしなる。私より先に、彼は私の感じる場所を見つけてしまったようで、強弱を付けて刺激するので期待してしまったり、油断している時に大きく刺激をもらい大きく足をしならせて快楽を逃そうとしてしまう。
私のこの動きは、はしたなくないだろうか。
不安になって彼を見ると、眉間に皺を寄せている。彼も余裕がないのかな。
私に触って、興奮してくれているのかな。
嬉しくて彼の背中を抱きしめた。
「萌衣さん、何もできないけど」
クスクス笑って、彼が私の腕を掴むとシーツに押しつけた。
「少しでも嫌そうだったり怖がってたら止めるからね」
耳元で囁いた後、私の片足を掴んで開いた。
彼の片足が、私の足の間に沈み指でほぐされた下半身は愛蜜で濡れ、引き抜かれた指を名残惜しげに締め付けて離さない。私の理性よりも彼の愛撫により火照った身体の高ぶりの方が支配していた。
大きくベッドが音を立て、彼の高ぶりが押しつけられた。入り口にこすりつけるように、濡らし何度も何度もほぐしてから、ゆっくりと挿入された。
「――んんっ」
熱い熱で押し広げられる、初めての感覚。
違和感で戸惑っていたが、熱が内襞を擦ると目の前がチカチカ揺れるのが分かる。
「ひゃ、ああっ」
彼の指で暴かれた快楽部分。
そこを優しく固くなった熱棒で何度も何度も刺激されると、違和感よりも気持ちのよい振動が私の理性を支配していった。
ゆっくり動く律動。
その度にくちゅんっと濡れた音が響き、シーツに滴っていくのを感じた。
怖がらないようにと彼の動きが優しいのが分かる。
けれど激しい動きよりもゆっくりと中を掻き回される方が、彼を感じてしまい快感が波のように押し寄せてくる。
「ぜ、んぶ」
「ん?」
「いいよ、全部、きて」
彼が私の良い場所を刺激して、自分はセーブしているのが分かった。
先ほど見た高ぶり。
それが全部私に挿入されていないのも分かっている。
だから全部受け止めると、彼の背中にしがみついた。
小さく息を飲んだ後、前髪を掻き上げてくれて口付けを落とされた。
そして私の首元に顔を埋めると、彼の体重と共に奥へと熱が入ってくる。
杭のようにずるずると挿入され、広げられ何度も何度も奥を刺激された。
「ん――んっあっ」
最初にピリリと軽く痛みが走った気がしたが、すぐに快感の中に沈んでいった。
水音と共にお互いの荒い息が聞こえて、体中の熱が下半身に集まっていく。
「ずっと」
彼の刺激に翻弄されていたが、薄く瞳を開けると彼が泣き出しそうなほど苦しそうに、私を見下ろしていた。
「ずっと君が忘れられなかった。いつか――いつか君の隣にいても恥ずかしくない自分になれるだろうかと、努力を惜しまなかった」
「うん?」
「自分の欲望で、君を怖がらせてないか?」
首筋に口付けされながら、私はもう快楽で頭が真っ白になっているのに、自分だけ理性を残してずるい。
「怖くないよ。ちゃんと、気持ちいいですし」
言いながら、何を口にしているんだと恥ずかしくなった。
「……なに聞いてくれてるんだよ、ばか」
自分じゃないみたいで悔しくて、彼の胸にしがみついて頭をぐりぐり押しつけた。
馬鹿。
一緒に頭の中真っ白になって、触れ合ってよ。
私だけ余裕ないとかやめてよ。
私のことが好きだったって言うなら、この恥ずかしい状況を、一緒の視線で味わってよ。
「そうだね」
私の頭を何度も撫でながら彼の律動が再開された。
ああ。
ああ、愛しい。
私の言葉や表情に気を使ってくれて、それでも気持ちよさそうに動いてくれる彼の行動が嬉しい。首筋に埋められた彼の頭が、舌を這わせながら胸に下りてくる。
「んんっ」
胸の尖りを彼の舌が這うと、下半身の力が抜けていく。
私の力が抜けると彼の熱が更に奥へ。
身体を貫かれ、内襞を刺激され、嬌声が隠せない。
必死で彼の背中にしがみついていくと、腰が痙攣していくのが分かる。
「だ、だめ――っ」
びくびくとしならせた身体を、彼が抱きしめてくれる。
それと同時に、彼の熱が奥で爆せるのを感じた。
「萌衣さん」
彼が私を慈しむように口付けてくれた。
荒い息を整えながら、何度も何度も口付けしお互いの指をからめてシーツに埋めた。
痛みは少しだけ伴ったけれど、それよりも彼の甘い愛撫と熱で私はすっかり蕩けてしまったのだった。