隠れ御曹司の後輩から愛の手解きを~本当の俺を知っても好きになってくれますか~

書籍情報

隠れ御曹司の後輩から愛の手解きを~本当の俺を知っても好きになってくれますか~


著者:大江戸ウメコ
イラスト:すみ
発売日:2022年 9月30日
定価:620円+税

企画室で働く相崎七清は、飲み会で室長にウザ絡みされているところを後輩の地味系男子・久慈に助けられ、ニ人で飲み会を抜け出し呑み直すことになった。
年上に恋しているという久慈の恋愛相談に乗っているうちに、なぜかホテルに行く事になってしまって――!?
かわいい後輩に見栄をはっていたものの、実は恋愛経験が乏しい七清。
彼がシャワーを浴びている間に帰ろうとしていると、タイミング悪く久慈が戻ってきてしまうのだが……そこにいたのは別人のようなイケメンだった!
「それで、相崎さん。俺に色々と教えてくれるんですよね?」
不敵に笑う久慈の瞳から、七清はもう逃げられなくて……。

【人物紹介】

相崎七清(あいざき ななせ)
第二営業部企画室で働く29歳OL。
異性に触られるのが苦手なため、恋愛経験に乏しい。
久慈には見栄を張ってしまったが、実は初体験もまだ。

久慈晋作(くじ しんさく)
第二営業部企画室で働く27歳で、七清の後輩。
普段は濃いクマにクシャクシャな髪型で、地味な見た目だが……!?
年上の女性に片思い中らしい。

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*取り扱いサイトは、各書店に掲載され次第、更新されます。

 

【試し読み】

「相崎さん、こっちも脱がします。全部、俺に見せてください」
 そう言って、久慈くんの手が私のスカートに伸びる。
 パチンとウエストのホックを外されて、焦燥感が強くなった。
 処女を捨てたいと思っていた。けれど、本当にこのまま久慈くんと先を進めてしまって良いのだろうか。
 身体は熱くなっていて、このまま抱かれてしまいたいという欲望が渦巻いている。
 だけれども、私は久慈くんに嘘をついている。これ以上進めば、さすがに私が処女だとバレてしまうだろう。
 初めては痛いのだと聞くし、血が出ることもあるらしい。そうなれば、隠し通すことは不可能だ。
 なによりも、私はこのまま久慈くんに抱かれる決断ができずにいた。
 だって、久慈くんには他に好きな人がいて、練習として私に手を出しているにすぎないのだ。
 行きずりの相手でも処女を捨てたい。久慈くんがどういう意図であっても、経験が積めればそれでいい。
 そんなふうに思っていたはずなのに、なぜだか、今はそれがひっかかる。
 スカートが床へと落とされた。最後のショーツに手がかかり、そのまま抜き取られそうになったところで、私は久慈くんの腕を掴んで動きを制止した。
「待って、久慈くん。やっぱり、ここまでにしよう」
「どうしました。俺に触られるのは、嫌でしたか?」
 そういうわけではない。久慈くんに触られるのは心地が良かった。
 眉根を寄せる久慈くんに向かって、私は首を左右に振る。
「違う。久慈くんはすごく上手かったと思う。自信をもって大丈夫」
「だったら、どうして」
 私は口を開きかけて、躊躇うように閉じた。
 心が伴わないままこのまま先に進むのと、見栄を張ったことを打ち明けるのでは、どちらがマシだろうか。
 私が迷っていると、久慈くんが背後から横へと移動して、じっと私の目を見つめた。
「気になることがあるなら、正直に言ってください」
 久慈くんの声も目も、誠実さが滲み出ている。おかしな見栄を張って、嘘をついたのが申し訳なくなった。
 少し躊躇ってから、私は久慈くんに本当のことを打ち明けることにした。
「私、久慈くんに嘘をついたの。経験があるみたいなことを言ったけど、実はその、は、初めてで……」
「初めてって、本当に? 反応から、もしかしてとは思いましたけど」
 久慈くんは驚いたように目を丸くする。その反応を見て、羞恥がこみ上げてきた。
 二十九歳にもなって、処女だなんて驚いたことだろう。しかも、経験があるふりをして誤魔化そうとしたのだ。
 久慈くんに呆れられたかもしれないと思うと、胃のあたりがぎゅっと縮こまるような気がした。
「やっぱり、驚くよね。この年で経験がないなんて。言えなくて、ごめん」
「いえ……そうですね。たしかに驚きました。その年齢でというよりも、相崎さんがそうだってことにですけど」
 恥ずかしくて俯いたしまった私の頬に、久慈くんの手が伸びる。
 久慈くんは優しく私の頬を撫でると、上を向かせるように指に少し力をこめた。
 久慈くんと視線がぶつかる。彼の目に呆れの色がないか探したが、久慈くんは軽蔑どころか優しい目で私を見つめている。
「俺に謝る必要はありません。むしろ、謝罪するのは俺の方です。そうとは知らずに、強引に誘ってすみません」
「ううん。私はその、この年で経験がないのがコンプレックスで。誘ってもらって、上手くバージンを捨てられないかなって思ったの。だけど、いざこうなったら、怖気づいちゃって」
 怖気づいたというのは事実だが、止めたのは、その理由がすべてじゃない。
 他に好きな人がいるらしい久慈くんに抱かれるのが、辛くなってしまったからだ。
 だけど、それを正直に伝えるのは憚られて、もっともらしい言いわけをする。
「俺に触られるのは、嫌ではなかったんですよね?」
「う、うん。その、き、気持ち良かったよ」
「だったら、もう少しだけつきあってくれませんか? 決して、最後まではしませんから」
 久慈くんにそう言われて、私は戸惑った。
 もう少しこうしていたいという気持ちと、ブレーキをかける理性がせめぎ合う。
「コンプレックスがあるなら、俺で慣れてみませんか? それに、俺もまだ相崎さんに触れていたいんです」
「それは、好きな人に告白するために、経験を積みたいから?」
 互いに練習だと、そう割り切れれば良いのだろう。
 だけど私は、自分以外の誰かを重ねて触れられるのは嫌だ。
「違います。俺が相崎さんとそうしたいんです」
 久慈くんの言葉が、どこまで真実なのか分からない。もしかしたら、経験を積みたいから適当なことを言っているのかもしれない。
 それでも、久慈くんがそう言ってくれるなら、もう少し続けてもいいかもしれないと思った。
「分かった。最後までしないなら、続けよう」
「ありがとうございます」
 久慈くんは嬉しそうに微笑むと、私の頬に軽くキスをする。
 そのまま唇で耳や首筋を啄むようにして、愛撫を再開した。
 許可を得たからとすぐにショーツを脱がすようなことはなく、指や手の平で再び全身を刺激して、ゆっくりと私の準備が整うのを待ってくれる。
 久慈くんの触れ方はどこまでも優しくて、このまま彼の手にすべてを委ねたくなってしまう。
 じわじわと再び熱が高まったきたところで、久慈くんはゆっくりと私の肩を押してベッドの上へと押し倒した。スプリングが軋んで、背中が柔らかな寝具に沈む。
「ゆっくり触りますから。怖くなったら言ってください」
 初めての私をそう気遣ってから、久慈くんは私のショーツに手を這わせた。
 太もものつけ根をゆっくりと指でなぞり、クロッチの上からそっと秘部に触れる。
 私が抵抗しないラインを探るような、ゆっくりとした丁寧な触れ方だった。
 身体の中心をショーツの上からそっと撫でられて、私は緊張で身体を固くした。けれども、決して、嫌というわけではない。
 私の緊張を解そうと、久慈くんは二本の指で優しく中心を往復する。布越しとはいえ、敏感な部分をじわじわと刺激されて、吐息に熱が混じっていった。
 マッサージをされているような心地よさ。それに、ときおり甘い刺激が混じる。
 そっと優しく触れられているだけなのに、私の身体は微かな刺激を拾いあげて、久慈くんの手に反応していた。その証拠に、ショーツ越しでもはっきりと分かるくらい、秘部がじっとりと湿り気を帯びているのだ。
 クロッチの隙間から、するりと久慈くんの指が入り込む。その瞬間、くちゅりと小さく水音が鳴った。
「まって、だめ。恥ずかしい」
 自分の身体の反応を知られるのが恥ずかしくて、私は思わず久慈くんの手を止めた。私が嫌がると、久慈くんは強引に推し進めることはしない。
「なにが恥ずかしいんですか?」
「だって、その、ぐちゃぐちゃになってるし」
 自分の状態を自覚して、このまま消えてしまいたいほどの羞恥に襲われる。
 興奮すればこうなるのだと、知識では知っていた。けれども、ショーツを濡らしてしまうほどの愛液が出るなんて初めてなのだ。
 久慈くんの手によって、これほどまで高められているのだと突きつけられるようで、いたたまれない。
「恥ずかしがることじゃありませんよ。むしろ、俺の手で相崎さんが感じてくれて、嬉しいんです」
 久慈くんは抵抗する私の手を掴むと、やんわりと引き剥がしていく。
 反対側の手がショーツの中に入り込み、濡れそぼった私の割れ目をなぞる。久慈くんの手が動くたびにくちゅくちゅと音が鳴り、私の羞恥を煽った。
「気持ちが良いのは、悪いことじゃありません。だから、もっと俺を感じて、乱れてください」
「あ、やっ、ああっ」
 久慈くんの親指が小さな尖りを押しつぶした。その瞬間、ビリッとした強い刺激が身体を襲う。
 胸の先端を触られたときよりも、ずっと強く激しい刺激だった。思わず腰をひいてしまうが、久慈くんは逃がさないとばかりにその部分を刺激し続ける。
「あっ、んっ、あ、そこだめ、ああっ」
 ひときわ大きな声が口から漏れた。
 親指で小刻みに弾くように転がされ、そのたびに痺れるような快楽が湧きあがる。
 決して強く触れられているわけではないのに、ほんの少し指があたるだけで思わず腰が跳ねてしまうのだ。
 そんな場所を、連続で刺激されてはたまらない。
 ジンジンと下半身が痺れて、お腹の奥へと向かって熱がせりあがってくるようだ。
「まって、そこへんっ、とめて、あっ、んんんっ」
 あまりに強い快楽は恐怖だ。なにか、私の理解のおよばない場所まで連れていかれそうな恐ろしさがあって、私はイヤイヤをする子供のように首を左右にふった。
 お腹の奥まで痺れて、全身にぐっと力が入る。このまま強い快楽に飲み込まれてしまうのではと思った瞬間、ぴたりと久慈くんの指が止まった。
「あ……」
 止めてと言ったのは私なのに、いざ止められてしまうと、もどかしい疼きが身体を襲った。お腹の奥に溜まった熱は、達しきれないまま霧散して、じりじりとした余韻だけを残していく。
「相崎さんが嫌がることは、無理にはしません」
 優しいけれど、どこか意地悪な顔で久慈くんが笑う。
 彼の指は花芯から離れ、ぷくりとした花唇のあたりをもどかしげになぞりはじめた。
 その刺激も心地よいのだが、先ほどのような強烈な快楽とは程遠い。
 弱い熱が身体を燻って、達することも冷めることもできずに、じりじりと焦がしていく。
「ん、あ……やぁ……」
 ときおり、指先だけが戯れに花芽を擦る。そのたびにピリっとした刺激が走り抜け、もっと欲しいと思った瞬間に離れていく。
 あまりのもどかしさに私は腰を揺らすが、久慈くんは決定的な熱を与えようとはしない。
 物足りない、もっと欲しいと、蜜口は貪欲に涎を吐きだし続けている。
「あ……ぅん、久慈くん……」
 焦らされて、私は強請るように彼の名を呼ぶ。
「どうしました、相崎さん」
 言わなくても分かるだろうに、久慈くんはあくまで私の意思を尊重するとばかりに問いかける。
 嫌がることは無理にしない。その言葉を盾に、私がなにも言わなければ、このままの状態を続けるつもりなのかもしれない。
「もどかしいの……その、もっと……」
 私が言えたのはそこまでだった。もっと、どうして欲しいのか。具体的な内容まではとても口に出せそうにない。
「もっと触って良いんですね?」
 けれども、私の意思は伝わったらしい。久慈くんの問いかけに私は頷く。
 久慈くんは私の意図を汲んだように、最後に残ったショーツを足から引き抜いた。これでもかと愛液を吸った下着は、引き抜かれる瞬間に小さく糸をひく。
 一糸纏わぬ姿にされて、私のすべてが久慈くんの眼前に晒された。これ以上ないほどに溶かされた秘部を見られるのは恥ずかしかったが、それ以上に安堵が勝った。
 これでもどかしさから解放される。そう思った瞬間、つぷりと私の中心に指が入り込んできた。
「あっ……んんっ!」
 思っていたのとは違う刺激に私は驚く。てっきりまた、花芽を刺激されるのだと予想していたのだ。
 けれども、既に解れきっていた私のそこは、あっさりと彼の指を飲み込んだ。
 まだなにも受け入れたことのないその場所は、指の一本であっても違和感を訴えてくる。
「んっ、久慈くん、そこは、あっ!」
 久慈くんが指を折り曲げて、ぐっと膣壁の一部を押した。ちょうど、花芽のある裏側の部分。すると、直接尖りを刺激されたのとはまた違った、身体全体に鈍く響く刺激が湧きあがった。
 身体の内側を刺激されるなんてもちろん初めてで、初めはその慣れない感覚が、快楽であると受け止めることができなかった。
 けれども同じ場所を執拗に刺激されていると、なんともたまらないような、背筋が泡立つ感じがしはじめる。
「あっ、んっ、そこ、なにか、へん……」
「変じゃなくて、気持ち良いですよ、それ」
「気持ち良い……あ、んっ、あ、いいっ」
 私が違和感を訴えると、久慈くんがこのむずむずは快楽なのだと、教え込む。
 いちどそう認識すると、その刺激がなんとも甘美なものに思えてきた。
 身体の内側からじわじわと湧きあがってくる快楽に浸っていると、内側を刺激する指が二本に増える。
 久慈くんの指は私よりもずっと太くて長い。まだ狭い私の内側は、二本の指できついくらいにぴったりと埋まってしまった。
「んっ……やぁ、きつ……あっ」
 ごつごつとした指が内側を往復する感覚は、男性器を想起させた。
 興奮したような久慈くんの荒い吐息。微かに軋むベッドと、指に絡まる水音が、まるで疑似的に性交を行っているようだ。
 久慈くんが私の中に入っている。そんな想像した瞬間、私のお腹に力が籠った。
 内壁がうごめき、物欲しげに彼の指をきゅっと締めつける。
「ここ、好きなんですか?」
 私の内部を探るように、久慈くんの指が小刻みに壁を叩く。お腹側の浅い部分を重点的に刺激されると、否応なく身体が高められていく。
「んっ、あっ、それ、気持ち良い。うん、そこ、すきぃ……」
 お腹に鈍く響く、この感覚は快楽だ。
 久慈くんに教えられた快感をもっと捕まえようと、私は腰をくねらせた。貪欲に何度も彼の指を締めつけると、久慈くんはごくりと喉を鳴らす。
「あー……やば。約束したのに、挿れたくなってくる」
「んっ、久慈くん、それは」
「分かってます。ちゃんと、我慢しますから」
 久慈くんは言いながらも、もどかしさを知って欲しいとばかりに、私の太ももに強張った男根を押しつけて来た。衣服越しでもその存在がはっきりと分かるくらい、久慈くんのそこは膨らんでいる。
「相崎さんに触れてから、ずっとこんな調子ですよ。相崎さん、可愛すぎ」
「あんっ」
 ぐっと深く指を突き入れられて、私は背をのけ反らせた。
 私が行き場のない熱を持て余しているように、久慈くんも昂ってくれている。
 それがなんだか嬉しくて、私はますます彼の指をきゅうきゅうと締め上げた。
「相崎さんの中、狭くて……すごく、気持ち良さそう。たまんない」
 興奮からか、久慈くんの言葉が乱れている。
 ぎらついた目をしながら荒い言葉で話す久慈くんは、本当にいつもとは別人のようだった。
 化粧で素顔を隠していたように、久慈くんは色んな顔を持っている。
 私はまだ全然、本当の彼を知らないのかもしれない。
「今はまだ、指だけで我慢しますから。だから、俺の手でイってください」
 久慈くんはそう言うと、二本の指を大きく上下に動かしはじめた。
 性交をしているかのような律動。長くて太い指が内側を抉り、じわじわと隘路を広げていく。その感覚がたまらなく気持ち良くて、気がつけば私は彼の指に深く身体を押しつけてしまっていた。
「あっ、んんっ、あ……やぁ」
 口からはもはや、意味を成さない切れ切れの吐息しか出なかった。
 身体の奥、子宮のあたりに熱が蓄積されていく。熱くてどうにかなってしまいそうなのに、慣れない身体は熱の出口を見つけられない。
 身体の中で膨れあがっていく暴力的なまでの快楽が怖くて、私はぎゅっとシーツを握った。
 あと少しでどこかに到達しそうなのに、内側の刺激では、上手くそこへ向かえない。
 そのもどかしさに耐えていると、久慈くんの親指がカリッと花芽をひっかいた。
「っ、あ、あ、~~~っ!」
 内側と外側。敏感な箇所を同時に攻められて、私の喉から声にならない悲鳴が漏れる。
 目の前がちかちかとして、体中の筋肉が収縮した。ぎゅっとお腹に力が入って、これ以上ないくらいにきつく久慈くんを締めつける。
 身体の中を微弱な電気が走り抜けたようだった。頭の天辺から指先までぎゅっと強い力が籠って、痙攣したようにびくびくと震える。
 子宮の奥に溜まった熱が弾けると、今度は全身から力が抜けた。背中からどっと汗が溢れて、痺れた身体をベッドに預ける。
「イったみたいですね」
 頭の中に残る痺れるような余韻に浸っていると、久慈くんがそう言って指を引き抜いた。
 その瞬間、シーツにまで垂れるほどの愛液がこぷりと溢れる。けれども、それを拭おうという力さえ湧いてこなかった。
 久慈くんの言う通り、これがイくという感覚なのだろう。
 初めて迎えた絶頂はすさまじく、自分が自分でなくなるようだった。怖いくらいなのに、とてつもなく気持ち良くて、またあの感覚を繰り返したくなる。
 指だけでこんなにも気持ちが良いのだ。もし、本当に久慈くんと交われば、どれだけの快楽が待っているのだろうか。
 想像すると、再びお腹の奥が熱くなるようだった。
 けれども、久慈くんは枕元にあったテッシュを引き抜くと、あっという間に私の身体を綺麗にしてしまった。
「服は自分で着れますよね。畳んでここに置いておきますから」
 あちこちに散らばった私の服を拾い上げると、綺麗に畳んでひとまとめにする。そのあと、彼はバッグを掴んで私に背を向けた。
「え、久慈くん。まさか、帰るの?」
 てっきりこのまま泊っていくのだと思ったのに、帰る準備をする彼に驚く。ちらりと時計を見ると、もう午前を回っていた。
「明日は早い時間から予定があるんです。泊っても、早朝に帰らなきゃいけない」
「でも、この時間だと電車、終わってるよ」
「タクシーを拾います。ホテルの支払いはしておきますので、相崎さんはゆっくりしてください」
 予定があるなら仕方がないのかもしれない。それでも、もう少し一緒にいられないのだろうか。
 胸の奥が寂しくなる。けれども、私は久慈くんを止める言葉を持っていなかった。
 だって、私は彼の恋人でもなんでもないのだ。一緒にいてなんて、言えるはずがない。
 急に寒くなった気がして、シーツに包まる。俯いてしまった私の額に、突然、温かい感触が触れた。
「そんな顔をしないでください。帰りたくなくなる」
「だったら、泊っていけばいいのに」
 もう少し一緒にいたい。そんな思いで告げると、久慈くんは困った顔をした。
「正直、我慢の限界なんです。このまま一緒にいたら、相崎さんに酷いことをしてしまいそうだ。……それとも、俺に抱かれてくれますか?」
 耳元で請われて、かっと顔に血が集まる。
 正直に言えば、それでもいいような気はしている。さっきの続きを久慈くんとしたい。
 だけどそれを口にできないのは、久慈くんの気持ちが読めないからだ。
 それに、私の気持ちもよく分からない。私は彼をどう思っているのだろうか。
「私にそんなこと言って、好きな人に誤解されるよ」
「いいんですよ。その人は、誤解してくれそうにもないので」
 久慈くんの目が甘く煌めく。熱のある視線で射抜かれて、どきんと心臓が高鳴った。
 まさか、久慈くんの好きな人って――。
「今日は帰ります。続きは今度、アルコールが入っていないときにしましょう」
 続きは今度。それってつまり、次があるって期待してもいいのだろうか。
 核心的なことを問えないまま、久慈くんは私を置いて部屋を出て行った。

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