政略結婚した旦那様の蕩けるような蜜愛に溺れる

書籍情報

政略結婚した旦那様の蕩けるような蜜愛に溺れる


著者:沙布らぶ
イラスト:小島きいち
発売日:2022年 8月26日
定価:630円+税

旧財閥系の大企業、トーインコーポレーションの御曹司である洞院賢和とのお見合いが決まった千遥。
千遥も地方名士である名賀瀬家の娘だが、実は父親としか血がつながっていない――いわゆる愛人の娘だったため、幼い頃から兄や父に距離を置かれ育ってきた。
お見合いは順調に進み、穏やかで優しい賢和に心惹かれつつある千遥だったが、父から「実母のことは隠すように」と釘を刺され、隠し事をしたままの結婚に不安を覚える。
そんな秘密を抱えた新婚生活だったが、名賀瀬家という古い殻に閉じこめられていた千遥の目には、彼との生活は何もかも新鮮で……。
「今すぐ変わろうとする必要はないと思う。君が今、これまでの自分を振り返って変化を望むなら――少しずつでいいんだ。焦る必要なんてない」
これまででの生活が嘘のような穏やかで温かい日常を送る千遥だが、自身が本当は愛人の娘だということを賢和に隠して生活するのが心苦しくなってきて……。

【人物紹介】

名賀瀬千遥(ながせ ちはる)
地方名士の名賀瀬家の娘だが、実は父の愛人の子。
実母が他界して以来現在の家に引き取られた。
自分で決めて行動することを抑えられてきたため苦手。

洞院賢和(とういん たかかず)
トーインコーポレーションの御曹司であり、自身でもいくつかの会社を経営している。
家族仲は良好だが、何故かはとこの満には強くやっかまれているようで……。

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【試し読み】

 タワーマンションというのは、千遥にとって未知の領域だ。
 名賀瀬邸は高級住宅街の一角に広大な敷地を有している二階建ての日本家屋――趣深いと言えば聞こえはいいが、実際建物はかなり古い。改築を繰り返してもどうにもならない部分があるのが現状だ。
 庭には二棟の土蔵があって子どもの頃は怖かったし、ギシギシと古めかしい音を立てる廊下は冬になるとひどく冷えた。
 もちろん周囲は静かで治安もよかったが、最新鋭のセキュリティや付属施設を備えるタワーマンションは千遥にかなりのカルチャーショックをもたらした。
 だが、高層階用のエレベーターに乗り込んで三十六階に降りた千遥は、そこでもまた自分が身を置いていた環境との違いを実感することになった。
「ここが俺の部屋。廊下を進んだらリビングで、廊下の右側がベッドルームだから」
「はい……お邪魔します……」
 どことなく体を縮こまらせながら部屋に足を踏み入れる千遥を見て、賢和は苦笑気味に目を細めた。
「ただいま、でいいんだよ。今日からはここが君の家だ」
「あ――そう、でした。じゃあ……ただいま」
 賢和の言葉に、頬がじわじわと熱くなる。
 ただいま、ともう一度だけ口の中で呟いた千遥は、まず廊下をまっすぐに進んでリビングへと向かった。
「わ……」
 リビング全体はナチュラルテイストで統一されており、黒いアンティークのソファが部屋の中央を陣取っている。アンティークとはいってもデザインはシンプルで、モノトーンのクッションたちが古さの中に洗練された雰囲気を醸し出していた。
 その造形があまりにも千遥の好みに当てはまり、先程の実感のなさとは打って変わって思わず声が漏れる。
 すると、荷物を置いた賢和が小さく首を傾げた。
「座って。お茶でも入れようか」
「お、お気遣いなく! その、キッチンを見てみてもいいですか?」
「もちろん。これから君も使うことになるだろうし――コーヒーとか茶葉とかは、まとめてこっちのバントリーにしまってある」
 そうして、一つ一つ賢和から部屋の設備について説明を受けた。
 さすがに洗濯機の使い方や掃除機の使用方法を知らないほど世間知らずではない。
 だが、実家にはなかった新しい家電たちは千遥の興味を大いにそそった。
「この、カーテンレールについてるのはなんですか?」
「あぁ、朝の決まった時間になったら自動で開くんだよ。夜も設定した時間に勝手に閉じてくれる。寝室のカーテンも同じように設定してあるんだ」
 その言葉を聞いた瞬間に、千遥はこれまた衝撃を受けた。
 カーテンが自動で開閉するだなんて、今まで聞いたこともなかった――元々家電製品に明るくはなかったが、こうして最新家電を目の当たりにするとなかなか面白い。
「カーテンって……勝手に開く時代になったんですね……」
「設定さえすればね。朝の六時と夜の六時に設定してある」
 部屋の隅で充電されているロボット掃除機も、スマートフォンで操作できる洗濯機も知らなかった千遥は、部屋の様子が気になってあれこれ見て回ってしまう。
 実際に触って動作を確認したものもあったが、これまでの暮らしとの違いにただただ感銘を受ける。
「す、すごいんですね……実家だと、こういうものが全然なくて」
「俺が好きで色々買ってるだけで、ウチの実家にも全然ないよ。本社に家電系の関連会社はないけど、俺がやってる会社は近い業界で仕事してるものがあって」
「賢和さんが経営してる会社――コンサルタントの方ですか?」
「いや、別の会社。大学時代の友達が家電ライターやってるんだけど、そいつと共同経営してるんだ。トーインビバレッジでやってるメディア運営もその会社で請け負ってる」
 青年実業家として複数の会社を経営している賢和は、自身が代表を務めているコンサルティング会社の他にもメディアの運営を行っている会社があるのだという。
 コンサルタントからメディア運営、そして大企業の役員職まで――賢和の行う仕事があまりにも多岐にわたるので、千遥はぽかんと口を開けてその話を聞いているしかなかった。
「……賢和さん、お休みとかあるんですか……?」
「あるよ。休息はしっかりとるようにしてる――むしろ、そのためにこういう家電に頼ってるって感じだな」
 なるほど、と呟いた千遥だったが、それにしたって働きすぎのような気もする――とはいえ、賢和がそれでいいと思っているのならば口出しはできないだろう。
 その後もあれこれと家の中を案内された千遥は、住環境の変化に戸惑いながらも新たな生活に胸を躍らせることとなった。
 一日中慌ただしくしていたため、夕食はデリバリーにした。
 これも賢和おすすめのタイカレー専門店のもので、賢和はグリーンカレー、千遥はココナッツミルクを入れたレッドカレーを注文した。ややスパイシーだがココナッツミルクのまろやかさもある一品は、移動や手続きで疲れた体に染み渡ってくる。
(そういえば、家で誰かとご飯を食べるのも久しぶりだった……)
 兄は千遥の側には近づきたがらないし、父も多忙を理由に食事の時間が合わなかった。
 食事そのものは作ってもらえるのだが、それを食べるのはいつも一人――子どもの頃から、千遥の食卓は一人きりの寂しいものだった。
 お腹がいっぱいになって気持ちが落ち着くと、ふとそんなことを思い出す。
(誰かと一緒にご飯を食べるのって、こんなに温かくて――食事の味も、いつもより美味しい気がする)
 政略結婚という形ではあるが、こうして誰かと食卓を囲むのは悪くない。千遥はこの空間に、確かな心地よさを覚えていた。
 すると、食器を片付けてくれていた賢和が千遥に向かって笑いかけてきた。
「千遥さん、先にお風呂どうぞ」
「は、はい。ありがとうございます……」
 お言葉に甘えて、先に風呂に入らせてもらおう――そう思って立ち上がった千遥だったが、そんな彼女の元に賢和がするすると近づいてきた。
「賢和さん?」
「千遥さん。今日から一緒に寝ることになるけど――大丈夫?」
 ――と、最初はその言葉の意味が理解できなかった千遥だったが、きょとんとした表情を浮かべること数秒、やっと彼が言っていることを理解してしまった。
(それってつまり、その……そういうこと、だよね?)
 昼間に籍を入れたことで、今日二人は夫婦になった。寝室が一緒なのはもとより、結婚初日には初夜というものがあるだろう。
「……大丈夫です」
 気付けば、千遥はそう答えていた。
 頭の中が真っ白にはなっていたが、この先のことはなんとなく想像がつく――元々この結婚は、二つの家の利害関係の一致によるものだ。
 結婚だけでなく、最終的に子どももできれば家同士の繋がりはより強固なものになるだろう。
 無論、それを是が非でも拒否したいとは思わない。
 賢和のことは嫌いではないし、身を委ねるにしても他人よりは彼の方がずっといい。
「それじゃ、お先にお風呂頂きますね」
 少しだけ震えた声で答えてから、千遥は下着やタオルを持ってバスルームへと向かったのだった。

「――ダメだ、緊張する……!」
 入浴を終えた後、千遥は寝室で一人悶々としながら時間が過ぎるのを待っていた。
 今は賢和がシャワーを浴びているが、それが終われば彼はこの部屋にやってくるだろう。
(どういうことをするとか、話だけは聞いてたけど……)
 ともあれ、彼と自分は結婚した。結婚したのだから、そういう行為はあってしかるべきだろう――頭ではわかっているのだが、今まで一度も男女交際を経験したことがない千遥は、キスから先のことが想像できない。
 賢和のことを待っている時間だけでも、心臓が爆発しそうなくらい強く脈打っている。
 身じろぎ一つするのも憚られる気がしてベッドの上で縮こまっていると、やがて賢和が部屋のドアを開けた。
「どうした、千遥さん」
「ひぁっ!?」
 思わず調子はずれな声を上げてしまった千遥に、賢和が小さく噴き出す。
「悪い、驚かせた?」
「い、いえ……あの、少し考え事を――」
 初夜のことについて考えていました、とは言えずに小さくなる千遥の隣に、賢和がゆっくりと腰かける。
 驚いたのは、彼がスウェットだけを履いた上半身裸の状態だったことだ。
「ひ、あの、た、賢和さん……?」
「そんなに緊張しなくても大丈夫。……あー、色々考えてたんだろう?」
 こういうこと、と言いながら、彼はそっと千遥の唇に指を押しつけた。
 なにか言いたげなその様子に口を開こうとするも、その唇自体を彼によって塞がれてしまう。
「んっ……」
 柔らかく触れた唇が、ちゅっと音を立てて離れていく。
 しっとりとした感覚が名残惜しげに遠ざかっていき、千遥は思わず身震いした。
「怖いか?」
「……少しだけ。でも、大丈夫です」
 怖いか怖くないかと聞かれたら、多分怖い。
 だけどそれは、これから待ち受けているであろう未知の行為に対するものだ。
「た、賢和さんが怖いわけじゃ、ありません」
 誤解がないようにと必死でそう伝えると、彼は目を細めてクスクスと笑う。
「よかった。怖がられてたかと思った」
「ひゃ、ぁっ……」
 柔く耳元で囁かれて、くすぐったさに体が震えた。
 かと思うと、彼の大きな手は千遥が着ていたパジャマのボタンを外し始める。
 プチプチと小さな音がした直後に感じたのは、背筋に指が這う妙なもどかしさだ。
「ぁ、ぅっ……あん、っ」
「千遥さん。……千遥さん、息を吐いて。体から一度力を抜くんだ」
「そん、なっ――んぅっ」
 言われた通りに息を吐こうとしても、くすぐったくてなかなか力が抜けない――そうこうしているうちに、賢和は千遥の素肌をすっかりと暴いてしまった。
 胸元に感じる妙な解放感に、千遥の体が震えた。
「ふ、ぁっ……あ、た、賢和さん……?」
 火照り始めた肌をなぞる指先は、誘うような動きで千遥を翻弄する。
 これまで知り得なかった感覚に身を震わせる千遥を、賢和の手が軽く肩を押した。
「焦らされる方が恥ずかしいだろう?」
 そう言うや否や、下半身を守っていたパジャマも脱がされてしまう。
 ショーツ一枚で心許ない姿にされた千遥は、思わず両腕で胸を押さえる。
「あぁ――」
 感じ入ったような声の後で、賢和は深く息を吐く。
「綺麗だ。想像していたよりもずっと……無垢でなめらかで、無理矢理にでも暴いてしまいたくなる」
 あらわになった肌に触れながら感想を口にし出した賢和に、千遥は真っ赤になって首を振った。
「その、……恥ずかしい、です。それに、電気も……」
「暗がりの中じゃ、君がよく見えない」
 どことなく嬉しそうにそう言いながら、賢和は千遥の手を取って指先にくちづけた。
 ちゅ、ちゅ、と寝室に響く小さな音が、次第に水音交じりのものに変わっていく。
「ん、ふっ……ぁ、あっ」
 触れているだけだった唇からは赤い舌が顔を出し、ゆっくりと指先を舐っていく。
 ザラついた舌の感触に身震いする千遥は、あっという間に体から力が抜けてしまった。腰が砕けて体勢を崩したところを、そのまま賢和に支えられる。
「あの、あ、賢和さん――」
 ここから何をどうすればいいのだろう。
 不安げな表情を浮かべる新妻に、賢和は何度か目を瞬かせるとにっこりと微笑んだ。ただ、先ほどまでの笑顔と違うのは――その目にじんわりと、欲望の熾火が灯っていることだ。
「大丈夫。全部俺に任せて……千遥さんは、俺に身を委ねてくれればそれでいい」
 耳元で囁かれる言葉も、どこか熱っぽい。
 体を小さく震わせた千遥がそっと口を開くと、再び熱い舌が潜り込んできて咥内を愛撫をしていった。
「ん、ふっ……ふぁ、ァっ……」
 柔らかな舌先で口蓋をなぞられながら、彼の大きな手が千遥の下腹部に触れた。
 まるで肌の感触を確かめるように撫でてくる手の動きに、触れられている場所の奥がじわじわと熱を宿しだす。
「胸も、隠さないで。俺は千遥さんの全部を知りたいんだ」
「ンぁ、で、でも――」
 唇が離れた隙に吹き込まれる言葉は、媚薬のように千遥の頭の中を蕩かしていく。
 彼に言われたことはなんでも言うことを聞いてしまいそう――なんとか唇を食いしめるも、軽く腹部を押されると胸元に置いた手をどけてしまった。
「そう、それでいい。……俺たちは夫婦だ。なにも恥ずかしいことなんてない。そうだろう?」
 そう言うと、一度上体を起こした賢和は、自らも着ていたシャツを脱ぎ捨てた。
 部屋のライトに照らされる、均整がとれた美しい裸体――彫刻のような美しさを備えた筋肉に、思わず千遥はほう、と息を吐いた。
「き、綺麗……ですね」
「ありがとう。ある程度見た目は気にしてるんだ――第一印象って、後からひっくり返すのは難しいだろう?」
 意図せずこぼれ落ちた言葉にも、賢和は気分を害した様子もなく頷いてくれた。
 下腹部に触れていた指先が太腿を這うと、覚えのない感覚に肌がぞくりと粟立つ。
「んっ……」
「だが、千遥さんはもっと綺麗だ」
 ちゅっ……と鎖骨の辺りに吸い付かれて、チリッとした痛みが走る。
 痛いと言っても、不快感を覚えるものではない――刻まれた朱赤の痕は千遥から見えない位置にあったが、不思議と心の内側が満たされるような感覚があった。
「ぁ、ッん……」
 震えた息を吐き出す千遥の様子を見つめながら、賢和はするりと彼女の脚からショーツを引き抜いた。
 体を守るものがなくなってしまった千遥は身をよじるものの、賢和はそれを許さない。
「隠すな。全部見せて」
「で、でも……あの、わたし――」
 男女の交際経験も、誰かと肌を重ねたこともない。
 これから先どんな風に振舞えば、自分は『名賀瀬家の娘』として恥ずかしくない態度が取れるのだろう。
 そんな考えに表情を曇らせる千遥は、所在なさげに視線を移して黙り込んだ。少しして唇を開くと、声が情けなくしぼんでいる。
「どう、振舞えばいいのか……」
「そんなこと、考えなくてもいいんだよ。俺と君は夫婦――家族なんだから。家族の前で、どう振舞えばいいかなんていちいち考える必要はない」
 少しだけ乾いた指先が、むに、と太腿を掴んだ。皮が薄く柔らかなその場所は、他の場所よりもダイレクトに賢和の熱を伝えてくる。
「んく、っ」
「どうしても何か考えてしまうなら――俺のことを考えて。今君を抱いている男のことを」
 そう言うなり、賢和は柔らかい曲線を描く千遥の乳房に顔を寄せた。
 新雪の白さの中にうっすらと混じる朱赤の肌を唇でなぞり、舌を伸ばしてその先端を舐り始める。
「ひぁ、ァっ……! ぁ、たか、っ……!」
 生温い唾液が小さな蕾にまぶされる感覚――今まで感じたことがないそれに体を震わせる千遥だったが、賢和はなおも彼女のことを追い詰めようとしてくる。
 右乳房を唇と舌で愛撫しながら、彼の手はむっちりとした千遥の太腿を撫で、その奥に秘された淫裂へと伸びていった。
「ふ、ぅうっ……や、ぁあっ」
 ちろちろと、まるで飴玉を舐めるように乳首を刺激されて、その度にお腹の奥がじんわりと熱を帯びる。
 心臓はぎゅっと鷲掴みにされたように苦しいのに、その向こう側には微かな快感が感じ取れるようだった。
 そろそろと割れ目をなぞる指先の動きも、またもどかしい。蜜口に指が入るか入らないかのギリギリで触れられると、下腹部の疼きがより強くなる。
「ん、んんぅっ……ぁ、あっ」
 とろりとした熱い蜜が奥の方から溢れてくる感覚に、千遥は思わず身悶えした。
 彼が体に触れるたびに、にじみ出るような熱が思考をぼかしてくるようだ。
 軽く乳首を吸われるだけでもその熱はどんどん大きくなり、やがて全身が火照り出す。
「ぁ、やっ……やだ、賢和さ、んっ……」
「大丈夫。怖くない――もう少しだけ、ナカを触って慣れさせよう」
 痛かったら教えて、と前置きをして、長い指先が淫裂のあわいに沈む。
 ぬぷ……ととろみがかった愛液を纏って沈んだ指先は、膣内の浅い場所をゆっくりとなぞり上げた。
「あ、ぁあっ……!」
 下腹部にわだかまっていた熱が、賢和の手によってかき混ぜられる――痛みはないが、その長い指で蜜壺を攪拌されると違和感がひどい。
「く、んんっ……ぁ、あっ……」
 けれどそれは、決して不快なものではなかった。
 自分の深い部分を暴かれて、快楽に浸される。千遥自身が知り得なかった快感を与えられるのは、なぜか途方もなく心地好かった。
 潤み始めた秘裂は次第ににゅぷにゅぷと卑猥な音を立て、鼓膜を犯してくる。そんな音を自分の体が立てていると思うと、千遥は羞恥でどうにかなってしまいそうだった。
「やだ、ぁっ、あっ――ン、ぁあっ……!」
 唇からは絶え間なく甘い吐息と声が漏れ、視界は溢れ出してきた涙で歪み始める。
 それでも、賢和は千遥を愛でる動きを止めなかった。ちゅっ、と乳房の先端をついばみ、指の先を軽く折り曲げては蜜壺の中を掻きまわす。
「声も、我慢しなくていい。いっぱい聞かせて……」
「で、もぉっ……こんな、ぁっ……」
 上ずって、ひっくり返って、お世辞にも美しいとは言いにくい声だ。
 こんな情けない喘ぎ声を聞かされて、賢和は自分のことが嫌になってしまわないのだろうか。
 頭をもたげてきたそんな不安は、一際きつく乳首に吸い付かれたことで綺麗に霧散した。
「ひぁ、ァっ……!」
「可愛いよ、千遥さん――普段はあんなに大人しいのに、俺がこんな風に鳴かせてるんだって思ったら……すごく興奮する」
 胸に埋めていた顔を上げた賢和が、ちろりと舌なめずりをする。
 そんな仕草にすら雄の色気を感じてしまって、千遥ははふ、と息を漏らした。
「可愛い……そんな風に見つめられたら、もっと色々なことをしたくなるな――」
 賢和はそう呟くと、一度指先を蜜壺から引き抜いた。

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