極上の愛撫に啼かされて~豹変した彼の溺愛に囚われる~

書籍情報

極上の愛撫に啼かされて~豹変した彼の溺愛に囚われる~


著者:沢渡奈々子
イラスト:北沢きょう
発売日:2022年 8月26日
定価:620円+税

『――いい加減、諦めたらどうだ? どれだけ暴れたところで、誰も助けに来ないのは分かってんだろ?』
美帆の恋人・野島には、ちょっと変わった性癖がある。
それは、役になりきったシチュエーションプレイが好きなことである!
あるときは「借金取りと彼氏に借金を背負わされた彼女」あるときは「営業部の後輩男性と先輩女性」……美帆は元役者で憑依型の野島に乗せられ、様々なシチュエーションプレイを楽しむのだった。
彼とのプレイにすっかりハマってしまった美帆だったが、ある日を堺に急にシチュエーションプレイに誘われなくなってしまって……?

【人物紹介】

柴田美帆(しばた みほ)
演劇鑑賞が趣味のOL。
彼氏であり同期の男性に二股を掛けられていた。
現在の彼氏である野島とのプレイにハマってしまっている。

野島将紀(のじま まさき)
美帆の現彼氏。
学生の頃劇団で役者をしており、憑依系俳優というそのキャラクターに心からなりきる演技をしていた。
その頃から舞台で演じたキャラクターのまま行為することに目覚めてしまったようで……。

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【試し読み】

『――いい加減、諦めたらどうだ? どれだけ暴れたところで、誰も助けに来ないのは分かってんだろ?』
 ギラリと鋭い光を孕んだ双眸を冷たく細めながら、男――野島は言った。身体の奥底から凍えてしまいそうな、酷薄な口調だ。
 ぞっとするほど怜悧で美しい顔の造作が、体感温度をさらに下げる。壮絶な美貌に彩られた野島が放つ冷えたフェロモンが、震える身躯を搦め取って離さない。
『うぅ……』
 美帆は首筋にゾクリと走る怖気に怯えながら、身体を捩らせる。手首にはきっちりと手錠がかけられていて、さらにはベッドの支柱に繋がれていた。とてもではないが逃れられそうにない。
 手首には無造作に布が巻かれており、手錠で傷がつかないようになっているのは、男なりの気遣いなのかもしれない。
『勘違いしてもらっちゃ困るねぇ。商品に傷でもつけたら、売りものにならないからな』
 まるで心の中を読んだかのような野島のせせら笑いに、美帆の頬は恥ずかしさでかぁっと熱くなる。赤くなったのは顔だけではない。
 目線を下に落とせば、布一枚まとっていない裸体が横たわっている。もちろん、美帆本人のだ。
 身体はやはりほんのりと赤く染まっている。
『――なかなかきれいな身体じゃねぇか』
 野島は美帆の胸の先端をピン、と指で弾いた。途端、白い肢体に痺れが走る。
『……っ、』
『こんなんで感じてるとか、頭と違って身体は賢いんだなぁ』
『も……やだ……っ』
 野島が目に色を交えながら、舌なめずりをした。耐えきれなくなった美帆は涙目でキッと野島を睨みつける。
『やだとかやめてとか、おまえの意見なんて聞いてないんだわ。恨むんならお前の男を恨みな。今時、交際相手の連帯保証人になるなんて馬鹿でもしねぇよ』
『わ、たし……なってない……』
 与り知らぬ内にそんなことになっていたのだと、美帆は訴えた。
 つきあって二年、同棲して一年の彼氏が急に失踪した。その直後、野島が美帆の元にやって来たのだ。
 なんと彼氏が一千万円の借金を残しており、突きつけられた借用書の連帯保証人欄に美帆の名前があった。もちろん、そんなものに署名捺印した覚えはない。明らかに偽造だ。でもそれが通用するような相手ではなく。
 野島は自らを債権者だと名乗った――つまりは、闇金だ。一見するとそうは思えないほど整った顔立ちをしているが、まとうオーラは不穏極まりない。
 何がなんだか分からないと困惑する美帆を、野島は強引に誰かのマンションへと連れてきた。服を脱がしてきたので抵抗したものの、力ずくで今の状態にされてしまった。
 裸で転がされてしばらく経った今でも、置かれた状況が信じられない。ただただ茫然とする美帆に、野島は非情な言葉を投げつける。
『知らねぇよ。連帯保証人の欄におまえの名前がある、それがすべてだ。……さて、そろそろ始めようか』
 野島は着ていた黒のジャケットを脱いだ。高級ブランドのものであろうそれを乱暴に投げると、男はベッドに乗り上げ、美帆の腰を跨いだ。
 最悪な予感がよぎって背筋が冷たくなり、ぶるりと震える。
『な、に……』
『何って、この状況でボードゲームでもすると思うか?』
 野島がニヤリと笑い、美帆の顎をガシッと掴んだ。
『ゃ……っ』
『あぁ……その目、たまんねぇわ。反発した目つきがいつまで続くかねぇ……精々楽しませろよ』
 顎を掴んだまま、野島は美帆にくちづけた。
『んー! っ、んっ』
 めいっぱい抵抗をしてみるも、両手を拘束され、下半身には体重をかけられて身体は動かせない。男の力には到底かなわなくて、顎をつかんだ手であっけなく口は開かれてしまう。
 すかさず、厚い舌がにゅるっと差し込まれた。
 口腔内を乱暴に舐め回され怖いのに、全身には甘い痺れが巡る――心身が引き起こす矛盾に、美帆は戸惑い、動けずにいる。
 野島の手が胸のふくらみに伸び、ぐにゅりと掴む。男の大きな手の平の中で、白くまろい乳房がパン生地のように自在に形を変えている。痛くはない。派手に揉まれているようで、それほど強い力は加えられていないから。むしろ心地よささえ覚えてしまう。
 なんだか嫌な予感がする。
 嫌悪感で満たされていたはずなのに、身体の奥の奥では確かに情火が点り、大きくなり始めていた。
『あっ、ん……っ』
『声、出始めたなぁ……いい反応だ』
 野島が美帆のくちびるを少しだけきつめに噛んだ後、クッと喉の奥で笑いを殺す。
『いた……っ』
『痛いのは嫌いか? ……なら気持ちいいのは?』
 身体の芯を震わせるような呟きが聞こえたかと思うと、野島は芯を持ち始めていた乳嘴をじゅる、と吸った。
『んんっ』
 びくん、と腰がわずかに浮いた。
 ビリッと小さく湧いたのは、快感なんかじゃない。嫌だ。感じたくなんかないのに。
 先端を舌で潰されて、思わず身体を捩らせてしまう。
 逃れたい。逃げたい。でないと私は――
『逃げるな』
 夜の底を這うような低い声が、美帆を見えない紐で縛ってしまう。
 動けない。怖い。
『っ、』
 舐られ続けた頂は、さっきよりも赤みを増して淫靡だ。感じれば感じた分だけ赤くなっていっているようで、恥ずかしい。しかも野島の唾液でてらてらと濡れ光っている。
 野島の愛撫はねっとりといやらしいのに、それでいてひたすら優しくて甘いのがかえってつらくて。
『も……ゃめ……』
 か細い声で訴えると、野島がふっと笑う。
『あと一押しか……じゃあこれはどうだ?』
 次の瞬間、内腿の奥に手を差し込まれた。
『きゃあっ』
 野島の指が秘裂を撫で上げると、強烈な痺れが体内を疾駆した。ビクリと身体が跳ね上がる。
 これは紛れもない快感だ。あからさまに身体が悦んでいる。
 すでにそこはしとどに濡れていて、沈んだ指は滑らかに動いていた。
『は……ぬるぬるだ』
『あ……いや……』
『嫌だというわりには、足がどんどん開いてるぞ。口よりも身体の方が正直みたいだな』
 さっきまで硬く硬く閉じていたつもりだった。それなのに、いつの間にか足を投げ出すように開いていた。
 野島に指摘されて気づくなんて。
 恥ずかしさで、美帆の頬がかぁっと上気する。
 その間にも男は閉ざされていた肉襞を割り開いて、さらに奥へと指を進ませた。なおも湧き続ける蜜液をわざと大きく掻き鳴らし、美帆に羞恥心を植えつけてくる。
 酷い男――
『あっ、あぁ……っ、んっ』
『声が甘くなってきたな……あぁ、ベッドまで垂れてきた。気持ちよさそうで何よりだ』
 くつくつと笑みを含んだ声と美帆を支配する視線が落ちてくる。
 膝頭がマットレスにつきそうなほど大きく脚を割られて、身体の奥の奥まで覗かれそうなほど開かれて。男らしい体躯で押さえつけてくる。
 だから仕方がないの――動けないでいるのは。
 秘裂を何度も掻き回されて、にゅるにゅると擦られて気持ちよくなってしまうのも、全部全部――野島のせい。
『あんっ、や、めてぇ……っ』
『やめて? ……それ、本気じゃねぇよなぁ? こんなに濡らしといて』
 奇跡のように美しい顔から繰り出される粗野な言葉遣いが、やけに胸に刺さってしまうのが悔しい。
 初めて美帆の部屋に取り立てに来た時、極上の美貌に見とれてしまった。でもすぐに凶悪な視線で射貫かれて、怖さが上回ってしまったのだけれど。
 野島の手は手首まで濡れており、愛液がポタポタと滴り落ちている。
 美帆がいやいやとかぶりを振っても、ぬかるみを擦る指は確実に快感を植えつけてきて。
『ほら、もっとほしいよな? 遠慮するな』
 さらに野島は、空いている指で陰核を剥き出し、ぬめりを巻き込んで捏ねた。びくんびくんと戦慄く両襞からはだらだらと新しい蜜液が垂れて、ベッドに大きな影を描いている。
『あぁっ! んっ、ゃ……』
 気持ちよくて脳みそが焼き切れそう。全身が痺れてたまらない。
 畳みかけるような愛撫が続いて、身体が細かく震え出す。男は奉仕の指を緩めることなく、小刻みに花芯を弾き、舐め上げた。
 刹那――
『も、だ、めぇ……っ、はぁっ、んんっ!』
 肢体が大きくしなり、そして弾けた。目の奥で何かがスパークする。
 幾度かの痙攣を経て、美帆の肢体はくったりとベッドに沈み込んだ。
 ついに達してしまった。決していくまいと思っていたのに。
『っ、はぅ……っ、ゃだぁ……! も、いっ、た……っ、む、り……っ!!』
 達したのを知っているくせに、野島は美帆を弄ぶ手を止めない。愛撫というより、追い込んでいるようにすら思える手つきは、優しいのに残酷だ。
 指の腹で繰り返し花芯を擦られる。十二分に濡れているので痛くはないけれど、過敏になっている粒が拉がれるたびに苦しくて逃げたくなる。
『しんどいか? ……じゃあ、場所を変えてやるよ』
 野島の指からようやく解放されたかと思うと、今度は膣口につぷりと差し込まれた。
『あぅっ』
 いきなりだったけれど、まったく痛くない。爪の存在すら感じなかったのは、野島が上手いせいなのか――考えたくもないけれど。
『おいおい、まだ指だろ? そんなにきゅうきゅうしめつけんな。いやらしい女だな』
 秘裂の表層を散々嬲られていたので、肉壁は劣情を持て余していたのだろうか。男の指が挿入られた途端、待ち望んでいたとばかりに絡みついて食いしめている。
 嫌なはずなのに、身体は悦んでいる。
 もはや美帆の頭と肉体は完全に別次元の生き物になっているようだ。
『ぅっ、んっ、あん……っ』
 ざらざらとした隘路は、野島の指が抽挿をすれば響くように反応する。まるで以前からこの指の味を覚えていたみたいに。
 そしてある場所を通った時、身体は過剰に反応した。
『あぁんっ』
『……ここか』
 見つけたとばかりに、野島がそこをきゅっと押した。膣口がびくんと大きく疼く。
『や、だ、やだぁ……っ、それ、やめてぇ……っ』
 指を外さずに幾度も擦り上げられ、じゅぷじゅぷと音を立てられる。
 美帆の下腹部はもうびしょ濡れで、そこだけ気持ち悪いくらいだ。でも不快感を補って余りあるほど、膣内には甘い愉悦がしゅわしゅわと湧いている。
『ゃ……も、きもちぃよぉ……』
 力の抜けた声。美帆は自分のくちびるから快楽を受け入れる単語が漏れ出たことに気づいてすらいない。
 野島の手の平の上で、美帆の身体は欲望に従順になってきている。
『へぇ……素直になると可愛いな、おまえ』
 満足げにうなずくと、野島は空いた手で再び包皮をずらし、爛熟した陰核を捏ねた。もちろん、膣内を愛撫する手も休めない。
『あぁっ、んっ、んぅ……っ、や、いっしょ、らめ……っ、んんっ』
 舌っ足らずな抗議は逆効果だと、男は美帆をさらに愛欲の沼へと駆り立てる。底が見えない濁った水が、ずぶずぶと彼女の身体を引きずり込んだ。
『あああ――――っ、んんっ、いく、い……っ、いやぁ……っ!!』
 強張っていた全身が大きく痙攣した。繰り返し弾む肢体は、何かに取り憑かれているようにすら見える。
 ひくんひくんと最後の疼きを見せた後、美帆の身体は静寂を取り戻した。
 力の入らない四肢を投げ出すと、野島が己の手首を舐めながら言い放つ。
『――派手にイッたな。おまえの潮で俺の手は腕までびしょ濡れだ』
 どうやら潮まで吹いていたらしい。全然気づかなかったし、そんな状態になったのは初めてなので、恥ずかしくてたまらない。
『ゃ……』
『まだ終わりじゃないことは分かってるよなぁ? これからが本番だからな』
 そのひとことで、次に何をされるのかが分かってしまった。自分の身体は、とことんこの男の好きにされてしまう。
 身体を弄ばれる恐怖の中に、ほんのわずかに期待が芽吹いているのは、絶対に気のせいだ。
 口では非情なことを言っておきながら、決して痛めつけず丹念に愛撫し、美帆に極上の快感を捧げてくるから、そんな錯覚に陥ってしまうんだ。
 ――この男に、もっと気持ちよくしてもらいたい、なんて。
 もう嫌だ、消えてしまいたい。
 野島が服を脱ぎ捨て、真裸になる。つい目線を送ると、男の裸身の中央でそそり勃つ雄芯が目に入った。強烈な生命力に満ちていて、どこかグロテスクささえ覚えるほど異質だ。
 男は見せつけるように、避妊具をまとった屹立を自ら扱き上げてみせた。
 美帆は思わず声を上げてしまう。
『ひっ……も、むり……ゃぁ……』
『はっ、まだ始まってもいないのに、もう目も声も身体もとろとろじゃねぇか。……もっと溶かしてやるよ』
 野島の声は先ほどよりもワントーン高い。なんだかひどく楽しそうだ。
 わずかに目にかかる髪を掻き上げるたびに、冷たく潤んだ瞳から男の色香が滴り落ちる。その様を見ていると、美帆の奥で堅く秘めているはずの何かがだんだんと崩れ落ちていく気がして。
 自分でなくなってしまう。それが怖い。
 野島は震える美帆の脚を開き、腰を押し進める。
 濡れた秘裂にぬるぬると楔を押しつけた。しかし挿入ずに、離れる。そしてすぐにまた押しつける。
 つかず離れずを繰り返し、肉襞の間を滑らせては時折花芯を掠める。
『んっ』
 そのたびに美帆の身体はひくん、と反応を見せる。
 何度も同じことをされて、だんだんと下腹部が焦れてくるのが分かってしまう。
『……どうした? おとなしいな』
 もう完全に抵抗する気なんて放棄しているのに。それなのに。
 この男はさらに美帆を降伏の底に突き落としたいのか。
 すでに愛液に塗れているだろう肉塊は、一向に膣内に入ってくる様子はない。
 焦らされて焦らされて。
 気持ちがいいのに、それでも一番敏感な部分は絶妙に外されて、もどかしくて仕方がない。
 本当は嫌なはずなのに、早く犯してほしいなんて――
『あぁっ、もぅ……おね……い……』
『何? 何をしてほしいんだ? もう一度言ってみろ』
 本当は聞こえてるくせに、とぼけてそんなことを言う。
『ひ、ど……もぅや……』
『ひどい? 何がだ? してほしいことがあればしてやると言ってんだよ。……優しいだろ?』
 野島が不敵な笑みで見下ろしてくる。美帆を見下しているようで、その瞳の奥には感情を搦め取る炎がチラチラと見え隠れしている。
 本当は優しく溶かしたい――そう告げられている気がして、本気の抵抗ができずにいる。
 どうして。どうして甘い飴を隠し持って、時折美帆に見せてくるのか。鞭だけなら徹底的に憎めたのに、乱暴にされたのは最初のキスの時だけだ。
 もうダメ。情欲が恐怖を喰らう瞬間なんて味わいたくなかったのに。
 せめて痛くしてくれれば、怖いままでいられたのに――
 傷ついているはずの心は、怒濤のように注がれる男の秘めた激情にもみくちゃにされる。
『――どうしてほしいか言わないと、いつまでもこのままだぞ?』
 美帆の蜜で濡れた雄芯は、硬く張り詰めて血管すら浮き出て、ひくひくと妙な緊張感をまとっていた。それなのに当の本人は涼しい表情をして、非情なことを言いながら美帆の膣口をぬちぬちと弄っている。
 本当に、酷い男――
『あっ……ん、ゃ……もう、い、きたい……』
 美帆は白旗を掲げた。腹の奥底から迸る欲望を、これ以上身の内に留めてはおけなかった。
『イキたいだけじゃ分からねぇなぁ。俺は馬鹿だからさ、はっきり言ってもらわなきゃ何もできねぇんだわ』
 目を細めてニヤリと笑う野島は、まるで悪魔だ。とびっきり甘い毒を孕んだ美しい悪魔。
『っ、もぅやだぁ……っ。い、れてよぉ……っ』
 半分やけで半分切実な言葉が、美帆のくちびるからこぼれ落ちる。
 じくじくと疼き続ける内部を早く満たしてほしくて、絞り出すような声を上げてしまった。
 ついに、堕ちてしまった。プライドも意地もあったものじゃない。ただひたすら、本能を満たしたくて仕方がなかった。
 刹那、冷たく張り詰めていた空気がふっとどこか温かくなった気がした。
『……っ。は……っ、ようやく素直になったか。……いいよ、お望みどおり、挿入てやるよ』
 一瞬何かを言い淀んだかと思うと、ズシン、と重い音を立てて、野島が腰を打ちつけてきた。
『きゃあっ、あぁん!』
 深く強く貫かれ、弾みで子宮口まで突かれた身体は、今まで焦らしに焦らされながら溜め込んだ愛撫の名残も手伝って、あっという間に頂を望む。
 全身が戦慄き、媚肉は収縮した。
『……もうイッたのか。早いな』
 絶頂の余韻に浸る暇など与えないとばかりに、野島は美帆を穿つ。
『あうっ、ゃ……っ、い、ったの! いっ、てるか、らぁ……だ、めぇ……っ』
 男の動きを止めようにも、両の手は拘束されているし細い腰はがっちりと掴まれていて、過ぎた快感から逃してもらえない。
 さっきあれほど焦らしてきたのに、今度は畳みかけるような愉悦を絶え間なく注がれる。
 美帆が感じる部分をすぐに探り当てた野島が、集中的にそこを擦り上げて揺らす。強く深く、優しく浅く、楔は美帆の膣壁を抉った。
『あっ、や、また、いっ、ちゃ……っ、だめ、いや……っ』
 美帆の肢体はガクガクと痙攣し、細く長く続く快感に狂ってしまいそうだ。
 野島の筋張った手が、美帆の下腹部をきゅっと押さえる。彼の雄芯が行き来しているちょうど上の辺りだ。
『やっ、それ、だめ……しないでぇ……っ』
 気持ちよさが増してきゅうきゅうと隘路が蠕動する。
『すげぇ締まるな。……こっちが食い千切られそうだ。そんなに気持ちいいか?』
『あんっ、んっ、きもちぃ……っ、い、く……っ、も、いくぅ……っ』
 躊躇いも戸惑いもなく、甘ったるい声音で快感を訴えると、野島の抽挿の速度が上がった。
 これで何度目だろう。美帆の蜜口が絶頂で男の屹立を絞り上げるのは。
『……素直で優秀だな、おまえのここは。打てば響く身体は大好物だ。とことんイかせてやる』
 野島は舌なめずりをすると、美帆の足首を掴んで広げて掲げながら、腰を振りたくった。高らかに肌を打つ音と愛液がしぶく音が、室内に淫猥な和音を響き渡らせる。
『あぁ……ぅんっ、あぁっ、ゃ、もぅ……っ――』
 官能の狂瀾は、美帆が気を失うまで続いたのだった。

   ***

「――ほ。……美帆? 大丈夫?」
 美帆がうっすらと目を開くと、美しい顔が心配そうに覗き込んでいた。数分前に見せたギラギラした雰囲気など微塵も感じさせない、優しくて穏やかな瞳だ。
 濃厚な官能の空気に満たされていた寝室は、すでに穏やかで静かな空間に戻っていた。
「ま、さき……」

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