身代わり婚約者ですが、俺様御曹司に果てなき激愛を捧げられています!?

書籍情報

身代わり婚約者ですが、俺様御曹司に果てなき激愛を捧げられています!?


著者:川奈あめ
イラスト:天路ゆうつづ
発売日:2023年 9月15日
定価:630円+税

地中海でのひとり旅を満喫していた翠は、突然話しかけてきた知らない男になぜか婚約者として間違われて――!?
一鷹というその男に、事情を説明をするも、逃げるための嘘だと思われて取り合ってもらえない。
どうやら重要なビジネスディナーの場に婚約者がいないことで困っているらしいと判断した翠は、人助けとして身代わりの婚約者を演じることに。
無事にディナーも終わり、二人はホテルの庭園を散歩していた。
完璧なエスコートとそこに見え隠れする不器用な彼本来の優しさに翠の心は高鳴っていく……。
一方の一鷹も、様子の違う「婚約者」のことをじっと見つめていて――?
ホテル内のそれぞれの部屋へと別れたあと、明日になれば翠はこっそりと姿を消すつもりだった。
だが、翠が入室する直前、踵を返した一鷹は彼女を引き止め、まっすぐに見つめた――。
「今日のおまえを、逃したくない」
惹かれ合うままに肌を重ねる二人だが、一鷹の瞳に自身が婚約者として映っていることが翠にはどうしようもなく切なく思えて……!?

【人物紹介】

(みどり)
グリーンコーディネーターとして働いていたのだが、現在は休業中。31歳。
ざっくりとしたおおらかな性格をしており、人に親切で物怖じしない。
地中海でのひとり旅を満喫している中、突然、一鷹に話しかけられて……!?

一鷹(いちたか)
一族系列の会社をいくつか経営している御曹司、投資家。
気位の高い猛獣のような威圧感と冷淡さを与えることもある。
翠のことを家の決めた婚約者だと勘違いしていたのだが――?

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*取り扱いサイトは、各書店に掲載され次第、更新されます。

【試し読み】

「…………じゃあ……、本当に?」
 ゆっくり、一鷹は顔を上げた。ふうふうと全身で息をして怒りに満ちている翠を窺い見る。
「本当に、万里子じゃない? 別人だった? そんなことがあり得るのか? 偶然同じ街に、偶然同じ日に居合わせた、他人の空似? まさか、そんなことが……」
「よろしければ、パスポートをお見せしましょうか?」
 嫌みたっぷりに言ってから、あ、最初からそうすればよかったんだ、と思い至る。
「別人……」
 一鷹は、もう一度つぶやいた。そのにわかには信じ難い事実を、脳に刻み込ませるように、何度も、反芻する。そして、
「…………夢でも、騙されているのでも、なかった。万里子じゃ、なかった!」
「きゃっ! な、なに」
 突然一鷹が喜色満面でガバッと抱きついてきたものだから、翠は面食らって声をあげた。
「違ったんだ。本当に、別人だった。嘘だろう。万里子じゃなかった!」
「それ以上よその女の人の名前を口にしながら抱きつくなら、張っ倒すわよ」
「ああ……、名前を訊いても?」
 一鷹が腕を緩めて、こちらの顔を覗き込んでくる。その表情が、素直な喜びに輝いている。突然の変わりように、今度はこちらが気圧されてしまう。
 それでもさきほど受けた冷たい仕打ちはまだ堪えていたから、心は許せない。警戒しつつ、答える。
「…………翠。スイの字で、ミドリ」
「翠」
 いい顔で、一鷹が笑った。コトリ、と心臓が動く。
「翠……、良かった、人違いで」
「あの……」
 またも両腕にぎゅうぎゅう抱き締めてくる。ふたりは素っ裸で、男の肌が生々しい。おまけに、頭のてっぺんや、ひたいや、こめかみや、鼻先や、耳たぶに、小さなキスの雨をたくさん降らせてくる。
「ちょっと……、まだ話は終わったわけじゃ……」
「ああ、うん、聞かせてくれ。なに?」
「えっ、と……」
 改めて問われると、特にない。だが、このまま裸で抱きつかれたりキスされたり、髪を撫でられたり、していていいものか。いいはずがない。
「さっきの態度のこと、私、まだ……」
「すまなかった。ごめん。許してほしい。傷つけたな?」
「え、うん……」
 そう素直に謝られると、調子が狂う。どういう人なんだろう。傲慢かと思ったら、優しくて。かと思ったら、心臓が凍えるように冷たくて。かと思ったら、意外なほど素直だ。どちらが本当の彼なのだろう?
「さっきは、おまえじゃ、翠じゃないと思ったんだ。夢のなかにいるみたいに幸せだったのに、冷や水を浴びせられたようで。しょせんこれが俺の現実なんだと、突きつけられたようで」
「私はべつに、夢じゃないのよ。住所も戸籍もある。今は無職だけど、仕事にだって就いていた」
「ああ、そうだ。おまえは現実にいた。――夢みたいだ!」
 パア! とふたたび顔を輝かせた一鷹に、
「夢じゃないって言ってるのよ!」
 と声を張り上げる。あと笑顔がやたら眩しい。ただでさえゴージャスな容貌が、光を放っている。
(どっちにしろ人の話を聞かないな、この人!)
 いや、そんなことはない。
「仕事って? 園芸屋だと言っていたな?」
「というか、……ええ、まあ、植物関係の仕事です。おもに室内の……装飾的な……」
「そうか。旧市街で会ったときからずっと、木や花の話ばかりしていた。庭でも、俺にいろいろ教えてくれた。よほど好きなんだな。それで? もっと翠の話を聞かせてくれ。なぜこの街にいた? 仕事で? 旅行か?」
「ん……」
 一鷹は翠の話したこまごましたことをよく覚えていたし、彼女のことをもっと知りたいとせがんだ。もう、言葉の途中で唇を塞いでくることは、ない。もう夢から覚める怖れはないから。もう、目の前にいる人が一瞬後には夢か偽りとなって掻き消えることを、怖れる心配はないから。
 だがいかんせん、
「この街にいたのは、ん……っ、ただの、旅行で……、ぁ……、ちょっと立ち寄ってみた、だけで……、ふ……っ」
 翠の存在をしっかり確かめたくて絶えず肌をまさぐってくる一鷹の手がやたら気持ち良くて、翠は上手く言葉を紡ぐことができない。
「立ち寄った? 本当はべつの所に行くはずだったのか? 俺のせいで予定が狂った?」
「ん、でも急ぐ旅じゃな、から、あッ……」
 びくん! と翠は体を跳ねさせた。突然出た甘い声に、慌てて口を押さえる。けれど、
「ここ?」
 一鷹は榛色の目を細めて、問うてくる。彼の五指が、今しがた甘い声を引き出した場所、翠の脇腹を、つつっと滑った。
「ふ、あ……っ、そこ、なんで……っ」
 びくびくとしながら、思わず彼にしがみついてしまう。こんな所が感じるなんて、今まで、なかった。
「翠……」
 耳元で、一鷹が囁いてくる。それはしっとりとした艶を帯びていた。その声にも、ぞくぞくと感じてしまう。
(も……、なに、これ……っ)
 彼のするすべてが、気持ちいい。さっきまで泣いて怒って彼を枕でめった殴りにしていたはずなのに。なんて冷酷な人なんだと思ったはずなのに。
「ね……、いや……待って……」
 このままなし崩しにこんなことになっていいのだろうか、というモラル以上に、自分の体がいつもと違い過ぎるのが怖くて、翠はいったん、彼の腕から逃れようとした。けれど、
「翠。行かないでくれ」
「……!」
 打って変わって、追い縋るような、切ない声。
「行かないでくれ……ここにいてくれ」
 背中が、ベッドのスプリングに軽く弾む。強く抱き締められたまま、押し倒されたのだ。 筋肉のついた、男の逞しい腕。
「……頼む」
 自分を抱き締める、その苦しいくらいの強さに、どうしてか、泣きたいほどの衝動が込み上げる。
 窓の外には、地中海の波に浮かぶ月。
 自分がなんで外国のこんな所で、こんな事をしているのか、信じられない。でも。
「翠――――」
 その声が、榛色の瞳が、庭園のときの、あるいは扉の前から連れ去ったときの、翠の心臓をゴトリと恋に落としたときの、あの切なくも焦がれたものと、同じで。
「…………、……」
 気づけば、腕を伸ばして、彼を抱き返していた。
 去りたくない、まだ。
 彼といたい。
 繰り返し翠の名を呼ぶ彼の唇が、頬や、ひたいや、唇に何度も落とされる。やがて、
「ん、……っ、ぅ……」
 彼の唇が下へ降りていく。首すじをまさぐり、鎖骨や、胸元に吸いつく。翠は声を詰めて、彼の髪に指を差し入れた。彼の愛撫が激しくなるにつれ、サラリとした髪は搔き乱される。
「あぁっ……、っんぅ!」
 びくん! と翠は身をよじらせた。先ほど翠から甘ったるい声を引き出した脇腹にも、彼の舌が這わされたから。
「あ……、ふっ、なんで……っ、そこ、やあ、ぁ……っ」
 皮膚の薄いそこを、舌先でつうっと舐め上げられ、びくびくとつま先を引き攣らせた。そこが翠の性感帯なのだと確信するや、一鷹は重点的に責め掛かる。ちゅ、ちゅ、と啄むように唇で嬲られ、ちろちろと舌先でくすぐられる。そのたびに得も言われぬぞくぞくとした感覚が駆け巡って、
「ぁはっ、やっ、あ……! もう、…………だめぇっ」
 一鷹の髪を両の指で搔き乱しながら、翠は嬌声をあげ続ける。ほとんど泣くような声で、快感を訴える。
「全然、駄目ではなさそうだが? それとも、自分がここが好きだって、今まで知らなかったのか?」
「知、らな……っ、あ、あ、どうして、……っなんでか、止まらな……っ、あ、やあ、そこも、触らないで……っ」
 腰の奥が、熱くて熱くて仕方ない。もじ、と両膝をこすり合わせる。そのさまを目ざとく一鷹が見咎める。
「どうした? もう我慢できない?」
「ぅ……っ、ふ……っ、そんなこと……」
 恥ずかしくて、ふるふると首を横に振る。けれど本当は、両脚の奥が、切ないほどになっていた。触れられてもいないのに、どくどくと脈打っている。
「ん、や……っ!」
 翠は思わず声をあげた。一鷹に、両の太腿を容赦なくひらかされたから。彼の視線が、潤んだ奥処に、灼けつくように注がれている。
「や……、やだ、見ないで……っ」
「嘘つき」
 瞳に色濃い官能を宿して、一鷹が囁いた。
「こんなに濡れている。これでも、まだ我慢できるって?」
「やぁ……」
 泣きそうな声で、翠は両手で顔を隠した。恥ずかしくて恥ずかしくて堪らない。頭が沸騰して、どうにかなってしまいそうだ。なのに、
「……っ、ひ……」
 翠の声が喉で固まった。一鷹が身をかがめ、彼のサラリとした髪が内腿に触れたから。
 そんな、うそ、まさか、待って、いきなり、嘘でしょう、だめ、どうしよう、だめ、と頭の中が空転するうちにも、
「や、あ……あ、ああああ……ッ」
 彼の舌が、秘められた蜜芽に触れた。敏感なところを、粘膜のなまめかしさで、そっと舐められる。それだけで、瞬時に全身に電気が走ったような快感が駆け抜け、
「いやあ、や、あ……っ、あ、は……っ、ぁ……っ」
 いやいやと首を横に振りながらも、彼の舌先が動くたびに、声は甘ったるくあがり、媚態を帯びて男を誘う。
「可愛い声だ」
 ふ、と一鷹が笑い、そのなまあたたかい吐息がまた蜜芽をくすぐる。
「いやああん……っ」
「こら、逃げるな」
 思わず腰を引いた翠の内腿を、一鷹が押さえつけた。柔らかな肌に男の五指が沈み込み、逃がさない。
「待……って……っ、待って、そんな、私、んぅ……、待って……っ」
「俺が、言うことを聞くような男だと思っているのか? 出会ってからこの短い時間で、翠は俺がどういう人間か充分に分かったと思うがな。目の前でおまえがこんなに可愛い反応をしているのを見せられて、俺が何もせずにいるとでも? ほら、おとなしくしろ。もう一度してやる」
「や、あ、あああ……っ」
 じゅく……っと音さえたてて、一鷹が翠の蜜処に顔をうずめた。溢れる蜜を舐め取り、蜜口に舌を差し込んでくる。そのなまなまし過ぎる感覚に、翠はもう何も考えることができなかった。
「ああん、いやあ……っ、ああ、あっ、は……、んっく……ふ、っぁああん……っ」
 彼の肉厚な舌で、何度も蜜口を抉られる。表面は柔らかい粘膜なのに芯を硬く尖らせた舌が、こじあけてくる。そのたびに、とろけるような陶酔に満たされる。気持ち良すぎて、もう耐えきれない。
「は……っ、あ、あああ、だめ、もう、それ、だめぇえ……っ」
 彼の舌に感じさせられ、嬌声が途切れない。瀟洒な部屋に響き渡る自分のあられもない声に、恥ずかしい、と思う余裕すらない。脚を大きくひらかされたまま、シーツをぎゅっと握り締めて、むやみに首を横に振る。なのに一鷹は、そう訴えるほどに、
「『それ』って? これか?」
 艶めいた声を嗜虐的に響かせるや、じゅくっ、とさらに深く蜜口を抉ってきた。
「いやああああん……っ」
 翠は快楽にのたうち、一鷹の髪を指で掻きまわした。信じられない、あの傲慢で貴族的に見下ろしていた男が、今自分に、こんなこと。
 けれど指のあいだをすり抜ける男の髪の感触が、彼に恥ずかしいところを舐められているのだという実感を、いや増させた。
「ぁ……、はっ、一、鷹ぁ……っああ……」
 彼の舌が、蜜穴を抉ってくる。かと思えば、今度は舌を柔らかくし、広い面積を使って、翠の淫らな部分を、舐め溶かそうとしてくる。
「あ……ああ……、あ……」
 喘ぎ声すらも溶けていくようだった。
「なんて声だ……堪らないな」
 男の情欲に満ちた瞳を上げると、一鷹は、月明かりの中くったりと横たわる翠を見た。浜辺に打ち上げられた白魚になったかのような裸体を、口元を拭いながら一鷹はとっくりと目で味わう。
「ふ……、…………」
 蕩けきった瞳を揺らして彼を見つめ返すと、一鷹は微笑み、翠の髪を優しく撫ぜた。ぎゅってしてほしい……、と思うか思わぬかのうちに、どうして伝わったのだろう、一鷹は翠を愛おしげに抱き締めてもくれた。きゅん、と満ち足りた想いが、ほのあたたかく込み上げる。なのに、
「あっ、……んぅっ」
 翠はふたたび体をのけぞらせた。体を密着させたまま、一鷹の手が下へ降り、蕩けきった蜜口へと、指を潜らせてきたから。
「ぁう……っ、ん、なに……っ」
「なに、って」
 一鷹はいたずらっぽく翠の目を覗き込んだ。
「そっちこそ、なにをすっかり満足して終わった、みたいな顔をしているんだ? まだこれからだ」
 翠の可愛らしい想いとは裏腹に、一鷹の瞳には、抑えきれない男の情欲がぎらついていた。
「もっとおまえを可愛がりたい。――いいだろう?」
 囁いたその声に、ぴちゃ……というはしたない水音が重なった。一鷹はたっぷりと、翠の蜜と媚肉とを、指で弄ぶ。淫らな音を、これでもかと聞かせてきた。
「やぁ、あ……」
 か細い声をあげながら身悶え、翠は膝を閉じようとした。けれど、一鷹の指はかえって女のぬかるみに吸いつくように、奥へと進めてくる。
「そんなふうに動くと、翠」
 彼の声音もまた、女の肌に吸いつくかのような声だった。くぷ……、と圧力がかかる。
「かえって吸い込まれそうだ、おまえの中に……ほら」
「ふ……、う……っ」
 つぷぷ……と男の長く太い指が一本、蜜道を侵してきた。ぎゅっと一鷹にしがみついて、翠はその異物感に耐える。
「ぁ……、んぅ、…………ッあ!」
「挿った」
 一鷹が、ちゅ、と優しく翠のひたいに口づけを落とした。
「ん、ふ……ぅっ、……」
 こくこくと、翠は頷く。久しぶり過ぎる圧迫感に、なんとか息をしようと思うけれど、上手くできない。
「大丈夫か? 痛い?」
「へい……き……っ」
 一鷹が、いたわるように髪を撫ぜてくれる。それでまた、ほわ、と胸の内があたたかくなって、いつの間にか彼の肩にきつく立ててしまっていた指を、解いた。
 その指を、おずおずと、一鷹へと伸ばす。でも、どこを触っていいのか、分からない。髪? 頬? 腕? 胸板?
 そんな遠慮がちな翠に、一鷹は目を細めた。
「ん」
 自分から、翠の両手のあいだに、顔を差し出した。するり、と彼女の手の平に唇をすべらせる。頬擦りする。指を甘噛みする。
 気位の高い肉食獣が甘えるかのようなしぐさだ、と翠は思った。自分だけに心をゆるしてくれている、と思わせるような、それは、愛情に満ちたしぐさで、
「一鷹……」
 翠は、彼の両頬を手で包んだ。愛おしさが溢れる。
 それに応えるように、蜜処に収められた一鷹の指が、ゆっくり動き始める。
「ん……」
 その緩慢で穏やかな動きは、翠を気遣ってなのだろうけれど、かえって男の指が自分の蜜道に抜き挿しされているのだという感覚を、じっくりと思い知らせた。
 ぴちゃ……、くちゅり……という、濡れ過ぎるほどに濡れた蜜の音をたっぷり聞かせられ、恥ずかしい。なのに、つま先から昇ってくるような甘やかな感覚が、翠の羞恥心を剥ぎ取っていって、
「ふ……、っう、あ……は……っ、一鷹ぁ……っ」
 我知らず、両脚がひらいていく。
「翠、おまえの中が、ほら……こんなに溢れさせて、熱くさせて……足りないだろう? ――増やすぞ」
「いやぁ……、あ、あ、あ……っ」
 指が二本に増やされた。まだきつい、けれどじんじんと熱く濡れそぼった蜜襞を押しひらかれる。彼は翠の中を、角度を変えて何度も探る。やがて、
「あ、ひ……っ」
 翠はつま先を痙攣させた。
「ここか」
 ほくそ笑む一鷹の声がする。彼は翠の最も悦い所を探り当てるや、
「達かせてやる……」
 ぞっとするような色香を漂わせて、囁いた。頭が真っ白になった翠には、彼がどんな顔をしているのか、もう分からなかった。
「ぁ、は……っ」
 翠は背をのけぞらせた。
 ぐちゅっ、と激しい水音とともに貫かれる。甘蜜にまみれながら彼の指先が、最奥を何度も穿った。彼は翠の一番悦い所だけを捉え、快楽を送り込んでくる。
「いや、いやぁ……一鷹、いちたかぁ……っだめ、すぐ、きちゃ……ぁ、ああ……っ」
 翠は、はしたなく両脚をひらいて彼を受け入れながら、何度も甘い声をあげた。
「だめぇ、奥……っもう突いちゃ、だめ、ぇ……っ」
「突いて、の間違いだろう? おまえのひくついている、奥を――」
「あ、っ!」
 甘く熟しきった最奥の媚肉に、二本指がぐりりと抉り込まされた。指を通して、男の低い声がじんと蜜底に伝った気さえした。
「ぁ……、あ、もう……っ、あ、あ……ッ」
 激しい波が襲ってくる。官能の海に、叩き落とされる。
 がくん! と翠は腰を跳ねさせた。大きく顎をのけぞらせ――、やがて弛緩する。

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