薄氷に囚われた令嬢は魔族執事に寵愛される

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薄氷に囚われた令嬢は魔族執事に寵愛される


著者:とびらの
イラスト:うにいくら
発売日:2023年 1月26日
定価:610円+税

絹商家グリフィール家のベルナデットは類稀な美貌の持ち主であった。
そんな彼女の美しさに王太子が婚約を申し込んだ夜、火災が起きてしまい――!?
次に目が覚めたとき、彼女は氷漬けにされていた状況と10年もの時が流れていたことを知る。
そんなベルナデットの前に見目麗しい男性が現れる。
時を経ても彼女には分かった。それが当時執事見習いだった、リュカの成長した姿だと――。
リュカから、10年前に家族も当時の屋敷や財産も全て失ってしまったことを伝えられるベルナデット。
孤独に打ちひしがれる彼女にリュカが寄り添う。
「あなたをずっと、お慕いしておりました」
リュカの腕に全身を包まれ、彼に身をゆだねるベルナデットは心も身体も蕩けさせられて――?

【人物紹介】

ベルナデット・グリフィール
絹商家グリフィール家の長子。
生真面目で優しく、純白の聖女と呼ばれるほどの美貌の持ち主。
ある日、魔法で氷漬けにされていた状態から目覚めると――?

リュカ
グリフィール家の元執事見習いで、今は館の主である。
魔族の末裔と言われる紫の眼を持つ。
独学で経営を立て直すほどの頭脳明晰な働き者。
10年前、火災からベルナデットを助けたい一心で魔力を発動させてしまい……!?

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【試し読み】

 ベッドの上で、裸で抱き合う。
 仰向けに寝転がったベルナデットに、覆いかぶさるようにして、リュカは肌を重ね合わせてきた。リュカの体温が、ゆっくりとこちらに侵食する。ベルナデットより少し高い温度と、太い骨と筋肉で硬い男の体。わずかに汗で湿った肌――自分とは違う肉体に、ベルナデットは改めて、羞恥を覚えた。
(……わたし達、これから、結ばれるのね)
 そんなことは、十年前――いや二十年前、リュカを拾った時には、想像もしていないことだった。
 ベルナデットにとって性交とは、父の決めた結婚相手とのみ行い、跡継ぎを作るためのものという認識だ。だが市井の知識が全くないわけではない。人は恋をし、その愛を確かめ合うために身体を重ねる。
 リュカの言う、愛しているという言葉を、ベルナデットはまだよくわかっていなかった。 だがわかりたいと思う。これから彼と共に生きていくために。
「……怖い、ですか?」
 耳のそばで、リュカが囁く。ベルナデットは首を振った。
「いいえ。ただ……少し、不思議な感じ」
 話しながら目を閉じて、リュカの口づけを受け入れる。彼がベルナデットの首を吸う、ちゅ、ちゅっという甘い音にくすぐったさを感じながら。
「……リュカと、こんなふうになるなんて。わたしの中で、リュカは自分より背の低い……まだ十四歳の子どもだったのに」
「今は、どう見えますか」
 そう言って、リュカは半身を起こした。日中、カーテンを閉めただけの室内は、彼の体を見て取るのに十分な明るさがある。
 第一印象が『中性的』であるリュカの体は、思いのほか逞しく、男性的だった。細身には違いないが、太い骨にしっかりと筋肉がついていて、所々浮き出た血管も、女性のベルナデットにはもちろん少年時代の彼にも無かったものである。
 そして顔立ちも、ビスクドールのように整った目鼻立ちはそのままに、鋭さのある、大人の男の面差し。しばらくぼんやりと見つめてから、ベルナデットは赤面した。手のひらで顔を隠しながら、素直な感想を呟く。
「か……格好いい、わ」
 ふさがった視界の向こうで、くすっと笑い声。
「ありがとう。ベルナデット様も……綺麗だ」
 甘く囁く声と共に、素肌に触れる、リュカの指。
「触っても、いい?」
 問いかけに、少しだけ逡巡してから、こくりと頷く。
 許可を得たリュカは、それでも遠慮がちだった。ベルナデットの膨らみに手を当てて、ゆっくりと……柔らかさを確かめるように、手を窄める。
 柔肉をほんの少しへこませるほど優しい圧で、乳房全体を愛撫していく。緊張でわずかに汗ばむ肌に、リュカの指がひたりと張り付く。
 リュカが小さく息を漏らした。
「……すごい。ベルナデット様の胸、丸くて大きくて……」
 下部から持ち上げるように、五指を立てて握る。
「……綺麗で、柔らかくて……揉んでいる僕の手が、気持ちいい……」
「そ、そんな、恥ずかしいことを言わないで」
 思わず赤面し、枕に顔を埋めた。だがそうしたことをすぐに後悔することになる。ベルナデットが目を離した隙に、リュカは口を大きく開けて、ふくらみの先端、淡く色づく突起を、ぱくりと加えたのだ。
「ひぁっ……!」
 敏感な箇所に、濡れたものが吸い付く感触。人生初の感覚に、ベルナデットは全身を跳ね上げた。リュカは構わず、左の乳首を唇で愛撫しながら、右の柔肉を手で堪能していた。
「あっ、あぃっ……んぅ、うっ、んんんっ」
 左右で違う性感に、思考が混線を起こしてしまう。ベルナデットは言葉にならない嬌声を上げながら身もだえした。
「乳首、気持ちいい?」
 そう聞かれても、答えようがない。くすぐったいような、少し痛いような、とにかく異様なこの感触を何と表現するのかがわからなくて、ベルナデットは答えられなかった。ただ彼に弄ばれるまま、もぞもぞと身じろぎを続けるしかできない。
 リュカはベルナデットの胸元を好き放題に弄びながら、空いた手で全身を撫でまわしていた。ベルナデットの細い腰や、滑らかな腿、膝の裏側にまで指を伸ばして、くすぐってくる。いやくすぐったいのはベルナデットが愛撫というものに不慣れなせいだろう。実際、こんなところを他人に触られるのは初めての経験だった。羞恥と照れと、なんだかわからない可笑しさで、笑ってしまいそうになる。
 しかし、やがてリュカの手が禁忌の箇所に触れた時、ベルナデットは全身を跳ね上げた。
「ふぁぅっ……!」
 びくんっと体をのけぞらせたせいで、リュカの手もそこから離れる。彼は微笑んだまま、自分の指をチラリと見た。
「……濡れてましたね」
「あっ……そ、それは、その」
 羞恥のあまり、また枕に顔を隠す。だがあっさりとリュカの手で掘り起こされてしまった。無理やり正面を向かせたベルナデットに、リュカはクスクス笑いながら、何度もキスを降らせる。
「隠さないで。嬉しいから」
「でも……は、恥ずかしい」
「大丈夫ですよ、僕も同じだから」
 何のことか、と問うより早く、リュカはベルナデットの手首をつかみ、そっと、自身の下腹部へと導いた。指先に熱いものが触れる。なんだろう、と視線をやって、ベルナデットは驚愕した。
「うわあっ……」
 思わず、悲鳴じみた声が出る。
 嫁入り前の乙女の教養として、最低限の性知識はベルナデットも持っていた。だがここにあるものは、ベルナデットの想定をはるかに超えて、大きく太く、凶悪な雄々しさでそそり立っていた。先端の赤い丸みに指が触れると、先ほどのベルナデットと同様に、びくんと跳ねる。ベルナデットははしたないとは自覚しつつも、そこから目が離せないでいた。ごくりと唾を飲み、ついまじまじと、見つめてしまう。
(し、信じられない。男の人って、こんなふうになるの……それともリュカのがトクベツに大きい?)
 答えの出ないことをぐるぐると考えてしまう。だが確実なのは、その屹立が、リュカの興奮によるものだということ。
 リュカも高揚しているのだ。ベルナデットの体と、これから繋がるということに……。
「こ、こんな大きなものが……わたしの中に入るの……?」
 またごくりと息を呑む。すると、リュカはベルナデットの額に、ちゅっと可愛らしいキスをした。
「うん……でも、大丈夫。もっとしっかり濡らして、指で慣らして……なるべく痛くないようにするから」
 そう言って、リュカは自身の指を口に含んだ。
 唾液でたっぷり濡らしてから、再びベルナデットの下肢へと伝わせる。割れ目の先端、小さく尖った花芯に、濡れた指がそうっと触れた。そのままゆっくり撫で回されると、抗いようのない快感が脳天まで突き抜けた。びくんと腰を跳ねさせ、ベルナデットは今度こそ、甘い悲鳴を上げた。
「や、あ……」
「可愛い声が出ましたね。ここ、きもちいい?」
「そ、そんなことっ……いっ、あああっ」
 反論の言葉は、己の嬌声に呑みこまれてしまう。もしかして本当に、自分は感じているのだろうか。かつてないこの異様な感覚が、気持ちいいと言うことなのだろうか。何もかもが初めてでわからない。知らない。深窓の令嬢として育てられたベルナデットは、あまりにも無知だった。
「……すごい濡れてる。中も、そろそろいいかな」
「ひっ!」
 ぬぷっと身体の中に何かが入り込んでくる。異物感に身体がこわばるが、同時になだめるかのように花芯を押しつぶされ、違和感が快感に塗り替えられる。
「うわ、狭っ。それにすごく熱い……」
「い……や、ああっ……抜い……てっ……」
「どうして? ベルナデット様のここはきゅうきゅう締め付けて、抜かないでって言ってるみたいですよ。ほら僕の指、もう根元まで入っちゃった」
 ぬちぬちといやらしい水音と共に抜き差しされ、ベルナデットは腰を揺らす。
 思っていたよりも痛みはなかった。だが体内に他人の指が入り込んでいるという異様な体験に、ベルナデットは眩暈がした。
 一本だけだった指が二本に増え、蜜壺の中をかき回しはじめる。奥まった部分をぐりぐりと抉られると、未知の感覚で体中の血が逆流したような錯覚に襲われた。
「だめ、そこっ」
「ここがいいんだ」
「ひぅうっ!!」
 吐息で笑ったリュカが、その部分を執拗に攻め立てる。
 本能的に逃げようと腰が跳ねるが、リュカによって押さえ付けられ逆に甘えるみたいに上下するだけになってしまった。
「や、あああっ」
 助けて欲しくてリュカに向かって手を伸ばした。
 一瞬、驚いたように丸くなった青い瞳は嬉しそうに細くなる。
 おねだりに応えて上体を倒してくれたリュカの首にベルナデットは必死にすがりついた。
「かわいい、ベルナデット様」
 耳朶をべろりと舐められ、甘ったるい喘ぎがこぼれる。
 その間もリュカの指は蜜壺をかき回し、ベルナデットの官能をどんどんかき立てていく。
 抜き差しにあわせ花芯を押しつぶされると目の奥で火花が飛んだような衝撃が身体を貫いた。
「んぅ……っは! あぁっ」
 全身から汗が噴き出し、身体がみっともなく痙攣する。リュカは歓声を上げた。
「ふふっ。ベルナデット様、とうとうイッちゃいましたね」
「……? イく……?」
「絶頂、というやつです。女性が最高の悦びに達したのを表す、射精のようなものですよ」
 言い聞かされて、ベルナデットは朦朧としながら理解した。知識としては知っているが、これが絶頂というものか……。
 知ると同時に、ベルナデットは戦慄した。
(――絶頂? 悦び?)
 言葉としての知識はあったが、生まれて初めての感覚に戸惑うばかり。疑問符で頭が一杯になったベルナデットに、リュカはあくまで優しかった。ベルナデットを安心させるように髪を撫で、キスをして、また指先を滑らせる。唇を耳のそばに寄せて、
「……僕のこれを、ベルナデット様の中に、入れたい……」
 甘く掠れた声で囁いた。
「ゆっくり……馴染ませながらするから。……お願い」
 子猫が甘えるように頬を擦り寄せるリュカ。ベルナデットが返事をする前に、その屹立を手で握り、亀頭をベルナデットの太腿にぐりぐりと押し付けている。一刻も早く、ベルナデットの体内に入り、思い切り擦りたいとねだっている。ベルナデットは三度、生唾をごくりと飲み下した。
「は……はい。いい、よ……」
 うなずく言葉は、やはりまともに話せてはいなかったが。
 リュカの表情が蕩けた。やっと主の許可を得て、執事の少年だったその男は、ベルナデットの膝を開かせる。そこへ己の体を割り入れて、そのまま一気に押し込んできた。
 直後、チリッとひりつくような小さな痛み。続けてやってきたのはドンという衝撃。一瞬、腹を殴られたかと思った。それで間違いでもない。だがベルナデットを穿ったのは武器でも拳でもなく、固く強張った男の肉茎だったのだ。
「あ――おおぅっ……!」
 臓器を体内から打たれて、人生で漏らしたことのない声を上げてしまう。すると、リュカはすぐに腰を引き、膣内からペニスを抜き取った。ずるる……っと現れた肉の棒は、さっきよりもさらに肥大化していた。大きい。自分はこれで貫かれたのかと、改めて戦慄するほどに。
「……大丈夫、ですか? 痛かった……?」
 心配そうに顔を覗き込んでくるリュカ。
 一度だけ往復で擦られた入り口が、チリチリとひりついていた。まさか裂けたのではと疑ったが、それは免れたらしい。ただ初めての体験に、ベルナデットの心と同様、この場所もびっくりしただけだった。
 むしろ自分よりも、リュカのほうが気になった。端正な顔が、苦しそうに歪んでいたから。
「リュカも、痛い? 苦しいの?」
 尋ねてみると、彼は少し驚いた表情をしてから、首を振った。気恥ずかしそうに微笑んで、
「……いや……気持ちいいんだ。ベルナデット様のここ、僕のをきゅうって締め付けて、吸い付いてくるから」
 恥ずかしいことを言われても、嫌悪感など湧かなかった。
「ごめんなさい。なるべく痛みを与えないよう、気を付けた……けど……どうしようもなくて」
 その詫びは、自身の陰茎が大きくなりすぎたことだろうか。あるいは深いところまで貫いたことだろうか。
 いずれにせよ、詫びる必要は無い。むしろ嬉しい。リュカがベルナデットの体で気持ちよくなってくれている。リュカがベルナデットで感じてくれている事が、嬉しかった。
「……うれ、しい、リュカ」
 彼の背中に手を回す。自ら抱き寄せて、ベルナデットは目を閉じた。
「いいよ……あなたの好きなように。気持ちいいように、動いて……」
 優しく心配性の元執事を安心させてあげるために。
「……わたしは、大丈夫。続けて……」
「ベルナデット様……」
 ベルナデットの名を呼ぶリュカの声も震えていた。前身を倒し、ベルナデットの体に肌を重ねると、もう一度己の屹立を秘所へとあてがう。そしてゆっくりと、再度の侵入を始めた。
 ゆっくり、ゆっくり……内臓を穿つ肉の蛇。
「う……ぁくうっ……」
 下半身に埋まっている熱が、奥へぐっと進んできて、ベルナデットの口から言葉を押し出そうとする。自然と言葉は口から洩れた。
「……リュカっ……好、き」
 自分の言ったことに驚き、息を呑む。
 ベルナデット自身、本当に口にしたのか疑うほど小さく、短い呟きだった。しかしその言葉を言い放った瞬間、リュカの目元が柔らかく綻ぶ。褒めるようにベルナデットの額に口付けをして、
「僕も。あなたが大好きです」
 そうして今度こそ、本格的に律動が始まった。
「あっ――!」

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