呪いを宿した王女は幼馴染の王宮魔術師に獣のような盲愛を刻まれる

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呪いを宿した王女は幼馴染の王宮魔術師に獣のような盲愛を刻まれる

著者:日辻鳴子
イラスト:もちあんこ
発売日:2024年 6月21日
定価:610円+税

十八歳の誕生日を繰り返している、王女のルシア。
呪いとも言えるこのループを断ち切るため、彼女は魔術師の力を借りることに。
協力してくれるのは、ルシアの幼馴染の王宮魔術師・フィン。彼はルシアの初恋相手だった。
献身的な彼に対し、ルシアは「私の呪いが解けるまで共に寝起きして、呪いの解明に専念してもらう」という命令を下す。
政略結婚を強いる父の目を嘘で欺き、彼女はフィンとともに呪いの根源を探る日々を過ごすも、解明の糸口は掴めないままだった。
そんな時父への嘘がバレ、ルシアが政略結婚を受け入れようとした時、フィンが嫉妬を剥き出しに迫ってきて……!?
「壊れるほど貴女を愛しても、どうか俺を捨てないでくださいね」
魔術師である彼と結ばれる未来はないのだという切なさを抱きながらも、獰猛な獣のようなフィンの愛に溺れるルシア。
ところが、彼女に宿る呪いの原因は思いもよらぬ形で見つかって――!?

【人物紹介】

ルシア・ヘルハートン
十八歳の誕生日を繰り返す、リピルト国の王女。
天真爛漫で無垢な性格だったが、ループを繰り返しどこか達観している。
フィンとは幼馴染で、彼が初恋相手。

フィン・イティア
ルシアの幼馴染の王宮魔術師。
お人よしで責任感が強く、困っている人を放っておけない性格。
ルシアの四度目のループで、呪いの原因を探るために彼女に協力することに。

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【試し読み】

「今回は誰との婚姻を進めるのかしらね。まあ、誰であろうと呪いに関する研究は続けさせてもらうつもりよ」
 三度も時間が巻き戻ったことを他の誰かに言うつもりはない。
 フィンが信じてくれたことだって、本心はどうかわからないもの。
 知らない誰かと結婚したくない王女のわがまま。そう思われたところで否定はできない。
「そうだわ、あの天才魔術師の彼なら……」
 三度目の夫となった彼も興味を引かれたのか、呪いについて献身的に調べてくれた。
 今回も彼と婚姻を結び、彼の魔術研究の支援を行う代わりにフィンとの交流だけでも許してもらえないだろうか。
 みっともなくまだフィンと繋がっていられる可能性を見出していれば、彼の手から本が滑り落ちる。
 ドサッ、と大きめの音がなって、しんと部屋が静まり返った。
「その男に、今度は貴女のお体を晒すのですか?」
「……フィン?」
 小さな声に、首を傾げる。
 まるで独り言のような彼の言葉が聞きたくて近寄れば、うつむいた彼の表情が目に入る。
 後悔、自嘲、未練、鬱憤。思い詰め、追い込まれた者が浮かべるその表情に思わず息を呑んでたじろいだ。
「白く美しい素肌を、柔らかくしなやかな肢体を、恥じらいで赤らめた頬を、俺以外に見せるというのですか……?」
「フィン、あなた、何を言って……」
「嫌だ……俺は、そんなの……っ」
 近付いてくる彼の手を認識した時にはもう遅かった。
 掴まれた肩に痛みが走ったのは一瞬で、すぐに背中を柔らかな衝撃が襲う。
 ベッドに押し倒されたのだと理解したのは、フィンが私に馬乗りになって見下ろしているのに気づいてからだ。
「フィン……痛いわ、何をするの?」
 何をされているのかは理解できる。私が知りたいのは彼がこうした『理由』だ。
 痛がる私に一瞬ハッとした表情を浮かべたフィンだったが、切羽詰まったように謝りながらも彼の手は私の肩を離さない。
「申し訳ありません、ルシア様……ですが、俺は、貴女を他の誰にも渡したくはない……!」
「そう……でも、残念だけど、私も私のものではないのよ。王女として生きているからには、果たすべき役目があるわ」
「っ……」
 彼の手が、表情が、躊躇いに染まる。
 ここで引くほどの想いなら見逃すことも考えたが、私は嬉しかったのだ。
 フィンが私を求めてくれたことが、手放したくないと思ってくれたことが、嬉しくてたまらなかった。
「だから、その立場すら奪う覚悟があるというのなら……嘘を本当にしましょうか」
「え……?」
 沈んだ彼の瞳に光が戻る。緩んだ彼の手を自ら薄い腹部へと導く。
 熱くなったフィンの手の体温が伝わって心地よい感覚に微笑みながら、泣きそうな顔で頬を真っ赤に染める彼を見上げた。
「ここにフィンの子種を注いで本当に妊娠してしまえば、王女としての婚姻も、王族としての立場もなくなるわ。それでもあなたは私を愛せるかしら?」
 月経時に王族の血を隠すために使われる血清魔法薬を飲んでいるとはいえ、月経は始まったばかりで妊娠の可能性は限りなく低い。
 奇跡的に妊娠したところで、猶予が一年延びるだけだろう。フィンとも赤子とも切り離され、国外に嫁がされるだけかもしれない。
 これは言わば思い出作りだ。初めてはフィンがいい。そうすればきっと、もうどんな人生でも歩んでいける。
 何度も空虚な人生を繰り返したとしても、このいっときに捧げられた愛情が私を支えてくれるだろう。
 王女でも、王族でも関係ない、『ルシア』を見てくれたフィンだから。
 私の心と体を彼に投げ渡すことに躊躇いはない。
 けれどフィンにとってはバレたら処罰どころでは済まない話だ。
 きっと私に触れる全ての相手に嫉妬して、私の全てを独占したくて、一瞬たりとも奪われたくはないだろう。いや、それだけではまだ足りないかもしれない。
「お、れは……」
 フィンがゆっくりと震える口を開く。その目に迷いは見えない。
「ルシア様を見るのも、触れるのも……俺だけがいい。俺だけに愛されてください、ルシア様」
 縋るように、懇願するように、可愛いおねだりが今は胸が締めつけられるほどかっこよく見える。
 愛しい気持ちに満たされながらフィンの唇を奪う。驚いた彼が薄く開いた口の隙間をぺろりと舐めれば、ハッと甘い吐息が溢れた。
「ルシア、様……っ」
「ん、ぅ、嬉しいわ、フィン……フィン、ぁ……っ」
「可愛い人……愛しています、誰よりもっ」
 貪るようなキスに二人で溺れて沈んでいく。
 三度の婚姻で三人の夫と誓いの口付けをしたくらいで、こんなにも情熱的な口付けは初めてだ。
 荒れ一つなく見目よく整えられた男性たちと違って、フィンの少しカサついた唇がキスで濡れて潤っていくのを感じる方が達成感と幸福感に満たされる。
 嬉しくて浮かべた表情が彼の目には余裕ありげに映ったのだろう。
 かぷりと下唇を甘噛みされて、目を瞬かせた。
「ふぃん?」
「今……誰と比べたのですか? 俺が、下手だからですか?」
「違うわ、そうじゃなくて……」
「当然ですよね、ルシア様のお体はこんなにも無垢で綺麗なのに、もう俺以外の男を知っているんですから。でも、もう二度と思い出させないように……俺が、頑張りますね」
 ぢゅっと強く唇を吸われて怯んだ隙に、彼の手が頬や首筋を撫で、ドレスの上から拙い手つきで胸を揉みしだく。
 やわやわと形が変えられる乳房を目にしてカァッと顔が赤くなった。
「っあ、んんっ、フィン……っ」
「俺の手で全部塗り替えて、俺だけのルシア様になってくださいね」
 彼の逆鱗はどうやら前の夫関連らしい。咄嗟に彼らとは白い結婚だったことを伝えようとして、胸の頂きを布越しに捏ねられて意識がそれる。
 まるで猫が爪を立てるような愛撫に痛みよりも愛しさが込み上げてくる。
 国王が用意した血統書付きの高貴な猫より、私だけに懐いた野良猫を可愛く思いながら未熟でたどたどしい愛撫を受け入れる。
 ドレスを脱がせるのに苦戦していれば腰を浮かせ、露わになる肌に彼の目がますます劣情を孕む。
 もたつく彼の手を私の柔らかな場所へと導き、性感帯を教えながら快感を拾うまでの手引きをする。
 戸惑いながらも真剣に応えてくれるフィンの肌に汗が滲み、堅苦しい魔術着に不釣り合いの硬く盛り上がって色を変えた部分が可愛くてたまらない。
 わざとそこに当たるように体を動かす私に気付いたのだろう。眉を寄せ、恨めしそうに私を見つめるフィンの息は荒く、まるで興奮した獣のようだ。
「ルシア様……お戯れが過ぎます」
「だって窮屈そうにしているから、可哀想で」
 ご馳走を目の前に差し出されていても、この獣が待てという命令を無視して獲物に食らいつくことはないだろう。
 信頼と安心に高を括って微笑んで見せる私に、賢い獣は唸り声をあげる。ただそれだけだと思っていたのに。
「ひぁっ!?」
 ぴちゃりと首筋を舐められ、肌を伝うように舌先は胸元まで下りていく。
 捕食するように、吟味するように、ゆっくりと飢えた獣が舌舐めずりをする。
「何を驚かれているのですか。煽ったのはルシア様ですよ」
「んっ、ぁ、はぁ……っフィン」
「ずっと……ずっと、貴女が欲しくてたまらなかった俺に、あまり刺激の強いことをなさらないでください」
 そう言いながら私の乳房に顔を埋めるフィンの髪をくしゃりと撫で回す。
「ひゃ、ぁっ、……っくぅ……っん!」
「ふ、可愛い……っ」
 それを静止と受け取ったのか、それとも催促と受け取ったのか、ピンと勃ち上がった頂きを甘噛みされて子犬のように鳴いたのは私の方だ。
 優しく舐めて、強く吸いついて、口に含んでコロコロと転がされる。
 甘い痺れにベッドの上で悶えることしかできない。
「ああ、こんなにも赤く色づいて……どこもかしこも、本当に愛らしい」
「んっ、ぁ、フィンだって……一心に舐めしゃぶる姿は、可愛らしい赤子のようよ」
「っ……これから貴女を抱く男に赤子のようだと言わないでください」
 少し拗ねた声に余裕なんてものはなく、あるのは焦燥と懸想だけ。
 その瞳には私しか映らず、私だけに従い、私のために尽くす。フィンはそういう男だ。
 だからこそ、全てを忘れて溺れていたかった。甘い蜜を啜っていたかった。
「あっ、んぅ……っそう、ね、ここはこんなに立派なんだもの。ふふ……とても、赤子には思えないわね」
「っ、ルシア様……!」
「ほら、だったら次にすべきことがわかるでしょう?」
 拙い愛撫だけではもうこの気持ちは収まらない。ねだるように腰をくねらせる私を見て、さらに昂る逸物に微笑む。
 ごくりと、焦れた獣が喉を鳴らした。
「ん、ぁっ……ほら、これを挿れるにはどうすればいいか……わかるわね、フィン?」
「は、い……ルシア様」
 ゆっくりと、傅くようにフィンの頭が下りていく。
 白く柔らかな太ももに添えられた彼の手は緊張と興奮でしっとりと熱が篭っている。
 今から誰にも見せたことのない体の内側を見られると思うと、足を固く閉ざしてしまいたい気持ちに駆られるが、一瞬でも抵抗してしまうとフィンはきっと手を引いてしまうだろう。
 謝罪し、後悔し、私の前から姿をくらましてしまう。そこまで想像ができて、足に力を入れてしまわないように羞恥心から目をそらす。
 ああ、見られている。蜜で潤うその場所に、フィンの吐息が触れている。
 それだけでひくりと膣が収縮するのを感じた。
「もうこんなにも濡れて……俺で、感じてくださったのですね」
「や、ぁ……っ言わないで」
「言います、言わせてください。だってあまりにも、嬉しいのですから」
 はぁ……っ、と抑えきれない彼の興奮が息を荒げる。
 蒸れて熟れた匂いを吸い込み、甘い蜜が膣から零れ落ちるまで待てないというように舌が赤い果実に引き寄せられる。
 一度始めてしまえば満足するまで終わらない。ひだを丹念に舐めまわし、硬くなった秘豆を剥き、まるで美味しいものでも食べているかのように涎と蜜が溢れていく。
 とろとろになった膣が潮を吹き、熟れてじゅくじゅくになってもまだ行為は終わらなくて、こんな快感が子づくりに含まれるだなんて、人類は繁栄するわけだと何度も意識が遠のきながらそんなことを考える。
「ぁ、ぁ、っあ、んんぅ……っ、っ、ぁ」
 びくりと腰が跳ねる。思考さえも蕩けて、視界に星が瞬く。
 達した、のに。まだ終わらない。また快感に落ちていく。
 唇や下顎をしとどに濡らしたフィンがようやく顔を上げるまでどれほど果てたのかもわからない。
 くたりとベッドに沈んだ私を見下ろすフィンの目には未だに欲が渦巻いている。
「ルシア様……もう……っ」
「っ、ぁ……フィ、ン……」
 硬くいきり立ったものが濡れそぼった秘部に触れる。
 そのまま彼が腰を進めてしまえば、柔らかに解されたそこは難なく彼の昂りを迎え入れるだろう。
 初めてだ。四度も人生を繰り返して、誰かと繋がるのは今この瞬間が初めてなのだ。
 ドクドクと頭に響くほどうるさく鼓動する心臓の音を聴きながら、まだ微かに躊躇いを残すフィンの顔を両手で包んで抱き寄せる。
 そっと触れ合わせた唇は甘く切なくて、他の誰かと交わした誓いのキスは全て建前で、今この時こそ愛を誓うには相応しい口付けだと思わずにはいられなかった。
「きて、フィン……私を、あなただけのルシアにして」
「っああ、ルシア様……!」
「あっ、ぅ、んああ……っ!」
 ズンっ、と固い岩でも押し当てられたような違和感に身を捩れば、ぐぐっと体重をかけて動きを抑えられる。
 その間にも狭い筒をこじ開けるようにフィンの肉棒がナカを拓き、重い質量で埋め尽くされていく。
 快感よりも痛みと異物感を拾ってばかりで、知らずと私の目からは涙が溢れていたのだろう。
 優しく目尻にキスを落とすフィンの方こそ辛そうな表情を浮かべていて、必死で胸の内の激情を抑え込もうとしているようだった。
「大丈夫、ですか……? 慣れるまで、しばらく、このままで……」
 狭い膣の中でじっとしているのはそれこそ苦痛だろうに、私の様子を窺って、私の気持ちを優先して、なんて健気な男なのだろうか。
 いくら煽ってもフィンは結局私の臣下でしかないのだと、そう結論付けてしまいそうな思考を止める。
 不安や不満を振り払うように故意にナカを締めつけた。
「っ、ぐぅ……ッ」
「ん……っ、ぁ、私の中で、動かずに待てるなんて、随分余裕なのね、フィン?」
「ちがっ、俺は、ルシア様を想って……っ」
「あ、ぅん……っ、私の為と、言うのなら……もっとがむしゃらに求められた方が、嬉しいわ」
「っ……ルシア、様」
「おねがい、フィン。他の誰とも比べられないように激しく、溺れるような愛じゃないと、もう足りないの……っ」
 煽るように耳元で囁けばフィンが小さく息を呑む。
 他の誰かと行為に及んだことなどないのに、生半可な彼の覚悟を責め立てる。
 彼の瞳に嫉妬の炎が宿るのを心地よい満足感と共に見つめていた。
「っはぁ……いいのですね、ルシア様」
 ギシリと、ベッドが軋む。部屋は防音されているとはいえ、人が来れば終わる行為だ。
 だからこそ、早く彼の子種を中に注いでほしかった。

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