かりそめの寵姫は軍人王の執拗な情欲に娶られて
著者:江原里奈
イラスト:森原八鹿
発売日:2024年 6月21日
定価:630円+税
五年間、異母姉の身代わりに残虐王の後宮へ送られ、官女の一人として下働きを続けていたレイラ。
そんなある日、反乱が起き、後宮に武装した兵士たちが乗り込んできて――?
恐怖に駆られたレイラは逃げ出すのだが、首謀者である麗しい青年・セリムに見つかってしまい……!?
新たなスルタンとなったセリムに、レイラは娶られることに……。
寝室に連れられたレイラだったが、セリムは彼女が偽物の寵姫であることをなぜか知っていて――?
「これから、お前は俺のものになるのだ」
セリムの甘く執拗な愛撫にレイラの身体は蕩けさせられていく――。
自身を庇護してくれるセリムに、彼女は次第に深い安らぎを感じてしまい……?
【人物紹介】
レイラ
北部シャキア州の首長の娘。
異母姉の身代わりに後宮へ送られたものの官女の一人として下働きをしていた。
新しいスルタン・セリムの花嫁となったのだが――?
セリム=シャハード・イブライム
元陸軍司令官のスルタン。
反乱を起こして王位を簒奪し、レイラを花嫁に迎える。
なぜかレイラが偽物の寵姫であることを知っているようで――?
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【試し読み】
平静を装って尋ねると、セリムは艶やかな笑みを浮かべる。
「お前は三つの罪を犯した」
『罪』と聞き、レイラは思わず戦慄した。
すべてを見透かすような黒い双眸に見つめられて、じわりと手に汗が滲んでくる。
「一つ目は、明白だな。混乱に乗じて、誰にも許しを得ずに後宮から脱走しようとした罪。そして、二つ目は身分を偽って入宮した罪」
「……!」
セリムは知っていたのだ――彼女が、ナディアの身代わりだということを。
これまで五年も隠してきた嘘が露呈してしまい、レイラの頭の中は混乱してくる。
「司令官の諜報網を甘くみてもらっては困る……お前は、シャキアのシークの嫡女ナディアとして入宮したはず。だが、シャキアに忍ばせた間諜からは、ナディアらしき娘と隣のシークの息子との縁談が進んでいる、という話があるではないか」
それを聞いて、レイラの顔色は更に蒼褪めていった。
ナディアは、今年で二十二歳になるはず。シークの宮殿の奥の女部屋に身を潜めているとしても、結婚の話が出ないわけがない。まさか、庶子として嫁ぐつもりなのだろうか?
あの傲慢な異母姉の性格からして、踊り子の娘であるレイラの名前と身分で嫁ぐというのは不満で仕方がないだろう。残虐王アハメドが弑逆され、セリムのように若く美しい国王が誕生したことを知り、自分が王都に輿入れすればよかった、と言い出しかねない。
いずれにしても、ここでするべきは生殺与奪の権利を持つスルタンに、レイラ自身が被害者だと主張することだろう。すでにナディアの状況を調べているということは、ここで否定しても何の意味もないからだ。
「……お許しください、陛下。わたくしは、シークの愛人の娘……継母の娘とそっくりだから、身代わりに輿入れをさせられたのです!」
「残虐王の噂を聞いて、嫡女を輿入れさせようとする両親はいないからな……」
なぜか薄暗い表情を浮かべて、セリムはゆっくりと頷いた。
ひとまず、彼女の弁明は一定の効果はあったようだ。
「素直に認める姿勢は誉めてやろう。お前の名は、レイラ……だな?」
それは、この五年間、誰からも呼ばれなかった名前――。
レイラの自我は偽りの名に上書きされていたのに、セリムが本当の名前を呼んだ途端にいとも鮮やかに彩りを取り戻す。ずっと凍えていた心と体に、ほのかなぬくもりが沁みてくるような不思議な感覚があった。
いずれにせよ、本当の名を調べられているなら肯定するより他に方法はない。レイラは黙ったままで、彼の質問に頷いていた。
「そうか。やはり……」
呻くような声で、セリムは呟く。
「……国王陛下、三つめのわたくしの罪はいったい何なのでしょう……?」
レイラは単純な好奇心と話題を変えねばならない必要性から、自分の目の前にいる男にそう尋ねた。
もう、これ以上恐れることは何もない。この五年間、隠してきたことはすべて暴かれてしまった。自分で偽ったわけではないのでスパイの容疑が晴れただろう……しかし、だからといって無罪にはなりようがない。
一瞬だけでも晴れやかな席で、若きスルタンの王妃と呼ばれたことに誇りを持ち、その後の沙汰を待つしかない。これまで生きてきて犯した罪を清算すべき時がやってきた。そう思えば、おとなしく運命に従うしかあるまい。
ところが、スルタンの口からはレイラを糾弾する言葉は出てこなかった。
「……三つ目の罪は、今は問わないことにしよう。いずれ、解消されるかもしれない。その前に、一つ目の罪と二つ目の罪の報いは受けてもらうが、な」
そう言い終わるや否や、彼はレイラの腰を抱き寄せ、彼女の唇を奪ってきた。
「んっ……」
くぐもった声が、レイラの口の端から漏れ出る。
歯列を割られ、舌を引き出され強欲に吸われる。唇と舌、そして口腔内――そのすべてをセリムは求めてくる。口の端から流れ出る唾液は混ざり合って、もうどちらのものなのかわからなくなってから、ようやくレイラは解放された。
それは、これまで知らなかった感覚……さっき、名を呼ばれた時よりも強く、彼女の本能を揺さぶってきた。
「これから、お前は俺のものになるのだ」
朦朧とする意識の中、耳元に響いてきたのは低い囁き。
「これまでに、犯した二つの罪を贖うために……どんな女よりも俺だけを求め、そして、愛さねばならない」
その確信に満ちた言葉は、王命だった。それに従わないことは、すなわち死を意味している。
(もう、他に道は残されていないのよ……)
レイラは、覚悟を決めるしかなかった。セリムのような美しい男の所有物になるという罰は、無垢な彼女が想像しただけでも羞恥を覚えるもの。
しかし、そこから滲む密やかで淫靡な香りに囚われたのか、レイラは言葉の上だけでも拒絶することができない。
「わ……わかりました。陛下のお望みのままに……」
そう答えたレイラの震える唇に、再びセリムの熱烈な接吻が与えられた。
――香炉から漂う花の香りと、薄絹のレース越しに寝台に入ってくるほのかな燭台の灯り。そして、初めて性的な意味合いで触れられる肉体の感覚。
そのすべてが、レイラにとってはあまりにも刺激的だった。
残虐王のようにひどい扱いをしてくるかとビクビクしていたものの、セリムは思いのほか優しく彼女に触れてきた。
しかし、それはレイラの羞恥心を掻き立てるばかりである。
「ふぅ……、んっ……」
彼の唇で首筋を辿られ、喘ぎが漏れた。
白くほっそりした肢体に似つかわしくないほどに豊かな胸を、薄絹の下着の上からそろりと撫でられると、もどかしいような甘い煩悶が全身を包み込む。
「あぁ……だめっ……」
ぷくりと隆起した先端を捏ねるようにいじられ、レイラは首を横に振った。
初めて知る官能的な疼きは、彼女にとってたえがたいもの。
継母たちに虐められたり下女としてあくせく働いたりすることには辛抱強く堪え忍んだレイラも、この春の嵐の前触れのような甘い苦悩には弱かった。
感じてしまうのが、とにかく恐ろしい。
「……いや……そんな風に、触らないでください……っ」
慣れない感触に泣きそうになるレイラに、セリムは低い声で囁いた。
「ほう……俺の花嫁は、ずいぶんとかたくなに愛撫を拒むのだな」
そのままやめてくれるかと思いきや、彼は予想できない行動をとってきた。胸をまさぐっていた手を、するりと下着の裾に入れてきたのである。
「きゃ、ん……っ!」
あまりに唐突な攻撃に、レイラは悲鳴じみた声をあげる。
太腿の辺りをまさぐられるだけで、くすぐったさばかりではない奇妙な感覚が湧き起こる。どんどん浮き立っていく肉体に、彼女は戸惑っていた。
「お前は嘘つきだ」
そう言いながら、セリムは酷薄な笑みを浮かべる。
「きゃっ……!」
透けそうなほど薄い布でできた下穿きを上からなぞられると、レイラはその違和感に打ち震えた。
「こんなに、女の部分を濡らしているじゃないか」
「あぁ……っ」
指摘されて、レイラは狼狽してしまう。
先ほど、官女の手によって微かに生えていた下肢の毛を剃られてしまった。
外部からの刺激を防御するものがない敏感な部位の皮膚は、彼の指先でまさぐられるだけで異様な昂ぶりを生じさせていた。
「直接、俺が確認してやろう。お前の嘘つき度合いを」
そう脅されると、あまりの恐ろしさに抵抗することすら忘れてしまう。
後宮に入ると、最低限の閨の知識は官女長に教わることになっている。ただ、あくまでそれは大雑把なことだけ。何をされてもスルタンに歯向かわず、おとなしく従うこと……それが一番大事なことだ、と告げられた。
結局、アハメドの寝室に呼ばれなかったレイラは、それ以上の話も聞かず無垢なままでこの五年間過ごしてきた。
未知の経験をしている寵姫は時折艶っぽい話をしてくるが、レイラは猥談の類が始まると居たたまれない気分になった。
以前は淫猥だと忌避していたことが、自分の身に起きようとしている――それは、嫌悪感というよりある種の恐怖だ。
ナディアの身代わりとしてここにいるとしても、男に愛でられることでこれ以上自分が変わってしまうことが、ただひたすら怖い。
布から触れるだけでは足りなくなったのか、セリムは彼女の下穿きに手をかけた。
「セリム様……、な、何を……っ!?」
「そんなに緊張するな。俺は、お前を取って食おうとしているわけではない」
宥めるように言われても、下穿きの横の紐をほどかれると、レイラは顔を手で隠してしまう。
自分でも、ふしだらに下肢の秘花を濡らしていることを知っているから、恥ずかしくなったのだ。
「あぁ……」
絶望的な声を漏らすが、辱めがそれで終わるはずがない。
確認するように触れてくるセリムの指――レイラが服の上から愛撫されて感じたことを、彼に知られてしまった。
「官女長は、お前は男を知らないと言っていた。処女がこんなに溢れさせるものなのか?」
訝し気に問い質す声に、思わず震え上がる。
「は、はい……スルタンの寝室に召されるのは、これが初めてですから」
「ふぅん? それも確かめてみなければ、な」
何をして、確かめるのだろう……そう疑問に思う間もなく、両足を大きく開けさせられる。
そして、露わになったピンク色の花弁を左右に割る。
「……ん、は、あぁ……な、何を……!?」
ぬめった感触に顔を覆っていた手を除けると、あろうことかセリムは彼女の秘花に顔を寄せた。
舌先で味わうように蜜を啜ってくる。粘膜に唇が触れ、舌先が膣孔を嘗め回すと、レイラの肉体に淫らな煩悶が起きた。
「……あぁ、あ……ん……っ」
恥ずかしくて堪らないのに、込み上げてくる快感には抗えない。
拒絶するどころか、もっとしてほしい……深く抉ってほしいと望んでしまうのは、女としての本能的な希求だろうか。
「はぁ……っ、ふぅん、んっ……」
悩ましい吐息は、まるで自分のものではないように甘ったるい。
大広間の騒めきもここまでは聞こえてこない。静かな部屋の中には、ただ彼女の喘ぎと舌でまさぐられる湿った音しかない。
部屋に漂う甘い香りは、さっきよりも一層悩ましさを増したように思えた。
いつの間にか指先で花襞の内側をいじられていたが、違和感はなかった。むしろ、舌先で触れられるより奥をいじられて、もたらされる快感に知らぬ間に腰がうねってしまう。
「あぁ……っ、ん、ん……っ」
「やっぱり嘘つきだな。お前は感じているはずだ」
体を起こしたセリムは口で彼女の下着の肩紐をずらし、露出した白く豊満な胸の先端に舌先を這わせてきた。
反応を窺うような上目遣いの目線が、やけに艶めかしく感じてしまう。
「……ひ、ぁん……っ!」
淡い紅色の花弁のような部分が舐められた瞬間、小さな凝りになった。
官能を直接的に伝えてくる突起を唇や歯で愛でられ、それと同時に下肢の蜜壺をいじられている。
二つの性感帯からもたらされる悦楽は果てしなく、レイラはただ体中に溢れる甘い苦悩を寝台のシーツを掴みながら堪え続ける。
ひとしきり彼女を乱した後で、セリムはようやく彼女をもてあそぶのを止めた。
「一つだけ……官女長が言う通り、お前が無垢だということは間違いないようだ」
にやりと笑うと、寝台の横のチェストから青磁の小さな壺を取り出す。
その中身は、とろりとした粘度のある液体。たっぷりと指先に取り、セリムはレイラの秘裂へと塗りつけた。
「ひゃ……」
冷たい感触は、なぜかすぐに熱っぽい疼きを与えてくる。
レイラの戸惑いはそれだけでは終わらない。セリムが濡れた花園の中に指先を潜らせると、さっきまでとは比べ物にならないほど花襞が過敏になっている。
(なに、これ……!?)
じりじりと性感が強まっていき、自分の女の部分が熱っぽく潤んでくるのがわかった。
「……あ、ぁ……っ……!」
「ああ、これはよく効くようだな。官女長に褒美をやらねば」
「え、何を……っ……っ」
指先で花壺の中の一点を執拗にいじられ、抜き差しを速められると、レイラは止め処ない悦楽に押し上げられていく。
「ひぁ、あ……あ、ん……っ……!」
小さな悲鳴じみた声をあげながら、寝台の上でビクビクと体を波打たせる。
疾風に巻き込まれて突き落とされたような、味わったことがない苛烈な衝撃だった。そして、それが性的な意味合いの煩悶である証拠に、蜜壺が小刻みに蠢動を続けている。
(いったい、何が起きたの……?)
それを考える間もなく、セリムは着衣を脱いで雄々しい屹立を彼女の前に晒してくる。
初めて見る男の象徴のあまりの凶暴さに、達した直後の気だるさも忘れて、レイラの体に緊張が走った。
「中をいじっただけでイケるとは驚きだ。お前の肉体が優秀なのか、その媚薬の品質がいいだけなのか……それを俺自身の体で確かめられるとは、これこそ極上の娯楽だな」
彼の言葉で、先ほど塗り込まれたのが媚薬だと知る。
確かに、残虐王の寝室には様々な怪しげな薬やら嗜虐的な好みを満足させるためのいかがわしい器具やらが置いてある、と寵姫の一人が話していたのを聞いたことがある。
残虐王の目に留まらぬよう身を縮こまらせて生きてきたから、そうしたものの具体的な使用法は知る由もなかったが、まさかそれを我が身に使われたとは……!
怯えた素振りを見せるレイラを、慰めるかのようにセリムは付け足してくる。
「おいおい、そんなに怖がるな。媚薬とは言え、初夜に使うものだ。破瓜の痛みを和らげるのが主目的だと聞いている。俺はどこかの極悪人と違って、女を痛めつけて喜ぶような男ではない」
そう言いながら、セリムは彼女の微かに蠢く花園に指を差し入れた。
「ん、うぅ……っ」
さっきよりも本数を増やされ、ぐちゅぐちゅと蜜壺の中を攪拌される。
圧迫感はあっても、堪えがたい痛みはない。むしろ、もっと奥まで来てほしい……という、あり得ないほどに淫らな渇望が芽生えてくる。
「……ん、はぁ……っ」
「これで痛がらないってことは、俺を受け入れることもできるはず」
セリムはそう低く呟くと、レイラの両足を肩の上に抱え上げ、自身の中心部を彼女の花園に押しつけてきた。
粘膜同士が擦れ合う感触にうっとりしてしまうのは、媚薬の効果なのだろうか。
花蜜を絡めるように表面を擦りつけられると、早くその先の感覚が知りたくて性感帯ばかりか全身まで火照ってくる。
「入れるぞ」
低い声で囁かれると、下肢が未知なる行為への期待にキュンと熱く疼いた。
レイラ自身の溢れる蜜と内側に塗りこめた媚薬の助けを借りて、処女孔の内部にセリムの欲望が埋め込まれていく。
「あ、ああっ……!」