英雄騎士の褒章として娶られましたが、甘やかな溺愛で満たし尽くされています

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英雄騎士の褒章として娶られましたが、甘やかな溺愛で満たし尽くされています

著者:紺乃藍
イラスト:氷堂れん
発売日:2025年 1月31日
定価:630円+税

戦で大きな戦果を挙げた騎士に与えられる称号――英雄騎士。そんな誉れ高い英雄騎士となったセオドアが活躍の褒美に望んだのは、第三王女であるメルローズだった。
当のメルローズは、自身がなぜ英雄に望まれたのか不思議に思っていたのだが、「『女神から天の歌声を与えられた姫君』を望んでしまった」というセオドアの告白を聞いて察したのだった……彼はメルローズと姉のマリアローズの名前を間違えたのだと――!
いくら英雄騎士とはいえ、王女の名前を間違えて望んだとあれば不敬罪に問われるかもしれない。だからこの話は自分が拒否したことにして白紙にしようと提案したメルローズに、彼女にこそ英雄の望みを蹴ったというレッテルがついてしまうことを気にしたセオドアは、このまま結婚することを提案してきて!?
「私は、貴方の価値を落としたくはありません」
そんな真摯な態度に心惹かれ、彼の手を取ることを決意したメルローズだったが、二人はすぐにお互いがかけがえのない存在へとなっていく。
しかし、ひょんなことから姉のマリアローズにこの結婚の秘密を知られてしまって――……!?

【人物紹介】

メルローズ=ロセット
英雄騎士となったセオドアに望まれたロセット王国の第三王女。
明るく努力家な性格で、小柄で童顔。
歌うことは好きだが得意とは言えない。

セオドア=オーウェン
『叡智の結集』と言われているオーウェン公爵家の次男だが武芸に秀でており、騎士団に所属している。
実力で英雄騎士となるほど努力家で、美術彫刻のように整った顔立ちをしている。
今回の戦で活躍し英雄騎士となった。その褒美として『歌が上手だと噂の王女がほしい』と望んだのだが……?

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【試し読み】

「それでは、おやすみなさいませ。オーウェン卿」
「……ん?」
 就寝の挨拶をしてメルローズのために用意された私室へ戻ろうとすると、セオドアがベッドから立ち上がったメルローズを見上げて数度瞬きした。
「おやすみって、どこへ行くつもりだ?」
「え……?」
 不思議そうに尋ねられ、つい首を傾げ返してしまう。
 正式な婚約者となって三回目の逢瀬の際に、本来のセオドアは丁寧な口調で話す機会が少なく、普段はもっとくだけた言葉遣いをしていると申告された。『今後も最大限の敬意を払うつもりでおりますが、もし不快に思う態度や言葉遣いがありましたらお叱りください』と謝られ、メルローズの方から『それなら常に普段通りに接してください』とお願いした。
 よって最初に会った頃と違い、今ではメルローズの前でも男性らしく粗野な印象を受ける言葉遣いをするようになった。姉のマリアローズが見たら露骨に不快な表情をすると思うが、メルローズとしては今のセオドアの話し方や態度の方が自然体で本来の彼らしいと感じている。
 だからメルローズが疑問に思っているのは、セオドアの言葉遣いや態度ではなく。
「というか、君ももう〝オーウェン〟だろう? メルローズ=オーウェン子爵夫人?」
「!」
 メルローズの不思議そうな表情を見てさらなる疑問を抱いたらしいセオドアに、今度は別の問いかけをされた。その言葉から、自分は本当にオーウェン子爵家に嫁いだのだと改めて思い知り、密かに身を強張らせる。
 そう、メルローズはセオドアの妻となった。名前も、身分も、住む場所も。彼と見つめ合うだけで高鳴る鼓動や、緊張で少し震えているこの指先も、すべて彼のものとなったのだ。
「セオドア、さま」
「ああ、そうだ」
「……では私のことも、メル、とお呼びください」
 セオドアの求めに応じると示すと同時に、自分のことも親しい呼び名で呼んでほしい、と求める。
 ここに至るまでの半年間であたたかな関係を築いてきた二人だが、今後はもっと深く、より親密な関係に変わっていく。その第一歩として互いの呼び名を『王女と騎士』のものから『妻と夫』のものへ改めたいと示すと、セオドアが安堵したように息をついた。
 そのやりとりが、セオドアの求めを受け入れるというメルローズの意思表示だった。
「メル、ここに」
 差し出された手に指先をのせると、グッと握り込まれて身体を引き寄せられる。ベッドの上――というよりもセオドアの脚の上に横抱きになるよう座らされ、至近距離で見つめ合う。
 蜜色の灯りこそいくつか揺らめいているが、部屋全体は夜の気配が漂っていて薄暗い。燭台の灯りに照らされたセオドアの表情は、これまで見てきた優しい紳士的な印象と異なり、どこか男性らしく野性的な感情が滲んでいるように思う。
 セオドアの顔を直視するのがなんとなく恥ずかしくなったメルローズは、さり気なさを装って彼の顔からそっと視線を外した。
「形だけの結婚をした私たちに、夫婦の営みは必要ないと思っておりました」
 メルローズが照れを隠すように告げると、一瞬だけ目を丸くしたセオドアが穏やかな笑みを向けてきた。だが優しい笑顔と声の奥には、やはり色と艶が宿っている。
「もちろん、嫌なら無理強いするつもりはない。だが俺はもう、メル以外の女性に触れることはない。夫婦とはそういうものだろう?」
 セオドアが緊張で視線を逸らしていたメルローズの頬に触れてくる。その指先に誘われるようそっと顔を上げて青い瞳と目を合わせた瞬間、彼の秘めた意図に気がついた。
「……セオドアさま」
 たとえ最初のきっかけが『間違い』や『勘違い』であったとしても、メルローズとセオドアは今日、確かに夫婦となった。そこに燃えるような恋心が存在しなくとも、強く惹かれ合って愛し合った思い出がなくとも、ふたりは天空の神々に『縁を結んで生涯を共に歩む』『もうお互い以外を愛さない』という誓いを立てた。
(優しい表情……美しい目……)
 頬に触れるセオドアの手に自身の手を重ねる。その間もじっとメルローズを見つめ続ける瞳は真剣で、彼の眼差しから送られる感情は、間違いから始まった関係とは思えないほど情熱的だ。だからメルローズが密かに抱いていた『夫となった男性に身を委ねる不安』も少しずつ和らいで薄れていく。
(柔らかくて、あたたかい……。セオドアさまの手は、剣や槍を握ってばかりとは思えないほど美しく繊細です)
 セオドアの手のひらは皮膚が固く、指の付け根には長年剣を握ってできたと思わしきマメがいくつも存在している。だがメルローズを慈しむように撫でてくれる指遣いには、常に優しさと慈しみが込められている。
 もちろんセオドアがメルローズと真摯に向き合ってくれる人だということは、十分すぎるほど理解している。だからメルローズも、彼にすべてを預ける覚悟ができるのだ。
「優しく、していただきたい……です」
「ああ、努力しよう」
 胸の奥に最後まで残っていた『はじめて』の不安を共有するようにぽつりと呟くと、肩を抱くセオドアの手にグッと力が籠もった。逞しい腕と強い力に不安以上の安心感を覚えつつ、ゆっくりと目を閉じる。
 間もなく、身を屈めたセオドアの唇とメルローズの唇がそっと重なった。
「ん……」
 はじめは優しい口づけだった。だがキスだけなら先ほどの結婚式でもしていたので、さほど緊張しない――と思っていたが、それはメルローズの大きな油断と勘違いだった。
「んん、んぅ……」
 すぐに離れていくと思っていたのに、セオドアはいつまで経っても唇を離してくれない。それどころか重ねた唇を強く吸われ、その表面をぺろりと舐められる。結婚式での口づけよりも長く執拗な触れ合い方に驚き、先ほど和らいだはずの緊張が再燃してしまう。
「ふぁ……あ」
 セオドアはそんなメルローズの反応も楽しんでいるらしい。唇が離れたのでそっと視線を上げると、目が合ったセオドアににこりと微笑まれ、また同じように唇を塞がれた。
「んぅ……っ、ふ……」
 しかも今度は、唇を軽く噛まれてしまう。メルローズは急に歯を立てられたことに驚いてびくりと身体が強張らせたが、緊張を感じ取ってもセオドアは閉じた唇を開かせるよう顎を優しく撫でるだけ。
 愛でるような彼の指遣いに気を取られているうちに、開いた歯列の隙間から深い場所まで舌が侵入してくる。熱い舌同士が触れ合う感覚にどう反応していいのかわからず困惑していると、セオドアがさらに明確にメルローズの顎から首のラインを撫で始めた。
「ふぁっ、ぁ……ぅ」
 犬や猫を可愛がるように、喉をゆるゆると撫でられる。その合間に深く舌を絡められてキスも繰り返される。そのどちらもが不思議と気持ちよくて、まるで暗示にかかったように甘い声が零れてしまう。
 ただしキスが気持ちいいと感じるのと同じぐらい、別の部分が苦しくなってくる。メルローズは長い口づけのときにどう呼吸すればいいのかがわからず、無意識に息を止めてしまっていた。
「っぷぁ……! は、はぁ……っ」
 キスする時間を楽しんでいるらしいセオドアの邪魔をしないよう、そして空気を壊さないよう頑張って耐えていたが、とうとう苦しさの限界を迎えてしまう。セオドアの胸をとんとん叩き、そのまま力を込めて身体を押し離すと同時に、止めていた息を大きく吐き出す。
 肩を上下させて呼吸を繰り返すメルローズを見て、セオドアが可笑しそうに破顔した。
「口づけているときは鼻で息をするんだ。人間は口か鼻のどちらかを塞がれても、もう一方で呼吸ができるだろう」
 冷静な分析と共に教えるが、緊張の最中にいるメルローズに、鼻呼吸と口呼吸を瞬時に切り替えられる余裕などない。いっそセオドアの傍では常に鼻だけで呼吸をした方がいいかもしれない、と的外れなことを考えているうちに、微笑んだ彼に再び口づけられた。
「ふぁ……ん、んん……」
 先ほどと同じように舌を挿し込まれて深いキスを与えられる。だからまた息苦しくなるのではと思ったが、意識的に鼻で息をするよう心がけてみると、言われた通りそこまで苦しくはならなかった。
 呼吸の苦しさが無くなると、気持ちよさ以外何も感じなくなる。口内を這う舌に自身の舌を絡め、セオドアに与えられる口づけに応えようと夢中になっているうちに、全身がくたりと脱力していった。
「そう、上手だな」
 メルローズを褒めてくれるセオドアの笑顔が、視界の中でとろりと歪む。甘く激しいキスに応える必死さと、すっかり気持ちよくなっていたことまで教えられた気分になり、無性に恥ずかしくなる。
 何も言えず照れているうちに横抱きにしていた身体を抱えられ、そのままベッドの中央へ連れていかれる。身体を横たえた流れで羽織っていたナイトガウンの結び目を解かれると、中に身に着けている夜着を確認したセオドアが、静かに目を丸くした。
「このドレスは自分で用意したのか?」
「い、いえ……第一王女のアリスローズお姉さまが、結婚のお祝いにと……」
「そうか」
 メルローズの答えを聞いたセオドアが、すぐに柔らかな笑みを浮かべてくれる。
 長姉のアリスローズが贈ってくれたナイトドレスは、彼女が愛用するドレスメーカーのオーダーメイド品だ。セオドアとの結婚が決まって以来、ウェディングドレスから夜会で身につけるドレス、さらに嫁いだ先で不自由しないようにと普段用のドレスまで多数の衣服が用意された。それに伴い、メルローズは複数の王室御用達メーカーや職人から幾度となく採寸を求められてきた。メルローズ自身もどの職人が何を作っているのかわからないまま応じていたのだが、その中にこのナイトドレスの採寸も含まれていたようだ。
「脱がせるのがもったいないほどよく似合う」
「え……えっと」
「だが初夜からいきなり汚すわけにはいかないからな。脱いでしまおうか」
 白いレースとリボンを重ねた軽やかなナイトドレスは、丈が太腿までしかなく、胸元も広く開いている。完成したドレスを見たアリスローズに『これでオーウェン卿も大興奮ね』と言われたときは『絶対喜びませんし、着る機会すらないと思いますよ』と思った。
 しかし長姉の予想は当たっていたのかもしれない。大興奮、とまでは言わないが、最初で最後のつもりで身につけたドレスの腰からリボンを解くセオドアは、意外にも嬉しそうである。
「綺麗だな。百合の花のように白くて美しい」
 すべての衣を剥ぎ取られ一糸纏わぬ姿となったメルローズを見て、セオドアが感嘆と共に息を吞んだ。ごくりと喉が鳴る音を間近で確認したメルローズは背中を震わせたが、声を発する前にセオドアの長い指が胸の尖端に触れてきた。
「ふぁっ……」
「けどここだけは、固くなって色づいてる」
 セオドアの指摘の通り、メルローズの胸の頂点はいつの間にか固く張り詰めて膨らんでいた。冬の日は稀にこうなるが、今は寒さなど感じていない。なのになぜか芯を持ってふっくらと膨らんでいる。
 セオドアの呟きからそれが恥ずかしいことなのだと理解したメルローズは、慌てて彼から顔を背けようとした。だが直前でセオドアの指先がそこをきゅっと摘まみ上げる。
「んゃぁ……っ」
 思わぬ刺激に大きな声が零れる。しかし確かに驚いたはずなのに、溢れた声には驚愕とは少し異なる……どこか甘えるような響きが含まれていた。自分の反応に困惑する間もなく、セオドアの指が同じ場所を優しく刺激し始める。
「ん、んっ……あぅっ……」
「……メル」
「ふぁ、あっ……」
 両胸の柔肉を大きな手で包み込まれ、親指の腹で先端だけをくりくりと押し潰される。同じ場所ばかり、何度も何度も刺激されていく。
 だが自分よりも身体が大きく力が強い男性に敏感な場所を弄られているはずなのに、痛みは一切感じない。それどころか、徐々に『気持ちいい』と思い始める。セオドアにもっと触れてほしくて、もっと強い刺激がほしくなってしまう。
「ひぁっ……ん」
 メルローズの秘めた欲望を感じ取ったのか、セオドアがこれまでよりも少し強い力で乳首を弾いた。強い刺激を得た瞬間、触れられた胸の先から腰の奥に向かってビリリと電流のような衝撃が駆け抜ける。痛いというわけではないが、思いがけない刺激につい過敏に驚く。
「ああ、悪い……少し強かったか」
 メルローズの反応を見たセオドアが、慌てたように手を引っ込めた。
「力加減がわからないな。……手ではない方がいいか」
「えっ……だ、だめです……!」
 身体の割に大きな胸を横から掬うように持ち上げられると、そこにセオドアの顔が近づいてきた。さらさらと流れ落ちる銀の髪が鎖骨を撫でるとそれだけでくすぐったさを覚えるが、それよりも舌を伸ばしたセオドアに胸の突起をぺろりと舐められたことに焦った。
「やぁっ……ああぁ……ん!」
 柔らかくて生温かい舌が、敏感に勃ち上がった胸の飾りの上を這う。舌全体を使って尖った乳首を包み込むように舐められ、最後に舌の先で中央をぐりゅっと押される。するとまた胸の先から腰の奥に向かって電流のような刺激が駆け抜け、下腹部の奥にきゅう、と甘く重だるい微熱が生まれる。
「んん、んぅ……ふぁ」
 同じ動きを繰り返してメルローズの右胸の突起を丁寧に舐めるセオドアだが、左胸に刺激を与えることも忘れない。彼の右手がまるで自身の舌の動きを模倣するように、ゆっくりと執拗にメルローズの胸の頂を弄ぶ。
「はぁ、あ……」
「敏感になってきたな。どこに触れても甘えるように反応する……」
「やぁ……ちが……」
 両方の乳首を執拗に舐め転がされたメルローズの身体は、セオドアの指と舌に敏感に反応するようになっていた。空いた手が脇腹や太腿に這うと、それだけで全身がぴくぴくっと過剰に飛び跳ねる。
 セオドアの指先が肌を撫でるたびに、メルローズの身体も操り人形のように反応する。恥ずかしい。――けれどそれ以上に、未知の感覚への期待と快感が増幅していく。セオドアに与えられる熱のすべてを知りたい、と思い始めている自分がいる。
「メル」
 先ほど確認したばかりの呼び方だが、セオドアはもうメルローズを愛称で呼ぶことに慣れたらしい。身を屈めて頬に口づけつつ名を呼ばれると、心臓がどきどきと高鳴る。内腿を撫でながら上昇する指先が股の中央に滑り込んでも、すぐには気づけないほどに。
「んん……っ! え……なん、ですか……?」
 ふと彼の指が敏感な場所に触れた瞬間、ビクッと身体が飛び跳ねた。少し遅れて、普段他人に暴かれることのない場所に触れられたのだと気づく。
「痛いか? 濡れてはいるが……」
 セオドアの『濡れている』という何気ない報告に、サッと血の気が引いた。
「う、うそ……!」
「ああ、別に悪いことでも、変なことでもないぞ。メルの身体が、俺を受け入れる準備を始めてる証だ」
 てっきり与えられる刺激に気を取られているうちに漏らしてしまい、彼のベッドシーツを汚してしまったのかと焦った。だが冷静な口振りを見るに彼には予想できていたことらしい。メルローズが困惑の表情を浮かべると、セオドアがそっと微笑んでくれた。
「ここと一緒に、中も慣らそう」
「ここ……? な、か……?」
「そう、怖がらなくても大丈夫だ」
 メルローズが『ここ』『中』という単語に反応すると、セオドアが数度頷きながら、膨らんだ萌芽に指を滑らせてきた。
「っ……ぁ」
 彼が示したメルローズの秘部は、指摘の通りうっすらと濡れていた。そのためか触れられても強い摩擦や痛みは感じない。メルローズの反応を確認しながらゆっくりと指先を動かしたセオドアが、ツンと尖った蜜芽をゆるゆると撫で始める。
「あっ……あ! やぁ……ん、そこ……っ」
「気持ちいいか?」
「わ、わからない、です……っぁ、ああっ」
 通常、他人に触れられることのない場所をセオドアに愛撫されている――その状況に顔から火が出そうなほどの羞恥を覚えるメルローズだが、恥ずかしさ以上に強烈な刺激が敏感な秘芽の中央に集中する。
 恥ずかしい、気持ちいい、怖い、気持ちいい……。
 理性的な感想と強すぎる快感が、複雑に入り乱れながらメルローズの全身を駆け巡っていく。その刺激に流されて我を忘れてしまわないよう、シーツについたセオドアの左腕にぎゅうっとしがみついて理性を保とうとする。
「可愛いな、メル」
「ふぁ、あぁ……っ」
 メルローズに縋られたセオドアはやけにご機嫌だった。痴態を観察しながら蜜芽を刺激していた手を一旦止め、弛緩したメルローズの脚を左右に広く開いて、ひくひくと収縮している蜜口の周辺を再びゆるく撫で始める。
「ふぅ、ぅ……」
「指なら大丈夫そうだな。……挿れるぞ?」
 セオドアの確認の意味をよく理解できないまま、こくこくと頷く。だが蜜口の中央にセオドアの中指がつぷ、と侵入すると、異物感に驚いて身体がびくりと強張った。
「んん、ぅ……ぁ」
 誰にも触れられたことのない蜜筒に、セオドアの指が挿入されている。その感覚に背中がぞくっと震える。
「ん~……っ……ん、んっ……」
 セオドアの指は第二関節まで入らないうちに引いていくが、抜けきらないうちにまた挿入される。次は先ほどよりも深く、その次もさらに深くと少しずつ奥に沈められ、メルローズが異物感に力んだときはすぐに侵入が止まり、再び敏感な蜜芽をゆるく愛撫される。
「あっ……は、ぁぅ……ん」
 二つの場所に別々の刺激を与えられているうちに、だんだんと異物感が薄まっていく。多少の圧迫感はあれど、セオドアの指に違和感や恐怖心を抱かなくなり、代わりに与えられる刺激を追い求めるように腰が浮く。触れられているのは秘部だけなのに、頭の頂点から足のつま先までが、もっとセオドアを知りたいと訴え始める。
「ふぁ、あぁ……セオ、ドア、さまぁ……」
「痛いか?」
「ちが、ちがうん……です」
「?」
「お腹のおく、きゅぅって……あつ、くて……」
 中でも特に彼の存在を求めている場所が、先ほどからきゅうきゅうと疼く下腹部の奥だ。懇願するように必死に訴えると蜜壺をぐちゅぐちゅと掻き混ぜていた手がピタリと止まり、すぐに長い指を引き抜かれる。
 浅く短い呼吸を繰り返しながらどこか物足りない寂しさを感じていると、身を起こしたセオドアがメルローズの腰の上にのしかかってきた。
「セオ、ドア……さま……?」
 体重をかけられているわけではないので痛みや圧迫感はない。だが体格差のあるセオドアに逃げられないよう跨がれると、どき、と胸が高鳴ってしまう。彼はまだナイトガウンを羽織ったままだが、色を含んだ視線で見下ろされると急に緊張してしまう。
 困惑を示すように名前を呼ぶと、気づいたセオドアがメルローズにある命令を告げてきた。
「メル、手を出せ」
「え? て……?」

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