スパダリ副社長は秘書への溺愛が甘すぎる ~君のすべてに触れさせてくれ~
著者:桜月海羽
イラスト:逆月酒乱
発売日:2024年 9月27日
定価:630円+税
峰岸あずさは大手食品メーカー『シブサワ堂』で副社長付きの第二秘書として働いていた。
元々の引っ込み思案な性格と元カレの浮気が原因で少し恋愛に苦手意識を持ってしまっているあずさ。
だが、そんな彼女は副社長・渋澤武尊のことを尊敬しており、また淡い憧れの気持ちも抱いていた……。
ある夜、バーで友人と別れ、一人物思いに耽っていた彼女に見知らぬ男性が馴れ馴れしく話しかけてきた。
戸惑い、身構えるあずさのもとに武尊が助けに来てくれて――?
その後、一緒に飲むことになった二人。
どこまでも優しく誠実で紳士な武尊との会話にあずさが自身の悩みを打ち明けると……。
武尊は穏やかな声色であずさの味方をしてくれ、しかもそれだけでなく――!?
「俺と恋愛の練習をしてみない?」
恋愛に前向きになったあずさに武尊が練習をしてくれることになったのだが……?
【人物紹介】
峰岸あずさ(みねぎし あずさ)
28歳。大手食品メーカー『シブサワ堂』の副社長付き第二秘書。
真面目で人見知りな性格をしている。
過去の経験から恋愛に苦手意識を持っていたのだが――?
渋澤武尊(しぶさわ たける)
36歳。『シブサワ堂』副社長で会長子息でもある。
穏やかで誠実で、優しい性格をしている。
あずさの悩みを聞いた彼は、ある話を持ちかけてきた……!?
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【試し読み】
自然とその姿を追うと、端正な顔が近づいてきて……。あずさの額に、柔らかなものが落ちてきた。
チュッと音が鳴り、肌に触れた感触がすぐさま離れていく。
「え……?」
目を見開き、思わず与えられた温もりを確かめるように左手で額に触れてしまう。
あずさを見つめている武尊の双眸は真剣で、微かに熱を孕んでいるようだった。
「ごめん」
零された謝罪に身構えたが、彼の意図は別にあったらしい。
「嫌がることはしないって約束したのに、あずさが可愛くて我慢できなくなった」
恥ずかしげもなく囁き、半身を起こしたまま右手であずさの頬に触れてくる。
武尊のような素敵な男性にこんな風に言われて、ときめかないわけがない。
あずさでなくても、きっと拍動は速まっただろう。
頬が熱いのは、自分のせいか彼の体温か……。あずさにはわからなかった。
「いえ……」
消え入りそうな声で返し、首を小さく振るだけで精一杯だった。けれど、ふたりきりの静かな部屋で伝えるには充分だ。
「嫌じゃない?」
「はい……。副社長のことは信頼してるからか、ちっとも……」
自分でも驚くほど簡単に、答えが落ちていた。
迷いもなくこんなことを言えてしまう理由はわからないのに、これが本心だということだけはわかる。
「じゃあ、唇にもキスをしてもいい?」
それでも、さすがにその問いにはためらいが生まれた。
あずさの戸惑いを見透かすように、武尊の指先が唇に触れる。
その瞬間、理性が崩れていく音が頭の片隅で鳴った気がした。
声にはできなかったが、小さく頷いた。たったそれだけで、彼にはあずさの気持ちが届いたようだ。
瞼を閉じた端正な顔が、そっと近づいてくる。
緊張と恥ずかしさで胸の奥がきゅうっと苦しくなったとき、唇がそっと重なった。
ただ触れ合っただけなのに、言葉にできないような甘やかな感覚が込み上げてくる。
ドキドキするのに嬉しくて、嬉しいのに緊張して……。あずさの中にある感情はグルグルと混ざり合い、喜びだけが色濃く残った。
顔が離れた直後にぶつかり合った視線が、暗にそれを語っていたのかもしれない。
再びキスが与えられるまでに、数秒もなかった。
触れては離れて、また触れる。
繰り返し重なる唇は、まるで互いの体温を分け合うように熱くなっていく。
深くもない触れ合うだけのくちづけなのに、鼓動はどんどん高鳴っていった。
あずさは武尊のキスを受け入れながら、うっとりとしていく。
気づけば、縋るように彼のバスローブを掴んでいた。
程なくして唇が離れたときには、寂しさを感じたくらいである。
「あまり無防備になられると、理性が保てなくなる……」
眉を寄せた武尊の目に宿っている情欲を前に、恐怖よりも喜びが勝った。
「……私、こういうことにも自信がなくて……」
だからといって、不安がまったくないわけではない。
「元カレから、その……『つまらなかった』『下手すぎる』って言われて……。だから、副社長のこともがっかりさせてしまうかと……」
こういうとき、過去の恋人の話題を持ち出すのは褒められたことではないだろう。
さすがにそれはわかっているが、このまますんなりと彼と身体の関係を持つ勇気はなかった。
正直に打ち明けることに対して、あずさの中に迷いがなかったわけではない。ただ、なぜか武尊なら寄り添って受け止めてくれると思えたのだ。
「……なるほど。あずさのトラウマの原因は、元カレの別れ際の言葉だけじゃないのか」
忌々しそうに呟いた彼が、あずさを見てふっと眉を下げる。
「気にしなくていい」
「え?」
「下手だったのは、あずさじゃなくて男の方だと思うよ。メンタルや体調的なことを除けば、セックスで女性が気持ちよくなれないのはよほど相性が悪いか男が下手だからだ」
「でも……」
「大丈夫、あずさはなにも悪くない。だから、そんな言葉はもう気にしなくていい」
元カレをたしなめるように言ったのと同じ唇で、優しい声が向けられる。それだけで、なんだか大丈夫な気がした。
「でも、わかってるのか?」
ところが次の瞬間、武尊の双眸にわずかな厳しさが宿る。
「ああいう言い方をするってことは、『抱かれてもいい』と言ってるようなものだ、と。その気がないなら、この状況であんな風に言うものじゃない」
彼の言動があずさのためであることは、すぐにわかった。
あずさは戸惑い、少しの間押し黙ってしまう。
ここで頷けばどうなるのか……。それが理解できないほど、鈍いわけではない。
「副社長なら、嫌じゃないです……」
それでも、あずさの中には拒否感はなかった。
武尊が目を小さく見開き、一拍置いて眉を下げて微笑む。困り顔に浮かべられた笑みは、なんとも艶麗だった。
「そうか。だったら……」
骨ばった手があずさの手から離れ、頬にそっと置かれる。
優しく撫でられた手つきとは裏腹に、視線には熱がこもっていた。
「精一杯優しくするから、君のすべてに触れさせてくれ」
低い声音があずさの鼓膜をくすぐり、鼓動が高鳴る。
あずさが知る中で、最も極上の男性。
そんな武尊に真っ直ぐ求められていることに、胸の奥が震えた。
まだ少しだけ怖い。不安は大きなままで、自信だってない。
けれど、彼のことは信頼できる。
これまでに培ってきた関係性がそうさせるのか、それともグッと距離が縮まった今夜の空気感のせいか。
答えはわからなかったが、戸惑いながらも小さく頷いてみせた。
緊張の面持ちでいるあずさに、武尊が柔らかな笑みを浮かべる。
「俺は君を傷つけたくないから、君が嫌だと思ったら絶対にやめる。だから、怖がらずに俺のことを見ていて」
その言葉には、説得力があった。日頃の彼の態度を見ていれば、誠実な人だというのはよくわかるから。
「はい……」
不安が小さくなったあずさの表情が、自然と和らぐ。
緊張感は消えなかったが、さきほどまでとは気持ちが全然違っていた。
武尊が相槌を打つように頷き、頬に置いていた手がそっと頭に移動する。
ふわりと撫でられて、気恥ずかしくなった。
視線が絡んだままなのも、やっぱり恥ずかしい。
しかし、あずさは彼の言葉を守るように、目を逸らさないでいようと意識していた。
ふっと、武尊が瞳を緩める。
仕事中に見せる優しい表情とはどこか違うそれは、まるで愛おしいと言われているように思えて……。あずさはドキドキと高鳴る拍動を諫めるように、勘違いしてはいけないと自分自身に言い聞かせる。
直後、彼の顔が近づいてきて、唇がそっと重なった。
触れるだけの、キス。
紳士的で優しい武尊らしく、こんなことにまで気遣いが感じられる。
きっと、あずさに不安を抱かせないためだろう。なんて考えていたせいで、瞼を閉じるのを忘れてしまっていた。
「次は目を閉じようか」
彼にクスッと笑われて、頬がかあっと熱くなる。恋愛初心者のような振る舞いをしてしまったことに、羞恥心が大きくなった。
「っ、すみません……」
「謝らなくていいよ。別に悪いことをしてるわけじゃないんだ。ただ、目を開けたままでいられると、さすがにちょっと恥ずかしいからね」
冗談めかしたような言い方に、あずさから小さな笑みが漏れる。
武尊の眼差しは優しくて、それもまた心を解してくれる。
再び唇が重なったのは、数秒後のこと。
触れるだけのくちづけが数回繰り返され、次いでやんわりと食まれる。
上唇を啄み、下唇も同じようにされて、甘いリップ音が響いていた。
子犬が戯れるようなキスなのに、身体に小さな熱が灯っていく。下腹部もじんわりと熱くなって、疼きのような感覚が芽生えた。
彼とキスをするのは初めてなのに、まるでなにかがぴったりと重なるような心地よさがある。
うっとりとした気持ちでいると、不意に唇の隙間から舌が差し込まれた。
「んっ……」
触れ合った舌先をそっと撫でた熱い塊が、あずさの口内をゆっくりと巡っていく。
上顎や頬の裏を優しくたどり、また戻ってきては舌を擦られる。
ちゅく、クチュッ……と艶めかしい水音が鳴って、口内とともに鼓膜まで侵されていった。
顔を離した武尊が、ふわりと瞳を緩める。真っ直ぐな双眸には確かな劣情もあるのに、あずさを怖がらせまいとしているのが伝わってくる。
その思いやりに、改めて彼は信頼の置ける人だと感じた。
「んっ……」
武尊の顔が、今度は首筋に埋められる。白い肌にチュッとくちづけられて、微かな吐息が漏れた。
首に何度かキスが落とされたあと、唇が徐々に下りていく。
肌をたどられるのはくすぐったさもあるのに、背筋がわずかに粟立つような感覚にも包まれた。
程なくして、バスローブの紐が解かれる。合間に鎖骨にくちづけられ、そのまま舌が這わされた。
ひとつひとつの行為は丁寧なのに、室内を包む空気はすでに淫靡なものになっている。
バスローブを左右にはだけられて剥がれると、男性にしては綺麗な指先があずさの華奢な肩をツツッ……とたどった。
「っ……」
「あずさは敏感だね」
「え?」
眉を下げた彼が、困ったような面持ちのままクスッと笑う。その目は、どこか喜々としていた。
「アッ……」
どぎまぎしていると、大きな手に豊満な双丘をやんわりと揉まれた。いきなり直接触れられたからなのか、あずさの身体は敏感に跳ねた。
「こんなところにほくろがある。すごくセクシーだね」
あずさの左胸の谷間の傍には、小さなほくろがある。
あずさはあまり好きではなかったが、武尊が褒め言葉として言ったのだと察すると、悪いものではない気がしてきた。
なんて考えていると、骨ばった手が再びボリュームのある胸を揉みしだき始める。
下から持ち上げ、手を回すようにゆったりと撫でて。白く柔らかな乳房の感触を楽しむがごとく、その形を変えて弄ぶ。
そうして彼が手を動かすたび、あずさの唇からは甘くなった声が漏れる。
「あんっ!」
人差し指で小さな粒をカリッと擦られた瞬間、ひときわ甲高い声が飛び出した。
「ここ、もう硬くなってる」
目を細めた武尊が、あずさの肩からバスローブを抜き取ってしまった。
一糸纏わぬ姿になったことに、羞恥が一気に増幅する。
「君は、スーツの下に随分と綺麗な身体を隠してたんだな」
「っ……あの、あんまり見ないでください……」
思わず胸を両手で隠せば、彼の目が緩やかな弧を描く。
「どうして? こんなに色っぽいのに」
「そんなこと……」
目を伏せたあずさの頬が、真っ赤になる。
「綺麗だよ。だから、もっと見せて」
けれど、甘い声音で囁かれてしまうと、あずさの手首を掴んだ武尊の手に抵抗を見せることなく上半身をさらした。
彼が目を細め、うっとりとしたように微笑む。
程なくして骨ばった手が伸ばされ、再び胸への愛撫が繰り出された。
「あっ、ぁ……んっ」
無防備な双丘をやんわりと揉まれ、手のひらが突起をかすめる。
それを繰り返されるうちに、主張し始めていた先端がさらに硬くなっていった。
慎ましい桜色だったそこは、まるで紅梅のように色づいている。ツンと尖った姿は、いじらしさを感じさせた。
淡い快感に包まれていく中、ふたつの小さな果実がキュッと摘ままれる。
そのまま指の腹ですり潰すように擦られ、クリクリといじくられて。かと思えば、軽く引っ張られたり、爪の先で優しく引っかかれたりと、様々な刺激が送り込まれた。
じんじんと身体に響くような痺れが芽生え、快楽が大きくなる。
直後、武尊の顔が胸元に埋められ、右側の花粒が口内に呑み込まれた。
「ふぁっ、あぁっ……」
チュッと音を立てて吸いつかれ、チュパッと吸い上げられる。何度も繰り返しながらも舌先で突起全体をねぶられ、背筋がゾクゾクと粟立った。
もう片方は丹念に指で愛でられ、ふたつの先端が熱くなっていく。
これ以上ないほどに硬く勃ち上がったそこは、さらに赤く色づいていた。
喜悦に翻弄されていたあずさは、不意に武尊の右手が肌を下り始めたことに気づく。
大きな手がくびれたウエストラインを撫で、ゆったりとした仕草で下腹部をたどって、太ももに行きついた。
そのまま内ももに触れられ、思わず脚を閉じてしまう。
ところが、彼はあずさの両脚をグイッと広げると、秘部に指を置いた。
「ぁっ……」
ツーッと下から上に動かされた指先に合わせ、クチュッ……と小さな音が鳴る。
淫靡な水音を、ふたりとも聞き逃さなかった。
「濡れてるね。ちゃんと欲情してくれて嬉しいよ」
目を細める武尊の言葉で、あずさは自身を包んでいるすべての感覚が〝欲情〟だと知る。
身体がゾクゾクと粟立つのも、どこかに小さな恐怖心があるのに心の片隅ではまだ先を求めてしまうのも。
彼に触れられる場所を気持ちいいと感じていたのも、そして子宮のあたりがじんじんと疼くような感覚に包まれているのも……。
あずさ自身が欲情しているからだ、と気づかされる。
(でも、こんなの初めてで……)
あずさにとって、セックスは苦痛なものだった。
相手に合わせて始まり、されるがまま進んでいき、気持ちいいのかわからないうちに挿入される。
そんな身勝手な行為しか知らなかったからこそ、武尊の丁寧で労わるような触れ方に戸惑いもあった。
けれど、彼の手によって、あずさは初めて快感らしい快感を覚えたのだ。
必死にこの状況を理解したあずさは、それでも羞恥には抗えずに両脚を閉じるようにして身体ごと横を向く。
わずかばかりのあずさの抵抗に、武尊がふっと笑った。
「すごく綺麗だ。こんなに綺麗な身体なのに、そうやって初心な反応を見せるなんてずるいな」
溺れそうだ、と聞こえた気がする。
「やっ……んっ」
ところが、一拍早く秘所を撫でた指先によって甲高い声が飛び出し、彼の言葉は上手く聞き取れなかった。
長い指が蜜口の雫を掬い、襞に塗りつけるようにしていく。
節くれだった指は狭い範囲で上下していたが、やがて柔毛の中に隠れた小さな花芽を探り当てた。
「ああっ……!」
これまでの刺激の中で、最も鋭利で苛烈。
反射的に大きく反った背中がベッドに戻ると、すぐさま指の腹でそこを擦られた。
艶めかしい音とともに、蜜が垂れていく。
コロコロと転がすように撫で、ときに下から持ち上げるようにして。全体を回すようにしながら捏ね、丹念に愛撫されている。
赤い真珠のような姫粒をじっくりいじられるうちに、丸みを帯びたお尻の下まで雫で濡れていた。
「ふっ……。あっ、あぁっ」
「こっちもすごく硬くなったよ」
じんじんと痛いほどに痺れている花芽から、今にもなにかが弾けそうだった。
「やっ……! ダメです……ッ、怖い……!」
「大丈夫だよ。ただイくだけだから、なにも怖くない」
右手は蜜粒を可愛がったまま、左手があずさの手を掴む。
優しい感覚に縋るようにぎゅうっと握り返せば、彼がふっと唇の端を持ち上げた。
同時に、ツンと尖り切った粒を押し潰される。
「ひっ……? ああぁぁぁっ――!」
パンパンに腫れていたそこから痺れと愉悦が駆け抜け、まるで脳天まで突き抜けるような感覚に包まれた。
喉が仰け反り、息を詰める。
全身がビクビクと震えたあとで、徐々に強張りが解けていった。
肩で息をするあずさに、武尊が満足げな笑みを浮かべている。
「上手にイけたね。色っぽくて素敵だった」