行き遅れ令嬢なのに、幼馴染の年下王子から執着求愛されるなんて聞いてません!

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行き遅れ令嬢なのに、幼馴染の年下王子から執着求愛されるなんて聞いてません!


著者:逢矢沙希
イラスト:yuiNa
発売日:2024年 3月22日
定価:620円+税

ノースウッド伯爵家の長女アリエラは、第三王子・ジェスランの乳母になるため家を出ていった母に複雑な感情を抱いていた。
幼い弟妹たちの母親代わりを務める彼女は母からジェスランの遊び相手に任命され、以降彼と交友を深めていくことに。
年月が過ぎ、26歳になったアリエラには縁談の話もなく、行き遅れていたのだが――?
妹の結婚披露宴の夜、参加していたジェスランからプロポーズをされて……!?
真剣な彼の姿を見たアリエラは、いつの間にか芽生えていた恋心に揺れ動く。
だが、彼の立場を考え、彼女は自身の気持ちを堪え、その場を去ってしまう。
その後、貴族青年たちにお酒を勧められて困っていたところをジェスランに助けられて――?
再びプロポーズを受けたアリエラは感情を抑えることができず彼へ想いを告げると、一途な口づけが落とされ……。
「……ずっと、あなたの心にも体にも触れたくて仕方がなかった」
ジェスランから甘く情熱的に抱かれ、一線を超えてしまったアリエラだったが……!?

【人物紹介】

アリエラ・ノースウッド
26歳の伯爵令嬢。
おっとりとした性格をしており、世話焼きで愛情深い。
その反面、自分のことは後回しにすることも。

ジェスラン・サンズワース
第三王子でアリエラとは幼馴染。
優しく、誠実な性格をしている。
出会ったときからアリエラに想いを募らせているようで……?

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*取り扱いサイトは、各書店に掲載され次第、更新されます。

【試し読み】

 彼の声が、言葉が、今まで口にしてきたどんな酒よりも甘く深くアリエラを酔わせるように染み入ってきた。
 頭はまだぼんやりとしていて、彼の告白の全てを理解できたとは言いがたいけれど、その気持ちを冗談だと受け流すことができないくらいにはアリエラの胸に響いた。
 素面の時であれば、きっとそれでも彼を退けただろう。
 だって本当に、自分よりもジェスランに相応しい令嬢は他にいくらでも存在する。
 ただ幼い頃から付き合いがある、彼の乳母の娘というだけの伯爵令嬢では、将来を嘱望される第三王子の妃なんて務まらない。
 だけど、それが建前であることは自分でも自覚していた。
 酒と彼に酔わされた今夜、普段は固く守っているアリエラの理性はその役目を放棄して殆ど役に立ちそうにない。
 ジェスランの琥珀色の瞳が、自分を見つめている。
 その目がまるで飢えた獣のようだと感じた。目の前の獲物がほしくてほしくて堪らないのに、でも同時にうかつに襲いかかって傷つけてしまうことを恐れるような眼差しだ。
 彼の唇からこぼれる呼吸が僅かに荒い。
 自分を見つめる瞳から、思いの丈を言い募るように開いた唇から、自分の手を握り締める温かな手から、そして覆い被さる彼の大きな身体の全てから、自分が求められているのを感じるのは、アリエラの自意識過剰だろうか。
 ……いや、きっとそんなはずはない。今自分は確かに求められている。
 他の誰でもなく、ここにいるアリエラという女を彼は求めているのだと本能で感じた時、アリエラは自然と、言葉を返してしまった。
 本当は、駄目だと判っていたのに……最後まで気付かないふりをしなくてはならなかったはずなのに。
 酒が入っているせいか、理性が遠ざかっているせいか、妙に涙もろくなる。
 己の感情を抑えることができそうにない。
「……私も、あなたが好きよ」
 縋るような、かすかに震えたアリエラの声にジェスランがハッと目を見開いた。
 信じられない言葉を聞いたと言わんばかりの彼の眼差しを受けながら、続けて「でも……」と口にしようとした言葉は、結局音にはならなかった。
 なぜならその前に、唇を彼に塞がれてしまったから。
「……んっ……」
 驚いたのは一瞬だけ。
 すぐに己の身体が歓喜するのを自覚した。
 二十六年生きてきて初めて触れる異性の唇は意外と柔らかく、温かく、そしてひどく官能的だった。
 アリエラからろくな抵抗がないとみるや、ジェスランがその両腕で彼女の身を掻き抱く。
 寝台に折り重なるように抱きしめられると、下敷きになったアリエラは殆ど身動きを取ることができない。
 胸が、彼の胸板に潰されて少し苦しい。もがくように腕に縋り付くけれど、ジェスランの抱擁も口付けも深まるばかりでアリエラを逃そうとはしなかった。
「ふ、ん、まって、ん……」
 訴えるそばから何度も唇が角度を変えて重なってくる。合間に途切れ途切れに待ってくれと訴えたけれど、彼は応じる気はないようだ。
「待たない。待てば逃げようとするだろう?」
「そんなこと……」
「あるだろう? 本気で嫌なら、殴るなり、蹴飛ばすなり、思い切り拒否してくれ」
 そうでもしないと止まれない、と言われているようだった。
(ジェスを殴ったり蹴ったりなんてできるはずない……でも、このままじゃ)
 そう思った直後、唇の隙間から肉厚の舌が差し込まれてアリエラの口内を探ってくる。
 生暖かな彼の舌がぞろりとアリエラの舌に擦り付けられると、自分でも信じられないくらい、ざわざわとざわつくような奇妙な刺激が顎から喉を震わせて、蕩ける甘い愉悦がじんっと胸元にまで痺れのように広がっていった。
「んむ……んんっ」
 まるで薄い肌の下を何かが這い回るようなじっとしていられない刺激だった。
 思わず身を捩るけれど、それは本当に少し身を揺らしただけでジェスランの身体に押さえつけられてしまい、より深く、より強く口内を探られて舌を吸い上げられる。
 かと思えば歯列をなぞられたり、頬の内側を擦られたり……これまで経験したことのない体験の連続に、アリエラの息はすっかりと上がってしまった。
 大きく上下を繰り返すその胸元がよほど苦しく見えたのだろうか、あるいは違う理由か。
 僅かに身体を離したジェスランが、デコルテから覗く色づいた胸元に頬を寄せる。
 その肌触りを確かめるように頬ずりされて、元々早くなっていた心臓の鼓動がさらにその速度を上げた。
「……すごいな、ドキドキしている。酒のせいばかりじゃないと思っても良いか……?」
「……し、知らないわ。ねえ、ジェス……これ以上は駄目よ……」
「本当に? 本当に駄目か? 俺に触れられるのは少しも耐えられない?」
 切実に問われると、そうだと肯くことができない。
 思わず口を閉ざしてしまうアリエラに、再び唇を寄せたジェスランが掠れた艶の含んだ声で囁く。
「あなたがほしい、アリエラ。俺を弟ではなく一人の男として見てほしい。……ずっと、あなたの心にも体にも触れたくて仕方がなかった」
「……っ……」
 密かに想いを寄せる相手にそんなことを乞われて拒絶できる女がどれほどいるだろう。
 戸惑っている間にもジェスランは熱っぽく色気を帯びた眼差しでアリエラの瞳を見つめ、手袋を外すと露わになった素手で彼女の赤くなった頬を、首筋を、鎖骨を撫でながら胸元にまで降りてくる。
 何をするつもりだ、とは問えなかった。だってその目的が明らかすぎる。
 意図的にこちらの官能を刺激するジェスランは、このまま自分を抱くつもりでいる。
 今ここで手に入れなければ、二度はないと理解しているようだ。
 一国の王子としても貴族令嬢としても決して受け入れてはならない不適切な行為だ。
 それが判っているならやっぱり止めなくてはならないはずなのに、今のアリエラにはできそうにない。
 だって本心で望んでいたのは自分も同じなのだから。
「全て、俺と酒のせいにしてしまえば良い。アリエラは何も悪くない……ただ俺が、君の隙に付け込んだだけだ」
「ジェス……」
「好きだ……好きなんだ……」
 熱に浮かされるような告白は、アリエラに残っていた最後の躊躇いをあっさりと乗り越えてくる。
「あっ……」
 背中の小さな隠しボタンを探り当てられて外された。緩んだドレスを引き下ろすように露わになった肩に口づけられる。
 通常こういったドレスは糸で縫い合わせてしまうものだけれど、一人でもすぐに着替えられるようにとドレスに工夫していたことが、こんなところで奇妙な役に立ったらしい。
 続いてそのドレスの下のコルセットの紐を解かれてしまうと、窮屈そうに収まっていたアリエラの胸元が弾けるように緩んでしまう。
 咄嗟に両手で抑えようとしたけれど、彼女の腕をくぐるようにジェスランの両手が下から掬い上げてその柔らかな乳房を揺らす。
「……大きいな。手の中に収まりきらないくらいだ。……すごく、柔らかい」
 正面から鷲掴みながら、夢中になったように手の平全部を使って揉まれる。
 そうしながら乳房の先端で僅かに芯を持ち始めた場所を薄いシュミーズの上から探り当てられると、肩が跳ねるほどの強い刺激に小さな声が漏れた。
「んんっ!」
「でも、ここは思ったより小さくて可愛い」
「あっ、だめ……!」
 くにくにと親指と人差し指に挟まれて、扱くように悪戯されると、どんどんその場所が固く尖ってくる。
 その様がアリエラの目にもはっきりと見えて、かあっと体温が上がっていくのを止められない。
 びり、びりっと全身に響き産毛が逆立つような刺激が怖い。
 なのにもっと続けてほしいと思う独特の癖快感があって、アリエラの身を震わせる。
 項に触れる彼の唇や吐息、そして肌を舐める舌の濡れた感触もよろしくない。そんなことをされると、ただでさえ脆くなった理性が粉々に砕けてしまう……あるいは溶けて消えてしまうという方が正しいのだろうか。
 気がつくと、太く長い男の指に翻弄されて形を変えた乳房の頂で、それはすっかり充血して色を深め、ピンと己の存在を主張するように下着の生地を押し上げていた。
 どろっと両足の奥から何かが溢れ出てくる感覚がある。それが何かが判る程度には、アリエラにも知識はあった。
「ん、ふ……」
 そこを既に濡らしているなんて知られたくないのに、アリエラの両足をすり合わせる仕草でジェスランはすぐに察したようだ。
「切ない?」
 囁くように問われて、肌の色が深まる。
 羞恥で小さく首を横に振れば、耳朶のすぐ下の薄い皮膚に口づけられて熱い吐息と舌の感触に、ぞくぞくっと肩を竦めてしまった。
「ああっ……」
 思わず目を閉じると、視覚が閉ざされる分、触覚が鋭敏になる。どこもかしこも神経をむき出しにされたみたいだ。これは酒のせいなのか、それともジェスランが触れているからこそなのか、もうよく判らない。
 ちゅっちゅっ、と小さな音を立てながら幾度も肌に吸い付く彼の肩を、弱々しく押し返そうとしても、口づけられるたびに身体の芯にこれまで経験したことのない愉悦が走って、アリエラから抵抗する力を奪っていく。
「あ、ああっ……んっ……」
 我ながら恥ずかしくなるくらい、甘い声が漏れた。
 頭では駄目だと判っている。
 こんな、酒と雰囲気に流されて交わす情事なんて、良い年齢になった大人のすることではない。判っているのに……抗えない強烈な誘惑に、アリエラはとうとうそれ以上考えることを放棄してしまった。
 思ってしまったのだ、どうせこのまま枯れる花ならば、一度くらい蜜がしたたるほど咲かせてみても良いのではないか、と。
 彼の妃になれるなんて思っていない。たとえ今夜限りの関係だって、それでも良い。
 妹たちだって言っていたではないか、自分の幸せを探せ、と。
 女としての幸せに浸れるのなら、ただ一度の経験だってきっと悪くない。
 何よりもう我慢できなかった。自分の肌に触れる彼の温もりも、感触も、何もかもが愛おしく、ほしくて仕方がない。
「ジェス……ジェス」
 繰り返し幼馴染みの名を呼んで、アリエラは彼の肩に両腕を回した。
 戸惑いや困惑の態度から、積極的に相手を求めるそれに変化した彼女の様子に、ジェスランの顔に疑いようのない喜色が浮かぶ。
 そのまま迫る口付けを受け入れる。
 唇を重ねるのも、舌を絡めるのも、戸惑いを捨てて受け入れてしまえば、全身が溶けてしまいそうになるくらいに心地よい。
「……これも脱がせて良いか?」
 ドレスもコルセットも既になく、身体に残るのは下着だけ。
 シュミーズの薄い生地を大きく押し上げる乳房の輪郭を辿るように彼の指先が触れて、それだけでざわっと産毛が逆立つような刺激に息を呑む。
 はあ、と熱い吐息が漏れた。
「……ジェス」
「うん?」
「…………こんな年齢なのに恥ずかしいけど……私、初めてなの。……優しくして」
 訴える声はかすかに震えていた。でも、この先の行為全てを受け入れることを匂わせるその言葉にジェスランは一瞬身体の動きを止める。
 余計なことを言ってしまっただろうか、と僅かに不安が首をもたげ始めた時、アリエラはそれが見当違いな心配であったと知った。
 なぜなら、自分の顔を覗き込むようにして彼が笑ったからだ。
 優しく、明るく、そして心底嬉しそうに、そして泣き出しそうに。望んでいた宝物がようやく手に入ると言わんばかりに。
(……ずるいわ。そんな笑顔を見せられたら……私まで泣きそうになるじゃない……)
 彼の笑顔に見惚れている内に、アリエラの身体から全ての衣装が剥がされ、生まれたままの姿が晒される。
 その露わになった肌の全てにジェスランは触れ、そして口づけた。
 そのたびにアリエラは身も世もなく喘がされ、熟した果実がドロドロに崩れ落ちるように乱されていく。
「あっ、あ、あぁ、んん……!」
 元々酔って理性が脆くなっていたせいもあるかもしれない。でもそれを踏まえたとしても、彼に触れられる場所全てが気持ちよくて、良すぎて身体が疼いてたまらない。
 特に顕著な反応を見せるのが、両足の奥、アリエラの身体の中でももっとも秘められた場所だ。
 そこが今、ひくり、ひくりと痛いくらいにわなないている。
 粗相をしたわけでもないのに、後から後からしたたり落ちたもので潤い、ほころびている様は尻や太腿に当たるシーツが濡れた冷たい感覚で嫌でも判った。
 早くそこに触れてほしいような、ほしくないような。
 もどかしい思いで両足がシーツを蹴る。
 その間、ジェスランはアリエラの疼きに気付いているのかいないのか、目の前のたわわに実った、身動きするたびに揺れる果実の先端に、躊躇わず吸い付いた。
「きゃっ……んんっ」
 当然ながらそんなところを異性に吸われるのも初めての経験で、アリエラはひっきりなしに甘い声を漏らしながら、背をのけぞらせた。
 ひとしきり右の乳房を堪能したと思ったら、次は左の乳房へ。
 形も、大きさも、柔らかさも、その味さえ全て記憶するように時間を掛けて彼は吸い、舌を這わせる。
 ただでさえ痛いくらいに充血しているのに、弄られすぎて息を吹きかけられただけで身もだえしてしまうくらい敏感になった両の乳首が、いやらしく唾液に塗れてアリエラの荒い呼吸と共に小さく震えるようだった。
「む、胸ばっかり……」
 思わずそんな声を漏らした直後だ。アリエラの甘い抗議に応じるようにジェスランの指が秘部に触れたのは完全に不意打ちだった。
 ぬるっと滑る感覚と共に彼の指に濡れ襞を割り開かれて思わず目を剥く。
 恐らく彼はすぐに指を突き入れるつもりなどなかったはずなのに、アリエラの泥濘のように甘く蕩けたその場所は、少し探られただけですぐにその指を呑み込んでしまった。
「あ、あ、あぁああ……っ!」
「……すごい、熱くて柔らかくて……ドロドロだ……」
 ゴクリと彼が息を呑む音がかすかに聞こえる。
 直前まで丁寧に優しく身体を開かせる心づもりだったはずなのに、あまりにも甘く柔らかく彼の指を呑み込むアリエラの膣洞の熱さにジェスランは一瞬にして正気を奪われてしまったらしい。
 ぐぐっと指が届く限界まで押し込まれ、その中を探るように動かされて、アリエラは喉を晒すようにのけぞらせ細い悲鳴のような嬌声を上げた。
「あ、ああん、んっ、んんっ!」
 異物が入る違和感はあっても痛みはなかった。
 中を探る指はすぐに二本に増えて、狭い入り口を割り開きながらぐるりと円を描くように膣壁を確かめる。
 彼が指を回すたび、抜き差しするたび、指の腹で擦り上げるたび、内側から吹きこぼれた蜜液が溢れ出て彼の手首までしとどに濡らした。
 まるで洪水だ。栓を抜かれた泉のように、次から次へと甘い蜜がしたたり落ちて、そこへ男を誘おうとする。
 立ち上る特有の女の香りを前に、堪らず前をくつろげたトラウザーズから飛び出したジェスランの熱杭は、既にはち切れそうなほど大きく膨らみ、血管を浮き上がらせて先走りの雫を零していた。
「ごめん、アリエラ……本当はもっと、時間を掛けたいけど……」
 自分の方が持ちそうにない、と低く呻く声が聞こえる。
 これまでの様子から、なんとなくジェスランにはそちらの経験があるのだろうと思っていたけれど……ここにきてどこかぎこちない様子から、そうではなかったのかもしれないと思わせる。
 そのぎこちなさが、逆にアリエラの心を熱くさせた。

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