極上御曹司は滾る恋情を抑えられない ~奥手なのに猛烈な溺愛で包囲されてます~

書籍情報

極上御曹司は滾る恋情を抑えられない ~奥手なのに猛烈な溺愛で包囲されてます~


著者:沢渡奈々子
イラスト:小島きいち
発売日:2023年 10月27日
定価:620円+税

便利屋で働いている芙美は、老舗企業の御曹司である恭二から依頼を受けた。
無事謎を解決した芙美に、恭二は感謝の念から報酬とは別になにか出来ないかと持ちかける。
そこで芙美は自身の『男性恐怖症』が恭二には出ていないことに気がついて……?
実は芙美は男性こそ苦手だが、性欲が強く身体が昂ぶることは多々あった。そして自分で慰めることも。
意を決して、私とセックスしてもらえないかと申し出る芙美。
恭二は驚いたものの、まずは芙美のことが知りたいとデートに誘う。
何度かの逢瀬を繰り返していくうちに、恭二自身にもとある事情があるようで――!?
互い事情を知っていくうちに、二人は心から惹かれ合う。
「まだ満足していないんだろう? 芙美」
甘く囁かれ、身体を蕩かされていく――。

【人物紹介】

相澤芙美(あいざわ ふみ)
便利屋で働いている、26歳。
地味に装っているが、大和撫子風でどことなく色気のある美人。
素直で優しい性格をしているが、ストーカー被害に遭ったせいで男性恐怖症に。
だが仕事の依頼主として訪れた恭二には何故か触れることが出来て……?

錦恭二(にしき きょうじ)
老舗企業の御曹司である、30歳。
近寄りがたいほどの美形だが、笑うと優しげな印象もある。
凛とした声色であるが、物腰は柔らかく、穏やかな性格。
芙美からとある相談を持ちかけられて、協力することに。

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【試し読み】

「あのっ、私と、その……セックスを……してもらえませんか?」
「……」
 錦は目を大きく見開いた後、ぱちぱちとまぶたを瞬かせた。
「……ずいぶんと突拍子もない申し出ですね」
「すみません、すみません……!」
 芙美は脂汗が浮いた手をぎゅっと握った。それからすべてを話した。
 性欲が強いこと。
 でも男性恐怖症なので誰ともつきあえなかったこと。
 いつもひとりでしていたこと。
 でも、自分だけでは限界があったこと。
「病気は持っていません。なんなら病院で検査を受けて診断書も取ります。美人局でもありません。後から暴行されたなんて言いません。誓約書を書いてもいいです」
 自分でも必死だなとは思ったけれど、ここまであけすけに話してしまったのだ。繕っていても仕方がない。なりふりなどかまっていられない。
 目をぎゅっとつぶって言い切った後、恐る恐る目を開いて見上げると、錦は笑いを堪えていた。
 肩を上下に震わせ、口元にこぶしを当てながら、くつくつと。
「っ、……すみません。思いきり引きました。でも、あなたがあまりにも必死で……、くっくっく……っ」
「で、すよね……」
 引いた、と言われ、芙美は口元を引きつらせた。彼の言うことはもっともだ。
 これで引かない方がおかしい。
「正直、今のままであなたのお願いを聞くことはできません。……私はね、こう見えても、見境なく女性に手を出したりはしないです。たとえそれが、据え膳として差し出されたものでもね」
「はい……」
「あなたが過去に男性絡みで酷い目にあったのと同じ、私も昔、女性に酷い目に遭わされたことがあります。だから私は、どんなに美人だとしても、無条件で食いついたりはできないんですよ」
 どんな経験をしたのかまでは話してくれなかったけれど、彼が言うことに嘘はないように思えた。
(そっか、だからかな……)
 芙美が錦に拒否反応を起こさないのは、こういうところなのではないかと。
 錦は女性に対し、明確な線を引いている。それはきっと男性に対するよりも、強固なバリアとなっているのだろう。
 だからある意味、芙美は彼を信頼できているのかもしれない。
 こんな人にいきなり「セックスをしてほしい」だなんて、暴挙にもほどがある。
 芙美は後悔の念と申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「すみません、錦さん。……今の話は忘れ――」
「時間をください」
「……え?」
「今日明日いきなり、というわけにはいきませんが、今後の展開次第では、あなたとそういう仲になってもいいと思っています」
「どういう……ことですか?」
「そう難しいことではないですよ。普通の男女のように、まずは『お互いをよく知る』から始めましょう、と言ってるんです。幸い、私には今、妻も彼女もいません。ですから、まずはデートをしましょう」
 芙美はぽかんと口を開いたまま固まった。
 しばらくして我に返って。何故か眉をひそめた。
「――いいのですか?」
「ダメだったら、はなからこんな提案しません。……何故私が、あなたの不埒なお願いをはなから拒否しないのか、分かりますか?」
「いいえ……」
 自分で言うのもなんだが、正直えぐい申し出だ。ましてや錦のような人なら、拒否反応を起こしてもおかしくはない。
 それなのに、前向きに考えてくれるという。
「それはね、あなたが誠実な女性だからです」
「誠実……?」
「さっき、祖母のオルゴールの謎を解いている時のあなたの行動を私は見ていました。相澤さん、織広慶佐次の著作を本棚から取り出す時、背表紙を指で引っかけずに、押してから出しましたね」
「あ……はい」
 本棚に並んだ書籍を取り出す時、人は背表紙の上に指をかけて引いて取り出しがちだ。
 しかし本好きの中には、それは背表紙を傷める行為だと忌み嫌う人もいる。
 だから背表紙の上部を奥に押し、浮いた下側を持って出す、という方法を好む人も多い。
 芙美も普段からそうしている。特に人様の本を扱う時は必ず。
 それを錦は見てくれていたのかと、胸に温かいものが湧いてきた。
「オルゴールを扱う時も、チェストの上に置いてから丁寧に触れていましたね。それに、祖母と織広慶佐次とのことを秘密にするつもりなのを、すぐに察してくれました。だから相澤さんは、思いやりのある誠実な人なのだと」
「それだけで……?」
「一事が万事、という言葉があるじゃないですか。人の言動の端々には、性格が滲み出るものです」
 錦がゆったりとした笑みで言った。
 芙美ははにかんで小さく返した。
「ありがとうございます」
 あんなに怪しい発言をしたのに、信用されたようで嬉しくなった。

   ***

 三度目のデートもまた、恭二が車を出した。
 家には輸入車もあるが、芙美なら国産の方が安心するのではないかと勝手に推測し、前回のデートでは自分が普段乗っている国産車を選んだ。今回も同じ車だ。
 それでも芙美は恐縮しながら「お邪魔します……」と、汚さないように気を使いながら乗り込んでくる。
 今日も今日とて、彼女はきれいだ。買ったばかりだろうワンピースがよく似合っている。
 恭二と出かける時はいつも、こうしておしゃれをしてきてくれるのだから健気だと思う。
 例のトラウマから普段は地味にしているらしいので、華やかな装いをするのには彼女なりの勇気が要ったろう。
 だから自分がよく見られたいというよりは、恭二に恥をかかせてはいけないという気持ちでいるのが、手に取るように分かる。
 助手席に座った彼女に行き先の提案をすると「もちろんです」と、弾んだ口調の答えが返ってきた。
 車は桜浜駅方面へ向かう。渋滞に巻き込まれることもなくスムーズに進み、そしてホテルの地下駐車場へと入る。
「ここ……」
 芙美が不安げに辺りを見回している。
「今日は、ここでゆっくりしようと思うんだ」
 助手席のドアを開くと、芙美はキョロキョロしながら降りてきた。
「ホテル……ですか?」
「そう。うちが提携しているホテル」
 当然のように彼女の手を取り、つないだままエレベーターに乗り、フロントに行く。チェックインを頼むと支配人が出てきた。
 仕事で何度か会ったことがあるので、挨拶をしに来てくれたのだろう。
「錦様、ご利用ありがとうございます。ご予約時にご要望いただいたものはすべてセッティングが済んでおりますので、このままお部屋に向かっていただいて大丈夫です。ご案内いたします」
「ありがとう」
 カードキーを受け取った後、支配人の誘導でVIP用エレベーターに乗り込み、上層階へ。
「こちらになります」
 重厚な木製の扉が開かれる。
 そこは何種類もの花の香りに満ちていた。
「わぁ……」
 芙美が感嘆の声を上げる。瞳がキラキラと輝いていて、実に女の子らしい。
(可愛いな……)
 恭二は、ふ、と口元を緩めた。
 支配人が一通りの説明を終えて退室すると、芙美が口元を引きつらせて振り返った。
「恭二さん、こんな高級なホテル……大丈夫なんですか? 何かしでかしそうで怖いです」
「緊張してるんだな、芙美さん。大丈夫、ここで何をしでかそうと、見ているのは俺しかいないから」
 意味ありげにそう告げると、恭二はソファに腰を下ろす。
 テーブルの上には注文していたケーキの箱が置かれ、部屋のそこここには花が生けられている。
 テレビにはケーブルでタブレットがつながれていて、いつでも映画が観られるようになっていた。
 芙美は所在なげに立ちすくんだまま、部屋のあちこちに視線を泳がせている。
「さて芙美さん、何をする? 映画も観られるし、ケーキもある。ルームサービスで食事の注文もできる。のんびりとしてもいい。芙美さんがここでしたいことを、なんでもしよう。明日までこの部屋は俺たちだけの空間だから」
 すべてを受け止めるように両手を広げると、芙美はつつつ……とテーブルまで来て、恭二の隣に座った。
 頬を赤く染め上げた芙美は、ごくりと喉を鳴らし、そして――
「したいです。……セックス」
 躊躇うことなく、けれどはにかんでそう言った。
「……そう言うと思った。おいで」
 恭二は立ち上がり、芙美の手を引いた。
 パーラールームの隣にある寝室には、クイーンサイズのベッドが二台並んでいる。
 恭二はその内の一つに、芙美を座らせた。
「あ、私、シャワーを……」
 慌てたように立ち上がろうとした芙美の腕の下に、恭二は自分の手を差し込んだ。
 そのまま持ち上げるようにして、ベッドの奥へと座らせる。
 下ろしてなるものかと言いたげに、退路を塞いで立つ。
「え、恭二さん、何を……」
 不安げに瞳を揺らす芙美に、恭二はにこりと笑った。
 この部屋に一歩足を踏み入れた時から……いや、彼女の話を聞いた時から、見たいと秘かに思っていたのだ。
「――君がひとりでするところを見てみたい」
 恭二はそれはそれはきれいな笑顔で言った。

   ***

「は……はぁ……ん……」
 達したばかりの身体は、まだひくんひくんと疼いている。
 いつの間にか恭二がそばに来ていた。乱れたブラジャーを外し、足首に引っかかっていたショーツを剥ぎ取り、ベッドの端っこで丸まっていた服もすべて、隣のベッドの上に放った。
 一糸まとわぬ姿になった芙美は、力の入らない四肢をはしたなく投げ出したままだ。
「――すごく、きれいで、いやらしい」
「きょ……じ、さ……」
「まだ満足していないんだろう? 芙美」
 性欲が強くていつもひとりでしている――そのことを知っているのだから、芙美がまだしたいと思っていることを、恭二は分かってるはずだ。
「ん……恭二さん……もっと、したい」
「じゃあ、今度は俺が手伝ってあげるよ」
 本格的にベッドに乗り上げてきた恭二が、芙美に寄り添うように横になり、彼女の肩を抱き寄せる。
 空いている手で芙美の手を取り、濡れた指を舐めた。
「や……っ、汚いのに……っ」
 手を引こうとするが、力を入れられてしまって抜けない。
 おろおろしていると、さらに舐められ、指先にキスをされた。
「ほら、きれいになった」
 恭二はにっこりと笑うと、今度は芙美の胸の先端をくにくにと押しつぶす。
「あんっ、ぁ……っ」
 久しぶりに他人の手で胸を弄られて、ゾクゾクと快感が全身を駆け巡る。
(胸を触られているだけなのに……)
 何をされるのか予測できない分、自分でするよりも、何倍も気持ちがいい。
 ふくらみをむにゅむにゅと揉まれ、乳嘴を摘ままれ、それだけで下腹部が潤んでいくのを感じる。
「はぁっ、あんっ……んっ」
「……気持ちいい?」
「んっ、きもちぃ……っ、もっと……っ」
 我慢できなくて、自分で襞を割ろうとすると、腕を掴まれた。
「こらこら。芙美は我慢できない子なのか? 俺がするから待つんだ。ほら」
いつの間にか足の方に移動していた恭二が、芙美の両膝裏を持ち上げ、そこに彼女の手を持ってきた。
「こうして自分で支えて……そうそう、いい子だ」
 自ら脚をガバリと開く形になる。はしたないと分かってはいても、見られて感じている自分がいる。
 とろりと新しい蜜が滴り、脚を伝ってシーツに落ちていく。
「あぁほら、こぼしたらダメだろう?」
 恭二が蜜を掬い、芙美の泥濘に戻して塗り込む。
「あんっ……ぁっ」
 ぬるぬると擦られて、くちゅくちゅと音を立てられて、静まっていた欲望が体内でふつふつと温度を上げてくる。
 あふれる愛液を、恭二の指が膣内へそっと押し込んで。
 そのまま何度も何度も出し入れされる。
「あぁっ、やぁ……きもちぃ……っ」
「気持ちいい? もっと強くする?」
「ん……っ、もっと、強いの……っ」
 抽送の速度が速くなり、じゅぽじゅぽと淫らな音を立てている。
 膣内でくいっと曲げられた恭二の指が、芙美の感じる部分を擦り上げてくるから。
 腰がガクガクと痙攣し始める。
「はぁっ、あ、あ、あ……っん、だめ、も……っ」
 恭二が空いている手で陰梃を剥き出して弾いてきた途端、二度目の波が来た。
「ぅあっ……っ、んんんっ!」
 頭の中が真っ白になり、全身が痺れる。少しして、ずるんと指が抜かれる感触がした。
「……可愛くイケたな、芙美」
 二度達した肢体はとても敏感になっていて、恭二が触れるだけでひくん、と反応した。
 開いたままの脚を閉じることも叶わず……恭二がそこに顔を埋めるのを止めることさえできない。
「きょ、じさ……な、に……?」
「まだまだ足りないだろう? ……芙美は淫乱なんだから」
 蜜口の間近で喋られると、吐息がふっとかかって。それがまた愛撫になり、疼いてしまう。
 刹那、しとどに濡れて光るそこに、生温かい感触が、ねっとりと這った。
「きゃあっ」
 とろんと溶けていた芙美の目が、覚めたようにカッと見開かれた。
 恭二の舌が捻じ込まれ、泥濘を浚っていく。時折じゅる、と音を立てて愛液を啜られる。
「あんっ、ゃ……っ、き、たないからぁ……っ」
「――そんなこと、気にする余裕があるなら、まだまだイケるな……?」
 硬くなった舌先が、花芯をぐりぐりと押し潰す。指とは違うぬめる感覚に、散々甚振られてきた粒芽がさらに真っ赤に爛熟していく。
「あぁんっ、い、くぅ……っ」
 恭二に舐められてものの十数秒で達してしまったが、彼は舌を離してくれない。イッたことなど気づいてもいないのか、それとも気にもしないのか、とにかく芙美のぐずぐずになった密部に埋めた顔を上げようともしない。
「あ、あ、あ、あ……、ゃ、きょ、じ……さ……っんんっ」
「――イケるだけ、イッていいから」
 じゅ、と花芯を吸われ、目の前がチカチカと明滅する。
「はぁっ、も、だめぇ……っ」

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