フェチを知られたはずが、スパダリ同期に鍛えた身体で極上求愛されています!?

書籍情報

フェチを知られたはずが、スパダリ同期に鍛えた身体で極上求愛されています!?


著者:太田まりえ
イラスト:小島きいち
発売日:2024年 4月26日
定価:620円+税

たちばな通信システムで働く三浦ほのかはある日、同期の小川秋から同期会に誘われる。
秋は同期の中でも中心的存在で、そのリーダーシップとカリスマ性から人望も厚く、女性から人気があるのだが――?
同期会の最中、ガラの悪い男に絡まれてしまったほのかを助けたのは秋だった。
安堵したのも束の間、力強い腕に抱きとめられ、熱い告白を受けるほのか。
以来、秋の口調や態度にこれまでと全く違う甘さが孕んでいることを知って――!?
真っ直ぐなアプローチを受け、秋と恋人関係になったほのかだが、実は筋肉フェチであることを隠していた。
恋人になった二人はデートするも、そこでほのかのフェチが秋にバレてしまい――!?
秋の鍛えた肉体を見せてもらうと、互いの身体を触り合うことになって……。
「じゃあ、もっと気持ちいいことしようか?」
甘美な肉体と極上な愛撫に身も心も蕩けさせられていく――。



【人物紹介】

三浦ほのか(みうら ほのか)
たちばな通信システムの経理課勤務、24歳。
筋肉フェチで、特に細マッチョと呼ばれるタイプに弱い。
同期の秋から告白され、彼の真っ直ぐなアプローチを受けて……?

小川秋(おがわ あき)
たちばな通信システム社内SE。ほのかの同期で24歳。
リーダー気質でカリスマ性を持ち、密かに女性に人気がある。
普段は黒縁のシンプルな眼鏡をかけており、草食系男子に思われがちだが……!?

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【試し読み】

 

「あの、秋、私――」
「あのくらいの筋肉でいいなら、俺も鍛えてるよ?」
「……え?」
 ついうっかり「秋が?」と不信感いっぱいの声で続けるところだった。しかし、自制できたのは言葉だけだったようで、疑いの眼は隠しきれていなかったらしい。
 無意識に秋の上半身を一瞥したほのかは、視線を上げたところで彼と目が合い、自身の不躾さを悟る。それに対して、秋の方は、気分を害した様子もなく、くくっ、と小さく喉奥で笑った。
「いいよ。信じてないんだろ?」
「あ、ごめん。だって――……」
 気まずい思いを払拭するために、脳内でこっそり言い訳めいた言葉を続けてしまう。
(だって、全然そんな風に見えないし……)
 青系のシャツをさらりと着こなす秋は、どう見ても標準体型、――いや、痩せ型にしか見えない。
「見せる?」
 ほのかの思考を読んだのか、そう言った秋は、挑むようなからかうような眼差しを向けた。
(あ、また……)
 カラオケで酔った男に絡まれた時に見た、秋の余裕綽々の態度が記憶をかすめる。能ある鷹は爪を隠す、という諺があるけれど、あの時も今も、秋は些末なことを気にしないだけの度量の深さと強さを感じさせる、と思う。
 ゾクッと背中に鳥肌が立つのを意識しながら、ほのかは言葉に窮した。
 正直に言えば、もし本当に秋が体を鍛えているのなら見てみたい、という好奇心がある。
 葛藤するほのかをよそに、秋は無言を肯定と取ったらしかった。
 無造作に自分のシャツに手をかけ、躊躇なくそれを脱ぎ捨てた彼を見れば、確かに、Tシャツ姿でもその鍛えられた二の腕がよくわかる。
「俺、着痩せするんだ。もっと脱ごうか?」
 驚いて目を見張るほのかに、誘うように秋がそう囁く。
「いいよ、彼女だし。――ね?」
 余裕に満ちた声はどこかユーモアに満ちていて、こんな時だと言うのに彼の器の大きさを物語るようだ。
 返事は求めていなかったのか、彼女が声を発するより先に、おもむろにTシャツの背に腕を伸ばすと裾を引っ張るようにして一気にそれを脱ぎ去る。
 少し乱れた黒髪を手櫛で整える様子に、正確には、それに合わせて隆起する逞しい上腕二頭筋と上腕三頭筋に見惚れた。どちらも適度なかたさと大きさで、強靭さの中にしなやかさが見て取れる。三角筋も、鍛えてはいるのだろうが、主張が過ぎることはなく、あくまでも全体のバランスは上品なまま。
 ほのかが最も魅力的だと感じる、完璧な造形の肉体美だ。
 明らかにされた男の美しさに、息をつくのも忘れていた。まばたき数回分の時間、たっぷりと秋の体つきに見とれ、やっと絞り出した声は、彼に聞こえていたかどうかも定かではなかった。
「……きれい」
 次いで視界に入った小胸筋も、大胸筋も、その下に続く割れた腹筋も、言葉を失うほどに美しい。
「本当に鍛えてる男が好みなのか。じゃあ、俺にもほのかに好きになってもらうチャンスはある――?」
 穏やかな声の裏側に言いようのない秋の切なさを感じ、それがはっきりしない自分のせいだと知っているからキュッと胸が痛む。
 視線を少し上げれば、それよりも前からほのかを見つめていたらしい秋と目が合った。
 己の狡さと申し訳なさを自覚すれば、彼女の表情から考えていることを読み取ったのか、秋の目尻が少しだけ下がる。
「――なんてね。俺、高校まで空手やってたんだ。鍛えてるのはその時から。大学でちょっとサボったけど、社会人になってまたジムに通い始めた」
 そう言って、寮から徒歩圏内にある全国展開のスポーツジムの名前を挙げる。
 思考のまとまらないほのかに気づいたのだろう。秋は、自然な様子で少しだけ首を傾げた。彼女を慮る時に秋が見せる仕草だ。
 職場で。通勤中の電車で。そして、今、目の前で。普段と同じように彼女を案じる彼に、こんな時だと言うのに、自分がどれほど秋に見守られ、心配され、さりげなく助けられていたのかを悟る。
「……そ、なんだ。知らなかった……」
 今までよりもずっと秋を異性として意識してしまい、新たな緊張で声が掠れた。
「触ってみる? 俺だけずっと脱いでるのはさすがに恥ずかしいから、ほのかも脱いでくれることが条件だけど」
 彼女が拒めば冗談にしてくれるような、明るくて軽い言い方だった。
 けれど、それが、真っ直ぐにほのかに気持ちをぶつけてくれる秋の優しさなのだと知っている。
 きっと彼は、ほのかがやんわりと断るだろうと思っているのだろうし、まだ彼女の気持ちが《友達》と《彼女》の間をふらふらしていることを理解している。
 どくんと心臓が軋んだように痛んだ。
(違う。違うの、そうじゃなくて――)
 まだまだ本当に彼女として秋のことを好きなのかどうかわからない。わからないけれど、異性として意識し始めているのは紛れもない事実で、秋の宣言通り、彼にドキドキさせられているのも事実だ。
「触りたい……」
 男性美に触ってみたいという欲求を、秋に触れてみたいという気持ちが凌駕する。さらに持ち前の負けず嫌いが重なり、気づいたらそう告げていた。
「秋に、触りたい……」
 彼の方が目を丸くしていて、内心ちょっとだけ優越感を覚える。
 緊張が五割、興奮が五割と判断した己の現状を、緊張と興奮が四割ずつ、残りの二割は非現実感だな、と修正する。
 どんなどうでもいい自己分析をしながらも、微かに震える両手でゆっくりと黒のシフォンブラウスのボタンを一つずつ外していく。
 秋の視線が、昨晩塗り直したばかりのクリアピンクのネイルに注がれるのを感じて、気恥ずかしい。けれど、不思議と恐怖や不安はなかった。
(相手が秋だから、かな……?)
 ブラウス、そしてキャミソールを脱げば、まだ一回しか使っていない薄いラベンダー色のブラに包まれた、少し大きめの胸が露わになる。
 秋が、小さく息を飲んだ気配がした。
「……きれいだ」
 ついさっきほのかが述べたのと全く同じ感想が、彼の唇からこぼれ落ちるのを聞きながら、白地に青の小花模様の散った膝丈スカートのホックに手をかける。
 一瞬の躊躇。
 ずっと足元に向けていた視線を恐る恐る上にあげれば、蛍光灯の白い光を浴びて、秋がゆるく口角を上げる。
 彼の熱を帯びた眼差しに煽られ、絡み合う視線を外せないままの状態で、スカートから手を離した。
 自慢できるほどの体型ではないし、こうして誰かに直視されるのは恥ずかしい。まして、相手は、全身から圧倒的な肉体美を発しているのだ。
 けれど、恍惚とした秋の表情は疑いようもなくて――。
 レンズ越しにもはっきりわかる、食い入るような漆黒の眼。強張った上半身の筋肉。無意識なのか、乾いた唇を舐める赤い舌。
 自分が秋の肉体に魅せられたように、彼もまた、自分に魅せられていることを本能的に悟った。

§

 おずおずと秋の肉体に触れ、彼の熱量を充分に思い知らされた頃。

「――じゃあ、もっと気持ちいいことしようか?」

 秋の蠱惑的な発言に、本能的な期待で無意識にこくりと喉が鳴った。
 不敵に笑う秋に優しくそっと顎を持ち上げられ、半ば強引に視線を絡め取られる。彼に触れたことよりも、触れられたことの方が理由で心臓が激しく鼓動し、自分のものとは思えないような甘い呼吸ばかりが耳に響く。
「返事がないってことは、同意とみなすよ……?」
「……ん、……っ!」
 秋が屈んだ、と理解した時には、もう彼の唇がほのかの鎖骨に押し当てられていた。
 手で触られるのとは違う、もっとぬるりとした生々しい感触に意識を奪われる。その間にも、秋の唇が左胸のふくらみ、深い谷間、鳩尾、と順に下降していく。
「――映画で観た、あの俳優、同じことしてたね?」
 身体中に浴びせられるキスの合間に告げられた、端的な事実。
 なんのことだろう、と、うまく働かない脳で必死に記憶を辿れば、確かに、今日観た映画のワンシーンで俳優が恋人に啄むようなキスを繰り返していた気がする。全年齢対象の作品だったから、もちろんそれほど過激なシーンではなかったが、それでも世間でイケメンと評される美男子が恋人の首筋や胸元や腹部に口づけする場面はやけに煽情的だった。
「ねえ、ほのか。あの俳優にキスされたい、とか思った?」
 記憶の中の色褪せた俳優ではなく、今この瞬間、現実にもう一度押しつけられた唇の熱さに翻弄される。
 数秒遅れて、秋は、小さく水音を立てて唇を離した。両腕でほのかの腰を抱いたまま、膝立ちの状態で彼女の顔を一直線に見上げる。いつも見上げるばかりの彼の、甘えたような拗ねたような表情に、説明のつかない愛しさと甘く苦しい感情が湧き上がった。
 あまりにも必死にほのかを見つめる彼に圧倒され、声も出せない。
 それでもなんとか首を横に振れば、安心したように顔をほのかのおなかに押しつける。
 くすぐったさは何も肉体ばかりではない。自分の一挙手一投足に秋が喜んだり、嫉妬したりするせいで、心までむず痒い。
(こんな秋、見たことない……)
 お酒の席や仕事の帰り道に砕けた様子を見る機会はたくさんあったけれど、基本的にしっかり者でリーダー気質の秋だ。理系男子のステレオタイプのようなところがあり、合理的にものを考えているようだったから、恋人に対してこんなに素直に感情を表にするのだと知り、驚きを隠せない。
 それと同時に、自分がその彼の《彼女》なのだと否が応でも実感してしまう。
「……でも、映画俳優に見惚れてた罰」
 くぐもった声で、そう言われた。
「え? あ、……ゃ、秋、そこ、だめ……!」
 腰を抱く左腕はそのままで、秋の右手だけがふわりとほのかの胸を包み込んだ。大きな手のひらの動きに合わせ、やわやわとかたちを変える乳房は、自分の体なのに信じられないくらいに卑猥で頭がクラクラする。
 張りつめた先端が秋の手に触れるたびに、ぴりりとした電流のような愉悦が足の先から頭まで走り抜ける。
「やわらか……それに、肌もすべすべで、俺の手に吸いついてくる」
 美味しそう、と言われたのは気のせいだろうか。
「ァ、ああっ!」
 伸び上がった秋に、ぱくんともう片方の乳嘴を咥えられた。そのままほのかに見せつけるようにちろちろと赤い舌で転がされ、柔らかな唇に食まれる様は、恥ずかしすぎるのに目が離せない。逃げ出そうにも、秋の強靭な腕が彼女の腰を抱き、身動きひとつままならない。
「ちっちゃいし、真っ赤。壊れちゃいそう」
「秋、それ、恥ずかしすぎる……」
 熱い粘膜に愛撫されるばかりではない。もう一方のかたい蕾は、秋の人差し指に弄ばれている。二か所同時に、けれど、別々の刺激が与えられ、それだけでもう頭が沸騰しそうだ。
「なんで? かわいいよ。それに、ほのかの心臓、すごいドキドキしてる」
 返事を待つことなく、また胸の尖りが口に含まれる。指摘された胸の鼓動は確かに速くて、きゅん、と脚のつけ根が震えた。
 腰を抱いていた秋の手が、ゆっくりと背中を上がっていくのを感じる。
 力強い男の手は、背中の途中で止まり、数回円を描いて、また下へ下へと進む。やがてショーツの縁に辿り着いた指は、おしりのまるみをなぞり始めた。
「やっ、秋、もう立ってられない……」
 初めて知る感覚に、ほのかの膝は陥落寸前だ。
 滅多に弱音は吐かない、負けず嫌いの性格だけれど、今はもうそんな悠長なことは言っていられない。
 おなかの奥に燻る淫靡な熱が苦しくて、どうにかしてほしくて。
 その原因を作っているのは秋なのに、それでも、助けてくれるのも秋だと本能的に理解している。
「……つかまって」
 蜜のように甘やかな声音と、ふわりと浮かんだ身体、高くなった視界。
 抱き上げられたのだとわかって反射的に秋にしがみつけば、嬉しそうに喉を震わせた彼は揺らぐことのないしっかりした足取りで数歩進み、ほのかをベッドの隅に下ろしてくれる。
「ん、秋……」
「ほのか。好き――」
 性急に押しつけられた唇に、食べられるかのような錯覚を覚える。
 さきほど下着を取り去った時の手つきとは違う、欲望をひた隠しにする力強い大きな手が、ほのかの後頭部を抱え込むと、そのままベッドの上に押し倒された。
「……ん、っ……!」
 隙間から割り込まれた秋の舌が、熱い。
「――ぁ、……んっ」
 彼は、探るようにほのかの舌をつつき、小さな喘ぎ声を奪うようにキスを深め、やわらかな頬の内側や上顎の裏まで舐める。
 欲しがられる。求められる。奪われる。男の劣情を押しつけられるような激しい口づけに体中の血液が沸き立つような気がした。
 ちゅぷっ、と小さく音を立てて離れた唇に、一気に寂しさを抱く。けれど、息継ぐ暇もなく、今度は左の乳嘴を下から舐め上げられて甘い悲鳴が溢れた。
「あぁッ、ゃ、……んっ!」
 見慣れた天井を背景に妖艶な微笑を浮かべる秋と視線が合えば、ぞくりとした甘く淫靡な震えが全身に走った。
 彼が眼鏡を外す仕草に見惚れ、息が止まる。
「かわいい、ほのか。本当に好き」
「ぁ、――んんっ!」
 愛おしくて仕方ない、と言われているかのような、羽のように軽いキスが胸のふくらみに落とされた。先端をかすめるだけの口づけは、二度、三度と続き、ふわふわとした気持ちよさは少しずつもどかしさに変わる。
「ん、も、あきぃ……! ぁ、ぁあっ!」
 秋を呼ぶ甘え声は、敏感に立ち上がった飾りが乳暈ごと彼の口内に飲み込まれた瞬間、くぐもった嬌声へと変わった。けれど、無意識に掴んだクッションに縋っても、秋から与えられる法悦は激しさを増すばかりで逃す術がない。
 熱を帯びた粘膜に包まれた乳嘴は、ぐにゅりと押しつぶされ、上下左右に転がされるたびに痺れるような快楽を生む。
「こっちも――?」
 言うが早いか、秋の右手はほのかの左胸に添えられた。次に与えられる悦楽を予期して身をよじれば、むしろ彼の大きな手のひらに乳嘴が押しつけられ、舌よりももっと直接的な刺激に溺れそうになる。
「ん、――んむっ、ぁ、ぁアん!」
「ここが気持ちいいの?」
「っあ! ゃ、ちが、わかんな……!」
 ふにゅふにゅとやわらかなふくらみを揉まれ、指のあいだでかたい突起をこすられ、もう一方は、乳暈も乳嘴もまとめて吸われ、時に優しく歯を立てられて。その一つ一つがたまらなく気持ちいいのに、同時に、気が狂いそうにもどかしい。
「……ん、ふっ……ッ!」
 淫熱を解放したくて秋に縋りつく。
 下腹部に溜まったままうねりをあげる快楽に、もぞもぞと太ももを擦り合わせれば、そこに秋の手のひらの熱を感じた。情熱の限りをぶつけるような胸へのとは裏腹に、下肢を撫でる手はひどく優しくて。
「……怖い? 嫌?」
 一秒でも離れるのが惜しい、と言わんばかりに、少しの間だけ離れた秋の唇から、ほのかを案ずる声が溢れる。次いで、啄むように何度も重ねられるキスの合間に「大丈夫」と答えれば、最後に深いキスを一つ落とした秋が、おもむろに彼女から離れた。
「秋……?」
「力、抜いて」
「――あ、ャ、……秋、そこは……!」
 淫蜜が滴っているであろう肉襞に、かがみ込んだ秋が顔を寄せるのがわかった。
 一拍遅れて、敏感になった亀裂に熱くやわらかな粘膜の存在を感じる。
「秋、ヤダ、それ恥ずかしい――!」
「どうして? 俺は嬉しいのに」
 心酔したようなとろける声に続いて、ぐにゅっと舌が淫窟に侵入する。押し広げられた隘路がわななき、未知なる侵入者を押し返そうとするかのようだ。
 ほのかにとって、初めての異物感。恐怖が先に立つはずなのに、不思議と不安も恐れもなかった。
「……ぁァ、っ!」

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