久遠寺専務の甘く淫らな溺愛 〜貴女の中で俺を受け止めて〜

書籍情報

久遠寺専務の甘く淫らな溺愛 〜貴女の中で俺を受け止めて〜


著者:沙布らぶ
イラスト:ワカツキ
発売日:2021年 7月30日
定価:630円+税

「受けた恩は必ず返すこと。他人に迷惑はかけないこと。そして、悲しいことがあっても前を向いて笑っていること」
亡くなった父の言葉を胸に、今日も一生懸命働く榛原紗江は、危機的状況にいた。
アパート取り壊しが一週間後に迫った今も、引越し先が決まらないのだ。
紗江が困り果てていると、彼女の勤め先の専務――久遠寺恭崇が心当たりがあると名乗り出てくれた。
しかし、それは彼とのルームシェアで!?
「……すまない。どうしても、紗江に触れたくなったんだ。̶̶ずるいって、思った?」
始まった共同生活は穏やかだった。でも、紗江は恭崇に惹かれる自分を止められなくて——!?

【人物紹介】

榛原紗江(はしはら さえ)
久遠寺テクノガラスに務めるOL。
両親を亡くしており、教師だった父からの言葉を守り、堅実に生きていた。
ある日、住んでいたアパートが急に取り壊されることになってしまい…。

久遠寺恭崇(くおんじ やすたか)
久遠寺テクノガラスの専務取締役。
部下である紗江にも気取らず、優しい人物。
とある理由から、紗江を気にかけていた。


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【試し読み】

 ぽたりと、温かい水滴が紗江の手の甲に落ちる。
 目尻からこぼれ落ちる涙は止め処なく、紗江の意思と反してぽたぽたとこぼれ落ちてきた。
「なん、でっ……こんな、の」
 久しぶりに誰かに料理を振るまい、父の話をする。
 大好きだった父が亡くなってからそっと胸の奥にしまっていた感情が、恭崇の言葉で紐解かれ、溢れてくるようだった。
「紗江——」
「すいません、恭崇さん……あ、あの」
 ひぐっ、としゃくりあげる紗江に、恭崇が慌てて向き直る。なだめる様に背中を撫でてくれる手のひらが温かく、とても優しかった。
「辛いことを、思い出させたかな。……ごめん」
「違うんです。ただ……父のことを、こんな風に誰かと話をするのが久しぶりで」
 父のことを思い出して悲しむという段階は、すでに過ぎ去った。今はただ、喪った大切な人の思い出を共有できるということが嬉しい。
 こぼれた涙を拭おうと、紗江がそっと右手を持ちあげる。すると、その手を恭崇の手が握り締めた。
 ——次の瞬間、唇に温かく柔らかい感触を覚えた。
「え、と……」
「……すまない。どうしても、紗江に触れたくなったんだ。——ずるいって、思った?」
 キスをされたのだと気づいたのは、恭崇がそう尋ねてきたあとだった。
 一瞬混乱した紗江だったが、彼を拒絶することはしなかった。
 優しく慰めるようなキスをした恭崇の表情は、まるで紗江のことを慈しむかのようだった。突然触れられたことに驚きはしたものの、不思議と嫌な気持ちはしない。
(専務の——今の、表情……)
 唇が離れる間際、恭崇が浮かべていた表情。それはどこか悲しげで、縋りつくかのような弱々しさが滲んでいた。
 恭崇は、自分と同じように大切な人を失った寂しさを知っている——そう思うと、どうしても彼を拒絶する気にはなれなかった。
 ふるふると首を横に振った紗江は、体から力を抜いた。
「これは、強制でも命令でもない。嫌だったら振りほどいてくれ。……そうじゃないと、もっと……君を求めてしまうと思う」
 にわかに情欲が滲んだ声が、鼓膜を揺らす。
 右手はそれほど強く握られているわけではなく、紗江が嫌だと言えば彼はすぐに手を放してくれるだろう。
(きっと、振り払ったからって態度が変わるような人じゃないっていうのは、わかる……けど……)
 触れあった肌の温かさが、どうしようもなく離れがたいような気持ちにさせる。
 彼とまともに会話を交わすようになったのは、ほんの数日前だ。久遠寺恭崇がどんな人間かということを、紗江は仕事の面でしか知らない。それも、専務取締役として働いている彼のさらに一部分だけだ。
「わたしを——可哀想って、思ったからですか」
「それは違う。断じて……憐憫なんかじゃない。それに、こんなことをするために君を家に越させてきたわけでもない。——俺自身、どうしたらいいのかわからないんだ」
 まるで迷子のような表情を浮かべる恭崇は、ひどく頼りなさげに顔を伏せた。
 その表情が、どこか子どもの頃の自分と重なる——大事な父を亡くし、途方に暮れていた自分の姿が恭崇と重なって、ひどく胸が苦しくなった。
「恭崇さん……」
 気が付くと、紗江は彼の体をぎゅっと抱きしめていた。
 広い恭崇の背に腕を回して、ぎゅっと手に力を籠める。すると、彼はハッとしたような表情を浮かべて紗江のことを見つめてきた。
 その表情が、ひどく愛しい。
 紗江は、やがて自分から恭崇の唇に自分のそれを押し付けた。
「んっ……」
「っ、は——紗江……」
 情動に突き動かされるまま、恭崇がきつく紗江の体を抱きしめる。痛いほどに強く抱かれながら、紗江は触れていた唇をうっすらと開いた。
「ぁ、ん……んっ、ふ——」
 ぬるりと入り込んできた舌先が、様子を窺うように歯列をなぞる。
 一度彼を受け入れると、くちづけはどんどん深くなるばかりだった。角度を変えて何度か唇を吸われ、挿入された舌は縮こまる紗江のそれを絡めとり、徐々に激しく愛撫してくる。
「んく、ぅっ……ッ、ン……あ、ぁうっ」
 呼吸が苦しくなるほどに咥内をまさぐられ、紗江は恭崇が着ていたシャツの胸元をぎゅっと掴んだ。
 頭の奥が痺れるほどの、甘くて熱いキス——ちゅ、と音を立てて二つの唇が触れ合うたびに、体から力が抜けてお腹の奥の方がじんわりと熱を宿していく。
「ぁ、んっ。ちゅ……は、ぁんっ」
「紗江、紗江——だめだ。ここじゃ……もっと欲しい。もっと——君の、すべてを」
 掠れて欲望を宿した声に、鼓膜が揺らされる。
 それを、紗江が拒むことはなかった。ほんの小さく頷くと、恭崇が彼女の体を抱えて立ち上がる。
「ひゃ……」
「部屋まで、少し我慢して」
 軽々と体を持ち上げられて驚きの声を上げる紗江に、恭崇は短くそう命じた。
 余裕のない声音が耳の近くで聞こえると、体がびくっと震えて力が入らなくなる。
「は、はい」
 恭崇の部屋は、リビングから一番遠い場所にある。逆に玄関を入ってすぐのところにあり、彼のプライベートスペースということもあって紗江も近づかなかった。
 廊下を渡り、恭崇は片手で紗江のことを抱えたままドアを開ける——彼の部屋は、リビングと同じモノトーン調のシンプルなものだった。違いがあるとすれば、白を基調としたリビングとは違い、彼の部屋は壁やサイドテーブルが黒やダークグレーで構成されている。
(ここが、恭崇さんの部屋……)
 抱きしめられた時に感じていた彼の香りが、部屋の中ではより強くなる。ちらりと見えたデスクの上にアロマディフューザーが置いてあるので、その香りかもしれない。
「……下ろすよ」
 その声とともに、紗江の体はベッドの上に下ろされた。仰向けになった体の上に覆いかぶさる恭崇は、目元に落ちた影がひどく艶っぽい。
「もう一度だけ、確認する。本当にいいの? 俺は……」
「だ、大丈夫、です。ただ——あの、は、はじめてなので——」
 震える声で、ようやく紗江はそう告げた。実は、紗江には今まで男性経験というものがない。学生時代は家族を亡くしたばかりで気持ちの折り合いがつかず、社会人になってからは多忙で出会いもなかった。
 それを恥だとは思っていないが、できればほんの少し優しくしてほしい。
 そんな思いを込めて呟いた言葉に、恭崇はうっすらとした笑みを唇に刻んだ。
「ん——わかった。それだったら、全部俺に任せて」
「ぁっ……ん、んぅ」
 先ほどと同じように唇を重ね合わせて、今度はついばむようなくちづけを交わしあう。
 ふにりと柔らかいそれが何度も押し当てられているうちに、また腹の奥の方がじわじわと熱くなってきた。
「ふ、ぅうっ……ン、ぁっ」
 ちゅ、と軽くリップ音を立てられたかと思うと、再び彼の舌が紗江の唇を舐めた。
 けれど、それは先ほどのように咥内を犯すことなく、ゆっくりと首筋を這う。
「ひゃ、ぅあっ……んぅっ——」
 くすぐったさと、妙な浮遊感のようなものが同時に押し寄せる——唾液が乾き、ざらついた舌の感触が敏感になりつつある肌を刺激してきた。
 思わず甘ったるい声を出してしまった紗江は慌てて口を押さえたが、恭崇はそんな彼女の首筋に唇を押し当ててそっと囁いてきた。
「声は我慢しなくていい。俺しか聞いてないから」
「だ、って……ぁ、やっ——ふ、ァぁっ……!」
 恭崇に聞かれるのが恥ずかしいのに、どうしてそんなことを言うんだろう——徐々に湧き上がってくる快感に戸惑いながら、紗江はされるがままに声を上げるしかできない。
「力を抜いて。大きく息を吐きながらベッドに体を預けるんだ」
 ちゅ、と首筋を軽く吸い上げてから、恭崇は優しい口調でそう諭してくる。
 まるで導くような言葉に従って、紗江は深く息を吐いた。
「は——ぁ、あ……」
 言われた通りに息を吐く紗江の腹に、恭崇が大きな手のひらを乗せた。まるで「いい子だ」とでも言いたげに彼女の下腹部を撫でると、今度はその手が服の中に侵入してくる。
「んっ……」
 着ていた服の裾がめくり上げられ、肌が冷たい外気に晒されるが、それ以上に恭崇の手のひらが熱い。
 彼がどうしようもなく興奮していることがわかると、妙な喜悦が体の内側に湧き上がってきた。
(恭崇さんの手、熱い……)
 ぼんやりとした頭の中で、手のひらの熱だけがリアルに感覚を揺さぶってくる。
 ゆっくりとした手つきで紗江の服を脱がせた恭崇は、今度は彼女の胸を覆っている下着に指をかけた。
「ま、っ……全部、脱ぐんですか」
「着たままでもいいけれど、服を汚したくはないだろう? それに……布越しじゃなくて、ありのままの紗江に触れたいんだ」
 軽く紗江の上半身を抱きかかえた恭崇は、そのままブラジャーのホックを外してしまった。そのあまりの手際の良さに、紗江の喉がひゅっと音を立てる。
「ッ、んんっ……」
 ふるん、とまろび出た柔らかな双丘は、戒めから解放されたこともあってかわずかに震えていた。
 恭崇は張りのある乳房を見下ろしながら、ちろりと上唇を舐めた。獲物を狙うような、それでいて色気のあるその仕草に、またお腹の奥が切なく疼く。
「……触るのと舐めるの、どっちがいい?」
「え、舐めっ……そ、そんなこと、聞かれても」
 どちらがいいかと問われても、そんな恥ずかしい質問に答えられるはずがない。
 顔を真っ赤にして口ごもる紗江に、恭崇は笑みを浮かべて鼻先にキスをしてきた。
「じゃあ、俺が好きなようにしてもいい?」
「あの、お……お任せ、します」
 経験がない以上、全て恭崇に任せてしまおう。
 心地好い陶酔感と芽生えつつある快楽に身をゆだねるようにして、紗江はようやくそれだけを伝えた。
「ん——痛かったら言ってね」
 そう言うと、恭崇は右の乳房に顔を近づけ、その尖端を彩る蕾を舌の先端でつついた。
「ァあっ……!」
 まだ柔らかい蕾を舌先で愛撫し、乳房を軽く揉みしだいて刺激を加えていくと、徐々にその場所がしこりはじめる。
「んあ、ぁっ……だめ、そ、んなっ……ッあ、吸っちゃ……!」
 極めつけに、ちゅうぅっ……と柔肉を吸い上げられると、敏感な紅蕾がぷくりと勃ち上がった。
「ぁ、ひっ……ンぁ、あっ……」
 胸への刺激だけで、どんどん体の力が抜けていく。
 唾液をまぶした舌がちゅるちゅると肌をなぞる音と、与えられる微かな快感に、紗江はなす術もなくベッドの上に四肢を投げ出した。
 やがて恭崇が顔を上げると、たっぷりと愛撫された胸の頂がてらてらと濡れ光っているのが見て取れた。
「く、ぅ……はぁっ……」
「じゃあ、今度はこっち。もう少し頑張って、紗江」
「え——そ、そっちも?」
 右胸だけで、すでに紗江の頭の中は焼き切れてしまいそうなほどだった。
 同じように左の乳房も唇で愛撫されたら、今度はどうなってしまうかわからない——微かな不安に顔を歪ませる紗江に気付いたのか、恭崇は右手ですっぽりと彼女の左胸を包み込んだ。
「ぁ、んっ」
「左はこっち……紗江が気持ちよさそうにしてる顔を、もっと見たいから」
「そんな——ひぁっ、ァ、やぁっ」
 恭崇は唇での愛撫を行わなかった。
 その代わりに、大きな手のひらでぐにぐにと柔肉を揉みしだき、親指と人差し指の二本の指先で先端をコリュコリュと摘まみ始める。
「ひゃ、ぁうっ……ンっ、んぁっ」
 先ほどとは異なる、少し痛いほどの刺激——それなのに、体の奥底から湧き上がってくる愉悦がひっきりなしに紗江の喉を揺らし、甘い声を出させてくる。
「だ、だめっ……そんな風にされた、らぁっ」
 目に涙の膜が張り、視界が歪む。
 必死になって恭崇に懇願する紗江だったが、彼は甘い責め苦を止めてはくれなかった。それどころか、柔らかく淫靡な手つきで左胸を弄ってくる。
「そんな表情と声で『ダメ』なんて言われたら、もっと触りたくなっちゃうだろう?」
「えぇっ……あ、やっ……!」
 意地悪な恭崇の言葉に目を丸くするも、彼の手は止まってはくれない。
 むにむにと柔らかく乳房の形を変え、先端を転がすように摘まみ上げては押し込むのを繰り返す——次第に紗江の体からは力が抜けきり、無意識のうちに腰が揺らめくようになっていった。
「腰、揺れてる……気持ちよくなってきた?」
「やっ……しら、なっ……」
 湧き上がる快楽をこらえようとして足を擦り合わせると、その間からくちっ、と水っぽい音が聞こえた。
 いつの間にか濡れそぼっていた紗江の秘裂は、熱い蜜を宿して切なく疼いている。
「ンっ……」
 火照りきった肌の上を、恭崇の手がするりと這いまわる。
 艶めかしくはあるがいやらしい触れ方ではなく、少しかさついた肌の感触が心地好いとさえ思えた。
「もっと、たくさん触ってもいい?」
 頬に熱が集まっていくのを感じながら、紗江はふっと視線を落とした。
 上半身だけをきれいに脱がされ、下半身は一切乱されていない。だというのに、下着の中はすでにとろりとした蜜が溢れ出しそうになっていた。
「これも脱ごうか。紗江の体を、全部俺に見せて」
 スカートのホックを外した手が、そのまま太腿を降りてくる。
 ベッドの下に落ちたそれを視界に入れないようにしながら、紗江は身を縮こまらせた。
「そんなに緊張しないで。なんか……俺までドキドキしてきた」
「ドキドキ、するんですか? 専務が……?」
 顔立ちは俳優顔負け、柔和な態度とスマートな物腰で女性人気が高い恭崇のことだ。きっとこれまで、たくさんの女性と付き合ってきたのだろう——つまり、そういう経験だって豊富なはずだ。
 思っていたことをそのまま口に出した紗江だったが、恭崇は心外だと言いたげに唇を尖らせた。
「のべつ幕なしに女性を誘ったりはしないよ」
 小さく笑って、恭崇は紗江の履いていたショーツに手をかけた。
(じゃあ、どうしてわたしを——)
 先ほど感じた、逃れがたい焦燥感。
 触れられれば離れられないと強く感じるほどに覚えていた体の渇きが、紗江の体の内側に蘇ってくる。
 彼がなにを考えて自分をベッドに誘ったのか——それを考えていると、体がふるりと震えた。頭をよぎる疑問を塗りつぶすように、本能が彼に触れられたいと叫んでいる気がする。
「……怖い? 体、震えてる」
「こ、わい……です。あの——ごめんなさい、どうしたらいいのかわからなくて」
 彼が欲しい、もっと与えられたいと本能ではわかっているのに、体がそれについていかない。
 恭崇の前で生まれたままの姿をさらすことは恥ずかしく、性交の知識は知っていても経験がないため、ただ恐れだけが湧き上がってくる。
「——大丈夫。俺に、全部任せてほしい……紗江の全部を、俺が貰いうけるから」
 そう言うと、恭崇は紗江の唇に触れるだけのキスを落とした。
 柔らかなその感覚を味わっていると、足からショーツを抜き取られる。
「あっ……」
 ふっと、恭崇の目が細められた。
 普段は意志の強さと人懐っこさが同居している表情が、一気に艶を帯びた男のそれへと変質していく。
「いいね?」
 その答えに、否と答えるのは許されていなかった。
 口の中に溜まった唾液をごくっと飲み込んだ紗江は、こわばっていた体から再び力を抜く。
 彼を受け入れたい——自分の深い場所で、その思いが強くなるのがわかった。
「どうしても耐えられなくなったら、教えて。紗江のことを怖がらせたいわけじゃないんだ」
 緩やかに口角を持ち上げながら、恭崇は秘された場所へと指を滑りこませていった。
「ひ、ぅうっ……」
 ちゅぷ、と小さな音を立てる蜜口は、ゆっくりと彼の指先を飲み込んでいく。
 第一関節をぬかるみの中に埋めた恭崇は、その指で丁寧に浅い場所を出入りした。
「い……っ、ぁ」
 ほんの入り口をなぞられただけなのに、体に感じる異物感は強い。
 痛みはそれほど強くはなかったが、自分ではないなにかが柔らかい場所を蹂躙しようとする感覚に、思わず体が震える。
「ゆっくり息を吐いて——そう、力を抜くんだ。怖かったら、俺の手を握って」
 恭崇が開いている方の手を紗江に差し出すと、彼女はきゅっとそれを握り締めた。熱い手のひら同士を握り合わせると、少しだけ勇気が出てくる。
「あ、ありがとうございます……大丈夫、です」
 覚悟をして頷くと、挿入された指先がより深くに突き立てられる——軽く息を詰めながら、紗江はきゅっと恭崇の手を握り締めた。
「んぁ……っ」
 膣内をたっぷりと潤す蜜をかき混ぜられ、指の腹でじっくりと媚肉をなぞられると、次第に快楽が芽吹きだす。
 丹念で、少しもどかしいほどの愛撫を受けた紗江の肌に、恭崇はそっと唇を寄せた。柔らかい肌に吸いつくと、ちゅっと音を立ててキスを繰り返す。
「ひゃぅっ! な、なに……」
 最初はお腹にキスをされたかと思うと、今度はまた乳房に顔を近づけてくる。
 先ほどの身悶えするような愉悦を思い出した紗江は体をこわばらせたが、恭崇は色づいた花蕾をねぶると同時に蜜壺の中の指をクッと折り曲げた。
「ぁ、あぁうっ……! ぁ、やぁっ」
 その瞬間、それまでとは比べ物にならないほどの刺激が体を駆け巡る。
 ちゅ、ちゅ、と軽く肌を吸われながら指を動かされるたびに、紗江の唇からは甘く艶めいた声がこぼれ落ちていく。恭崇はその様子を見て、満足そうな笑みを浮かべた。

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