極上ドクターの契約恋愛は思ったよりも独占欲強め 〜始まりは普通の恋じゃなくても〜

書籍情報

極上ドクターの契約恋愛は思ったよりも独占欲強め 〜始まりは普通の恋じゃなくても〜


著者:ぐるもり
イラスト:桜之こまこ
発売日:2021年 7月30日
定価:630円+税

医療ソーシャルワーカーとしてあくせく働くゆかりは、母親から地元に帰って結婚を考えて欲しいと懇願されていた。
まだ結婚のことなんて考えられない……どう母親を説得するのか考えあぐねたゆかりは、とりあえず趣味の温泉旅行で気を紛らわせることにしたのだった――。
気ままな一人旅でゆかりを待っていたのは素敵な宿、気持ちの良い温泉、美味しい料理。そして素敵な異性との出逢いだった。
しかし、出会った男性――遥斗は実は彼女と知り合いなうえに、同じような悩みを持つ人で!?
「今日限りだなんて、思ってないから」
母親の説得をしたいゆかりのため、彼が提案したのは「契約恋愛」だった。
しかしその関係は甘い蜜を含んでいて――!?

【人物紹介】

椎野ゆかり(しいの)
総合病院に務める医療ソーシャルワーカー。
29歳で、母親から地元に戻って結婚しろと言われているのが悩み。
趣味は温泉旅行。

青山遥斗(あおやま はると)
ゆかりと同じ病院に務めるドクター。
優秀なうえに誠実と、院内からの信頼が厚い。
実はゆかりと同じ患者を担当したことがあって…。

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【試し読み】

 薄ら暗い月明りを受けた遥斗がゆかりを見つめていた。
(あ、まただ)
 先ほど見た、熱のこもった視線。慈しむという言葉がぴったりの微笑み。どうして遥斗は自分にこんな顔を向けてくれるのだろう。ゆかりはその笑顔に吸い込まれるように、手を伸ばす。指先が頬に触れると、その冷たさに驚いてしまった。
「……」
「……」
 沈黙が二人を包む。ゆかりはもう少しだけ手を伸ばして、遥斗の頬を包み込む。
「冷たい」
「……緊張、しているって言っただろう」
 大きな手が自分のものに重なる。冷たいのは頬だけではなかった。再び熱を分け合うと、こうしていることが酷く自然なものに思えた。
(契約恋愛って本当に恋をするの?)
 その答えはどう考えても見つからない。遥斗の挙動から目を離せないでいると、添えた手に頬を擦り付けられた。甘えるようなしぐさに、ゆかりはまた心を揺さぶられた。
 青山遥斗。全国的にも名の知れた医師。ゆかりとは立場の違う人だ。こうして旅先でたまたま会わなければ、ゆかりなど関わることもなかった人だ。
(きっと、本当なら手の届かない人なんだよね)
 そんな人が今ゆかりの目の前にいて、互いの熱を分け合おうとしている。
「名前」
「……え?」
「ゆかりって呼びたい」
 ゆかりは戸惑い、考えさせる隙を与えてくれない。けれども決して強引ではない。遥斗の願いに、ゆかりはゆっくり頷く。
「は、い」
(手が届かないってわかってるのに) 
 遥斗の一挙一動にどうしても胸がときめいてしまう。仕事でのゆかりという存在を認めてくれ、母親との確執を受け止めて、助けようとしてくれた優しい人。高鳴る胸をそのままに、まっすぐに自分を見つめる瞳を見つめ返す。
「敬語も、なし」
「ど、努力、する」
 契約恋愛の決めごとのように、遥斗が一つ一つゆかりに確認を取っていく。
「手を」
 頬を撫でていた手を取られる。両方の手が遥斗のものに包まれた。
「近づいていい?」
 ここでうなずいてしまったらもう後戻りできないことを、ゆかりは知っていた。理性が叫ぶ。もう引けと。けれども、本能が遥斗を欲していた。この数時間の間に、ゆかりは誰かに甘える心地よさを知ってしまった。断ることなどできっこない。
「ぅ、ん」
 指を絡め、関節や手のひらを撫でる。顔が近いせいか、吐息を肌で感じる。今にもキスをしそうな距離だが、遥斗はそこから動かない。
「キス、しない、の?」
 耐えきれなくなって口を開く。はしたないと思いながらも、その先を望んでいる自分がいた。すると、遥斗が艶めかしい唇で弧を描いた。
「していいの?」
「ずるい……」
 ゆかりに選ばせているようで、主導権は遥斗だ。そう仕向けられていると分かっていても、従うしかない。
 指を遊んでいた手が頭に添えられる。そのままかたどる様に撫でられて、髪を掬う。
「この髪にキスしてもいい?」
「……聞いてくれるんですか?」
「無理やりしたいわけじゃないから」
 ゆかりがゆっくり頷くと、遥斗は毛先に唇を落とす。そのまま少し上目遣いで見つめられて、ゆかりは言葉も出ない。
「次は、ここ」
 髪がはらりと揺れる。繋いだ手が持ち上げられて、軽く息を吹きかけられた。ゆかりはただ頷くしかない。遊ばれていた手に唇が触れた。しっとりと、柔らかい感触だけではなく、何かが這った。ぬるり、と生温かい感触。
「ふ、あ」
 舐められた。急なことにひっくり返った声が出てしまう。
「次は、」
「ま、待って」
 離れない手を振って、ゆかりは静止する。いちいち宣言されると逆に心臓が持たない。
「そんな風に聞かれたら、もう、心臓が、壊れちゃう」
 素直に伝えると、遥斗がふと考える素振りを見せる。
「聞かなくていいの?」
「……だってもう、無理……」
 全身が心臓になったようだ。あちこちで脈打って、心も体も耐えられそうにない。
「そう。じゃあ、何も言わないよ」
 繋いでいた手が離れていく。結んでいた熱が離れ、無意識に追いかけそうになる。しかし、それよりも先に、遥斗の顔がぐっと近づいてくる。
 最後に視界に入ったのは、じっと自分を見つめる綺麗な瞳だった。濃いブラウンの中に少しだけ光る色に見入っていると、吐息が重なる。そして、はっきりと情欲の香りのするキスをされた。しっとりと柔らかい唇は少し冷えていた。しかし、互いの熱を交え、段々と心地よい温度へと変わる。繋いでいた手が背中に回され、ぐっと引き寄せられる。その間も、軽く甘噛みするように何度も唇を重ねられた。
「……あ、」
 許可がいらなくなってから積極的になる遥斗に、ほんの少しだけ腹を立てたが続かなかった。合間に漏れ出るのは甘い声だけだった。どんどん流されていると自覚していたが、交わる熱の心地よさには抗えない。
「ゆかり……」
 甘い囁きがゆかりの理性を奪っていく。熱と鼓動が溶け合い、いつしか指を絡ませ、見つめ合いながらキスをしていた。長いまつげとそれに隠された情熱的な瞳に、吸い込まれる。唇が離れると、残った舌を少し伸ばして追いかける。舌で熱を分け合うと、掬いきれない唾液が落ちる。
「やらしい」
 絡ませた指が離れる。一つになっていた手を追うと、零れた唾液をぬぐっていた。
「ぼうっとしてる」
 濡れた手で顎を持ち上げられると、先ほどまで遊ばれていた唇が視界に入ってくる。
「俺のキスはそんなに良かった?」
 物凄い自信だと思いながらも、ゆかりは素直に頷く。すると、濡れた指がゆっくりとゆかりの口内に入ってくる。唾液で濡れた手はひんやりとしていて、熱のこもった口内を少しだけ冷やした。口の中に異物が入ってきたため、残っていた唾液が長い指を伝っていく。そして、ぐちゅぐちゅと音を立てながら、ゆかりの舌を追いかけてくる。自由自在に動く指から逃げられるわけもなく、されるがままだ。
「あ、ふ……ぁ」
 誰にも触られたことのない頬肉から伝わる感触にぞくりと身を震わせる。全身が熱く、体の内にこもっていてどうにもならない。
「しっかり者の椎野さんからは想像もつかない姿だね」
 ゆかりの反応を楽しんでいた指がゆっくり引き抜かれた。失われた熱を惜しむ暇もなく、もう一度唇が重なる。重なるなどと甘い表現では足りない。捕食者と被食者の関係に近いだろう。許可なく入り込んできた遥斗の舌は、遠慮なくゆかりを追い詰めた。鼻で息をしろとよく言われるが、そんな暇もない。すっぽりと口を覆われ、そしてそのまま柔らかいソファに押し倒された。
 互いにホテル備え付けの浴衣姿だ。普段の服とはちがい、あっという間にはだけてしまう。浴衣の上からはんてんを羽織っていたが、それも全く意味を成していない。
「いい香りがする」
「かお、り」
 自分が先ほどまでいたのは油の匂いが充満している店だ。その匂いかと思い、ぱちりと目を瞬かせる。
「違うよ。せっけんと、シャンプーかな。風呂上がりのいい香り」
 首筋に顔を埋められて、すんすんと香りをかがれる。遥斗が話すたびに、吐息が肌をくすぐる。むずがゆさを感じていると、舌が肌をなぞった。
「美味しそうで、たまらない」
「あ、んっ」
 鎖骨、そして首筋。追いかけてやってくる快楽に、ゆかりは甘い声をあげる。きつく抱きしめられ、逃げることは許されない。愛撫は段々激しさを増し、ちり、と鋭い痛みが走る。痛みが引くと、あちこちに赤い跡が散らばっている。
「あ、とは……」
 ダメ、と否定を口にしようとすると、キスで塞がれる。呼吸を奪われ、誤魔化されてしまう。
 赤い跡を繋ぐように、遥斗の指で撫でられる。
「あ、ん」
 くすぐったさよりも、快楽が勝った。甘い声が漏れ出て、ゆかりは指の動きに翻弄されていた。
「どこもかしこも敏感だね」
「や、だ」
 そんなこと知りたくない、と顔を逸らす。けれどもやっぱりキスで誤魔化されてしまう。本気で嫌がっていないことを知っているのだろう。手つきは一貫して優しくて、ゆかりの快楽をじわじわと高めてくる。翻弄されていると自覚しながらも、抵抗はできっこない。非日常に人はこれほど弱いのかと思い知らされてしまう。
「なにを考えているの?」
「っ、は、ぁ」
 服で隠れるか隠れないかのぎりぎりの場所を一層強く吸われる。
「あなた、のこと」
「俺のこと? どんな?」
 絶え絶えに答えると、すごく興味深そうに聞き返された。まるで自分に興味を示してくれて嬉しいというような語り口だった。
「あのね……」
 ゆかりが話そうと口を開けば、小さなキスで塞がれる。ちゅ、と音を立てて離れていったと思って口を開くと同じことを繰り返される。
「ちょっと」
「ん? なに?」
「あなたが、聞いて……ん、う」
 また言葉を飲み込まれた。小さなキスから、音を響かせるやらしいものに変わっていく。一度止めたくて上半身を軽く起こすが、すぐにまたソファに戻されてしまう。
「今更やめるって言ってもやめられないよ」
「ちが、」
「うん」
 はだけた浴衣に冷たい手が入り込んでくる。冷たさに体が揺れる。その間に肩を撫でられ、生肌に触れる。
 そのまま浴衣を降ろされ、温泉用のノンワイヤーブラジャーがあらわになった。自分の色気のない格好に気づいてしまう。それが顔に出ていたのか、遥斗がくつくつとかみ殺したように笑う。
「ちゃんとしたのは今度見せて」
「こん!」
 そんな機会があるのかと声が裏返る。あらわになった肩に唇を落とされて、びくりと体を揺らす。そのまま肩ひもを咥えられ、ゆっくりと下ろされる。されるがままの光景をじっと見つめるしかできなかった。
 肩ひもが落ちると、自然とカップも一緒に落ちる。決して豊かではない胸を遥斗の前にさらけ出す。
 不埒な手が肩から鎖骨をたどって、そっと胸に触れる。そろりと遥斗を見上げると、小さく息を吐いていた。
(求められている)
 荒い息遣いとほんのりと赤い頬に、遥斗が自分を求めてくれていることを知る。いっぱいいっぱいで気づく余裕もなかったが、ゆかりはその様子をじっと見つめる。
 数度ふくらみを撫でた手に、指の動きが加わる。壊れ物に触れるように、ゆっくりと、しかし確実にゆかりの快楽を高める動きだ。優しい刺激に、ゆかりはまた小さく声を上げる。
「ん、ぁ……」
 ゆかりの肌の熱を分け合い温かくなった手が、ブラジャーの中に入ってくる。乳房の形をかたどり、待ち望んでいたように膨らんだ先端に指先が触れる。
「っ、ぁ!」
 肌を撫でられていたときとは全く違う刺激に、ゆかりの背中が浮く。その浮いた背中を抱き寄せられて、熱を孕んだ唇が首筋に押し付けられる。反応を楽しむように、先端をいじられ、それに合わせて断続的な声をあげる。
 中途半端に脱げた浴衣と片方だけさらけ出した乳房が淫靡な雰囲気を助長する。すぐそばに布団があるのに、ソファでむつみ合っていることも興奮を高める要因となっていた。
「かわいい。もっと聞かせて」
 腹の奥底に響く低音が耳元から流れ込んでくる。その願いに応えるように、ゆかりはまた声をあげる。
「ゆかり」
 名を呼ばれたことに反応するように、ゆかりは遥斗の背中に腕を回す。そして、この情事の間ぐらいなら許されるのでは、と「はると」と小さく唇を動かす。
「ゆかり……」
 何度も名を呼ばれる。応えるように遥斗の背中にしがみつき、同じように名前を返す。特別な存在だと勘違いしそうになる声と甘い囁きに、ゆかりの心が喜びと不安でいっぱいになる。
 不埒な手はゆかりの体中を這い、ときに甘い刺激を与えてくる。契約恋愛という間柄だが、ここまでしていいのか? それに、このまま進んでしまったらもう戻れないのでは? という不安が次々と浮かんでくるが、与えられる熱を拒否する勇気はない。
「ごめん」
 その言葉と同時に、ぐっと背中を抱き寄せられた。半裸な状態での密着に、平常時より早い鼓動に気づかれてしまいそうだ。
「初めてがソファだなんて、余裕のない奴がすることだと思ってたけど」
「よゆう」
 そんなもの、ゆかりには存在しない。けれども、密着した体で感じる、遥斗の鼓動もゆかりと同じくらい早い。荒い吐息、そして、体に押し付けられる雄の主張。遥斗が必死の思いでそう言っていることなど、すぐに分かってしまう。
「ちょっとまあ、我慢できなくなったってやつ。許してくれる?」
 おねだりするような甘えた声だった。ゆかりは小さく頷く。かっこいい見た目とは正反対のかわいらしいおねだりに、きゅん、と腹の奥底がうずく。密着した状態でいると、体が浮くような感覚があり、抱き上げられていると気づく。じっとゆかりを見つめる遥斗が目の前にいた。
「っ、」
「今日限りだなんて、思ってないから」
「……え、と」
 それってどういうこと。と続ける勇気はまだない。ゆかりはその言葉の続きを聞くのを拒むように、優しい言葉ばかりを紡ぐ唇をふさいだ。背中と腰に回された腕に力が籠る。
 自分の体重も気になったが、これからのことを話すのはもう少しだけ待ってほしかった。そんなずるい考えなど、賢い遥斗にはお見通しだろうと分かっていたが、それ以外の方法が思いつかなかった。
 唇が離れて、遥斗の視線が突き刺さる。何か言いたげな視線から逃れるように、顔を逸らした。そんなゆかりを抱えたまま、遥斗はゆっくりと歩みを進める。ゆかりは顔が見えないように背中に腕を回して、首に顔を埋める。
「かわいい」
 優しく、甘い誘惑がゆかりを虐める。ゆかりの反応を楽しんでいるかのような囁きに、手にぐっと力を込めて、強く抱き着くしかできない。
 きっちり敷かれた二組の布団の片方に体を下ろされる。対面に座るような形になり、ゆかりはそっと顔を伏せる。すると、間髪を入れずに顎を掴まれ上を向かされる。
「ゆかり。こっちを見て」
 誘惑に惹きつけられるように、唇を寄せられる。ゆかりは自らその唇を迎えに行き、しっとりとした温かさを味わう。腰ひもに手が伸びて、衣擦れの音が鼓膜をゆらす。身を隠す役割をしていない浴衣が布団の上に静かな音を立てて落ちていく。フロントホックのブラジャーにも手がかかり、まるで魔法のように簡単にホックを外された。ショーツを残して、ほとんどを暴かれてしまった。決して人に見せられるような体でもない。体を守っていた服が一枚一枚はがされていくことで、また胸が高鳴っていく。
 顔を逸らせば前を向かされ、手で体を隠せばすぐにどかされ……抵抗は何一つ許されない。それでも決して強引でない。
 遥斗の自分への扱いから読み取れる、過去。それを考えると、胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
 それがまた悔しくて、ゆかりの中に反抗心が芽生える。余裕がないのはお互い様だとわかっていたものの、自分の感情の始末のつけ方が分からない。未だに乱れの少ない遥斗の浴衣の襟からそっと手を差し込み、先ほどされたのと同じように肩を抜いていく。そして、そのまま腰ひもに手を伸ばすと、抵抗なく浴衣がはだけていく。
「積極的だね」
「だって……」
 口をとがらせて、「先生ばっかり」と返すと、きゅっと鼻をつままれる。
「ふにゃ!」
「先生じゃない。さっきは散々呼んでくれたでしょう?」
「う……」
 遥斗、とかすれ声で名を呼ぶと、嬉しそうに微笑まれた。その笑顔がとっても綺麗で、思わず見とれてしまった。
「ずっと、眼中にないって思ってたから、今すっごい嬉しい」
「がん、ちゅう?」
「そうだよ。椎名さん」
 今までとは違う呼び名。そして、雰囲気。まるで別人のような声色に戸惑っていると、
とん、と肩を押されて体が傾く。少しずつ遥斗の顔が遠のいていって、見上げる形となる。
「遥斗……?」
「うん……ゆかり、ゆかり……」
 ゆかりの疑問にも気づいているだろうに、遥斗はゆかりの名前を何度も呼ぶ。まるで確かめるような行為だ。どうしたの? と聞く前に、また唇が重なる。口の中で舌がうごめいて、言葉を奪われた。
(なにか、言いたくないことでもあるの?)
 激しい交わりの中、そんなことをぼんやりと思う。何だろうと思うが、キスが思考を奪っていく。
 ゆっくり唇が離れ、言葉と共に呼吸も奪われていた。それを整えるのに必死になっていると、ゆかりの上で乱れた浴衣を遥斗が脱ぎ捨てていた。せっかく整った呼吸を忘れるほどの美しい裸体があらわになった。無駄な肉のない男性の体が現れる。顔だけではなく体も整っていて、ゆかりはまたもや見入ってしまう。
「触っていいよ」
 そう言われて綺麗な肉体に手を伸ばす。鎖骨と鎖骨のちょうど間のくぼみからゆっくり線を描く。盛り上がった胸筋は思った以上に柔らかい。その感触を指先で味わったあと、指が下へと降りていく。割れた腹筋の現物を初めて見た。そっと手のひらで味わうと遥斗の体がびくりと揺れた。
「ぞくぞくする」
「……あ」
 お返しとばかりにささやかなふくらみを揉まれる。遠慮はなく、時々尖った先端をつねられ、甘い声が断続的に漏れ出た。先ほどまで遥斗の腹筋で遊んでいた手は、いつしか甘い声を抑えるものに変わっていた。

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