一夜の過ちから始まる絶倫社長の執着エロス 〜俺の手でもっと乱れるようにしてあげるから〜

書籍情報

一夜の過ちから始まる絶倫社長の執着エロス 〜俺の手でもっと乱れるようにしてあげるから〜


著者:臣桜
イラスト:逆月酒乱
発売日:2021年 7月30日
定価:650円+税

「経験豊富な派手目の美人」。それが周囲の、亜梨沙への評価だった。
本当の亜梨沙はストイックに体を鍛える毎日で、男性経験なんて皆無なのに……いや、皆無だったはずだった。
とある悩みに耐えきれず、逃げるようにお酒に溺れた翌日、亜梨沙は処女を失っていたのだ!?
隣に眠る男性は当然見覚えがなく、パニックに陥りその場から逃げ出した亜梨沙だったが、偶然彼——及川樹と再開してしまい……!?
「……男を煽って、……どうなるか、分かってるんだろうな?」
出会った夜のことを、亜梨沙は覚えていない。しかし、一緒に過ごす時間があまりにも楽しくて亜梨沙はどんどん惹かれていって——!?

【人物紹介】

花宮亜梨沙(はなみや ありさ)
美人がゆえに周囲から気が強く、経験豊富だと誤解されている。
本当は気が弱く、彼氏がいたこともない。
食べることが好きで、太らないようジムで鍛えている。

及川樹(おいかわ いつき)
亜梨沙とバーで出会い、一夜を過ごした男性。
正体は、OECという大企業の社長。
亜梨沙の、見た目と中身のギャップに惹かれている。


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【試し読み】

「う……っ、ん、あぁ……っ、あ……っ」
 ベッドが軋む音がし、彼女の嬌声が寝室に響く。
 彼女の名前は花宮亜梨沙。
 いきつけのバーで愚痴を吐きながら飲み潰れてしまったらしく、紆余曲折あって自分——及川樹とこうなってしまった。
 二人がもつれ合っているのは、樹の自宅の寝室だ。
 ダークカラーの寝具で揃えられたキングサイズベッドの他、向かいにテレビ、ベッドサイドテーブルがある。室内の空いた空間にリクライニング式の一人掛けソファと小さなテーブルがあり、あとはクローゼットのみというシンプルな作りだ。
 室内は壁際の間接照明が点けられている他、ベッドサイドのランプが灯っている。
 樹が腰を突き入れるたび、彼の鍛えられた筋肉の影が濃くなり、薄くなる。
 亜梨沙はロングヘアを広げ、酒が入って真っ赤になった顔で声を上げていた。
「あぁ……っ、あ……っ! んっ、やぁ、きもち……っぃ」
 樹は亜梨沙に一目惚れをして抱いている……訳ではない。
 とある理由があり、抱こうと決意した結果だ。
 最初は美人局かと思って周囲を警戒していたが、どうやらその気配はなかった。
 いざ抱いてみれば意外と可愛く、気が付けば夢中になって腰を振っている。
 実際、樹は亜梨沙の事をとても美しく、可愛いと思っていた。
 強気な美人顔とでもいえばいいのか、芸能人やモデルといっても通じる美貌を持ち、スラリと背が高い上に胸も大きい。
 腰を突き入れるたびにユサッユサッと揺れる巨乳は、眼福ものだ。
 自分が抱く事で、信じられないぐらい美しい女性が乱れるさまは、男として無上の悦びを樹に与える。
「亜梨沙……っ」
 樹は熱っぽい声で亜梨沙の名前を呼ぶ。
 初めはバーで彼女に会ったあと、もちろん〝花宮さん〟と呼んでいた。
 だが酔っ払った彼女を介抱してもつれ込むように樹の自宅まで来たあと、彼女に迫られて、樹としても特別な感情にならざるを得なかった。
 結果、彼は亜梨沙を名前で呼んで、恋人のように抱いている。
 単純に、亜梨沙は女性として非常に可愛い。
 自分を潤んだ目で見上げ、顔を真っ赤にしてハァハァ悶え、熱く潤んだ蜜壺で締め付けてくる。
 我ながら単純だと思うが、その姿を見ただけでグッと「愛しい」という感情がこみ上げた。
「もう……っ、痛みは、ないか……?」
 樹は亜梨沙を気遣い、そっと彼女の頭を撫でる。
 ——そう、亜梨沙は処女だった。
 年齢を訊けば彼女は二十七歳だという。
 誰もが振り向く美人だというのに、処女だと聞いて自分の耳を疑った。
 だが酒の入った彼女から絡まれ半分に理由を聞けば、なるほど……と納得した。
「うん……っ、き、もちぃい……っ、あ、いつき、——っさん……っ」
 大粒の涙を目元に光らせ、亜梨沙はクシャッと泣き笑いの表情になる。
(ああ、くそっ。可愛い……っ)
 キュウッと胸の奥にこみ上げる感情を自覚し、樹は亜梨沙の腰を抱え上げた。
 本格的に腰を突き入れられ、より深くなった結合に亜梨沙が嬌声を上げる。
「きゃぁ……っ! ——あぁああぁ……っ」
 ビクビクッと大げさなまでに亜梨沙が跳ねた時、彼女の蜜壺が凄まじい力で樹を締め上げた。
「……っく、——ぁあ……っ」
 もうそろそろ自分も限界だと感じ、樹は歯を食いしばってラストスパートをかける。
 ベッドが激しく軋み、二人分の呼気が寝室に充満している気がする。
 バチュバチュと腰が叩きつけられる音と、体液が飛び散る音が高まったあと、樹は激しく体を震わせてズンッと腰を突き入れた。
「あぁあああぁあ……っ!!」
 亜梨沙が仕留められた獣のような声を上げ、ビクビクッと痙攣する。
 白い喉を晒して官能を貪る彼女の嬌態を眼下に、樹は自分の欲望を解放した。
「出る……っ」
 亜梨沙の膣内で避妊具に包まれた肉棒が大きく膨れ上がり、先端の空間にドプドプと白濁を発射してゆく。
「っあぁ…………」
 ——気持ちいい。
 ここ数年ご無沙汰で、樹は女性を抱いていなかった。
(こんなにも気持ち良かったんだ……)
 心地いい疲労感にまみれながら、樹は亜梨沙を抱き締め、汗を浮かべた彼女の頬や唇に優しく唇をつける。
 彼女の温かな粘膜の中で、樹の肉棒はまだビクビクと跳ねて精液の残滓を吐き出していた。
「亜梨沙……」
 もう完全に、樹が亜梨沙を呼ぶ声音は恋人のそれと言っていい。
 視線も彼女を愛しむものだった。
 最初はただの酔っ払いかと思ったが、見た目とは異なる彼女の内面を知るうちに、どんどん興味を持った。
 今は〝美しく強そうな女〟という外見の割りに、とても可愛い一面を持つ女性だと分かり、完全に惹かれていると言っていい。
 名前を呼ばれた亜梨沙はぐったりとして目を閉じ、気を失っている。
「……良かったよ」
 樹は最後にもう一度亜梨沙の唇にキスをし、屹立を引き抜いて避妊具を処理した。
 それから一度洗面所に向かい、お湯で濡らしたタオルで亜梨沙の体を拭く。
「綺麗な女性だな……」
 しばらく亜梨沙の寝顔を見つめてから、樹は時刻を確認し、あくびをしながら亜梨沙の隣に潜り込んだ。
 ベッドサイドのランプが消され、間もなく健やかな寝息が聞こえてきた。

   **

「…………」
 あまりの頭痛で早朝に目覚めた亜梨沙は、自分の横に眠っているパンツ一丁の男を見て、美しい顔を引き攣らせ固まっていた。
(やばい。ここ、どこ? 誰? この人……)
 考えても考えても分からず、返ってくるのはガンガンという頭痛と股間の違和感のみだ。
 おまけに自分は全裸で、何をどう考えても事後……の気がする。
(昨日やけ酒してたのは覚えてるけど、そこから先の記憶がない……。この人、ヤクザとかだったらどうしよう。見たところ刺青はないみたいだけど、今どきのヤクザって全員が全員、刺青入れてるか分からないし……)
 亜梨沙の中では、酔っていた自分がこの男に強引に〝お持ち帰り〟をされ、無惨に処女を散らされてしまった——という事になっている。
(…………やっちゃった……)
 心の中で呟き、亜梨沙は両手で顔を覆う。
 自分の酒癖の悪さは自覚していて、いつか何かしでかすのではという恐れはあった。
 だが酔っていても、自分の顔やスタイルを目当てにナンパしてくる男には、絶対に引っかからない自信はあった。
 たとえ泥酔しても、自分は好きでもない男に〝お持ち帰り〟をされる女ではないと思っていた。そんな事態になれば、自分は「お断り!」と尻にキックを叩き込むぐらいの事はする。
 その意味では、友人に「加害者にならないように気を付けなよ」と言われている程だ。
 だからこそ、いま亜梨沙はこの上ないショックに苛まれ、自己嫌悪に陥っている。
 処女を大切に取っておいた訳ではない。
 むしろ二十七歳にもなったのだから、とっとと卒業できるものならしたいと思っていた。
(だからって……これはないでしょ……)
 はぁぁぁ……と重たい溜め息をつき、亜梨沙は両手で頭を抱えてうんうん唸る。
 その時、男性が「ん……」と声を出し、亜梨沙のほうに寝返りを打った。
「!!」
 起こしてはまずいと、亜梨沙はギュッと体を縮こまらせ、息を殺す。
 だが男性はスヤスヤと眠ったままで、起きる様子は見せなかった。
(良かった……。ひとまずここから退散しよう)
 男性を刺激しないように、そっとベッドから下り、床に立ったところで思いっきり顔をしかめた。
(股関節!! いったぁああぁ……!!)
 脚の付け根がギシッと痛み、思わず悲鳴を上げそうになる。
 おまけに膣内にもまだ異物が入っているような違和感があった。
(……これは……。本当にこの男性とやっちゃったのか……)
 溜め息をつき、薄暗い部屋のなか改めて男性を見てみる。
 顔立ちは端整だ。キリリとした眉の下、伏せられている睫毛は濃くて長い。スッと通った鼻筋や、形のいい唇にフェイスラインなど、すべてが整っていて思わず見惚れる。
 亜梨沙が布団から出た事もあり、彼の体は腰ほどまで見えている。
 その体もかなり鍛えているのか引き締まっていて、しっかりと筋肉がついているのが分かる。男性の裸を見てニヤニヤする趣味はないはずなのに、胸板や腹筋を見て「凄い……」と思い、腰から鼠径部にかけた、いわゆる〝スケベライン〟を目の当たりにして変な気分になる。
 ウエストゴムにブランドのロゴが描いてあるボクサーパンツの股間を見て——、「いやいや」と慌てて目を逸らした。
(……顔は格好いい。……イケメン。体も鍛えているみたいだし、いい体型してる。……でも、酒に酔った女性をお持ち帰りして抱くような人なんだよね? 私、この人が格好いいからホイホイついて来ちゃったって事?)
 本来なら自業自得なのだが、亜梨沙はその事を知らない。
 二日酔いで頭が痛むのに加え、罪悪感と男性へのどうにもならない感情で一杯になった亜梨沙は、その場で深く考えるよりも行動することを選んだ。
(でも、今は退散!)
 床に散らばっていた自分の下着やストッキング、服をさっさと身につけ、コートとバッグを探す。
 寝室から出るとかなり広いマンションのようで、少し迷ってから辿り着いたリビングは広々としていた。
(何? このゴージャスなマンション……! リビングダイニング広い! あれってバイオエタノールの暖炉? お洒落! 熱帯魚の水槽もある!)
 目に入ったのはセレブの住まいと思えるラグジュアリーな空間で、ついつい細部に至るまでチェックしたくなる。
 だがここは誰かも分からない男の住まいなので、さっさと退散するに限る。
 リビングにあるチェストの一段目は浅い引き出しになっていて、まるで店のようにガラスケースの中に高級ブランドのサングラスがズラリと並んでいた。
(サングラス……普通、あんなに掛ける? やっぱりヤクザの必須アイテム……?)
 本物のヤクザと関わりを持った事はないし、Vシネマなどもまったく見ない。だがヤクザはサングラスを掛けて派手なシャツか、黒シャツに白いスーツ……というイメージがあった。
 クローゼットをあさって確認するつもりはないけれど、これだけゴージャスな部屋に住んでいるなら、どんな服があっても驚かない。
(バッグ、あった!)
 リビングのソファに亜梨沙のバッグがあり、隅にあるポールハンガーにはコートも掛かっていた。
(よし、逃げよう!)
 足音を殺して玄関に向かいかけ……、ふと良心が痛む。
(処女は奪われたけど、少なくとも殺されずに済んだ訳だよね……? むしろ一泊の恩があると考えたほうがいいのかな……?)
 あまりにも非日常のシチュエーションなので、いかんせん亜梨沙の価値観もおかしくなっている。
(あの人、援助交際目的だったのかな……。もしかしたらこの家、誰かセレブな女性の住まいで、あの人はヒモっていう可能性もあるし……)
 そう思うと、急に見ず知らずの男性が哀れに思えた。
(お金置いていこう。それでチャラ。私もこれ以上深く考えないようにしないと)
 うん、と頷いてバッグから長財布を取り出すと、三万円と数千円入っている。
(あー……。今月は絶対に飲みに行かない。節約する!)
 決めてから、テーブルの上に三万円を置き、心置きなく玄関に向かった。
 亜梨沙のパンプスは揃えて置かれてあり、それを履いて靴音がしないようにつま先だけで歩いて玄関から外に出た。
 エレベーターで地上に下りる間、スマホを起動させてマップを開く。
「あ、なんだ。麻布十番か。二十三区から出てたらどうしようって一瞬焦っちゃった」
 ——とはいえ、高級住宅街として有名な麻布十番のマンションに自分がいたと思うと、恐ろしい心地になる。
 けれどひとまず安堵の息をつき、亜梨沙は最寄り駅に向かって歩き出した。
 頭と股関節はまだ痛いが、フィジカルな痛みには割と強いほうだ。
(そう。陰湿なアイツに比べたら、こんなもの……!)
 逆境には慣れたはずだ。
 今さら通りすがりの男に処女を奪われたぐらいで、泣いて堪るものか。
 瞳にグッと強い光を宿し、亜梨沙はマップを見ながら足を進めた。
 四月下旬の、暑くなりそうな日の朝だった。

   **

「んー……」
(よく寝た……)
 樹は意識を浮上させ、ベッドの中でぐーっと伸びをする。
 昨晩久しぶりに女性を抱いたからか、疲れてはいるが身も心もスッキリした気がした。
 目を閉じたまま、これからの事を考える。
(朝食作ってあげようかな。何が好きなんだろう)
 そう思い、もう一度ゆっくり伸びて脱力しながら腕を動かし——、冷えたシーツに手が触れて「ん?」となった。
 目を開けて隣を見ると、もぬけの殻だ。
「……え? マジ?」
 幸せな目覚めだと思ったのに、急に気持ちが落ち込んでいく。
 ベッドから下りても、昨晩脱がせた亜梨沙の服はない。
「まさか……」
 下着姿のまま玄関に向かうと、彼女のパンプスはなかった。
「…………マジか」
 呆然としたままリビングに戻り、テーブルの上に何か置かれてあるのに気付く。
「……さんまんえん?」
 見まごうことなく、日本通貨の三万円だ。
 それから、遅れて理解する。
「…………ヤリ捨てされた……!!」
 樹は寝癖のついた頭を両手で抱え、その場にしゃがみ込んで重たい溜め息をつくのだった。

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