偽装結婚なのに一途で甘い溺愛に戸惑っています!? ~次期社長の独占愛に貫かれて~
著者:桜旗とうか
イラスト:カトーナオ
発売日:2023年 4月14日
定価:630円+税
お菓子好きの静夏は、製菓メーカーの営業部で働きながら充実した毎日を送っていた。
ある日、大企業の苑矢木商事から静夏直々にイベント企画に関する依頼が来る。
そこで静夏の大学時代の先輩であり、苑矢木商事の副社長・苑矢木響也と再会した――。
かつて恋心を抱いた響也との邂逅に緊張する静夏。
打ち合わせのあと近況報告をしているうちに、お互いに忘れられない相手がいると知った響也から偽装結婚の話を持ちかけられて……?
割り切った結婚でも彼の役に立ちたいと思った静夏はその提案を受け入れることにしたのだが――!?
「俺はこの関係まで嘘にするつもりはない」
突然、真剣な眼差しをした響也からキスをされてしまい――?
【人物紹介】
天野静夏(あまの しずか)
琴田製菓の営業部で働く26歳。
お菓子好きで、特にスルメの酢漬けには目がない。
大学時代、先輩の響也に恋愛感情を抱いていたのだが――?
苑矢木響也(そのやぎ きょうや)
苑矢木商事の御曹司で次期社長。
社交的で優秀でありながら、静夏に対しては不器用な一面も見せる。
静夏に偽装結婚を持ちかけるのだが、その真意は……。
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【試し読み】
「一緒でいいかなと思ったんだ」
「? なにと?」
「俺と」
「なにを?」
「ベッド」
目をしばたたかせた。不思議に思って響也さんに近づいて顔を上げる。背が高いな、なんて考えながらじっと見つめていると彼が身を屈める。ちゅっと唇が触れ合わされて、思考が止まった。
「なっ、なっ……んでキス……」
「嫌か?」
「い、嫌とか嫌じゃないとかじゃなくて」
「さっきはなにも言わなかった」
「言えなかったんです! びっくりしちゃって!」
なんでこのタイミングでキスするの?
響也さんの表情を窺ってみても、考えていることがさっぱりわからない。
「キスってするものですか?」
「夫婦ならするだろ」
「私たちは、言ってみれば偽装結婚をするんですよ。キスとか必要ないじゃないですか」
周囲の目を欺くために。煩わしい縁談を避けるために。契約にも近いかもしれない。そんな関係の私たちが、恋人みたいな真似をする必要はないはずだ。こんなことをされたら、だいぶ色褪せてくたびれてしまった私の片思いは、また色を取り戻してしまう。もっと彼を好きになってしまう。
「偽装結婚……な」
「そうですよ。私たちは結婚というものに対して消極的だったでしょ。それでお互い結託することにしたわけで……」
「悪の組織みたいだな」
茶化すわけではなく、彼は目を伏せてそんなことを言った。
親にしてみれば実際そうだろう。この結婚が嘘で塗り固められたものなのだから。
「……俺は……」
彼の腕が私を引き寄せ、抱きしめる。困惑していると、前髪が触れ合って顔を上げた。吐息が混ざり合い、唇が重ねられる。
「んっ……」
「俺はこの関係まで嘘にするつもりはない」
目を逸らされることなく言われ、ドキリとした。こんなに真剣な顔で言われたら、また勘違いしてしまいそうになる。
「どういう……意味ですか……?」
「そのままの意味だ」
顔を寄せられ、唇を舐められた。びくっと反応すると、彼の腕が強く私を抱きしめる。
「先輩……」
「響也だ。慣れろって言っただろ」
熱を帯びるような声が囁く。吐息が触れ合って、鼓動が高鳴った。
彼の舌先に唇を割られ、ぬるりと口内に舌を差し込まれる。
「んっ……ふ……っ」
生き物のように蠢く彼の舌は、歯列をなぞって粘膜を舐め上げた。
「んぅっ……、んっふ……」
くちゅくちゅと水音を立てながら舌を絡め取られ、身体から力が抜けそうだ。
この行為を、嫌だと思えたらよかった。そうすれば、私は彼を全力で拒めただろう。ひどいことをするとなじることもできたかもしれない。だけど……。
「っは、んっ……んっ」
なんとか呼吸を継いでも、すぐに彼は唇を塞ぎにくる。まるで、絶対に逃がさないと言わんばかりだ。
「響也……さ……んっ」
「嫌ならもっと拒め」
ひどいことを言う人だ。ずっと好きで、諦めることさえできなかった人に触れられて、こんなキスまでされて、拒めるはずがない。私は、彼とこういう関係になりたかった。ずっと、隣にいて寄り添い合うような関係になりたかった。
「響也さんは、私とこんなことができるんですか……?」
唇が離され、荒くなった呼吸を少しでも整えながら彼に尋ねる。けれど。
「できるよ」
あっさりと答えを返されたあと、唇が重ねられる。服をたくし上げて、裾から手が忍び込んでくる。
「んっ……あ、だめ……」
彼がキスのその先を望んでいることはわかっている。だからこそ腕を掴んで制止した。
これ以上先に進んだら絶対に拒めない。私の片思いはまだ終わってない。
「……どうすれば好きな奴を追い出せる?」
肩口に顔を埋めて、彼が掠れた声で呟いた。
「響也さん……?」
もしかしたら、彼はいまとても苦しい思いをしているのではないだろうか。
好きな人を諦める決断というのは、想像するよりずっと苦しい。容易くできるなら、きっとこんな道は選ばなかったはずだ。彼も、私も。
「私は……婚姻届を提出して、表面上だけ夫婦になるのかなって思ってたんです。だからちょっとびっくりしましたけど……」
「うん。……そういう関係でいたほうが、たぶんいいんだろうな」
そう言いながらも、彼の腕は私を強く抱きしめ続ける。苦しいほど込められた力は、響也さんの決意なのかもしれないと思った。
「無理を要求しすぎた。悪い」
「あ、あの、響也さん」
離れようとする彼の腕を思わず掴んだ。このまま離れてはいけないような気がしたから。
「わ、私でよければ……あの……」
もうちょっとさらっと言えたほうが恥ずかしくないだろうし、様にもなったのだろうけれど、私はこんなところでももじもじと決まり悪く口ごもってしまう。
「女性は好きな相手としかできないって言うだろ。無理しなくていいよ」
額にちゅっとキスをされる。このまま、そうですねと言えば彼は身を引いてくれるだろう。でも、響也さんだっていろんなものを飲み込んで決めたことのはず。
「私……っ、先輩のこと、好きですっ」
「…………」
勢い余ってなにを口走ったのか。こんな形で好きなんて言うつもりはなかったのに。私の気持ちが彼に伝わるのはまずいのに。ちらりと響也さんを見上げると、なんとも複雑そうな顔をしていた。ああ、やっぱり伝わってしまっただろうか。それでこんな顔を……。
「後輩として、好きな先輩……なんだよな」
「えっ。あ、そ、そうですっ」
……ひょっとして気づかれてない?
それはそれで悲しいが、伝わっていないのならばごまかせる。そう思ったのだけれど。
「……せめて名前で呼んでくれよ。頼むから」
苦しげな声で彼がそんなことを言った。なにかを訴えられているようで、響也さんの顔を覗き込もうとしたが、肩を掴まれ、壁に身体を押しつけられた。両手を押さえられ、唇を重ねられる。
「んんっ……」
容赦なく舌を差し込まれて、口内が蹂躙される。粘った水音を立てながら舌を絡め取られた。
「ふ……んっ……ん……」
ブラウスのボタンが外されていく。前を開いて、彼の手が肌を撫でた。
「今日、ずっと思ってたんだ。この服、よく似合ってるなって……」
「本当……ですか?」
スカートはもちろんだけど、クリーム色のレースブラウスも可愛いと思って選んだ。それを、似合っていると言われたら嬉しくなる。
「俺の……って、……で……たよ」
「えっ?」
彼の言葉がほとんど聞き取れなかった。聞こえないように、声を潜めたのだろうけれど、聞き逃したくない。でも、彼はなにかを言いたげで、けれど首を左右に振って目を伏せた。
「……なんでもない」
胸に手をあてがわれ、ゆっくりと揉まれると身体がびくりと反応してしまう。
「響也さん……んっ」
性急だ。でも、嫌じゃないのは相手が響也さんだからだ。心から結ばれるわけじゃないとわかっていても、好きな人に触れられる喜びは存在する。
「続けていいか……?」
響也さんの声がかすかに上擦った。これは、生理的な現象……?
それでも、彼が私に興奮してくれているなら嬉しい。ほんの少しだとしても。
「静夏……?」
焦れたように、彼が額を擦りつけてくる。まるでねだられているようで、自然と頷くことができた。
「だったら、場所を変えよう」
そう言って、身体がふわりと浮き上がる。とっさに彼の首筋へ腕を掛けたが、こんなにあっさりと抱き上げられるなんて思ってもみなかった。
部屋を移され、ベッドへ横たえられる。部屋はシンプルで、ベッドの傍にサイドテーブルがあるだけ。クローゼットはあるのかもしれないが、この瞬間には見つけられなかった。ここが響也さんの部屋かなと視線をさまよわせると、彼が覆い被さってきた。
「静夏、口開けて」
彼の指が唇に押し当てられ、促されるまま口を開く。唇が重ねられ、ぬるりと舌が差し込まれた。
「んっぅ……ふ、っんん……」
くちゅくちゅと水音が立つ。その音がやけに反響して耳に届いて、恥ずかしいのに頭がぼうっとするくらい気持ちいい。
彼の手が白いブラを押し上げる。
「あ……、ま、待って……」
「これ以上は嫌か?」
「嫌というか……」
触られたことがない。見られたことも当然ない。だから恥ずかしくてたまらないのだ。それをうまく伝えられなくて言葉を探していると、彼が焦れたように私の胸先を擦った。
「ひぁ……あっ……」
「嫌ならもっとわかりやすく抵抗してくれ。止まってやれない」
耳朶を食まれ、首をすくめた。
「あっ、んっ……」
耳元を這う舌の感触にぞわぞわとした感覚が湧き上がる。胸の肉粒を摘ままれて、身体がびくっと反応して恥ずかしい。
「やっ……あ、……恥ずかし……」
「可愛いよ、大丈夫」
落とされる声さえ身体を甘く疼かせる。
着ているものを脱がされて、露わになっていく自分の身体から目を背けたい。けれど、彼が胸先に吸い付くと、どうしてもそれを目で追いかけてしまう。
「あ、ああっ……」
こんなに恥ずかしいことをされているのに、全身がどんどん熱くなっていく。気持ちいいかどうかわからないはずなのにビクビクと身体が跳ね上がった。
「響也さ……、あ、んっ……響也さん……っ」
舌先で粒を捏ねられる感覚が怖い。疼くような鈍い感覚が引きずり出され、それは時として暴れ出したくなるほど焦れったい。そんな波が続くことが怖いのだ。
「静夏、もっと見せて」
スカートを引き下ろされたあとショーツに手を掛けられ、するりと脱がされてしまう。身体を覆うものがなにもなくなって心細い。恥ずかしくて顔を隠すと、彼の手がそっと私の手を掴んでどけさせた。
「……可愛いな」
ちゅっと、戯れるようなキスをされる。優しく微笑みかけられて少し安堵した。
次々と起こる不慣れな出来事に戸惑ったけれど、いま目の前にいるのは私がずっと憧れ続けた人。怖がる必要はない。
気持ちを落ち着かせるように目を閉じて、ふっと息を吐いた。
「静夏」
名前を呼ばれてキスをされる。その行動にどんな意味があるのだろう、と彼の動きを目で追いかけた。響也さんが一度身体を離すと、着ている服を脱ぎ始めた。衣擦れの音が耳につく。彼の身体が露わになっていく。その様子から目を離せない。
広い肩も、程良く鍛えられた体も、息を飲むくらいきれいで喉を上下させる。それが、緊張だったのか期待だったのかはわからない。でも、彼が脱いだ服を邪魔そうにベッドの脇へ落としたあと、目が合って、思った。ああ……嬉しい、と。
「肌が触れ合うほうが、静夏も少しは落ち着くんじゃないかと思ったんだけど」
そう微笑んで抱きしめてくれた彼は、どこか照れているようにも見えた。
気遣ってくれたことはわかったけれど、たぶんこれは落ち着いていられない。肌が直接触れ合う。彼の体温が直に伝わってくる。
背中をそろりと撫でられた。
「っ……あ……」
羽根が触れるような刺激だったのに、びくんと身体が跳ね上がる。私は恥ずかしくてたまらないのに、響也さんの顔を見れば少し機嫌がよさげに見えた。
彼の手が背中を伝って下り、腰を撫でる。そのまま下腹部へ流れると、身体をずらして臍のあたりに舌を這わせ始めた。
「あ、あっ……」
くすぐったい。でも、なんだかぞわぞわする。身体の中心がむずむずするような、熱くなるような不思議な感覚だ。
「響也、さん……」
彼の頭に手を伸ばし、髪を指に絡める。制止したかったのか、ただ触れたかっただけかはわからない。彼に触れていると、鼓動は高鳴ってしまうけれど、不思議と落ち着いた。
「静夏。もっと、いい?」
頭では瞬時に意味が理解できなかったが、無意識に頷いていた。思考とは違う場所が彼を求めているのかもしれない。
返事をした私に彼が視線を向ける。その瞬間見せられた笑みに、きゅうっと胸が疼いた。
彼の手がゆっくりと下肢へと下っていく。脚の間に滑り込まされ、膝に掛けられると左右に割られた。
「っ……、響也さん……っ」
慌てて手を伸ばして制止したが、その手は彼に握られてしまう。
指を絡めて繋がれ、指先にキスをされる。大丈夫だよ、と言われたような気がした。それなら、彼に身を委ねてしまおう。
深呼吸をすると、彼が脚の間に身体を滑り込ませた。心臓が、バクバクとうるさくなっていく。目を閉じて、見ないようにすればいいのかもしれないが、それはそれでかえって緊張する。だから顔を逸らして横目で見ていると、両脚を持ち上げられて焦った。
「ま、待って響也さ――」
言い終えるよりも早く、彼が秘部へ顔を寄せる。
「きょ……や……さん……」
声が震えた。なにをされるのか知っているけどわからない。怖いのとも違う。でも、震えが止まらない。これは――。彼が花芯に唇を寄せた。優しく食まれ、ちゅっと吸われる。
「んっ……あ、あっ……」
持ち上げられた足先がぴくんと跳ねた。
「痛いことはしないから。声、我慢するなよ」
響也さんと目が合う。言葉の意味はよくわからないが、言っていることはわかる。こくこくと頷くと、彼は秘所へと目を戻した。ちゅうっと再び肉芽を吸われ、シーツを掴む。
「あ、ああっ……」
なにかが引きずり出されるような感覚に下肢がくねった。びくびくと足先が勝手に跳ねて止まらない。
「響、也……さ……あ、あんっ……」
ねっとりとした感触が這う。花芯に絡みついて、柔らかな刺激が与えられた。
「んあっ……あ……だ、め……あ、んっ」
下腹部のあたりが熱くなっていく。ジンジンと身体を火照らせるような甘い疼きが全身を巡っていくようだ。シーツを握り締めていないと暴れ出しそうなくらい焦れったくて、耐えられないくらい気持ちいい。
「だめ? 本当に?」
ふっと肉芽に息を吹きかけられた。
「あ、んっあ……あ……」
それだけでびくびくと身体が跳ねる。こんな感覚、知らない。知らないのはやっぱり怖い。でも、逃げられない……。もっと彼に教えてほしい。
「大丈夫だよ、静夏」
優しい声に宥められ、心が落ち着いた。
秘裂を舌がなぞっていく。ぬちぬちと音を立てながら、上下に這わされ媚肉を食まれる。
「響也さ……、あっ、んっ……そんなこと……」
「嫌?」
「恥ずかし……んっ、んっ、あっ」
花芯を吸われ、ねっとりと舐め上げられる。浮いた足がそのたびにビクビクと震えて、ますます恥ずかしくなった。
「は……あ、んっ……」
ちゅうっと敏感な芯を強く吸われると、全身に熱が灯る。痛いような感覚があるのに、抗いきれない快感を同時に与えられ、身体が切なく疼いた。
「静夏、気持ちいい?」
「……わかんな……、んっ、んんっ……」
蜜口に舌を差し入れられる。襞を伸ばすように入り口を刺激する動きに腰が揺らめくと、響也さんが吐息を零した。笑ったのかもしれない。
「響也さん……?」
なにか変だったのかな、と不安になって彼を見ると、響也さんが首を左右に振った。
「静夏がもっと気持ちよくなったらどんな反応するのか想像したら……ちょっと……」
「ちょっと……?」
「ん。なんでもない」
そこは言葉を濁さないでほしい。ちょっと、なに……?
答えを求めるように響也さんに手を伸ばすと、やっぱり手をきゅっと握られた。
「たしかめてみるからいい」
「え……?」