十年越しの片思いの末、執着愛による包囲網が蜜のように甘い

書籍情報

十年越しの片思いの末、執着愛による包囲網が蜜のように甘い


著者:桜朱理
イラスト:小島きいち
発売日:2023年 4月28日
定価:620円+税

高校の頃に友人に誘われて参加した散歩サークルで、優愛は律に出会う。
将来は街などの再開発を手掛けたいと思う彼は、散歩しながら色々な建築物を見るのが好き。
綺麗な見た目なのに、不愛想な彼は近寄りがたい存在だった。
散歩サークルの活動中に、優愛と律は捨て犬を見つけ、その事がきっかけで仲良くなる。
高校の頃から律に恋をしていたが、非常にモテる彼にとって自分はただの友人の一人なのだろうと諦めていた。
30歳を目前にして、律への恋を諦めようと決意する。
同じころに職場の上司からお見合いを勧められ、いいきっかけになると優愛はお見合いを受けることにする。
最後の最後に律の反応が見たくて、自分がお見合いをすることを律に告げ……。
「優愛がお見合いするなら、もう我慢しない」
顔色を変えた律によって、彼の部屋に閉じ込められてしまった優愛は――!?

【人物紹介】

三宅優愛(みやけ ゆあ)
和菓子屋喫茶の職人兼売り子の28歳。
高校の同級生の落合律に昔から恋をしていた。
けれど、容姿端麗な律は女性に非常にモテる存在で、優愛にとっては近くて遠い存在だった。

椎名律(しいな りつ)
建築家。28歳。
内面と外見のギャップがあり、優愛が好きなのに感情を全く表現できてないせいで
10年近くを友人として過ごしている。

●電子書籍 購入サイト

*取り扱いサイトは、各書店に掲載され次第、更新されます。

 

【試し読み】

 欲望を隠しもしない男の言葉に、優愛は羞恥に顔を赤く染める。求められている実感に、心がどうしようもないほどに浮き上がる。
 ここでだめだなんて言えるわけもなかった。優愛を抱く男の腕に力がこもっている。痛みを覚えるほどの強さになっていることに、律はきっと気づいていない。
 どれだけ律が優愛を欲しているのか、伝えてくるようなその痛みを、優愛は歓喜して受け止めている。
「優しくして。さっきみたいに、怖いのは嫌」
 まともに律の顔を見て返事をするには恥ずかしすぎて、彼の肩に顔を埋めて囁きで返せば、「絶対に優しくする」と答えが返ってくる。
 律が優愛を抱きかかえたまま寝室に向かう。寝室に運ばれる間、優愛は緊張に体を縮こまらせていた。
 律が優愛をベッドの上におろした。まるで壊れ物を扱うみたいにそっと丁寧に扱われて、優愛は詰めていた息を吐きだした。
 覆いかぶさってきた律に口づけられる。彼の薄く形の良い唇が、ひどく柔らかなものであることを優愛は知る。
 優愛の緊張をほどくように、触れるだけの口づけが繰り返される。何度も、何度も執拗に角度を変えて施されるキスに、もどかしさを感じてしまう。
 ――もっと……。
 深く触れ合いたくて、優愛は律の首筋に腕を回して、引き寄せる。唇が離れて、鼻先が摺り寄せられた。
「怖い?」
「怖くない……」
「そう。よかった」
 柔らかに律が笑う。それは見惚れてしまうほどに綺麗な微笑みだった。
 律の唇が再び近づいてきて、優愛は瞼を強く閉じる。重ねられる唇はとろりと和らいで、ただただ気持ちよかった。律の背中に縋って、彼のシャツにきつい皺を寄せる。
 そろりと口の端を舐められて、反射的に唇を開くと、ぬるりと彼の舌が口腔内に滑り込んできた。
「ん、……んぅ」
 ほとんど初めての経験にどうすればいいのか惑う優愛の舌を、律の舌は柔らかく巻き取って、絡めてきた。
 舌先を吸われ、甘噛みをされると、全身に甘い疼きが広がった。
 舌先に触れる肉厚な舌の感触を味わう。目を閉じて優愛は、懸命に慣れない口づけを続けた。
 ――甘い。
 律の舌は滑らかで、酒の名残の味がした。他人の粘膜を直に味わう行為は、ともすれば嫌悪感を覚えそうなものなのに、優愛はひたすらに甘さを感じていた。
 絡みつき、擦れ合う舌の感触に、優愛は体を震わせる。舌先が歯列をなぞり、上顎を擽る。そのたびに、背筋からつま先に向かって淡い疼きが滑り落ちていく。
 濡れた水音が互いの口の中で立ち、どちらのものともわからない唾液が溢れて、口角から流れ落ちていく。
 ――息が苦しい……でも、気持ちよくてやめたくない。
「んっ……ふ……ぁん!」
 上下の唇を一つずつ甘噛みした、律の唇が名残惜し気にほどかれた。
 キスだけで全身を朱に染め、瞳を潤ませた優愛を見下ろした律が、柔らかに目を細める。
「可愛い。優愛……」
 律が優愛の乱れた髪をすく。その感触が気持ちよくて、優愛は猫のように目を細めて、うっとりと瞼を閉じる。
 律の手はそのまま頬、首筋、鎖骨と優愛の体のラインを辿っていく。
「優愛の体は柔らかくて、どこに触っても気持ちいい」
「……それって……太ってるってこと?」
「違うよう。抱き心地がいいってこと。ずっと触ってたい」
 その言葉通りに、律の手が、唇が優愛の体にあちらこちらに触れてくる。
 触れ方が優しくて、それだけで単純に嬉しくなる。優愛の体の形を確かめるように、丹念に撫でられ、呼吸が上がっていく。
 優愛が少しでも反応した場所は、柔らかなのに執拗に触れられた。そこが優愛が感じる場所なのだと教え込まれる。
 まるでその場所を忘れないでというように、律がキスマークを刻む。
 気づけば優愛の上半身は、赤い跡だらけになっていた。
 首筋に触れる口づけの甘さに酔う。ソフトな口づけが首筋を這って、胸へと降りていく。
 背中に回された手が、ブラジャーのホックを外した。ブラジャーが外されて、胸が解放されて、優愛はハッと息を吐く。ふるりとまろびでた乳房を律の手が覆った。
 触り心地を楽しむように、彼の手が優愛の乳房を弄ぶ。男の手の中で、優愛の乳房が柔らかに形を変える。
 じわじわとした快感が、優愛のつま先を落ち着きなくもじつかせる。
 全身に広がる快感に立ち上がった胸の頂を指先で摘ままれた。
「あ……ぁや!」
 それははっきりとした快感だった。
「痛い?」
 問われて優愛は首を振る。痛みとは違う。でも、鋭い快楽は慣れないもので、優愛を戸惑わせる。ジンジンと体中がうずいて恥ずかしい。
 律の手が優愛の体に触れてくれているのだと思うと余計に、快楽が煽られる。
「じゃあ、気持ちいい?」
「わ……かん……なぃ」
 優愛の答えに律が笑って、「じゃあ、どっちかわかるまで触るね」と指先に挟んだ優愛の乳首を指の腹で弄ぶ。
 赤く色づいて、硬さを増した胸の頂に、不意に吸い付かれる。ピリッとした痛みを感じて、その後に強くしたことを詫びるように、ゆっくりと舐め上げられた。
「あ、ん……っ! やぁ……!」
 歯の当たる感触に、体が小刻みに震えて、切ない声が唇から漏れる。
 唇に挟むようにしたあとに、舌で弾力を楽しむように弾かれる。そのたびに優愛は、甘い鳴き声を上げて、首を振る。
 律は交互に優愛の乳首に口づけて、何度も吸い上げられた。
 数時間前は嫌悪と恐怖しか感じなかった行為が、今は優愛を甘く酔わせた。
 自分とは違う硬い体が熱を持って自分を包み込み、吐息を分かち合う行為は、ただただ優愛に幸福感を感じさせた。
 気持ち一つで、こんなにもこの行為は気持ちいいのだと実感する。
 下腹に甘い疼きがどんどんと溜まっていく。じっとしていられなくて、思わず足をすり合わせる。
 それに気づいた律が、小さく笑った。
「気持ちいい?」
 問われて、優愛は今度はこくりと素直に頷いた。幼けないその仕草に律が息をのむ。
 快楽にとろりと蕩けた瞳、全身を朱に染めて、全身で悦楽を味わう優愛の姿はひどく煽情的で、男の欲情を煽った。
「優愛」
 律が優愛の名前を呼ぶ。低く艶の孕んだ声で名前を呼ばれて、腰の奥が震えた。胎の奥から何かがどろりと流れ出る。
 柔らかく、滑らかな大腿に、男の硬い手が忍び込み、足を開くように促してくる。
 恥ずかしさに、足に力がこもってしまうが、きわどい場所に向かって這いあがってくる手は、優愛の抵抗などものともしない。
「…ぅ……は……はずか……しぃ」
 優愛が本気で抵抗しているわけではなく、恥ずかしがっているだけだと確信している男の手に、遠慮はなかった。
「うん。大丈夫だから、力を抜いて」
 声は優しいのに、男の手つきは強引だった。すでに濡れ始めた優愛の下着の間に、手が差し込まれた。
 顔を背けた優愛の耳朶、男が吸い付かれた。耳朶に濡れた音が響き、優愛はぞくりと身を震わせる
「よかった。濡れてる」
 安堵を滲ませた声で囁かれた言葉に、強く瞼を閉じる。
 潤み始めていたその場所を律の指が上下になぞった。
 これまで誰も触れたこともない、自分でもまともに見たこともないその場所に、律の綺麗な指が触れていると思うと、たまらない羞恥が込み上げる。
「いい?」
 目を覗き込まれたまま、指の先で披裂を浅くなぞられて、優愛は鋭く息を呑み、びりびりと電流みたいに広がる快感に耐える。
「や、優しく……して」
「うん。もちろん」
 うれしそうに笑った男の指が、小さな下着を引き下ろした。ゆっくりと優愛の中に、男の指が差し込まれる。
「いっ!」
 初めての感覚に優愛は呻く。一瞬だけ引きつれたような痛みを覚えた。そのあとに続いたのは、言葉にできない異物感だった。
「痛い? やめる?」
 律の問いに優愛は横に振る。
「やめない」
 痛みや異物感があっても、その奥にうっすらと快感があった。律が触れてくれていると思うだけで、体は甘く蕩けていく。
「ふふふ。優愛は本当に男前。痛くて我慢できなくなったら、そう言ってね」
 律が優愛の額に口づけて、蜜襞を探る動きを再開する。
 優愛の反応を何一つ見逃さないと言った眼差しが注がれる。
 男の欲を隠さないその視線に、優愛は求められている実感を深くする。
 優愛は律を求めて手を伸ばす。自分も目の前の男に触れたいという欲求が生まれていた。
「律……キスしたい」
「可愛いね。優愛。舌を出して」
 優愛の求めに瞳をやわらげた男が唇を重ねてくる。律の言うままに舌を素直に差し出すと、ぬるぬると舌先を吸われた。舐めて絡めて、じゃれるような口づけが与えられる。
 ――もっと。もっと……。
 懸命に律の舌先を吸いながら、体を開かれる違和感に耐える。
 体が律の指の形に合わせて開いていく感覚は、生々しくてなかなか慣れない。
 入り口を擽って、腹側のざらざらした襞を優しく擦り上げられる。
 律はその長い指を惜しみなく使って、優愛が感じる場所を丹念に探した。
 指が奥まで入り込んで、腹側のある一点を擦られて、優愛の腰が激しくバウンドした。
「あ、あああ!」
「ここが優愛の感じる場所だね。気持ちいいよね?」 
 その一点を、律の指が執拗に撫で上げる。そのたび、甘い悲鳴が止まらなくなる。
 くちゅくちゅと淫らな水音が立ち、溢れた蜜が律の指の動きをより滑らかなものにする。
 快楽の逃し方を知らない優愛は、律の指に翻弄され、腰を波立たせる。
 一本、二本と指が増やされて、優愛が反応する場所を執拗なまでに擽って、律は快楽を植え付ける。
「優愛、気持ちいい?」
「いぃ……? 何が……」
 快楽に蕩けた頭はまともに思考が働かず、律が何を問うているのかわからなかった。
 潤んだ瞳で律を見上げれば、獰猛に笑んだ男が、優愛の耳朶に嚙みついた。
 ちりっとした痛みに、少しだけ正気に返る。
「気持ちいい? どうして欲しいか教えて? 優愛が気持ちいいことだけしてあげる」
「ん、ん、……気持ち……いい……こ……だけ?」
「うん」
 頷くと体の中の指が増やされた。三本目の指に広げるように内部を押され、苦しいのに、その分、刺激が強くなる。
「あっ、んん! もっと……そこ……」
 自分がどれだけ淫らなことを口走っているのか、わからないまま優愛は感じるままに今の自分の状態を律に伝えた。
 快楽に素直に、男の指に腰をうねらせる姿は、ひどく煽情的で、律はうっとりとその姿を眺める。
 目の前に白い星がちかちかと飛び始める。それは絶頂への予感だった。
 親指の腹で、下生えの中に隠れていた花芽を挫かれて、膨らみ切った優愛の快楽がはじけ飛んだ。
 今までにない強い波に押し上げられるように、優愛は絶頂を迎えた。
 初めて経験する快楽の大きさに、全身が波立ち、男の指を食い締める。
 涙がぼろぼろと零れて、心臓が壊れそうなくらいに激しく打った。
 たぶん、優愛は一瞬だけ意識を失っていた。
 律の指が引き抜かれたことにも気づかず、優愛はしどけない姿でシーツの上にその裸体をさらす。うつろだった意識が戻ったのは、ごく微かに聞こえてきた衣擦れの音だった。
 何かのパッケージを破る音も聞こえてきた。何の音だろうと思っていると、服を脱いだ律が覆いかぶさってきた。
 熱すぎる体に包まれて優愛は、大きく息を吐く。足を広げられて、濡れて蜜を吹きこぼす場所に、丸みを帯びたものが擦りつけられた。
 優愛の蜜を纏わせるために、避妊具を付けたものが何度か前後に往復する。
「いれてもいい?」
 さすがにここまで来てダメと言うつもりはなく、優愛はこくりと頷いた。
 途端、指とは比べられない凄まじい質量のものに、体を押し開かれる。痛みに息が止まった。痛みから逃れるために、本能的に体がずり上がろうとする。
「……ぅい」
「優愛、ごめん。痛いよね」
「……大丈夫」
 気持ちは律を受け入れたいと思うが、体が痛みから逃れようと、無意識にずり上がってしまう。
「優愛、やめる?」
「絶対に嫌」
 優愛は両手を伸ばして、律にキスをねだる。舌を絡めて、意識して体の力を抜こうと努力する。
 束の間、二人の攻防が続いて、律が優愛の片足を肩に担いだ。
 ずり上がることが出来なくなった。律がゆっくりと体重をかけて、優愛の中に入ってくる。狭い場所をこじ開けるようにゆるゆると律のものが進んでくる。
「う――ぅふっ……ぅん」
「優愛。息をつめないで。息を吐いて」
 優愛は律に言われるまま、大きく息を吐き出して、体の力を抜こうと努力するが、浅い呼吸はすぐに途切れてしまう。
「優愛、ごめんね」
 想像以上の痛みに優愛が呻いていると、律が髪や頬を撫でて、何度も謝ってくる。
 切なさを孕んだ男の声に、優愛は涙に霞む目を見開いて、大丈夫と首を振る。
 正直、痛いし、苦しいし、今すぐやめたいと思う。だけど、律の顔を見ていたら、そんなことはどうでもいい。
 何かを堪えるように息を詰め、汗を滴らせる男が、優愛の体を最大限に気遣ってくれているのはわかる。
「もうちょっとだけ、頑張って」
「うん」
 ぐっと律が腰を進めた途端、先端部がずるりと奥深くまで進んだ。二人の体の距離が一気に近づいた。
 何度もキスを繰り返し、律が体を進めた。やがて、優愛の臀部に律の腰が触れた。
 長い時間をかけて、律のすべてが優愛の中に収められた。肩から膝を下ろされる。
「……入……った?」
「うん。入ったよ」
 律が優愛の汗に濡れた髪を優しく梳く。
「痛い?」
「大丈夫」
 痛みは痛みとしてあった。けれど、それより優愛の中を達成感が満たしていた。
 律と一つになれたことが純粋に嬉しかった。
「動ていい?」
 何とか息を整えた優愛に、それまでじっと動かずに様子を見守っていた律が問う。
 彼も限界だったのだろ。優愛が頷いた途端に、ゆらりと腰が揺らされた。
「はあ、あ、んぅ、ふ、ん」
 傷ついた蜜襞を擦られるのは痛みがあった。だが、腹側の優愛が感じる部分を、カリ首の一番太い部分で擦り上げられると、淡い疼きが快楽を伴って、体の中に広がっていく。
「あっ、んんっ、あ、はあ」
 優愛の声からそれを感じ取ったのか、律の動きが変わる。徐々に動きが速くなり、優愛の感じる部分を重点的に擦り上げるように、腰を動かす。
 ぐりぐりと胎の奥を突かれると、下腹が波打つような痺れを感じた。
 言葉に出来ないその感覚に、優愛は縋るものを求めて、律の背に爪を立てた。
「律……律……」
 唇から彼の名前だけが溢れる。そのたびに、律が「優愛、好きだよ」と愛を囁いた。
 律の声から余裕がなくなった。それでも自分の欲望よりも優愛の快楽を優先させる男の動きに、優愛はどうにかこたえたいと思う。
 鈍い痛みはあるものの、それだけでない快楽を優愛の体は感じ始めていた。
 彼の動きに押し出されるように零れる声は、どこまでも甘い。
 噛み合い始めた快楽に、目の前に白い星が瞬き始める。それに合わせて、優愛の胎の奥がうねり始める。中にいる男の精を搾り取ろうとするような動きに、律の吐息が荒く獣じみたものに変わった。
「あ、あん………律!」
 がくがく震える膝で律の腰を挟み、全身で抱き着き、優愛はその瞬間を迎える。
 胎の奥をひときわ強く突かれて、優愛は全身を震わせて、イッた。
 それに引きずられるように律の楔が優愛の体の中で跳ね、薄い皮膜越しに精が吐き出された。
 息をつめた律に強く抱きしめられて、優愛は幸福感に意識を手放した。

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