執愛戦略 〜今夜も彼の身体に溺れて〜

書籍情報

一晩の関係からまさかの展開——!?

執愛戦略 〜今夜も彼の身体に溺れて〜

著者:椋本梨戸
イラスト:園見亜季
発売日:5月29日
定価:620円+税

あらすじ

営業一課で働く唯は新年会で飲みすぎて意識をなくした夜、同期である海斗と一夜を過ごしてしまう。
その日をきっかけに始まったのは、彼との曖昧な関係――!?
「もっと俺を欲しがってくれ。おまえの全部が欲しい」
心の隙間を埋めてくれるような時間に身をゆだねてしまいつつも、唯は二人の関係に対して悩みを抱いていた。
そんな時、二人の関係が社内で噂されているのを知った唯は、海斗の社内での評判を守りたい一心で一方的に別れを切り出し……!?

【人物紹介】

葉月唯(はづきゆい)
営業部第一課に勤めている唯一の女性。
毎晩のお酒をやめられないことに悩んでいる。
同期の飲み会の際、酔い潰れてしまったことをきっかけに海斗との関係が一転し、頭を悩ませることに。

雪村海斗(ゆきむらかいと)
営業部第一課の唯の同期。
現在営業成績三年間トップを独走中。
イケメンで仕事ができ、頼り甲斐があるため女性社員に人気がある。

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*取り扱いサイトは、各書店に掲載され次第、更新されます。

【試し読み】

 意識がぼんやりしてはっきりしない。カーテン越しに太陽の光が差して、室内を薄く照らしている。

「いま、何時……?」

 手探りで、サイドテーブルのスマホを取ろうとした。でも、いつもの場所にテーブルがない。
 どうしてだろう。
 ぼうっとした頭で考えたとき、背後からふいに、たくましい両腕が体に絡みついてきた。
 広い胸板に抱き寄せられ、まどろんだ低い声が耳裏にふれる。

「葉月……」
「へっ?」

 唯はまばたきをした。
 肩とお腹のあたりに巻きついたり、背中に密着したりしているのは、自分よりも高めの体温だ。この生々しい肌触りから察するに、服の布地ではなく、人肌だと考えられる。
 つまり、背後にいる人物と自分は、お互い裸というわけで。

「もう起きたのか、葉月。早いな」
「えっ、ちょっと、待っ……、――っ」

 うなじに唇が押し当てられた。一つにまとめていたはずの髪はほどかれていて、シーツに広がっている。
 熱く濡れた舌が肌を這い、ちゅっと吸い上げられた。同時に、大きなてのひらに剥き出しの胸を覆われて、やわらかく揉まれ始める。
 甘い感覚が下腹まで走り、唯は肩を震わせた。

「や、……っ、ねえ、待って……っ」
「どうして。いまさら待てもなにもないだろ」

 肩をつかまれて、仰向けにされる。両手首をつかんで組み敷いてきたのは、会社で見慣れているはずの、端整な面差しだった。
 見慣れているはずなのに、この男のことを初めて見たような感覚に襲われて、唯は混乱する。

「ゆ、雪村なの……?」
「僕以外の誰だって?」

 綺麗な形をした目を眇めて、海斗は唯の顎をつかむ。
 やっぱり違う人みたいだと、唯は思った。
 わたしの知っている雪村海斗は、こんな表情をしない。
 こんな、情熱的な色気を纏わせたような顔は、見たことがない。

「まさかおまえ、以前に別の男とこういう風になったことがあるとは言わないよな」
「こ、こういう風って――、っん」

 唐突に唇を奪われた。
 食らいついてくるような口づけに、唯はとっさに顔を逸らそうとした。けれど顎をつかんだ手と、上からのしかかる彼の重みが、唯を逃がさないように押さえつけてくる。
 体の自由を奪われ、口づけが深まった。海斗は何度も角度を変えて、唯の唇を貪り始める。いやらしく求められる感覚に襲われて、唯の頭の中が真っ白になった。
 ――雪村に、キスされてる。
 しかも、この上なく情熱的に。
 それだけが、やっと認識できる現実だった。
 ぬるついた舌が口腔内に強引にねじ込まれてくる。口蓋を舐められ、頬の内側をしゃぶられて、ゾクゾクした熱が背すじを走り抜けた。

「ぅん、ん……っ、ふ、ぁ……っ」
「葉月――、葉月、もっと舌出して。やわらかいところを舐めたい」

 焦れたような低音で懇願されると、そのとおりにしなければならないという気持ちにさせられてしまう。
 けれど、唯の舌は怯えたように縮こまったまま動かなかった。それを海斗は、一秒でも待てないとばかりに強引に絡め取った。
 舌同士をこれ以上ないほど密着させ、ぬるぬると擦り立ててくる。ざらついた熱いぬめりにいやらしく攻め立てられて、あらがいようもなく快感が生まれた。
(どうしよう。どうしよう、気持ちいい)
 唯は混乱した。引っぱたいてでも押しのけるべきなのはわかっているが、体が動いてくれない。
 激しい口づけに互いの唾液が混ざり合い、クチュ、グチュ、と淫靡な水音を立て始める。唇の端から唾液が伝い、それを海斗が舐め取って、ふたたび唇に戻ってくる。
 口腔をみだらに嬲りながら、海斗は唯の片胸を手で覆った。ふっくらと盛り上がるやわらかさを味わうように、揉みしだいてくる。
 そのいやらしい動きと、敏感な先端を指の腹で擦りつけられる行為に、下肢のあたりから疼くような快感が湧き上がった。体を好き勝手にされているのに、なぜか嫌悪感は少しも生まれない。
(エロ狸のセクハラは、ひたすら気持ち悪かっただけなのに……!)
 海斗の手と唇と、たくましい体の重みは、不快とは正反対の感情を生じさせた。
 でも彼は同じ課の同期だ。恋人じゃない。毎日社内で顔を合わせて話をする相手とこんなことをしては、後々厄介なことになるに決まっている。

「っん、ぅ……っ、キス、だめ……もう、ぅんん……っ」
「――ッん、葉月、おまえの唇すごく甘い……」

 熱い吐息のあいまに、海斗は劣情に濡れた声でささやく。

「胸も、僕の指が沈み込むくらいやわらかくて――、おまえ、こんなに華奢なのに」
「あっ……! そこ、摘まんじゃだめ……ッ」

 快感に尖りかけていた乳首を摘ままれ、クリクリと揉まれて、鋭い快感が体を貫いた。

「ぁ、あ、あん……っ、雪村ぁ……!」
「その声も、感じてる顔も、たまらないほど可愛い。昨夜はおまえが可愛すぎて、むちゃくちゃに抱いた。だから、やわらかくて華奢なおまえを壊してしまうんじゃないかと心配になったんだ」

 とんでもないセリフを陶然と告げながら、海斗は唯の下唇に甘く歯を立てる。焦がれるように告げた。

「もう一度抱きたい。抱かせて、葉月」
「そ、んなこと」

 恋愛経験の少ない唯にとって、この事態は対応可能な範囲を超えていた。高校時代に一度付き合ったことはあったものの、セックスをしたのはそのあいだの二、三度程度だ。大学時代や社会人になってからは恋愛から遠ざかっていたので、キスすらしていない状態である。
 唯の頬を撫でながら、海斗はこちらを見下ろしてくる。端整な顔立ちが、欲情に駆り立てられて興奮しているのがわかった。
(昨夜、わたしを抱いたって)
 そのようなこと、まったく記憶にない。
 でも、下腹のあたりにわだかまる鈍痛は、高校時代に経験した痛みに似ているような気がする。痛みの程度はあのときほどではないけれど。

「わ、わたし――」

 親指の腹で、唾液に濡れた唯の唇を辿りながら、海斗の顔が胸のほうに降りてくる。

「わたし、昨夜のこと全然覚えてなくて――、っん、ん……!」

 太くて長い親指が、口の中にねじ込まれた。まるで、唯の言葉を遮るためにしたかのようなタイミングだった。
 声を封じられた状態で、すでに尖りきっていた乳首を、彼の口に含まれる。

「んぅ……っ!」

 びくりと腰が跳ねた。熱く濡れた舌が乳首に絡みつき、それをじゅうっと吸い上げたからだ。
 あまりの快感に、唯は体をよじろうとする。けれど、海斗は上から唯をしっかりと押さえつけて、体の自由を奪った。

「ん、ン……っ」
「そんな風に抵抗して、昨夜のことをなかったことにするつもりか? おまえ、僕の愛撫にあんなに感じていたじゃないか。――ほら」

 海斗が乳首を甘噛みしたので、唯は強い快感に打たれた。

「ぅんん……ッ!」

 海斗は攻め手を緩めない。唯の胸を根元からつかんで揉みながら、先端を口中で執拗に嬲った。
 唾液にまみれ、赤く熟れた乳首に海斗は舌を巻きつけてヌルヌルと扱く。下腹部まで走りぬけた快感に、唯が高く喘ぐと、海斗は喉の奥で笑った。

「起き抜けの状態でもこんなに感じるのか。乳首がもう尖ってきてるぞ。いやらしいな、葉月は」
「ぅ、ん……っ」

 唯の口腔内は相も変わらず海斗の指に蹂躙されている。

「こっちも同じようにしてやるよ」
「んん……ッ、ふ、ぅ……っ!」

 もう片方に吸いつき、まだやわらかな先端を海斗は舐めしゃぶった。飴を転がすように味わわれて、羞恥と快感に唯の頭の中がぐちゃぐちゃになっていく。海斗の目論見どおり、強い快感を生じさせた乳首は、すぐに硬く立ち上がった。
 唯の舌をいやらしく撫でていた指が、口の中から引き抜かれる。唾液を引いたその手を唯の陰部に下ろして、淡い茂みの奥をまさぐった。

「だめ、そこ……っ」

 ぬめり始めた割れ目を探られ、強い快感に襲われた。グチュ、クチュ、と粘性を帯びた水音が聞こえて、唯は恥ずかしさに泣きたくなる。

「やぁ、ぁ、あぁん……っ、ゆきむら、……っもう、やめ……っ」
「嫌じゃないだろ。ここだろ、葉月の好きなところ」
「――ひぁッ……!!」

 まだふくらみかけの陰核を、指の腹でコリコリと揉まれた。激しい快感に貫かれて、唯は背をしならせる。
 海斗はもう片方の手指で、赤く勃起した乳首をいやらしく撫でた。

「ここと同じだな。下の粒もふくらんですぐに固くなる」
「言わない、で……っ、ぁ、ぁあ……ッ」
「なあ、葉月。昨夜のことをすっかり忘れているんだったら、あのことも忘れたのか?」
「あの、こと……?」

 思い出そうとしても、考えなんてまとまるわけがない。
 ふくれ上がった陰核を海斗の指が摘まんで、嬲るように擦り合わせた。たまらないほどの快感に指先まで侵されて、唯はがくがくと震えた。

「あ、ぁあん……っ!」
「昨夜、帰りのタクシーでおまえが言ったんだろ? まだ帰りたくないって」

 甘くささやきながら、海斗は耳朶に唇でふれてくる。熱い息が吹き込まれてゾクゾクした。

「そ、んなこと、言ってな――」
「飲みたくなる欲求を別の欲求で満たしてほしいって、おまえが僕に言ったんだよ」

 陰核を弄る指はそのままに、別の指がグチュ……と膣孔に押し込まれた。
 節くれ立った指が体内の柔襞を擦り上げていく感触に、唯は目を見開く。さらなる快感の波が押し寄せてきて、呑まれそうになる。
 唯は海斗の腕をつかみ、上ずった声を上げた。

「だめ、中に指入れちゃ……、あ、あ、あ……ッ」
「だめ? 昨夜は僕の指を三本も旨そうに咥え込んでいたじゃないか」

 可愛がるように内襞をくすぐりながら、海斗は唯の耳朶を甘噛みした。
 愉悦が突き抜けて、膣襞がぎゅうっと海斗の指を締めつける。さらに狭くなった蜜孔を、海斗はこじ開けるようにして抜き差しを繰り返した。
 いやらしい水音が鼓膜を濡らす。気づけば唯は海斗のたくましい体にしがみついていた。

「ひぁ、あ、ああ……ッ!」
「これから先も、毎晩、酒を飲みたくならないようにって。なあ、葉月。そう言ったろ?」

 耳を嬲っていた海斗の唇が、首すじに降りていく。やわらかなうなじに吸いつき、赤い痕をくっきりと残した。うなじだけでなく胸元まで口づけて、痕を執拗に散らしていく。

「おまえにベタベタ触ってくる狸も、こうやって痕をつけて牽制すればいい。ずっと、消えないように毎晩つけ直してやるよ」
「やぁ、そんなの、毎晩なんて――」

 目に涙を浮かべながら唯は首を振った。
 巧みな指遣いで膣孔をグチュグチュと苛みながら、海斗はもう片方の手で唯の顎をつかむ。劣情に濡れた瞳が唯を捉えた。
 やはり、会社で見る海斗とは別人のようだ。どちらが本当の彼なのか、唯はわからなくなる。

「いまさらダメはなしだ」
「っぁ、あ……!」

 長い指を根本まで深々と埋められて、突き当たりの膜を抉られた。同時に陰核を擦り上げられ、激しい快感に打たれて、唯の視界がチカチカと瞬く。
(だめ、このままじゃイっちゃう……!)
 同じ会社の、しかも同期の腕の中で絶頂に達するなど、あってはならないことだ。あられもない痴態を見せてしまった相手と、これから先も机を並べて平然と仕事をするなんて、唯にはハードルが高すぎる。恋人だったらともかく、酔った勢いでだなんて、よりいっそう駄目だ。
 唯はギュッと目をつむって必死に耐えた。けれど、いまにも弾けそうな熱が下腹の奥でふくれ上がり、止められそうにない。

「ぁああ……ッ!!」

 蜜孔の最奥を無慈悲にかき回されて、唯は理性を引き剥がされた。そのまま高みに駆け上がるかと思われた瞬間に、海斗は指を膣から引き抜いた。目前に見えていた絶頂への道が断ちきられる。

「――っ」

 唯はとっさに、追いすがるような目で海斗を見た。海斗は愛液にまみれた自身の指を舐める。端整な顔立ちに挑発的な色が滲んだ。

「嫌だと言ったわりに、物欲しげな顔じゃないか」

 意地悪な言葉に泣きたくなる。
 唯は、体の奥の強い疼きをどうにもできない。息を乱しながら海斗を見上げた。

「意地悪なこと、言わないで……っ」
「意地悪なのは葉月だろ? 昨夜から僕は、おまえに翻弄っされっぱなしなんだよ。そのせいで、僕の頭の中は葉月のことでいっぱいだ。ただでさえ僕はずっと前から――」

 唯の腰を片手でつかみながら、海斗はふたたび指を蜜孔にねじ込んでいく。快感に体内を舐め上げられる心地がして、唯はびくりと体を震わせた。

「っ――」
「ほら……僕にねだるみたいに絡みついてくる。昨夜と同じだ。おまえの中、ねっとりしてすごく熱い。もっと気持ちよくしてやるから、可愛い声を聞かせて」

 愛欲に濡れた海斗のささやきに、心がかき乱される。
 熟れきってぐちゃぐちゃになった蜜孔は、男の指を歓喜して受け入れた。
 海斗の指は、弱いところを的確に狙ってくる。擦ったり、大きくかき混ぜたり、時には爪を立てたりして、唯の官能を刺激して淫熱を煽り立ててくるのだ。
(気持ちいい――)
 唯の頭の中はバターのようにとろけてしまい、全身を快楽に侵された。なけなしの理性まで溶け崩され、唯は絶頂を求めて腰をくねらせる。

「ぁあ、ん、ん……っ、ゆきむらぁ……っ」
「は……たまらない。可愛い。もっと欲しいだろ、葉月。欲しいって言えよ」
「……っしい、っん、ぁあ、指、もっと……、ぁ、ああ……っ」
「葉月……っ」

 荒々しく唇を奪われた。
 同時に、二本目の指がずぶずぶとねじ込まれていく。弱い箇所を的確に擦られて、唯の体を快感がビリビリと駆け抜けた。
 筋肉質な体にしがみついて、何度も喘ぐ。海斗の大きな手が胸のふくらみをつかみ、揉みしだいた。全身が熱くとろけ、絶頂がふたたび近づいてくる。
 しかし、快楽が今度こそ弾ける直前に、海斗はまたしても指の動きを止めてしまった。きゅうきゅうと締めつける膣肉を振りきるように、己の指をずるりと抜き出す。
 あと少しのところで絶頂への糸を切られて、唯は目を潤ませた。体が疼いて仕方がない。

「どうして、雪村……っ」

 海斗を必死に見上げると、彼は喉元で笑った。劣情に染まりきった瞳で唯を見下ろし、大きなてのひらで両頬を挟む。

「今日だけで終わらせたくない」

 すぐ間近まで端整な顔を近づけて、掠れた声で言う。

「葉月は僕を利用すればいい。一人で家に帰りたくないんだったら僕の部屋に来ればいい。深酒をしたくないなら、僕に抱かれて飲みたくなるのを紛らわせばいい。あんな風に酔って、僕以外の男にもたれかかるおまえなんて、想像するのもまっぴらだ」
「雪村……?」
「葉月が僕をなんとも思っていないのは知ってる。おまえはそれでいいよ。けれど僕自身は、もう我慢できそうにない」

 唯にまたがったまま、海斗は上体を起こした。汗にしっとりと濡れた彼の肌、たくましい胸と割れた腹筋、そしてその下に屹立するものを目にして、唯はどきりとする。
 硬く張り詰めた男性器は赤黒く脈打ち、猛々しく天を突いていた。興奮しきっていることがひと目でわかる様相に、唯はひどく動揺してしまう。
 海斗が自分を相手にして、こんな風になるだなんて夢にも思わなかった。
 彼は自らの手で剛直を握り、熱情に満ちたまなざしで唯を見下ろしてくる。

「ほら、わかるだろ? 僕がどんなにおまえを欲しいと思っているか」

 色気に濡れた声でささやかれた。
 みだらな光景を見せつけるようにされて、唯の肌の表面が炙られたように熱くなる。胸の奥や、そして下腹のあたりも、なにかに締めつけられるかのように苦しくなった。

「ゆ、雪村……」
「葉月――」

 覆いかぶさってきながら、片手に握った性器の先端を、唯の陰部に押しつけてくる。濡れそぼった襞の浅いところをかき分けるようにされて、グチュ……と卑猥な水音が立った。
 硬く勃起した昂りの、その獰猛な熱さが唯の胸を震わせる。同時に、もどかしく広がった快感と、奪われる直前の恐怖に身が竦んだ。

「……っあ」
「昨夜のことは覚えてないんだったな」

 唇が重ねられる。ねっとりと口づけながら、淫靡な口調で海斗は告げた。

「葉月はひどくされるのが好きだった。奥を擦られるのも、いやらしい粒をきつく捏ねられるのも」
「ぁ、ああ……っ!」

 海斗の腰が誘うように動いて、熱い切っ先が割れ目を往復する。ふくれ上がった柔粒を、剛直の先端でコリコリと刺激されて、唯は快感に喘いだ。
 唯の痴態を、海斗は欲情した目で見下ろしている。

「ほら、もう入りそうだ」

 愛液と白濁の先走りによってぬるぬるになっているせいで、往復を続ける固い先端が、時折蜜孔に引っかかる。
 その度に鋭い愉悦が駆け抜けて、唯は腰を震わせた。
 このまま貫かれたい。もっと気持ちよくなりたい。体の奥ではちきれそうになっている熱を弾けさせたい。
 けれど――一線を超えてはいけない。だって彼は友人なのだ。同じ課の同期なのだ。
 唯は焦燥感に駆り立てられて、必死に首を振った。

「だめ、入れちゃ、だめ……っ」
「じゃあこのままやめても?」

 感じすぎる媚肉を剛直で苛みながら、海斗は胸を揉みしだいてくる。勃ちきった乳首を強く摘ままれて、唯は喉をしならせた。

「ああぁん……っ」
「ッ、僕はやめたくない。葉月の中にいますぐにでも入りたい」

 熱く息を荒げながら、のけぞった白い喉に、海斗は噛みつくように口づける。

「言えよ。毎晩ここに来るって。僕に抱かれに来るって」
「雪村……っ」
「一人で部屋にいるのが嫌なんだろ? なら酒に頼るんじゃなくて、僕のところに来いよ。何度でも抱いて、気持ちよくしてやる。抱きしめて、いくらでも甘やかしてやるから――」

 ぐちゅりと、昂りの先端が隘路に押し入ってきた。

「夜の時間だけでいい。僕だけのものになって、葉月」
「ひぁ、ぁ、ああ……っ」

 太く硬い肉棒が、蜜にまみれた隘路を無理やり押し開いていく。
 敏感な襞を擦り上げられる感触が、途方もなく気持ちいい。
 根本までねじ込まれて、突き当たりを抉られた。力強い腰遣いに激しい快感を受けて、唯の視界がチカチカと瞬く。

「っア、気持ち、い……っ、ぁあん、ああ……ッ!」
「僕、も――、っ、おまえの中、たまらない……!」

 海斗は激しく腰を律動させた。愛液に濡れた手で唯の腰をつかみ、滾った欲望を強く打ちつけてくる。膣壁を余すところなく擦られて、至上の快楽が唯を襲った。
 己の内を何度も貫く熱塊に、啼き声を上げてよがる。気持ちいいとしか、もう考えられなくなっていた。海斗のマンションの寝室の、彼のベッドの上で、互いの汗と淫液にまみれながら、快楽を貪り合った。
 グチュグチュと、いやらしい水音が響く。白いシーツに染み渡り、唯の肌に絡みつく。
 唇を奪われて、口腔内を彼の舌に舐めしゃぶられた。背に回った片腕に上体を起こされて、彼の脚の上に座らせられる。

「っああ、深、ぁ……っ」

 自分の重みでさらに奥まで咥え込まされて、唯は喉を震わせた。
 揺さぶられるたびに濡れ襞がこすりたてられ、突き上げられるたびに子宮の底を叩かれて、下腹から激しい官能が湧き立つ。恥骨の裏にある弱い部分に時折雁首が引っかかり、そのたびに愉悦の衝撃を受けて体が大きく震えた。蜜にまみれた膣内を大きくかき混ぜられるようにされると、悦すぎて喘ぎ声を止められなくなる。
 かき出された愛液が泡立って、二人の下肢を濡らしていく。彼の下腹に密着した花芯が擦りつけられて、弾ける快感が脳髄にまで響く。

「ぁあ、も、っあ、イく、イっちゃう……!」

 たくましい体に両腕でしがみついて、唯は切なく叫んだ。
 さっきみたいに、途中でやめられたらどうしよう。
 いまそんな風にされたら、きっとおかしくなってしまう。

「ゆきむら、雪村ぁ……っねがい、お願い、離さないで……っ!」
「――くそっ……!」

 海斗は奥歯を噛みしめた。華奢な体を両腕できつく抱きしめて、最奥を何度も穿つ。

「あ、あ、あ、……っ!!」
「葉月……ッ!」

 唯の視界が白く弾けた。絶頂に達して膣肉が蠢動し、太い肉棒をきゅうきゅうと引き絞る。
 海斗は喉の奥で呻き声を上げて、剛直を膣から引き抜いた。眉をきつく寄せ、はちきれんばかりにいきり立った男性器を己の手でつかむ。荒々しく扱き上げると、先端から白濁液が放出された。
 しっとりと汗ばんだ唯の腹部にそれが掛かって、生温かい感触が肌を濡らした。己の性器をつかむ彼の指も精液に濡れている。吐精しきるまで扱き上げるその動きがなまめかしくて、唯は目を逸らせなかった。

「は――」

 熱っぽく息をついて、海斗は自分の表情を隠すように顔をうつむける。
 唯はぼうっとしながら、自分の腹部に視線を落とした。肌を濡らす白濁液に指でふれようとしたとき、ふいにその指を海斗がつかんで止め、唇に口づけられた。熱いキスを受けているあいだに、精液は彼によってシーツで拭い取られた。

「葉月……」

 両腕で抱き竦め、うなじに顔をうずめるようにして、海斗は言う。

「この部屋の合鍵、渡すから」

 ああ、駄目だ。
 こんなことをしては駄目だ。
 唯の理性はそう訴えるけれど、体が言うことを聞かない。快楽の残滓が指先にまで残っていて、全身を甘く痺れさせていた。唯は彼の腕に抱きしめられるがままになり、たくましい胸板にぐったりと身を預けている。

「仕事帰りに、ここに来て。土日はいつでも来ていい。待ってる」
「――――」

 どうして海斗はこんなことを言うのだろう。
 まるで恋人にするみたいに、熱い両腕で抱きしめながら、こんなことを言うのだろう。

「必ず来て。待ってるよ、葉月」

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