溺甘な独占愛に囲われて ~二つの顔を持つ美貌の司書~

書籍情報

溺甘な独占愛に囲われて ~二つの顔を持つ美貌の司書~


著者:宮小路やえ
イラスト:園見亜季
発売日:2023年 5月26日
定価:610円+税

会社事務員として働く優花は、図書館でバイトしている弓弦に片思いをしている。
密かな片想いを募らせながら、引っ込み思案な優花はただの知り合い以上の関係を築けないでいた。
ある日、優花は弓弦が非合法な始末屋という裏の顔を知ってしまう。
「──僕のこと、好きですよね?」
口封じの代わりに肉体関係を結ぶも、優花は弓弦を変わらずに慕う。弓弦も優花に惹かれていくが……。

【人物紹介】

愛咲優花(あいざき ゆうか)
梶山辺市役所近くの建築会社の事務員で26歳。
おっとりしていて、お人好し。素直で傷つきやすく引っ込み思案。
それでも、根底にはこうと決めたら貫く頑固さがある。

菊嶋弓弦(きくしま ゆずる)
司書(正職員)&様々な組織への内偵調査を行う機関の諜報員で28歳。
表向きは人当たりが良い。慎重で自分の痕跡を消したがる。
気さくな人間を演じている。激情家の一面もある。

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【試し読み】

 私らしいって、なんだろう。
 だが、その言葉が、とてもくすぐったい。
「っ、ん」
 弓弦の手が、そっと背中に滑り込んできた。僅かに身体を浮かしてやると、パチ、と、軽やかな音がした。
 その直後、胸元の締めつけがなくなった。
 強引にずらされた、あの夜とは違う動きだった。あの時、ブラは特に壊れていなかったものの、今はとても丁寧に扱われて、何だかそれが酷く優花を安心させた。
 むっちりとした乳房を、弓弦の手が包み込む。
「あ、んっ」
 マッサージをするような、柔らかな手つきだった。性急さはない。
 揉みしだかれると、だんだん胸の尖端が固くなっていく。濃いピンクに色づくそれは、弓弦の指と指の間から顔を出して、男を誘う。
「っ、ひゃあっ!」
 きゅむっと乳首を摘ままれた時、優花はひときわ甘い声を出した。
 ぴりっとする刺激が、身体の疼きを強くさせる。
 しばらく手で弄ばれていた胸だったが、弓弦の唇が近づいて、右の乳首をぱくっと口に含んだ。
「っ、んっ、あ、んん」
 ねぶる舌の動きに、優花はふるふると首を横に振った。
 吸われていない方の乳首は、くりくりと人差し指と親指で弄られて、乳輪ごとぷっくりしている。
(胸だけで、気持ちいい……っ)
 息が上がってしまう。
 期待だけが積み重なっていって、自分でも脚の間がひくつき始めているのが分かる。
 まだ男を知らないそこが、雄を待っている。
(恥ずかしい……)
 あの夜だって、身体は反応してしまっていた。
 弓弦のことは好きだ。もちろんそれゆえの疼きだったはずだが、やはり恐怖もあった。身体が、それを防御しようとしたのかもしれない。女性の肉体には、そうした働きが起きると聞いたことがある。
 だが、今は違う。
 攫われたことへの恐怖に、触れてこなかった不安。それらが解消されて、今はただひたすら、弓弦を待ちわびて濡れてきているのだ。
「はあっ、あっ!」
 じゅうっと吸い上げられて、優花は高い声をあげた。
 びくびくと、腰を捩らせ、くたりと身体を弛緩させる。だが、弓弦の唇はまだ離れず、ちゅ、ちゅ、と弱い刺激を与えてくる。
「んっ、んんっ、や、だめ」
 心臓が早鐘を打つ。
 ブラとブラウスはとっくに脱げきって、優花の上半身はもはや何もまとっていない。脚を広げているせいで、スカートもずり上がっている。
「優花……」
「な……んですか?」
 唇を離した弓弦に名を呼ばれて、優花ははぁはぁと息を乱しながらも小首を傾げる。
「君の裸が、見たい」
「っ……」
「下も全部、脱がせていいだろうか……」
 そう乞われて、優花は僅かに躊躇う。
 だが、意を決して、こくりと頷いた。そうしなければ、きっと先には進めないからだ。
 優花は自ら、スカートのホックを外し、ファスナーに手をかける。引っかかるかもしれないと恐れたが、すーっと下りていって内心安堵した。
 その後は弓弦の仕事だった。
 彼は優花に、少し腰を浮かすよう促してきた。優花が応じると、まずはスカートを脚から脱がされた。
 優花は、ショーツ一枚の姿になった。
 ショーツの左右の淵に指をかけられた時、優花はきゅっと眼を閉じた。
 秘裂には触れられたものの、はっきりと彼に見せたわけではない。
 す、す、と、ショーツがゆっくりと下ろされていく。
 そしてついに、覆い隠すものがなくなる。
「……可愛いなぁ」
 弓弦が、感心したように呟いた。
「や、だ、恥ずかしいです」
 裸を晒してから、毛の処理だとか痣の有無だとか、雑念のように色々なことを考えてしまった。
 だが、弓弦は全く意に介することなく、優花の腰から太腿、そして足先までを撫で下ろしていった。
「んっ、ぅ……」
 慰撫しているだけなのに、それさえも甘やかな刺激になる。
 すると、弓弦がゆっくりと、優花の脚を左右に開こうとした。
「っ! やっ、あ、ダメですっ……!」
「どうして?」
 そう聞かれても、恥ずかしいからだとしかいいようがない。
 だが上手く力が入らない。
 ──身体は、期待してしまっている。きっと心も。
 羞恥は、僅かに残る理性のせいだ。
 答えられないでいると、弓弦が優花を安心させるかのように微笑んでから、先ほどよりは穏やかさを感じる力で、やはり脚を静かに開いていった。
 今度は、優花も抵抗しなかった。
 ねばっこく湿り気を帯びていたせいか、秘裂はぴったりと閉じていた。だがそれも、ぱっくりと花が咲くように開く。
 そして、濃密な匂いが優花の鼻先にも届いた。
 弓弦には、しっかりと香っているはずだ。
「ひくついてる」
「だ、って……」
 興奮しているから、なんていえるはずがない。
 曝かれた秘花は、ひくひくと動いて、ちゅ、ちゅく、と自ら音を立てている。
「綺麗なピンク色だ。ここに入ったら、気持ちよさそうだな……」
「い、いわないで、ください」
「……でも、君は初めて……だろう?」
 その一言に、かああっと、優花は顔が燃えそうなほど熱くなった。
(ふしだらって思われた? こんな、いや確かに以前も濡れたけど、でもこんなになってるって目の当たりにして……幻滅された?)
 鎮まっていたはずの不安が、そろりと眼を覚まそうとしている。
 だが、弓弦は嘲るような気配は一切なく、ただただ、優しい眼で──しかし明らかに情欲で濡れた眼で、優花を見つめていた。
「君にはもう、痛い思いをさせたくない」
「弓弦……?」
「いっぱい濡らしておきたい。怖がらないでね」
 軽く呼吸を整えてから、弓弦はあろうことか優花の脚の間に顔を埋めた。
「やっ! な、何をっ……!」
 弓弦は答える代わりに、熱い舌で優花の秘部を舐めあげた。
「ひゃあぁっ!」
 指とは違う、ねっとりとしながらもざらついた刺激に、優花は嬌声をあげた。
「や、やだ、そこ、舐めちゃうなんて……」
 恥ずかしいを通り越して、そんなことを弓弦にさせていいのかと、優花は戸惑った。
「優花の味がする」
 うっとりとした声で囁かれる。吐息が、濡れそぼった膣口にかかって、優花はひゅっと腹に力を入れた。
「あ、ああっ……! や、ああっ!」
 優花の胸を吸っていた口が、今は直接、淫唇を弄っている。
 熱い舌先が蜜を垂らす秘壷の淵をなぞり、ぺちゃりと舐め、さらにその上で芽吹き始めている淫核をくりくりと押し始めた。
「ひあああっ! だめぇ!」
 これまでの刺激など本当に微弱だったのだと思うほど、ピリピリとした甘い痺れが全身を駆けていく。
 優しくも容赦のない愛撫だった。
 粘る音は聴覚を支配し、眼を閉じるとより鮮明に聞こえてしまう。
「ああぁぁ……っ、あっ、あっ、だめっ」
 かくかくと腰が勝手に動く。
 脚を閉じたいのに、上手く力が入らなくて膝が笑ってしまう。
 さらに弓弦はそっと太腿を押さえてきた。もはや閉じることはできない。
「ひぅうっ!」
 弓弦の舌が、ぬちゅうっと、中に入ってきた。淵に触れた固いものは、彼の歯なのだろう。それほど深く押し込められて、優花はきゅんきゅんと内壁を収縮させた。
「あ、あああっ、だめ、来ちゃうっ」
 何が来るのか。それを正しく言葉にはできない。
 だが、確実に迫ってくる何かがある。
 腰を上げたら、弓弦は驚いてしまうだろうか。
 だが、もう限界で、優花はぐうっともはや無意識のうちに腰を浮かせた。
「いぃああぁぁーっ!」
 ぱちんっ! と、視界が爆ぜる。
 とぷんっ、とぷり、と、ひくつく秘裂の奥から愛液が溢れるのが、自分でも分かってしまった。
(わ、私……イッたの? これが、イく……?)
 初めての感覚だった。だが、優花は確信した。
 達したのだ。いや、達せられた、というべきか。
「っ! んんっ!」
 だが、弓弦は達した優花を離そうとせず、むしろひときわ強い力で、溢れ出た蜜をじゅうじゅうと吸い始めた。
「あ、ああっ! だめですっ、それっ! ああぁん!」
 こくこくと、弓弦が明らかに喉を動かしたのが、振動で伝わってくる。
(……飲んでる、私の、あそこの……!)
 どうしてそこまでしてくれるのだろう。
 確かに、知識として、体液を飲む行為は知っている。
 だがその衝撃が、こんなにも激しいものだとは、全く思わなかった。
 何もかもが初めてで、強烈だった。
「あ、あ……ぅ、んんっ、あぁ……」
 蜜を吸われていると、だんだん刺激にも慣れ始めたのか、息が少しだけ整ってくる。
 だが同時に、身体の最奥がきゅるきゅると音を立てる。
 腹の虫なんかではない。とめどない刺激に、身体が本格的に雄を欲し始めたのだと、優花は本能で察していた。
 膣淵を綺麗に舐め取った弓弦が、ようやく顔を離した。
 彼の顔はきっと、優花の愛液にまみれているだろう。そう思うと、まともに見られなくて、優花は両手で顔を覆った。
 しかし、想像してしまう。
 自分の出したものを貪り、それで汚れている好きな人の姿を。
 とろ、とろりと、もはや愛液が流れるのを止められない。
「……もう充分かな」
 ふ、と、弓弦が笑う気配がした。
 つうっと指先で、熟れきった秘部をくすぐられて、優花は「ひゃあんっ」と叫んだ。
 火傷しそうなほど、そこはもう熱い。
「……優花」
「ゆず……る……」
「図書館で……君を初めて見た時から……俺は、君の明るさに惹かれていた」
 優花はそっと、手を下ろした。
 弓弦は、口元だけが濡れていた。きっと頬や鼻先についたものは拭ったのだろう。
「他の利用者と違う……なんだろうな、君が来ると、いつも嬉しかったんだ」
「……た、たぶんそれは……」
 優花は、一度きゅっと唇を結んでから、口を開いた。
「私が……弓弦のこと、好きだったから……最初に逢った時、から」
 花苑図書館という空間の中で、弓弦がとてもキラキラして見えた。
 輝いている、というのだろうか。恋の欲目と分かっていても、優花にとってはそれは眩しくて、それでいてずっと見ていたい気持ちにさせた。
 一方で、ただの司書ではなかったことも、気になった理由なのかもしれない。
 この人の中にある、全てを見てみたい。
 ──そんな欲望が、根底にあったに違いないと、優花は思った。
「……きっと、最初からそういえばよかったんだな」
「え……?」
 優花は一瞬、自分のことをいわれた気がした。
「君に自分みたいな男は、相応しくない。でも、あんな暴挙に出る前に、気持ちを告げていれば……もっと、いくらでもやり方はあったよな……」
 弓弦は後悔しているのだ。
 優花だって、後悔している。
 もしかしたら、徹底して拒んだ方がよかったのだろうか。
 拒んだ上で、それでも好きだといえばよかったのだろうか。
 だが、もう過ぎてしまったことだ。
 たとえやり方を誤ったのだとしても、ボタンを掛け違えたのだとしても、今こうして結ばれようとしているのだから、それでいい。
 他人がもし、それはおかしいといったとしても──。
「……でも、私達は、仮に遅かったとしても、もう気づいたから……」
「優花……」
「大好き、弓弦。ああいうことになっても、またこうして一緒にいたいと思うなら、私はそれでいいと思うの……だから……」
 優花は、両手を弓弦に向かって伸ばした。
「きて、ください……。一つにしてください」
 もう一度、しっかりと抱き締めて。
 そう願って微笑むと、弓弦が静かに自らの服を脱いだ。
 引き締まった素肌を、優花は初めて見た。身体には傷跡があった。弓弦が戦ってきた、いや戦わざるを得なかったこれまでの日々の証だ。
 優花同様に一糸まとわぬ姿になった弓弦が、ゆっくりと身体を重ねてきた。
 熱い肉体は、境界性が曖昧になる。
 唇を交わして、舌を絡ませ合う。濡れた皮膚が触れ合うと、息がまた上がってくる。
「弓弦……っ!」
 ふっくらと熟れた秘裂に、くちくちと熱い竿が擦りつけられているのを感じて、優花は思わず名を叫んだ。
 もう、雄を迎える準備はできている。
 処女であっても、優花は悟っていた。
 弓弦の手が、下へと降りていくのを見た。自身を握ったその手が、尖端を優花の秘部にぐっと宛がった。
「──っ!」
 舌とも指とも、全く違う質量だった。
「あっ、ぅ、んん……」
 ずっ、ずっ、と、肉感のある熱棒が優花の隘路を押し広げて進んでいく。
「はあぁっ、あっ!」
 雁首の太い部分が入って、さらに奥を目指す途中で、弓弦が僅かに腰を引いた。
 すると膣襞がめくれる感覚があって、優花は快楽に背を仰け反らせた。
 弓弦が慣らしてくれたおかげか、痛みはあるものの、それはごく僅かで、優花の雌花は雄茎をゆっくりと、確実に呑み込んでいく。
「す、ご、い……入って、擦れて……っあああっ!」
 心の中で思っていたはずが、声になっていた。
「んんっ!」
 ずっ、ずちゅっ、と、粘る音を立てて弓弦のものが何度かの抜き差しをしながら、だんだん深く入り込んでくる。
 さらりとした愛液とは違うような、ぬぴゅぬぴゅとした蜜が交接した場所から溢れていく。そのおかげで、
 奥に当たる感覚があった。
 完全に、一つになった。
「あ、ああ……んんっ」
 弓弦は激しく動いているわけではないのに、膣内で脈打つその存在を感じ取るだけで、優花の膣壁は震えるのを止められず、きゅうきゅうと締まる。
「……動く」
 たった一言の、掠れた声の呟きに、優花はこくりと頷いた。
「っ! ──っああっ! んん、う、ぁぁぅ!」
 最初の動きに、ひゅ、と、息を呑んだ。
 ずちゅ、ずちゅと、控えめな動きなのに、身体の中がかき回されるような感覚に、優花は喘いだ。
「ああぁーっ、あっ、ゆず、ゆずる……っ!」
 次第に打ち付けるような腰つきになり、ぱちゅぱちゅと跳ねるような音がした。
 優花も、腰を動かして、弓弦を奥へと誘い込む。
 鈍い痛みは、ある。だがそれ以上に、悦びが破瓜の苦しみを快楽へと塗り替えていく。
 子宮口をトントンと押されているうちに、むず痒かった感覚がだんだん先鋭化していって、優花は高みへ突き上げられていった。
「ふああっ! ああああああぁーっ、いく、いっちゃうっ!」
 びくんびくんっ! と、優花は全身を震え上げさせた。
 ぎゅうっと、弓弦を締め付ける。ぶるぶると、彼の脈動を感じた。
「っ、くっ」
「ひっ! んん、っ! ああ、きゃああっ!」
 低く呻く声がした瞬間、ドッ、ドッと、二度ほど最奥を突かれて、腰を浮かせた優花は今度こそ絶頂した。
「っ! んんっ!」
 その瞬間、ずるるっ! と、勢いよく壁壺から肉杭が引き抜かれた。
 優花の中で育ったそれが、ぶるぶると震えているのを視界の端が捉えた。
(あ……っ)
 尖端には、僅かであるが血がついていた。
 処女を捧げた証だった。
 直後、弓弦がもう一度呻いてから竿を握ぎった。
 そして照準を定め、びゅるる! と、優花の腹に向かって精を放った。
 夥しい量の白濁液が、勢い余って優花の乳房にもべっとりとかかった。
 むわっと、嗅いだことのない雄の匂いが全身から立ちこめた。
「……ごめん……」
 弓弦が謝罪してきたが、優花はすぐに理解できなかった。
 ぼんやりとする思考の中で、確実性はないものの、弓弦が外に射精することで避妊してくれたのだとやっと察した。
(……でも)
 中に出してくれても、嬉しかったのにな──。
 勿体ないとすら思ってしまった。
 優花は情欲まみれの濃厚な匂いの中、弓弦の迸りの温もりを感じ取りながら、ゆっくりと瞼を閉じた。
 弓弦が優花の愛液にまみれた時も、同じ気持ちだったのだろうか。
 好きな人のもので汚れる、この満ち足りた気持ち。
 優花に訪れたのは、あまりに幸福な倦怠感だった。

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