愛したがりな婚約者は、世間知らずお嬢様を策略執愛で囲い込みたい

書籍情報

愛したがりな婚約者は、世間知らずお嬢様を策略執愛で囲い込みたい


著者:Adria
イラスト:石田惠美
発売日:2024年 3月29日
定価:620円+税

父の勧める婚約話に辟易していた社長令嬢のひまりは、自身の愛犬似の男性・蓮士郎と知り合う。
彼は家柄ではなくひまり自身を見てくれて、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。
つい甘えすぎてしまうところが玉に瑕だけれど、彼の隣は居心地がよく、ひまりは穏やかな日常を過ごしていた。
そんなある日、彼女が高校生の頃に想いを寄せていた先輩に強引に飲みに誘われ、襲われかけてしまい……。
男性恐怖症気味に陥るひまりだったけれど、不思議と蓮士郎だけは触れられて嫌じゃなかった。
ところが、彼と一緒にいると頼りきりで迷惑をかけてしまうと思い悩み、ひまりは一人、祖父の暮らすシチリアを訪れる。
トラウマから解放されないまま三ヶ月が過ぎた頃、ひまりのもとに蓮士郎がやって来て――。
「君に愛されることの悦びを教えてあげる」
彼に負担をかけたくなくて追い返したい一心で、ひまりは「私を女にして!」と無理なお願いをするも、
蓮士郎は引き受けるどころかとあるゲームを提案してきて……!?
執拗なほどに甘くとろとろに蕩かされる日々が始まり、彼といることで少しずつ傷を癒やしていくひまり。
けれどそんなとき、彼女は自身の政略結婚の真相を聞いてしまい――?



【人物紹介】

東条ひまり(とうじょう ひまり)
大手総合化学メーカー『東条化学』の一人娘。
父に政略結婚を勧められているが、恋を諦めきれず乗り気ではない。
愛犬に似た蓮士郎に懐いており、つい頼りすぎてしまう部分がある。

成瀬蓮士郎(なるせ れんしろう)
大手化粧品メーカー『成瀬堂』の三男。
ひまりの婿養子として選ばれ、将来は東条化学を担うことになる予定だが、現在は一般社員として働いている。
ひまり曰く、彼女の愛犬『レン』とよく似ている。

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*取り扱いサイトは、各書店に掲載され次第、更新されます。

【試し読み】

 

「蓮士郎!」
「おはようございます。お久しぶりですね」
 にこやかに微笑んでいる蓮士郎に思わず眉根を寄せる。彼が言葉遣いを改めているのが気に入らなくて、ひまりはソファーにあったクッションを彼に投げつけた。
「……何しに来たのよ? 私、まだ帰らないから」
 ふんっと鼻を鳴らし、蓮士郎を睨みつける。彼はいつもと変わらないにこやかな笑みを崩さない。でもなぜかものすごく怒っている気がして、ひまりはたじろいだ。
(どうしてそんな喋り方なの? いつまで経っても前を向けないから、もう愛想を尽かしたの?)
 そう思うと悲しくなった。二個目のクッションをぎゅっと握り、唇を噛む。
 こんな状態で彼と向き合ったら、さらに呆れられて嫌われてしまうかもしれない。ただでさえ、彼は怒っているようなのに。
「……そ、それより、どうして怒ってるの? 私、何かした?」
「別に怒っていませんよ」
(嘘つき!)
 どう見ても怒っているくせに平然と嘘をつく蓮士郎に、クッションを持つ手に力がこもる。
「帰ってよ。ここに来させてくれたのなら放っておいて。皆からすれば、ぐずぐずしているように見えるかもしれないけど、私なりにちゃんと考えているのよ」
「それは分かっていますが……。お嬢様ひとりでは回復は不可能だと思いますよ?」
「なっ! 不可能って何よ!」
 ひまりは彼を力一杯睨みつけ、手に持っていたクッションをまた投げつけた。
(追い返してやる!)
 負担をかけたくないから追い返すというのは何かが違う気もするが、蓮士郎の態度がひまりを冷静にしてくれない。
(私は蓮士郎に迷惑かけたくないのに……それなのに不可能って何よ。それにそのお嬢様ってなんなのよ。ムカつく……ちゃんと名前で呼びなさいよ)
「帰って。蓮士郎まで仕事休んでどうするのよ。帰って仕事しなさいよ」
「と言われましても社長命令でここに来ているので……。言うなれば、今はここが職場です」
 ニコニコと笑って敬語でひまりを往なす蓮士郎にひどく腹が立った。ひまりは必死で彼を追い返す手立てを考えようと思考を巡らせた。
(うう、どうしよう。一筋縄ではいかなさそう……。あ! そうだ!)
 いいことを思いついて、ほくそ笑む。ひまりはニッコリと彼に微笑みかけた。
「ねぇ、蓮士郎。私のお願いを聞いてくれる? もし最初から聞く気がなかったり、叶えることができないと思うなら今すぐ帰って。そしてしばらく私を放っておいて」
「お願い、ですか?」
 一瞬驚いた顔をしたが、すぐに余裕たっぷりの笑みに変わる。その表情にムッとしたひまりは腰に手を当て、彼に向かってビシッと指差した。
「私を女にして!」
「は?」
 これにはさすがに蓮士郎も予想をしていなかったのだろう。とても驚いた顔をしている。
 彼には以前、胸を曝け出し消毒と治療をしてもらったが、あれはあれ、これはこれだ。それに父の言いつけで来ている蓮士郎が祖父もいるこの屋敷で不埒なことはできないから、これで大人しく帰るしかなくなるだろう。ひまりは勝ちを確信して、しめしめと笑った。
(きっと蓮士郎は困るに違いないわ)
「……好きだった人はエッチができない女はつまらないと言ったわ。価値なんてないって……。だから貴方が私に教えてよ。私を価値のある女にして」
 精一杯悲壮感を込めた表情でそう言った。こう言えば、蓮士郎は何もできないはずだ。現に彼は瞠目して固まったまま動かない。
「本気ですか?」
「できないなら今すぐ帰って。あと、その喋り方は気持ち悪いからやめて」
 そう言って蓮士郎の隣をすり抜けて部屋を出て行こうとすると、その瞬間ガバッと抱きつかれてソファーに押し倒された。
「えっ!?」
「ひまりは本当に浅はかだなぁ」
 何が起きたのか分からず目をぱちくりさせていると、彼が挑発的に笑った。ひまりの腰に跨り、悠然と見下ろす彼に息を呑む。
「蓮士郎……?」
「それで僕を追い返すことができると本気で思っているんだ?」
「ええ、私のお願いを叶えられないなら帰ってほしいわ」
 蓮士郎の雰囲気に呑まれないように真剣な表情をつくる。すると、彼はなぜか目を伏せてくつくつと笑い出した。
「何がおかしいの?」
「おかしいというより可愛くて」
 意味が分からなくて眉根を寄せた時、蓮士郎がひまりの目を見る。楽しいことを思いついたような彼の表情に、背筋にゾクリとしたものが走る。
「じゃあゲームをしようか。期間は三ヵ月。その間、僕はひまりの望みどおり、君に愛されることの悦びを教えてあげるよ。期間が終わったあと、ひまりの心を見事に癒すことができていれば、次は僕に従ってもらうよ」
(ゲーム?)
 まさか受け入れられるとは思っていなかったので、目を白黒させる。彼の――捕食対象を前にした肉食獣のような目が少し怖くて、変な汗が出た。
(私、とんでもない失敗をしたんじゃ! 絶対に蓮士郎は乗ってこないと思ったのに……)
「蓮士郎こそ本気で言ってるの? ここにはおじいさまもいるのよ……」
「だから何? もしかして僕にはできないと思ったから言い出したの?」
「ま、まさか……!」
 うんとは言えず、ぶんぶんと首を横に振る。
 本気になった彼に勝てる気がしない。だが、自分から言い出した手前、あとには引けなかった。それに蓮士郎の纏う雰囲気が発言の撤回を許してくれなさそうで、ひまりは観念して何度も頷いた。
「分かったわ。分かったから、その目やめて。怖いから」
 そう言うと、ゆっくりと彼の顔が近づいてきて下唇をぺろりと舐められる。
(〜〜〜っ!)
「なら、交渉成立だね。君は積極的な時は危なっかしいほどに積極的だけど、保守的なところもあるから、このゲームはいい結果を生むと思うよ」
「……蓮士郎。やっぱり怒ってるわよね? だから最初言葉遣いを改めていたんでしょう? 私、あの喋り方の蓮士郎は嫌だわ」
 先ほどとは打って変わって機嫌が良さそうに笑う彼におずおずと問いかける。すると、頬をぐにっと摘まれた。
「少し怒っていたかな。ひまりが傷ついているのは分かっているけど、いくらなんでも帰ってこなさすぎだよ。その上、僕の姿を見つけて逃げるってどういうこと?」
「ごめんなひゃい……」
(リビングから部屋に逃げたことバレてたんだ……!)
「だから仕返ししただけ。もう僕から逃げちゃ駄目だよ。次は本格的にお仕置きをするから」
「……」
「ほら、返事は?」
 今、返事をすると絶対に墓穴を掘る気がする。ひまりは返答に窮して彼から目を逸らした。すると、蓮士郎に額を指で弾かれる。
「っ!」
「どうせひまりのことだから、ずっと一人でうじうじ悩んでたんでしょ」
(う……)
 見抜かれていることにあたふたしてしまう。ひまりが「だって……」と呟き俯くと、蓮士郎の手に両頬を挟まれて無理矢理目を合わせられた。
「ねぇ、ひまり。一人で悩まないで。不安なことがあったり嫌なことがあったら、ちゃんと吐き出して」
「そんなの駄目よ。そんなふうに貴方に甘えてばかりなんていられないもの。迷惑をかけてしまうわ」
「それの何がいけないの? 甘えてよ。心を癒すために僕を利用したっていいんだ。ひまり、これからは迷惑をかけるんじゃないかって心配する隙がないくらい、どろどろに甘やかしてあげるから覚悟して」
(本当に? どれだけ駄目な私を見ても愛想を尽かしたりしない?)
 見惚れるほどに甘い彼の笑みに目を奪われた瞬間、互いの唇が重なり合った。
 このゲームで何かが変わるのだろうか。食べ尽くされてしまいそうな感覚に逃げ出したい気持ちとそれほどまでに自分のことを思ってくれて嬉しいという気持ちが綯い交ぜになる。どちらにしても自分が言い出した手前、もうあとには引けない。なら、このまま流れに身を任せてみようと思う。ひまりはそう心に決めて彼の背中に手を回した。
「んっ……っ、ふぁ」
 その瞬間、いきなり舌を捩じ込まれて呼吸を奪われる。苦しさと戸惑いに身を捩っても蓮士郎はやめてくれなかった。それどころかしっかりと押さえつけて、貪るようにキスをしてくる。
「っ……っんぅ」
 蓮士郎の胸を精一杯押すとリップ音を立てて、彼の唇が離れた。好きなように唇を味わい尽くされたせいか、上手く息ができない。ゼーハーと荒い呼吸を繰り返しながら彼の胸に寄りかかると、蓮士郎は満足げにひまりの唇を親指でなぞった。その緩慢な動きにぞくりと身震いしてしまう。
「あ、あの、蓮士郎……? 今からするの? 私のこと呼んできなさいって言われたんでしょう? それなのに、二人で部屋にこもって大丈夫かな?」
(さすがにバレたらやばいわよね?)
 すると、彼はひまりを抱きかかえてベッドに腰掛けた。そして、ぺろりと唇を舐められる。
「〜〜〜っ」
「積もる話があるだろうから、まずはゆっくり話してきたらいいと言ってもらえたから問題はないと思うよ。それに会長も小野さんも、このあと出掛けるそうだよ」
(あ、そっか……。おじいさまはいつもみたいにお墓参りのあと街の皆のところよね。小野さんはどこにいくのかしら? そう言えば昨日何か言っていたような……買い物かな?)
 そうか。今この家には自分と蓮士郎だけなのか。そう思うと、ボンッと頭に湯気が立った。真っ赤になった顔でちらちら彼を見ると、いつものように柔らかく微笑んで額にキスをしてくれる。見慣れたその表情になんだかすごく安心して胸元を押さえた瞬間、自分の体がベッドに沈んだ。
「!」
 何が起きたか分からず大きく目を見開く。動揺しているひまりをよそに、蓮士郎はシャツを脱ぎ捨てて覆い被さってきた。慌てて彼の胸をドンッと押す。
「ちょっと待って……私……」
「大丈夫。ひまりが怖くならないように、しっかり時間をかけてとろとろにしてあげるから心配しなくていいよ」
「でも……。わ、私、まだ覚悟が……。お願いしておきながら、躊躇うなんて変よね。ごめんなさい。こんなのだから、私はつまらない女なんだわ……」
「ひまりはつまらなくなんてないよ。初めてなんだから怖いと思って何が悪いの?」
「だ、だって……」
「ねぇ、ひまり。君が本気で嫌がることはしないと約束するから、少しだけ頑張ってみない? やってみて無理なら、やめるから」
(無理ならやめてくれるの?)
 蓮士郎がひどいことするわけがないと分かっている。怖くなったらいつでもやめてもらえるという安心感が、ひまりの体から力を抜いていった。
(それなら大丈夫よね?)
 こくりと頷くと、彼の手が優しく頭を撫でてくれる。
 前も思ったが、蓮士郎との触れ合いは不思議と怖くない。そのせいか、彼ならひまりの心に刺さった棘を抜いてくれるかもしれないと思えるのだ。何より、流れに身を任せると決めたのだから、覚悟を決めるべきだろう。
 ぎゅっと抱き締めて宥めるように何度も優しいキスをくれる蓮士郎に、小さく息をついてから背中に手を回すと、彼がひまりの服を取り払う。そのあまりの素早さに目を剥いた。
(やだもう。恥ずかしい……!)
 下着姿にされてしまった体を隠すために布団に手を伸ばす。
 始まるこの瞬間がどうしても落ち着かなくてかけ布団で体を隠そうとしたのに、ひまりが掴むより早く蓮士郎がベッドの下に落としてしまった。
「隠さないでよ」
「で、でも……あっ、待っ……んんぅ」
 戸惑いすらも呑み込むように唇を奪われ、息つく暇さえ与えないとばかりに口内を貪られる。少し苦しいが今彼がどんな顔をしているのか気になって薄く目を開くと、視線が絡み合った。その目に射貫かれた瞬間、彼の手がひまりの背中に回りホックを外してブラを取り払う。小さく悲鳴を上げたひまりの反応を楽しむように乳房を揉んだり、胸の先端を指の腹で転がしたりしてくる。蓮士郎の熱い手で胸を弄られると気持ち良くてたまらなかった。
「怖くない?」
「うん、怖くな……い、んっ、あっ……ああっ!」
 こくこくと頷くと安堵の息をついた蓮士郎が胸に指を食い込ませる。淫靡に形を変える自分の乳房がすごく羞恥を誘って、ひまりは目を逸らした。その時、「薄桃色に色づいて、美味しそうだね」と言った蓮士郎が乳暈を円く舐った。胸の先端を避けるように舐める彼の舌が焦れったい。
「んっ、んぅ、れん……しろう……」
「何? もしかして物足りない?」
「ひゃんっ」
 くすっと笑った彼が舐めていないほうの胸の先端をきゅっと摘み上げる。彼は左右違う動きで、ひまりの性感を引き出していった。
(やぁ……これ、気持ちいいっ)
 狼狽えていてもいざ始まれば、この体は蓮士郎の思うがままに反応する。こんなにも呆気なく感じてしまう我が身が少し情けなくなった。
「はっ、はうっ……ぁんっ、あっ……」
 赤く染まった先端を指で弾かれると、目の前がちかちかした。呼吸が甘く弾み、体は火照りを増して、肌がじっとりと汗ばむ。
「んぅ、ひぁっ!」
 蓮士郎は尖らせた舌先で胸の先端をくりくりと転がしたかと思うと、たっぷりの唾液を纏わせた舌で舐る。その刺激に背中が弓なりにしなって、体がびくびくと跳ねた。目を瞑って見ないようにしているはずなのに、自分が何をされているのか分かってしまう。蓮士郎は胸の先端を口に含み、まるで食べるみたいに舌で転がしたり、吸いついたりしてくる。味わわれているみたいで恥ずかしいのに、気持ちが良くてたまらない。体が勝手に反応して、自然と感じいった声が出てしまう。
「ひまり、可愛い。キスをしようか?」
「うん……?」
 わけも分からないまま頷くとお互いの唇が重なる。何度か啄むようなキスを繰り返したあと、蓮士郎の舌が口の中に入ってきて、まるで生き物みたいにうごめく。舌のつけ根から先までをゆるくなぞられて、唇の隙間からくぐもった声が漏れた。
「はっ、んっ……ふ、ふあぁ」
 彼の舌の動きを真似るように、おずおずと自分も舌を絡ませると、とろりと唾液を喉に流し込まれた。その途端、著しく体温が上がった気がして体が震える。
(熱い……)
 キスをしながら蓮士郎の手がひまりの胸から腰のくびれを辿った。ゆっくりと太ももに向かう彼の手を押さえてしまうと舌を甘噛みされる。
「んうっ!」
 ひまりが身を竦めたのと同時に、唇を離した蓮士郎が体を起こした。太ももの内側を撫で、ショーツを脱がそうとしてくる彼に、恥ずかしくて脚に力を入れると咎めるように胸の先端をきゅっと摘み上げられる。
「あっ!」
 びくんと体が跳ねた隙をついて、蓮士郎がショーツを抜き取る。そして脚の間に体を滑り込ませた。そこに陣取られては脚を閉じたくても閉じられない。
「いい子だね。とてもよく濡れてるよ」 
「やだぁっ、わざわざ言わないで!」
 ひまりが自分の手で顔を覆い隠すと蓮士郎が蜜口に触れた。花弁を割り開くように指を動かされると、くちゅっという卑猥な水音が耳に響いてさらに羞恥心を煽る。
「ひぁあっ……ああっ」
 敏感な花芽にあふれる蜜を塗りつけて捏ねられると、腰が浮いた。
「よしよし。怖くないからね。もっと何も考えられなくなろうか」
 声はとびきり甘く優しいのに、ひまりに触れる手は挑発的だ。蓮士郎が手を動かすたびに、体の奥からじわっと何かが滲み出てくる。手を伸ばして彼の手を掴み、「待って」とお願いすれば宥めるようにキスをしてくれるが、手は止めてくれない。唇を食んで舌をすり合わせて、敏感な花芽を円を描くように撫でたり、引っ掻いたりしてくるのだ。そこを中心に甘い痺れが広がってきて、ひまりは蓮士郎の胸を震える手で押した。
「ああ、ふぁっ……ひぅっ」
(これ駄目……気持ち良すぎる)
 言葉で訴えたくても、口が塞がれていてできない。自分の体を内側から支配する快感と熱に、どうにかなってしまいそうだった。自分の体なのに、まるで操られているかのように思い通りにならない。ひまりがシーツを強く掴んで必死で耐えていると、二本の指で花芽をきゅっと摘まれて、腰がびくっと引ける。でもすぐに彼の左手に腰を押さえつけられ引き寄せられた。そしてひまりの口内をねっとりと舐めまわしてから、唇を離す。
「ひまり、指を挿れるから痛かったら言うんだよ」
 唇を解放された時にはもう彼がくれる快感に蕩けていて、「気持ち良すぎるから駄目」と言いたくても上手く言葉を紡げなかった。蓮士郎は、そんなひまりの――花弁の奥に隠された蜜口に触れてほぐすように丹念に指でなぞり、ゆっくりと中に入ってきた。
「あっ、あぅ……」
 中に指が入ってきて、そのままぐるりと掻き回される。すでにめちゃくちゃ気持ちいいせいか圧迫感も痛みもなかった。
「痛くない?」
「ふぁ、はっ……うん、痛くないっ」
 蓮士郎はホッと息をついて、ゆっくりと指を動かしてきた。探るような動きで恥骨の裏をなぞられると、体の奥のほうからぞくぞくしてくる。自分の中を広げるように動く彼の指に熱い何かがせり上がってくる感覚がした。

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