失恋ワンナイトの末、敏腕御曹司の淫らな執着愛に囚われる

書籍情報

失恋ワンナイトの末、敏腕御曹司の淫らな執着愛に囚われる


著者:山野辺りり
イラスト:ユカ
発売日:2023年 9月29日
定価:630円+税

充希は入社以来秘かに好きだった同僚から『二人きりで会いたい』と言われ仄かな期待を抱く。
しかしドキドキしながら待ち合わせ場所に行ってみれば、
『親友のお前に会社関係では一番に結婚報告したかった』と言われ玉砕。恋心を告げられないまま男友達扱いされ失恋する。
その後、自棄酒中に出会った男と勢いでワンナイト(相手の男に見覚えがある気もしたが、酔っていたので気づかなかった。
普段酒に強い分、酩酊状態になること自体珍しい)。しかし後日その相手が取引先相手の颯士だと判明し……。
「――君は僕の知らない感情を、悉く掻き立ててくれるね」
充希はいつものキャラ通り笑ってなかったことにしようとするが、何故か颯士からぐいぐいアプローチされ――!?

【人物紹介】

佐藤充希(さとう みつき)
企画・イベント会社の営業で26歳
控えめな性格で読書好き。小動物のような特徴も。

蓮乗寺颯士(れんじょうじ そうし)
蓮乗寺グループ ホテル部門部長(経営者一族)の28歳
一見優しげで冷静沈着だが、実際は執着心や独占欲が強いタイプ。

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*取り扱いサイトは、各書店に掲載され次第、更新されます。

【試し読み】

 自分でも尾てい骨付近を摩られるのが弱いなんて知らなかった。
 不思議と尿意に似た感覚がせり上がる。それが恥ずかしくて身を捩れば、乳房の頂に軽く歯を立てられた。
「や……っ」
 痛みはない。むしろ宥めるようにすぐさま舌先で擽られ、先端を転がされて、掻痒感の方が大きい。
 反射的に充希が背筋をしならせると、再度弱点である尾てい骨辺りを弄られた。
「ふ、ぁ、あ……」
「次はどこを触ろうか」
 含み笑いを忍ばせて、颯士が充希の襟足から首をなぞってきた。そこもどうしようもなくゾワゾワとする。
 無意識に腿に力が入り、充希が膝立ちになりかけた瞬間、クルリと視界が反転した。
「きゃ……っ」
 背中がベッドに受け止められる。見上げた先には満足げな男の姿。
 どちらかと言うと『甘い』という形容が似合う顔には、獰猛で危険な男の笑みが乗っていた。
「見下ろされるのも悪くないが、僕はどちらかと言うとこの体勢の方が好きかな」
「あ……っ」
 片脚を取られて身動きを封じられ、反撃ができなくなる。悔しくて充希が視線を尖らせると、彼は完璧な笑顔で打ち返してきた。
「女性に睨まれるのも悪くないね。もっと色々な充希の表情を見てみたいな……とりあえず今夜は感じている顔が見たいけど」
 サラっととんでもないことを言われ、驚きを隠せない。
 充希は人生でこんなことを告げられたのは生まれて初めてである。一歩間違えればセクハラになりかねない。
 だが酔っているからか、それとも相手が颯士だからなのか、魅力的な口説き文句にも聞こえなくはなかった。
 ――気障な台詞も様になるなんて、すごいなぁ……。
 平素の充希なら吹き出しかねない言葉のオンパレードなのに、説得力が半端ない。これも全て、イケメンのなせる業なのか。
 ひたすら感心しつつ、充希はガッチリつかまれたままの片脚を取り返そうと足掻いた。
「今更逃がさないよ」
 低くなった男の声音には、ほんのりと怒りが籠っている。
 どうしてなのか理由は不明。けれど性急に膝を割られ、充希は忙しく瞬いた。
「待って……!」
「待たない」
「ぁ……ッ」
 彼が自身の指を舐め、唾液を纏わせて充希の蜜口に触れてくる。そこは既に、潤いを湛えていた。
「……っく」
 まだ触れられてもいなかったのに膨れていた肉粒が、軽く弾かれただけで絶大な快楽を生む。
 行為自体久し振りだから濡れにくいと心配していたけれど、杞憂だったようだ。
 颯士の指先が動かされる度に、粘着質な水音が奏でられる。それは充希の花弁がたっぷりと蜜を溢れさせている証拠だった。
「んふ……ァっ、あ、ああ……ッ」
 花芯を摘まれ、二本の指で擦られて、押し潰される。根元を押さえられるのも、表面を擦られるのも気持ちがいい。
 何をされても腰が浮き上がりそうになり、充希の爪先は自然と丸まった。
「可愛いな」
「やぁあッ」
 隘路に侵入した指は一本。それもまだ第一関節のみだ。
 にも拘わらず異物に蜜窟が騒めいた。ほんの浅い部分を往復する指の動きがハッキリ感じ取れる。
 歓迎の意を示しているのか排除しようとしているのか淫道が蠕動し、彼の指が更に奥へと押し込まれた。
「ひ、ぅ……ッ」
「キツイね。最近恋人はいなかった?」
「そんな、の……っ、今聞く?」
「確かに。いたって言われたら、理性が吹っ飛ぶかもしれない。逆にいないと言われても、嬉しくて暴走しそう」
 充希が理不尽さに困惑し颯士を見つめれば、彼は双眸を細めた。
 しかし何故だろう。とても笑顔には見えない。どちらかと言うと、獲物に狙いを定めた肉食獣。
 充希は急激に身の危険を感じ、頬を引き攣らせた。
「ああ、冷静にならないでほしいな。もっと気持ちよくしてあげるから」
「んぁッ」
 蜜壺を探る指をいきなり二本に増やされて、充希は髪を振り乱した。
 颯士の指は細くしなやかだが、それでも長く節くれだっており、明らかに男性のものだ。
 長年ご無沙汰だった充希の淫窟には、充分すぎる質量である。腹の中を掻き回されると少し苦しい。
 だが充希が顔を歪めるより先に、花芽を彼の親指で捏ねられた。
「ひゃうッ」
「こっちの方が反応がいいね。経験自体少ないみたいだ」
「だ、だからそれを今聞く……っ? ぁ、ああッ」
 濡れ襞を撫で摩られ、眼前にチカチカと光が瞬いた。四肢は勝手に力が入って、シーツに皺を刻んでいる。
 全身が粟立ち、快楽の水位がどんどん上がった。このままではアッサリと達してしまいそうだと充希が思った時――
「ぁ……んぁ、ぁああッ」
 柔らかく生温かい、指とは異なる刺激に襲われた。
 慌てて頭を起こし、視界に映し出された光景に後悔する。そこには己の股座に顔を埋める男の姿があった。
「だ、駄目……っ!」
 今日は一日働いて、シャワーも浴びていない。先刻颯士自身が『後にしよう』と言ったのだから、知らないはずはないのに。
「汚いから……! 絶対やめて!」
「僕は気にしないけど、充希が嫌ならやめる。今回は」
「今回はっ?」
 断っておくが、次回の予定はない。けれど彼が思い留まってくれた安堵で、充希はそれ以上疑問をぶつけるのを忘れた。
「じゃあせめて内腿に印をつけていいか? ここなら誰にも見せないだろう?」
「え……そ、それなら……?」
 淫靡な手つきで脚の付け根付近を突かれ、得も言われぬ喜悦が生じる。
 本来は『見える』か『見えないか』が問題ではなく痕自体ごめん被りたいところではあるが、選択肢をやんわり狭められたことに、この時充希は気づかなかった。
 全ては酒が悪い。
 どうも上手く言い包められた気はしたものの、他人から見えないなら構わないかと妥協した。
 ――ん? でも颯士さんは『見えない』じゃなく『見せない』って言った……?
 違いは微妙。ごく小さな差異だ。
 しかし潜む意味は別ものであることにも、充希は考えが至らなかった。酒のせいで。
 結局、言質を取ったとばかりに彼が何度も充希の内腿に吸い付いて、幾つも赤い花を咲かせた。
 颯士が満足する頃には、大量に虫に食われたか、皮膚病に罹ったかという状態になり、充希が大いに後悔したのは言うまでもない。
「――これで人前では着替えもままならないね」
「ぇ、あ、そんな予定はないけど……?」
 どうも釈然としないが、キスマークをつけられている合間にもあちこちに快楽の種を植えられた充希は、既に息が絶え絶えになっていた。
 媚肉は綻んで、滴るほどに潤っている。
 腹の中は疼きを増し、淫らな色に染まった胸の飾りは触れられていなくてもジンジンと痺れる。
 乱れた呼気は、明らかに濡れていた。
 全身が朱に染まり、汗ばんでいる。おそらく頬はもっと赤くなっていることだろう。
 瞳に至っては、ふしだらな期待が満ちているかもしれない。
 完全に発情した女。分かっていても直せない。
 早くほしいと強請らないことだけが、充希にできるなけなしの自制だった。
「……ん……っ」
「充希は敏感だね。すごく、可愛い」
「か、可愛い……? 私が?」
「ああ、とても」
 言われ慣れていない誉め言葉にときめくのは、自分も乙女な部分があったということか。 『格好いい』や『頼りになる』も自尊心を満たしてくれたけれど、そういった称賛からは得られない充足感に酔いしれた。
「ふ、も、もう……」
 鼻の頭にキスされるのがむず痒い。
 涙の膜が張った瞳を瞬き、視界に颯士だけを収めた。彼もまた、充希のみを見つめている。それも欲望の対象としてではなく、まるで大事な相手とでも言いたげな熱い視線で。
「君を僕のものにするよ」
「……あ、ぁああ……ッ」
 身体の中心を割り開き、長大なものが入ってくる。久し振りであることだけが理由ではなく、充希は圧迫感に苛まれた。
「お、大き……っ」
 それも尋常ではなく。数少ない過去の恋人と比べても段違いだ。
 だが存分に濡れそぼった蜜道は、ゆっくりと颯士の肉槍を受け入れていった。
「……っ、そういう発言、今されるとヤバイ……っ、それに――誰かと比べているなら上書きさせて?」
「ひ、ぅッ」
 一番太い部分が通過し、安堵したのも束の間、彼が一気に剛直を捻じ込んできた。
 充希の内側が、みっちりと逞しい屹立で満たされる。内臓を押し上げられる衝撃に、数秒息もできなかった。
「かは……っ」
「ああ……僕が動かなくてもナカが動いて絞られているみたいだ」
 感嘆の息を漏らす颯士は壮絶に艶めかしい。ただ、充希はそれどころではなかった。
「動かないで……っ」
 喋るだけでも振動が内部に響いて、絶大な法悦を産む。
 限界まで押し広げられた肉道が苦しいのに、それを上回る愉悦があった。
 形も、大きさも、硬さも、角度の全てがしっくり嵌る。もしや自分のために誂えられたのかと勘違いしたくなるほど。相性がいいとはこういうことを言うのか。
 過去の経験の全てが塗り替えられる。
 充希は今まで特別セックスが好きでも嫌いでもなかったが、それは本物の快楽を知らなかったせいかもしれない。禁断の果実を一度味わってしまえば、二度と元には戻れない予感がした。
「待って、変になる……っ、こんなの初めてで……っ」
「誉め言葉として受け取っておく」
「んぁあッ」
 腰を引いた彼が一気に最奥めがけて楔を叩きつけてきて、充希ははしたない嬌声を上げた。
 誰にも許したことのない場所まで、先端が到達している。しかもそこが自分の弱いところだと、思い知らされた。
「ぁ、あああッ……ひぃ、あッ、ァあ……っ」
 揺さ振られる度に汗が飛び散り、貫かれる毎に意識が白んだ。
 的確にいいところを暴かれて、執拗に穿たれる。強弱をつけ腹側の一点と深い部分を擦られると、充希の理性はたちまち引き剥がされた。
 かつて経験した行為など、子どもの遊びとしか思えない。
 暴力と同義ではと疑う悦楽に、思考力は完全に壊された。
「ぉあ……ッ、ぁ、あ、やぁッ、駄目ぇ……ッ」
 意味のある言葉など吐けず、押し出されるのは艶声ばかり。だらしなく開きっ放しになった唇からは唾液が垂れたが、充希は気に掛ける発想もできなかった。
 子宮が押し潰されそうな打擲を受け、男と女の肉がぶつかる。
 局部が重なると息が止まる愉悦に染まり、引き抜かれれば爛れた濡れ襞を掻き毟られ淫蕩に鳴いた。
「んぁアッ、ぁ、あんッ」
 大きく開かれた両脚を颯士の肩に担がれて、結合が深くなる。一番奥だと思っていた場所を抉じ開けられそうで、充希は無我夢中で首を横に振った。
「無理……ッ」
 汗も涙も唾液も交じり合い、きっと顔は酷いことになっているだろう。化粧も落としていなかったと今更思い出し、次の瞬間には全部忘れた。
 彼が上体を倒してきて、充希の内側を支配する。
 同時に花芽を捏ねられ、喜悦が飽和した。
「ひ……ぁ、ああああッ」
 気持ちがいいなんて言葉ではとても追いつかない。頭がおかしくなりそうな快楽に、充希の悩みは隅に追いやられた。
 悔しいけれど、一時でも『嫌なことを忘れさせ』てくれたのは間違いない。しかし知らないままでも問題なかった官能を覚えされられたのも事実だ。
「ふ、は、ぁあ……ッ、ぁ、あ……ッ」
 攪拌された蜜液が際限なく溢れ出る。滑りがよくなり、颯士の動きが激しさを増した。
 もはや充希はついてゆくのが精一杯。いや、意識を飛ばさずにいるのが今できる全てだった。
 ベッドが軋み、視界が忙しく上下にぶれる。
 担がれたままの充希の脚も淫らに揺れた。爪先が卑猥な形に丸まって、空中を泳いでいる。
 縋るものを求め、枕を掴んでいた充希の指先が白くなるほど握り締められた。
「んぁッ、ァ、あぅっ、あ、あああ……ッ」
 すっかり慎ましさをなくした花蕾を扱かれ、絶頂へ駆け上がる。だが充希が達しても、彼の動きは止まらなかった。
「あひ……ッ、も、イッてるからぁ……!」
 颯士の肉槍に絡みつく媚肉を引き剥がす荒々しい抽挿に、高みから下りてこられない。
 達している間にも突き上げられ、無防備な子宮を揺さ振られた。
 めちゃくちゃに気持ちがいい。思考力は粉々になり、快楽が全身を支配する。
 蕩けた身体には力が入らず、充希は荒々しい情交を受け止め、だらしなく嬌声を迸らせた。
「……ァ、あ、あああ……ッ」
 これまでにない大波に呑まれ、全身が強張った。
 四肢は痙攣し、音も光も消え失せる。あらゆる感覚は麻痺し、生々しい悦楽だけが充希が感じ取れる全てになった。
「……っく」
 低く唸った彼が強く充希を抱きしめる。
 蜜窟の奥で颯士の剛直が跳ね、彼が薄い皮膜越しに欲を放ったのが伝わってきた。
「ぁ……あ……」
 こんな快楽は知らない。凶暴過ぎて、いっそ恐ろしい。その上、あまりにも甘美で後を引く。
 覚えてしまえば中毒になるのは間違いなく、充希は危険な香りに眩暈がした。
 ――最高に気持ちよかったけど……怖い。二度はいらない……日常に戻れなくなる。
 何故なら麻薬と似すぎている。
 当然摂取したことはないものの、おそらく危ない薬と大差ない。
 好色でないのなら、世の中知らない方が幸せなことがあるのだと、充希はしみじみ感じた。下りてくる瞼に抗わず、眠りの中へ逃げこもうとすると。
「まだ眠っちゃ駄目だよ。――たった一度じゃとても満足できない」
「え」
 とんでもない発言が聞こえた。どうか聞き間違いか幻聴であってほしい。
 しかし現実は非情。
 充希が重い瞼を懸命に押し上げれば、爽やかに笑う男の顔が目に入った。
「ん……っ」
 颯士が充希の中から抜け出てゆき、素早く避妊具を交換する。その鮮やかな手つきをぼんやり見ていたのは、こちらの失態だ。とっとと逃げればよかったと気づいた時には、後の祭り。
 彼は妖艶さを垂れ流しにしつつ、再び充希の脚を割り開いた。
「やっと君を抱ける興奮のせいで、一度目はあまり我慢できなかった。次はもっと長く充希を楽しませてみせるよ」
「ぇ……いやいや、もう充分……」
「嫌なことなんて思い出せもしなくなるよう、沢山抱き合おう」
「待っ……ぁ、ああッ」
 何の抵抗もなく充希の隘路は颯士のものを飲み込んだ。
 初めから深々と串刺しにされ、せっかく落ち着き始めていた心音が途端に荒ぶる。
 充希の身体は横向きに体勢を変えられ、内部を擦られる角度も変化した。
「ぃ、ぁッ」
「君のナカがすごく温かくて吸い付いてくる……歓迎されている気分だ」
「ち、違……ぁ、あああッ」
 ぐちゅぐちゅと淫音を掻き鳴らし、律動が始まった。
 まだ夜が明ける気配もない。
 この日、充希が正孝を思い出す機会は、二度と訪れなかった。

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