幼なじみでライバルな貴方と淫靡で蕩けるような愛を

書籍情報

幼なじみでライバルな貴方と淫靡で蕩けるような愛を


著者:水守真子
イラスト:園見亜季
発売日:2022年 7月29日
定価:610円+税

派遣先との契約が一ヶ月も早く終了してしまった綾子。
陰鬱な気分で街を歩いていると、偶然元同級生であり、元彼の弟でもある啓太と再会する。
起業し立派に働く啓太と今の自分を比べより落ち込む綾子だったが、彼に食事に連れ出され話をしているうちに、徐々に元気を取り戻していく。
しかし、帰り際綾子が言った冗談が彼の心に火をつけてしまったようで……!?
「身体で払ってもらうことにしたから。そうすれば気が済むんだよね。遠慮なく抱くけど――逃げるなよ」
偶然の再会から、かつてすれ違ってしまった恋が再び動き出す――。

【人物紹介】

菊池綾子(きくち あやこ)
派遣先との契約が終了してしまったため、就活中。
啓太の兄と付き合っていたが、現在は全く連絡を取っていない。
整った容姿と明るく社交的な性格のため高校の頃から人気者だったが、本人は無自覚。

橘啓太(たちばな けいた)
綾子の高校の同級生。
現在は起業し、バリバリ働いているエリート。
当時から綾子にずっと想いを寄せ続けているが、鈍感な彼女には気づかれていない。

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【試し読み】

 啓太が住んでいる白塗りの壁がこぎれいなマンションのオートロックのエントランスを潜る。
 綾子は照明を反射して輝いているように見える白い壁のエレベーターホールを見渡した。
「きれいなマンションだね」
「築年数はそれなりだよ」
「へぇ。じゃぁ管理が行き届いているんだ」
 綾子の感想に啓太は苦笑しているが、うらやましいかぎりだ。
 ごみは落ちていないし、ポスティングされたチラシが散らばってもいない。
 天井には存在感をアピールする監視カメラがある。住むのに安心感は大切だ。
 しかも、ワンフロアに部屋が四つしかないため全て角部屋らしい。予算を含む条件に合うマンションがここだけだったと啓太は言う。
 どんな条件を提示したのかは知らないが、綾子は自分の住むマンションの薄暗い廊下を思い浮かべて格差を感じてしまった。
 啓太は到着したエレベーターに綾子を乗せて自分も乗り込むと、壁に肩を付けて腕を組んだ。
 好奇心を隠しもせず、明るい照明のエレベーターを見回していると首を傾げられた。
「いつも、そんな感じなの」
「何が?」
 軽く天を仰いだ啓太に、まだ酔いが残っている綾子は何かやってしまったかと少し反省をした。
 居酒屋から出た時の緊張感が薄れてしまったのには理由はある。
 綾子がトイレを借りたいと寄った途中のコンビニで、啓太はビールや酎ハイ、まぁまぁな量のスナック菓子におつまみを買っていたのだ。
 そこで、緊張が解れてしまった。
 啓太は酔って軽い発言をした自分に注意をしたかっただけで、本当は部屋で飲み直してくれるらしい。
 高校時代から色恋的な発展がゼロだったのに、いきなりそういう関係になるはずがないのだ。
 色気より食い気に関しては、ちょっとした自信がある。
 まだ酔いが残っているので失言だけはするまいと気を付けていたが、夜を一人で過ごす時間が短くなることに安堵してテンションは高くなっていた。
 終電までには帰るぞと、綾子は改めて気を引き締め直す。
「どうぞ」
 部屋の鍵を開けた啓太が、ドアを押さえて中に入るように促してくれた。
 身体が触れ合わないように、距離も配慮もしてくれている。
 啓太は高校時代からスマートで少女漫画の登場人物のような男子生徒だったから、当然モテモテだった。
「なんだかんだで、今も女の子からチヤホヤされて、モテモテなんでしょ」
「どっかのオヤジみたいだね、その言い方」
 高校時代も、その後も、付き合っていた人は本当にいなかったのだろうか。啓太とはそういう話は全くしなかった。
「お邪魔します」
「散らかってても勘弁してよ」
 週末にまとめて掃除するのは、働いているとよくある話だ。でも、高校時代から啓太の部屋はいつもきれいだった。
 綾子は壁に手を付いてヒールを脱いだ。廊下からの明かりだけを頼りに、玄関の電気のスイッチを探す。
「ねぇ、電気をつけたい……」
 探し当てる前にバタンとドアが閉まって、視界が急に真っ暗になった。
 そんなに広くはない玄関で、真後ろに啓太の息遣いを感じて、ちょっとだけ焦る。
「真っ暗……。ね、啓太……」
「ほんと、綾子は変わらない」
 手探りでスイッチを探している手首を掴まれて、身体を反転させられた。背中を冷たい壁に押し付けられ、頭の上に啓太の息が掛る。
 何が起こっているのかがわからず、綾子の頭の中がぐるぐると混乱した。これは、まだ目が鳴れなくて何も見えないが壁ドンというやつだ。
「……昔から警戒心が無さ過ぎなんだけど」
「いや、だって、その、すいません……」
 昔から失言以外も問題があったと教えられて素直に反省する。
 注意してくれるのは嬉しいが、この近さは心臓に良くない。
「綾子みたいな子に、笑顔で話し掛けられた男子の気持ちとか、考えた事ある?」
「……ないです」
 クラスメイトに気安いとウザがられていたのだろうか。しゅんと項垂れつつ謝ったので離してくれるかと思ったが、額に柔らかいものが押し当てられた。
 それが唇だと気づいた瞬間、綾子は硬直する。
「さっきはごめん、痛かっただろ」
「いっ……え」
 デコピンされた箇所だとわかったが、唇の柔らかさが衝撃的過ぎて痛かったことすら思い出せない。
 啓太の唇はすぐに離れたのに、下腹部にぽっと灯った熱さだけは残った。
 この疼く感じは女として反応してしまっている証拠だ。経験が少なくてもそれくらいはわかる。
「せ、背中を叩いたから。お互い様で……」
「それは良かった」
 啓太の唇が今度は頬に移動してきて、綾子は肩を縮こまらせた。
 彼は自分を戒めようとしてくれているのか、綾子の冗談を本当に本気で受け取ったのか、どちらなのか。
 ただ、綾子の身体に灯った熱さは、少しずつでも身体に広がっていく。
 高校の同級生だった潔癖な啓太の記憶しかないだけに、目の前の男性が彼と同一人物だとは思えない。そして、ただひたすらに恥ずかしい。
 啓太からする居酒屋の匂いが鼻孔をくすぐる。彼の唇が耳朶や首筋に辿り始めて、綾子は身を捩った。
「んっ……、や、啓太……ぁっ」
「そんな声、初めて聞いた。もっと名前呼んでよ」
 ちろりと首筋を舌先で舐められ、首筋をきつく吸い上げられる。
 ちくりとした痛みと、両脚の間にじんじんとした疼きが同時に襲ってきた。両腿をすり合わせながら、綾子は啓太の脇腹あたりを叩く。
「やっ……、距離が、近いし、これは、これ以上は」
「かわいいよね。これ以上はどうなるのか、僕は見たくてたまらないんだけど」
 啓太の口から聞いた「かわいい」という言葉に、綾子の心臓がバクバクと爆発寸前に高鳴り始めた。
 コートのボタンを外されて、肩から落とされる。
 ニットから覗く鎖骨を舌で辿られながら、啓太の指は耳殻をやわやわと触り、耳たぶの小さなピアスを親指で弄んでいた。
「かわいいとか……嘘を吐いたら、ダメなんだから、あ……んっ」
「嘘じゃないし。めちゃくちゃかわいいよ。……昔からね」
 昔といえば、高校の時じゃないか。これは反則過ぎる。あんなに潔癖で、近寄る女の子たちを笑顔で牽制してたくせに。
 耳を指で触れられて増していく熱に、綾子は太腿を何度も擦り合わせていた。
 啓太が先程吸い上げた首筋と同じ場所を再び強く吸い上げる。
「け、啓太……っ。後が、付いちゃうから……」
「付けてる。他の男に、身体で払うなんて言わないようにしてもらわないと」
 神に誓ってそんな冗談を口にしたことなど無いと言える。でも、啓太の前で言ってしまっているわけで、前例があると思われるのは当然だ。
 それが、とても悲しくなった。
「言わないし……っ」
「へぇ、なら僕が特別みたいだ。……勘違いしそうで、やばいね」
 核心を突かれたようで、どきりとした。
 突然、スカートがたくし上げられて、ストッキングと一緒にショーツがぐっと下ろされる。
「えっ」
 ひんやりした外気が肌に触れた。びくりと震えたのは啓太の手も冷たかったからだ。
「ごめん、僕の手が冷たい?」
「そういう、問題じゃ……っ」
 太腿まで下ろされたストッキングとショーツのせいで、身動きを取りにくい。そんな中で両脚の間に啓太の長い指が滑り込んで、綾子は腰から崩れ落ちそうになった。
「なっ、やっ」
 指が冷たいせいで、蜜唇の花びらを割り入ったのがよくわかる。綾子は思わず彼の肩に抱きついた。
 何度も指が往復するうちに指の滑りが良くなって、反応するかのように花びらが柔らかくなりふんわりと開いていく。
「はぁ……っ、んっ……ぅ」
「濡れ方が上手。……あちこちに、つけないと」
 何をだろうと考えるよりも、もっと奥へ触れられたい衝動が高まって、思考が濁り始めていた。
 蜜の香りが漂ってきてるせいかもしれない。啓太を受け入れたいと思っている証拠がそこにはあるのだ。
 啓太の温もりがもっと欲しくなるのは、酔いが残っているせいだけだろうか。かわいいと言われて、素の自分が喜んでしまったのか。
 綾子は答えを探すように啓太の背中に腕を回した。
「……玄関でとか。……十代でも無いのに、余裕なさすぎで、ごめん」
 啓太の濡れた指が性急に蜜洞にぐいっと潜り、その異物感にぶるりと震える。
「あぁ……っ」
 痛いとかよりも高揚が勝って、下着で擦れている胸の頂がジンジンと痺れ出した。啓太の指が自分の中にあるという現実が、理性を完全に弾けさせる。
 良い子じゃ無くても、啓太ならきっと受け入れてくれるはず。
「啓太、ぁ……っ」
「余裕がないって、言っただろ……。あぁ、指が奥まで、届かない……」
 ストッキングを脱がせることなく啓太の指が増やされた。蜜襞を擦りかき混ぜて、狭い蜜路を押し開いていくが浅い部分を弄るだけだ。それでも蜜が溢れヌチュヌチュと粘着質の音を立てた。
 綾子の本能が気持ちのいい場所を探し始めて、無意識に腰が動きだすくらいに疼く。
「じれったいな」
 啓太に抱きついたまま、ずるずると座り込みそうになった綾子の身体は、抱きかかえられた。
「啓太」
「ベッドに行く」
 啓太は迷いなく廊下を進み部屋に続くドアを開ける。
 奥にあるベッドの掛け布団を捲ると、綾子をその上へと下ろし、性急にストッキングとショーツを一緒に爪先から抜いた。
「あっ、待って……っ」
 その勢いで綾子の上体がシーツの上に転がる。
 跨るように上に乗ってきた啓太が、ネクタイを取りコートを脱ぎ捨て、ワイシャツのボタンをくつろがせると、唇を塞いできた。
「……ッ」
 舌を絡めとられながら、再び指が蜜洞に埋められる。
「もう入りそう。めちゃくちゃ柔らかくて、熱い」
「……入るっ……の、そんな」
 グチュグチュと蜜洞に抜き差しされがら、深いキスをされて甘い焦燥が全身に巡った。
 口の中を蹂躙されて、ひくひくと蜜襞がうねりを増して啓太の指を誘っている。
 深く指を押し込まれながら敏感になった花芯の突起を弄られると、蜜が溢れ出してきた。
 啓太の長い指をもっと誘うようにもぞもぞと腰が動き、火照った頬が更に熱を持つ。
「はぁ…。…っああ」
 嬲るような余裕もない指が奥に触れ、内側のザラザラした部分を何度も擦ってくる。
 恥ずかしいのに、快楽の疼きで頭がいっぱいになり、自分から啓太の唇を求めていた。
「……お願い、キス……」
「いくらでも」
 啓太が嬉しそうに唇を重ねて、舌をぎゅっと吸い上げてきた。
「ふぅ……っぁ」
「指を増やすから、ほら、可愛い顔を見せて」
 舌を吸われる痛みは気持ち良くて、両脚の間からぐちゅぐちゅとした音が大きくなる。
 宣言通りに三本に増やされた指に、綾子は背を仰け反らせた。唇を離し、耳朶を舐め苛めながら、啓太が可愛い可愛いとずっと呟いてくる。
 甘い言葉、蠢きを擦る優しい指、荒い息遣い、汗ばんだ肌。
 啓太の全てを独り占めしているのだ。この時間の彼は自分のものだという錯覚は、綾子の中に今まで知らなかった感情を芽生えさせる。
 秘裂から後孔へと蜜が滴り、内襞を蹂躙していない指が蕾の入り口を刺激していた。その度に綾子の身体はヒクヒクと痙攣する。
「こっちも興味があったの。勤勉なだけあるね」
「違っ、違うの」
 するりと親指の尖端が押し込められて、綾子は二つを責めれられる脳を貫く快楽に嬌声を上げてしまう。
「こっちは、また今度にしようか」
「そこは、ぃや……っ」
 お互いの気の迷いでは無くて、また今度があるのだろうか。湧きあがった期待が、濡れそぼった秘裂をヒクヒクと蠢めかせた。
「ああ。もう駄目だ。綾子の中に……」
 我慢に顔を顰めた啓太は、指を綾子から抜く。
 胸の中に突然訪れた喪失の物足りなさと、これから与えられるだろう官能が交じり合った。
 啓太は生唾を呑みこみながら片手でスラックスのボタンとファスナーを下ろし、反り立った熱い肉棒を引き摺り出した。
 我慢できないという口調の色っぽさに、綾子の心が満たされる。
 啓太と再会で、押さえていた感情の扉が開いてしまった。ただのナンパならついて行かなかったし、今頃ネットカフェにいたはずだ。
 絶対に男の人には近づかない方が良い日に、人生で一番くらいに信頼していた人と会うなんて、神様は意地悪だ。
 啓太が薄い避妊具をそれに被せるのを、渇きを覚えながら綾子は見つめる。
「お、大きい、入るの……っ」
「だい……大丈夫、入る」
 蜜口に当てが割れた質量が、狭い蜜洞を押し開いた。
 指とは比べ物にならない密度は痛みさえ伴うのに悦んでいる。
「痛かったら言って。すぐに、やめるから」
「……やだ、やめないで……っ」
「反則なことを、言うなって」
 啓太は遠慮なく蜜路を貫き、最奥まで怒張に暴かれた綾子は息を吐く。
 濡れそぼった襞は異物を排除するどころかみっちりと包み込み、引き抜くそれを更に締め付けた。
「めちゃくちゃ、いい。……まじで、やばい」
「あぁ……、んふ……ぁ……」
 啓太が歯を食いしばりながらふぅっと唇の端から息を吐き、内襞を味わうようにゆっくり抜いた。
 再び押し込まれると、愉悦が血と一緒に体中を巡り、ほんのりと肌を色づかせる。
 傍から見ればお互い服を着たままで、ただ欲を発散させているだけだ。でも、セックスがこんなに気持ちいいなんて知らなかった。
「ごめん、動く」
 綾子が返事をする前に、啓太が激しい律動を始めだす。
「は、激しッ……、あっ、ああっ……」
 蜜洞の最奥を激しく突かれ、無意識に逃げる身体は啓太に捕らえられた。腰を掴んで突き上げるように腰を打ち付けられる。
 いつも笑顔で冷静だった啓太が情動で動いている姿に、心がいっぱいになった。
 蜜洞をみっちりと満たす熱量を受け入れ、膨みきった萌芽を啓太が親指で擦りはじめる。
「ひ……ぁっ……」
 大きな快楽が襲ってきて、綾子は背中を反らせた。しかもグチュグチュという音が、陰部が擦れあう部分から耳まで届く。
「ほら、わかる? 締め付けてくるんだ。すごいね、綾子は。……ほんと、困る」
「言わないで、わかんな……いっ」
 滑らかに最奥を突き上げられる感覚は、眩暈がするほどの愉悦で、綾子は自然と受け入れやすいように背を反らせて腰を浮かせていた。
 啓太が夢中で腰を打ち付ける姿に心が震える。居酒屋では彼女はめんどくさい、みたいなことを言っていた。
 欲求を解消するための気軽な身体の関係を求めるのなら、元同級生はちょうどいいのかもしれない。
「痛くない?」
 容赦なく奥を突きながらも優しく聞いてくる。その差に啓太の余裕の無さも感じた。
 彼がどんな思いであろうと、この時間に溺れているのは一緒なのだという安心感に、綾子は啓太の肩をぎゅっと掴む。
「気持ち、いい……っ」
「こういう時、素直って反則……」
 啓太は恍惚とした面持ちで、持ち上げた脚のふくらはぎをねっとりと舐めてきた。
 全身が感じやすくなっているせいで、綾子はビクビクと震える。
 どくどくと短い間隔で脈打つ蜜洞の中を、啓太は大きな動きで腰を打ち付けてきた。
「んっ、あぁ……ん……」
「あ、僕、イく……出るっ」
 足の指を丸めてガクガクと震える綾子の身体を抱き締めながら、啓太が言った通り白濁の滾りを放った。何度も腰を押し付け小さく喘ぎながら、薄い膜越しに注ぎ込まれる。
 ぐったりと横に倒れ込んできた啓太は、腕枕をしてきた。熱が冷めやらない視線がぶつかり合う。
「……余裕なくてごめん。避妊は、してるから」
「知ってる」
 目の前で見たし、玄関で落として中身が零れたコンビニの袋から、避妊具の箱が出てきたのも、暗闇に慣れた目が捕らえていた。
 買った事を隠した啓太も、気付かなった自分も、初心な高校生みたいだ。
 啓太が器用にベッドヘッドに手を伸ばしてリモコンを手に取った。ピッと音がしてエアコンが作動し始める。
 ぶぅんという機械音と一緒に涼しい風が吹いてきたが、啓太の温もりに包まれていた。
 安堵とから倦怠感が増してベッドに身体が沈みこみそうになる。
「けい……た。眠い……」
「寝ていいよ」
「ごめん……、ちゃんと、帰るから……」
 終電まであと三十分くらいなら余裕はあるだろうか。
 この一週間くらい、精神的なもののせいか眠りが浅かった。極限まで弛緩した身体が、不快眠りへと誘ってくる。
 啓太が何か言っていた。
 聞き取れない、ごめん、と口を動かしたつもりだったが曖昧だ。
 セックスの後にすぐに寝るって最低だと思いつつも気持ち良い。綾子は意識を手放した。

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