敏腕社長に身を焦がすほどの愛で満たされて

書籍情報

敏腕社長に身を焦がすほどの愛で満たされて


著者:北野ふゆ
イラスト:ユカ
発売日:2022年 8月26日
定価:630円+税

完全承認制で、人には言えない恋愛についての悩みを匿名で相談できるマッチングアプリ『Secret Talk』。
HN「うさぎになりたい」こと実弦が『Secret Talk』に登録している理由は、「一度でいいからセックスで満たされてみたい」からだ。
実弦はそのアプリで、自分と近い悩みを持つ「おおかみ志望」というHNの男性と交流を深めていき、ついに会うことになったのだが……。
なんと、偶然マッチングした相手は、急成長中のIT起業の若社長、須河燈だった。
「怖がりなとこも、ほんと可愛い。気持ちよくなりたいと思うのは悪いことじゃないって、教えてあげる」
恐縮する実弦だったが、同じような悩みを持つ彼とのセックスは、実弦が想像していたより甘く満たされるように激しくて――。

【人物紹介】

吉野実弦(よしの みつる)
飲料メーカーの事務員。
「セックスで一度もイったことがない」という悩みを抱えており、友人の勧めで『Secret Talk』に入会した。
HNは「うさぎになりたい」。

須河燈(すがわ あかり)
日本でもトップクラスのIT企業「V・Iシステム」の社長。
元々はモニターとして『Secret Talk』に入会した。
HNは「おおかみ志望」。

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*取り扱いサイトは、各書店に掲載され次第、更新されます。

 

【試し読み】

「――んっ、ぅ、んっ」
 口移しで含まされたミネラルウォーターを、懸命に嚥下する。
 それでも飲み込み切れない水が、唇の端からつーっと零れた。
「ああ、これいいな。色々妄想できるとこもいい」
 燈はそんなことを言いながら、うっとりした表情で実弦の顎や首を舐める。
 あれから実弦は、燈の手によって甲斐甲斐しくバスローブを着せられ、再び抱き上げられてベッドルームまで移動していた。
 今は寝台のヘッドボードに背中を預けた体勢で、燈から水分補給を受けている。
 それも、何故か口移しで。
「これ、普通にペットボトルから飲んじゃだめなの?」
 口づけの合間に尋ねてみる。
「んー、それだと、俺が飲ませてる感が足りないんだよね」
 燈の返事に、分かったような分からないような、と首を傾げる。
 燈は手を伸ばし、湯気で湿った実弦の前髪をそっと撫でて整えた。
「なんだろう、実弦さんを俺にだけ依存させて、全部支配したい欲?」
「性癖の話?」
「うん。実弦さんと一緒にいると、本当にしたかったことがどんどん分かってくる」
 そう言って嬉しそうに微笑む燈に、もう水はいいと伝え、腕を軽く引く。
 ベッドに腰かけていた燈は頬を緩め、ペットボトルとサイドテーブルに戻すと、実弦の隣に座り直した。
「もう大丈夫? 膝に抱いていい?」
 優しく尋ねてはいるが、彼の声に籠った色香は有無を言わさない力を帯びている。
 まるで魅了の魔法を使われているかのようだ。
 だが、実弦も薄々気づいていた。
 燈のこの魔法は万人に通じるわけではない。
 実弦だから、反応してしまうのだ。
 素直に燈の膝上に跨って座ると、「もっとこっち」とお尻を両手で掴まれ、ずるずると引き寄せられる。
「まって、裾が……!」
 バスローブの下には何もつけていない。
 そんな風に動かされたら、裾がめくれあがって下半身が丸見えになる。
 懸命に裾を引っ張るが、燈は楽しげに実弦を見つめ、引き寄せる手に更に力を込めた。
「だーめ。そのままにしておいて」
「でも……」
「誰も見てないよ。ここにいるのは、俺だけだ。ぴったりくっつけば、俺にも見えない」
 確かに見えてはいない。その代わり、生々しい肌の感触が伝わってくる。
 彼も下着をつけていないことを、実弦は隙間なく重なった部分の感触で知った。
 ゆるく勃ち上がった燈のそれは、秘丘にぴたりとくっついている。
 今はまだ異物が当たっている程度の感覚だが、お風呂に入っていた時のように硬くなれば……。その先を想像しただけで、全身が熱くなる。
「気になる?」
 物欲しそうな顔をしてしまったのだろうか、燈がニヤリと笑い、腰を軽く突き上げる。
 こくりと頷けば、「触ってみたい?」と尋ねられた。
「……触っていいの?」
 過去に付き合った相手は皆、実弦が積極的に動くことを嫌がった。
 受け身で喘いでいるだけだから良くないのではないか? と、奉仕しようとしたこともあるのだが、『無理させたくない』とやんわり拒否されたことまで思い出す。
「その顔、もしかして触ったことない?」
 首を傾げた燈に、過去のやり取りを打ち明ける。
 燈は眉をひそめ、「なんだそれ。くだらない」と一刀両断した。
「実弦さんが好きだった人を悪く言いたくないけど、すぐイかされるのが怖かっただけでしょ。それか、彼女を大切にできる俺カッコいい、って自分に酔ってたか」
「そう、なのかな……」
「どっちにしろ、ガッカリした実弦さんに気づかない時点でどうかと思う。本当に相手に興味あったら気づくよね」
 燈はきっぱり言い切ったあと、バツが悪そうな顔になる。
 不思議に思って「どうしたの?」と問えば、彼は深く嘆息した。
「……今言ったこと、俺もそうだったな、って昔の自分に思いっきり刺さった」
「燈くんも?」
「うん。大学の時、かなり適当に女の子と付き合ってた時期あって。皆あっさりしてたから気にしてなかったけど、そんなの彼女を雑に扱っていい理由にはならないよな、って実感した」
 燈はしょんぼりした表情を浮かべ、縋るように実弦を見つめてくる。
「ごめん、この話はしてなかったな。気になる?」
 不安混じりのその口調に、ゆるく首を振る。
「昔の話だし、燈くんが罪悪感を抱くべき相手は私じゃないよね? でも話してくれたことは、嬉しかった。不誠実なことしてたんだな、って気づいてくれたことも」
 口には出せないが、燈がやけに手慣れている理由が分かってスッキリしたというのが本音だった。
 大学時代の彼女と別れたきり誰とも付き合っていないにしては、余裕たっぷりだしキスは上手いしで、一体どういうわけだろうと不思議だったのだ。昔、散々遊んでいた時に積んだ経験のお陰、というわけらしい。
「よかった。いくら昔の話でも、そんな男絶対に嫌、って言われたらどうしようかと思った」
 心底安心したように答える彼に、思わず笑みを零してしまう。
 いくら実弦でも、割り切った関係を持つ相手にそこまで望んだりしない。
「嫌じゃないよ。ほんとに大丈夫だから、ね?」
 しんみりした空気を変えようと、彼の額に触れるだけの可愛いキスをする。
 燈は瞳を明るくし、柔らかく微笑んだ。
「実弦さんが嫌じゃないなら、俺は触って欲しい。二人でお互いの気持ちいいところ探してみよう」
「うん、私もそうしたい」
「素直だね。ほんと可愛い」
 優しい眼差しで見つめられ、お返しとばかりに唇にキスされる。
 心がくすぐったくなってふふ、と笑えば、燈は頬や顎、そして首筋に啄むような口づけを降らせ始めた。甘く響くリップ音に幸せな気持ちが込み上げてくる。
 実弦も燈のつむじに口づける。膝に乗っている分、実弦の視線の方が高いのだ。
 ついでとばかりに、よしよし、と頭を撫でてみる。
 燈は猫のように実弦の手に頭を擦りつけてきた。それが何とも可愛らしくて、顔を見合わせてまた笑う。
 しばらく続いた親密で優しい戯れに、実弦はすっかりリラックスしていた。
「力抜けてきたね。じゃあ、もっとエッチなことしよっか」
 燈はそう言うと、実弦のバスローブの腰紐をするりと解く。
 それから実弦の両肩に手を置き、バスローブをはだけさせていった。
 空調のお陰で部屋は適度に暖まっている。
 肌が粟立ったのは、寒さのせいではなかった。
 熱の籠った燈の視線が、あらわになった乳房に注がれる。
 羞恥と期待が同時に膨らみ、はぁ、と短い吐息が漏れた。
 燈の右手が乳房を下から持ち上げ、やわやわと揉み始める。
 左の手は実弦の背中に回され、背筋のくぼみを確かめるように辿っていった。
 端整な甘い顔に広がる雄くさい表情に、胸がきゅんと高鳴る。
 さっきまで可愛く甘えてきていたのに、急に攻めに変わるところ、ほんとずるい。
「見て、実弦さん。まだ触ってないのに、すごく硬くなってる」
 喜色を帯びた声につられ、視線を落とす。
 ピンと尖った乳首が見えて、頬が熱くなった。
 彼が言うように、まだそこには触れられていない。何度も近くを掠めては、離れていってしまう。
 白い肌を掴んでは膨らみを揺らす男らしい指に、もどかしさが募っていく。
「どうしようかな。激しく吸っても、指で引っ掻いても気持ちよさそう。それとも、もっと焦らしてみる? ねえ、実弦さんはどっちがいい?」
 彼の言葉通りの場面が脳裏に浮かぶ。
 どっちでもいい。どっちでもいいから、早く欲しい……!
 衝動に突き動かされ、燈の首に両手を回して引き寄せる。
 結果的に前者を選んだと気づいた時にはもう、燈はあーんと口を開けていた。
 肌に熱い吐息を感じた次の瞬間、膨れた乳首をきつく吸われる。
「っ、ひぁ、…ぁっ」
 高まった期待を軽く上回る強い快感に、びくんびくんと身体が跳ねた。
 巻き付いた舌で先を捏ねられる度、悲鳴じみた声をあげてしまう。
 貪るという表現がぴったりの激しさで弄られ、何も考えられなくなった。
 たまらなく気持ちいい。ただそれだけが、心と身体の両方を支配する。
「あ、ああっ、ぁ、っ…んっ、」
「は……いい反応。いっぱい、気持ちよくなろうね」
 いつの間にか燈は両手で乳房を掴んでいた。
 片方の乳首にやわく歯を立てながら、もう片方の乳首は指先で小刻みに引っ掻く。
 脳天が痺れるような快感に、生理的な涙が滲む。
 甘噛みしたあとでねっとり舐めたり、くちゅくちゅ音を立てて吸ったりと、燈の愛撫は止まることを知らない。
 彼が動く度、実弦の身体の奥からとめどなく蜜が溢れてくる。
 実弦は燈のつむじに頬を押しつけ、くぐもった声を漏らした。
 ようやく解放された時には、太腿までぐっしょり濡れていた。
 それなりに経験がある方だと思っていたことが恥ずかしい。
 過去の彼氏たちは皆、淡泊だったのだ。それがよく分かった。
 まっすぐ座っていられなくなった実弦を、燈は優しく抱き締めた。
「実弦さんの身体、感じやすくてすごくえっちだ。ちゃんと中でもイけると思うな」
「ほんと? 燈くんは、面倒じゃない?」
「そんなわけ。興奮し過ぎて、もうこんなだよ」
 ほら、と手を掴まれ、そのまま二人の間に導かれる。
 半勃ちだった彼のものは、すっかり臨戦態勢だった。
 硬く張り詰めた雄芯の先端からは、ぬるりとした液体が滲んでいる。
 彼も実弦を欲っしている確かな証拠に、喜びが込み上げてきた。
 うっとりしながら、剛直の先端を撫でる。
「すべすべしてるんだね。ちゃんと触ってもいい?」
「いいよ。優しくしてね?」
 甘えを含んだ囁き声に、秘所がじゅんと潤んだ。
 まずは丸い先端部分を手の平で包み、円を描くように撫でてみる。
 はぁ、と耳元で燈が熱い息を吐いた。
 更に手の力を強めようか迷った挙句、思いとどまる。先走りが潤滑油代わりになっているようだが、もっと潤いがないと痛いかもしれない。
 代わりに手を丸め、かりの部分に滑らせる。くびれに添って擦り立てれば、燈の息が上がってきた。
 ふーっ、ふーっ、と快感を逃すように吐かれる荒い息に、身体の奥がどんどん熱くなる。
 頬を上気させた燈の顔は凄まじく艶っぽく、一度見てしてしまったら目を離せない。
 視線が絡んだ瞬間、深い欲情を宿した獰猛な瞳に射すくめられる。
 きっと燈の脳内ではとっくに組み敷かれているのだろう。
 今すぐぐちゃぐちゃに犯したい。――燈の眼差しは彼の欲望を雄弁に語っていた。
(私にされるより、したいのかな、やっぱり)
 怯みそうになった実弦に気づいた燈が、乱れた呼吸の中、口角を上げる。
「だいじょうぶ、すごく上手だよ。このまま、最後までイかせて?」
 よくできました、と言わんばかりの優しい声に、たまらなくなった。
 したいことは何でもしていい、と実弦の全てを許容された気分だ。
「嬉しい。ありがとう、そんな風に言ってくれて」
 込み上げる衝動のまま、燈の耳朶に口づける。
 柔らかな膨らみを舌で舐りながら、実弦は手淫を続けた。
 元彼の為に仕入れた知識を総動員し、懸命に手を動かすと、燈は苦しげに眉根を寄せた。
 快感に懸命に耐えている表情の色っぽさに、興奮が高まる。
 もっともっと、彼が普段は隠している雄の顔を見てみたい。
 剛直を擦り上げる手を早める。
「く、っ…ぅあ、っ……」
 裏の部分に親指の腹を当て、激しく上下させ続ければ、燈がびくびくと身を震わせた。途端、先端から白濁が溢れてくる。
 初めて、できた。
 深い達成感に喜んでいると、燈がこちらを振り向き、噛みつくようなキスをした。
 唇を合わせたまま、燈は実弦の手に彼の手をかぶせ、精を吐き切るまで強く雄芯をしごいた。

 燈は呼吸を整えたあと、精液が飛び散ったバスローブを脱ぎ、実弦のローブも完全に脱がせた。
 肌触りの良いシーツの上に、燈に抱き込まれた体勢で寝転ぶ。
「――はぁ……気持ちよかった」
 燈は満足そうに言ったが、彼が本当に満たされたわけではないことは分かっている。
「まだ足りないでしょう? 出すだけでいいなら、悩んだりしない」
「気持ちよかったのは、嘘じゃないよ。一生懸命な実弦さんが見られて、嬉しかった」
 彼は実弦の髪を優しく撫で、「でも」と続けた。
「俺の本音を分かってくれて嬉しいし、安心する」
 ふにゃりと目を細めた彼に、実弦の心も浮き立つ。
「燈くんは、私を泣かせてみたいんだもんね?」
 お見通しだと言外に含ませれば、燈は素直に頷いた。
「うん。今から最後まで抱くけど、怖くなったらちゃんと教えてね」
「怖くなるの?」
「分からない。そこは俺次第、かな。でもちょっと不安なことあって」
「なんだろう。教えてくれる?」
 気になることがあるのなら、先に聞いておきたい。
 真面目な顔になった実弦に、燈は悪戯っぽく微笑みかけた。
「俺は実弦さんが、嫌、やだ、無理、って泣くとこ見たいんだよね。でも本当に苦しかったり、怖かったりで泣かせるのは絶対に嫌なんだ。理性あるうちは見分けられる自信あるけど、ぶっ飛んじゃったら分からなくなりそうだな、って」
 どこまでも己の欲望に正直な燈に、つい笑みが零れてしまう。
 くすくす笑う実弦を見て、燈はわざと頬を膨らませた。
「そんな可愛い顔で笑わないで。ほんとに酷いことされたらどうするの?」
 全く想像できないが、燈の気持ちも分かる。
 痛めつけて泣かせたいわけではないのなら、確かに不安になるだろう。
「ごめん。えっと、じゃあ合言葉を決めとくのは?」
「ああ、セーフワードってやつ?」
「うん。たとえば私が、『須河さん、やめて』って言ったら、それは本気で駄目だからすぐに止めて、ってサインになるの」
「それいいね。そうやって先に決めとけば、迷わずに済みそう」
 どうやら燈は、実弦を絶対に泣かすと決めているらしい。
 先ほど胸を弄られた時も実はじんわり涙が出たのだが、あれでは足りないということだろうか。
 確かにキスも胸への愛撫も、これまでの経験が子どものままごとに思えるほど、気持ちよかった。
 だが、問題はその後だ。実際挿入してからはどうだか分からない。
「燈くんはブランクあるわけだし、いきなりは無理かもだよ?」
 もし駄目でもがっかりしないで欲しい。
 そんな気持ちで予防線を張る。
 燈は不意をつかれたように瞬きしたあと、瞳をきらりと光らせた。
「言ったな?」
 優しげな表情から一転、雄くさい顔に変わる。
 煽ってしまった、と気づいた時にはもう遅かった。
 身体を起こした燈が、馬乗りになってくる。
「待っ、ぁ、っ…」
 強引に唇を塞がれ、舌をねじ込まれる。
 咥内を好き勝手に暴いていく熱に、あっという間に身体が昂った。
 バスルームで散々味わった快感に再び包まれる。
 あの時と違うのは、彼の手が実弦の脚の付け根に伸びていること。
 親指の腹が鼠径部をぐ、ぐ、とほぐすように押していく。
 際どい場所を無遠慮に触っているのに、肝心な部分は慎重に避けているのが分かる。
 マッサージ的な気持ち良さと、言いようのないもどかしさで、じっとしていられない。
 実弦は身体をくねらせ、燈の指から逃れようとした。
 だが腰をひねったせいで、親指が秘所のくぼみに入ってしまう。
 すでに蕩けきっていたそこは、硬い指先を容易く招き入れた。
「ああ、もうこんなになってたんだ」
 ちゅ、と名残惜しげに音を立てて唇を離した燈が、喜色を滲ませた声で呟く。
「やぁ、いわない、で」
 直接触れられていないうちから物欲しそうに濡らしている自分が、恥ずかしくてたまらない。
 顔を背けようとした実弦を引き戻すかのように、燈は再び口づけてきた。
「なんで? いいことだよ。いっぱい感じてくれて、すごく嬉しい」
 キスの合間に甘い声で囁かれれば、心がふわりと浮上する。
「もっと感じて。気持ちよくなって」
 繰り返し注がれる言葉に、頭がぼうっとしてきた。
 力を抜き、己の渇望を素直に受け入れる。
 燈がゆるゆると指を動かす度、すでに柔らかくほころんだ花弁が、ぐちゅぐちゅと淫猥な音を立てた。
 やがて指先が、硬く尖った秘芽に触れる。
「ひぅ、っ…」
 そこは実弦が強い快感を拾うことができる唯一の場所だった。
 もっと強く擦って欲しい。優しく掠めるように撫でられるだけでは、まるで足りない。
 無意識のうちに腰を前後に動かし、更なる刺激を求めようとする実弦の舌を、燈は吸い上げ、甘噛みした。
「ぁっ、んんっ」
 ビリビリとした刺激が脳天を突き上げる。
 意識を逸らされたせいで、揺れていた腰は止まった。
「人の指で勝手に気持ちよくなろうとするなんて、悪い子だな」
 笑みを含んだ声で、咎められる。
 艶っぽく響く低音に、ずぐん、と子宮が疼いた。
「ごめんなさい……」
「ちゃんとイかせてあげるから、お利口に待ってて。ね?」
 素直にこくりと頷けば、あやすような甘い声が唇のすぐ傍に落ちてくる。
「いい子だね。実弦さんは可愛い、いい子」
 燈は囁きながら、膨れ上がった秘芽の根元を軽く弾いてくすぐった。
 気持ちいいのに、もどかしくてたまらない。
 決定的な刺激を求める身体を懸命に抑えつけ、シーツを強く掴む。
 ぐりぐりと強く押し潰された時は、待ち望んだ快感に声にならない悲鳴が漏れた。
 身体を震わせ、お馴染みの気持ち良さを味わおうとした実弦だが、燈はそれを許してくれなかった。
「っ、あぁ、…っ、え? ……っ!」
 親指と中指が巧みに動き、硬くなった秘芯の包皮を器用に剥いてしまう。
 知識としては持っていたが、そこまでされたことは一度もない。
 慄く実弦をよそに、燈の指はむき出しなった粒を優しく、ねっとり撫で上げた。
「ひっ、あああっ」
 痛みにも似た強烈な快感に、喉を反らして叫んでしまう。
 チカチカと瞬く白い光が目の前を飛び交った。

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