隠れ肉食は獣エロス 〜草食系かと思って付き合ったら、淫靡な執愛に溺れました〜

書籍情報

隠れ肉食は獣エロス 〜草食系かと思って付き合ったら、淫靡な執愛に溺れました〜

著者:加地アヤメ
イラスト:石田惠美
発売日:12月25日
定価:620円+税

書道教師の万里花は、勧められたお見合いを断れずに悩んでいることを年下の生徒である智紀に打ち明けたことをきっかけに、
彼から思いがけず告白を受けてしまう。
草食系の彼と穏やかに愛を育むのもいいかと告白を受け入れる万里花だったけれど、デート初日でなんと、ベッドでの相性を確認してみないかと誘われて……!?
余裕な態度の彼に年上としてのプライドを刺激されて了承するも、それまで大人しい性格だと思っていた智紀の様子は一変。
「この状況で別のこと考えてるなんて、余裕ですね」
その変貌ぶりに戸惑いながらも、万里花は次第に彼の激しい愛情に飲み込まれていき——!?

【人物紹介】

三隅 万里花(みすみ まりか)
三十二歳。二年ほど前まで一般企業に勤務していたが、リストラされそのまま母の経営する三隅書道教室を手伝い始めた。
ここ数年恋愛とは無縁の生活を送っていることから、母の受け持つ昼の部の生徒から見合いを勧められてしまう。

楠神 智紀(くすがみ ともき)
一流企業に勤める二十六歳のサラリーマンで、三隅書道教室の万里花が受け持つ夜の部の生徒。
爽やかでスタイルがいい外見とは裏腹に、大人しそうな性格や女性が得意ではないような素振りから、草食系男子という印象だが、実は……?

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*取り扱いサイトは、各書店に掲載され次第、更新されます。

【試し読み】

「ベッドでの相性を確認してみませんか?」
「……えっ!!」
 驚いて声が出てしまい、万里花は慌てて口元を押さえ周囲を見回す。しかし、周囲の客は皆、料理と会話に夢中で万里花の声に反応している者など一人もいない。
 胸を撫で下ろし改めて楠神を見ると、彼は万里花を見てクスクス笑っていた。
「万里花先生、反応が面白いですね。そんなに驚きます?」
 どこか余裕の楠神に、万里花は少しムッとした。
 付き合い始めたばかりで、今日は初めてのデート。その席でいきなりあんなことを言われたら誰だって驚くものではないのか。少なくとも万里花はこれまでの経験上、デート初日に体を求められたことは一度だってない。
「お、驚くに決まってるじゃないですか……!! だってまだ、付き合って間もないのに……」
「付き合って間もないからこそ、相性を確かめるのは大事なことだと思いますよ。実際、そういう行為が楽しめなくて別れるカップルなどいくらでもいるんですから」
「それはそうかもしれない、けど……」
 楠神に断言されてしまい、万里花の目が泳ぐ。
 確かに彼の言うとおり、数人の男性と交際経験がある万里花にも、セックスが合わない元彼はいた。もちろんそれだけが原因で別れを決めたわけではないが、決定打の一つになったのは事実だ。
 だからかもしれないが、楠神の言うことは理解できる。
 しかし、まさかこの人がそんなことを言い出すとは思わなかった。てっきり草食系だとばかり思い込んでいたのに。見当違いもいいところだ。
(なんでこんなことになるの……!!)
 六つ年下の、しかも書道教室の生徒である楠神と体を重ねることに、まだ戸惑いはある。しかしながら付き合うことを決めたとき、いつかはこういうことになると多少なりとも覚悟はしていた部分はある。
(ちゃんと付き合ってるんだし……それに、お互いいい大人なんだし、別に悪いことではない……)
「どうしても気が進まないようであれば、またの機会にでも。無理強いはしませんよ」
 悶々としている万里花を見つめ、楠神が優しく微笑む。その笑顔に、万里花の中にある僅かばかりの年上のプライドが反応した。
(……なんか、すごく余裕……)
 さっきから楠神とのセックスになんとかして理由付けをしようとしている万里花に対して、楠神は冷静そのもの。
 そんな彼の姿を見ていると、こんなに悩んでいる自分がなんだか馬鹿らしくなってくる。
(そうよ、何を今更……サクッとやって、相性を見極めればいいだけよ)
 アルコールの力にも背を押され、覚悟が決まる。
 万里花は楠神を見つめ、しっかりと頷いた。
「わかりました……い、いいですよ」
「ほんとうに? いいんですか?」
「いいですよ。だって、つ……付き合ってるんですよね? 私達。だったら、別になんてことないです。誰もが通る道ですから」
 万里花が楠神を窺うと、彼は嬉しそうに頬を緩ませる。
「よかった。実は内心拒否されたらどうしようかとヒヤヒヤしていたんです。では、そろそろ行きましょうか」
 楠神が軽く手を上げ店員を呼び、テーブルチェックを申し出た。かしこまりました、と店員がいったん去るのを確認してから、万里花は「おいくらですか」と楠神に尋ねた。が、即楠神に拒否された。
「どうかお気になさらず。ここは俺が」
「でも……」
 どう見ても安くないコース料理だった。さすがに楠神一人にすべてを払わせるのは申し訳なくて、すぐにはうんと言えない。
 しかし、いくら万里花が困惑しても楠神は引かなかった。
「いいんです。今夜は付き合い始めた記念日みたいなものですから。俺が払いたいんです」
 有無を言わせぬ楠神の口調に、万里花は恐縮しつつ頭を下げた。
「ありがとうございます……じゃあ、お言葉に甘えてご馳走になります」
「どういたしまして」
 テーブルチェックを済ませると、先に楠神が立ち上がった。
「行きましょうか」
「はい……」
 前を行く楠神の後ろ姿を見つめながら、万里花はぼんやり考える。
(なんで私と付き合いたい、なんて言ってくれたんだろう……)
 もしかして不憫なくらい出会いがなくて、近くにいるのが自分くらいだったとか? しかし彼が勤務しているのは誰もが知る大企業。年の近い女性がいないなんてこと、あるわけない。
 それに、ここに来るまでの楠神はどう考えても女性の扱いには慣れている。こんな男がモテないはずなどない。
 などと考えていると、いきなり立ち止まった楠神に手を握られた。不意を突かれ、心臓がどくんと跳ねる。
「万里花先生、こっちですよ」
 楠神が万里花の手を引き、エレベーターホールへと向かう。その手のぬくもりにドキドキと胸が跳ね、緊張が高まる中、二人はエレベーターに乗り、客室のあるフロアへと向かった。
 エレベーターが停まったのは十二階。フロアに降り楠神に手を引かれ歩いていると、とある客室の前で彼が立ち止まった。
「どうぞ」
「……じゃあ、失礼します」
 楠神に促された万里花が先に客室へと歩を進める。奥に行くにつれ見えてきたオレンジ色のライトに照らされたベッドが、なかなか艶めかしい。
(う……緊張してきた……)
 客室に入るなり、万里花はまず美しい夜景を一望できる窓に張り付いた。
 ここへはセックスをしに来た。だけど、さすがにすぐ事に及ぶのではなく、ムードを作ってからそういう流れになるのだろうか。
 こんな風に考えていた万里花だが、それは全く見当違いだった。
 楠神は部屋に入るや否や身につけていたジャケットを脱ぐと一人がけのソファーの背もたれに掛け、今度は性急にネクタイを緩め抜き取った。
 それだけではない。きちんと整えてあった前髪に指を差し込み、わざと形を崩してから眼鏡を外した。
 その様子を黙って見つめていた万里花は、彼の変貌ぶりにいつの間にか夜景ではなく、楠神に目を奪われていた。
(誰なの、この男性は……)
 白いシャツのボタンを外し、胸元を寛げながら自分に迫ってくるこの男は、本当に楠神なのか。

「万里花先生」

 名前を呼ばれ、万里花は我に返る。
 あまりにも楠神の豹変が衝撃過ぎて、数秒意識が過去へ飛んでいたのだ。
「あ……」
 首筋に顔を埋めていた楠神が顔を上げ、至近距離で万里花と見つめ合う。
 その目は、明らかにこれまで万里花が教室で見てきたド真面目なサラリーマンのそれではなかった。こんなのは、獲物を捕らえにかかる肉食獣の目だ。
(別人……としか思えない)
 万里花が息を潜めていると、なぜか楠神の口元が楽しげに歪む。
「この状況で別のこと考えてるなんて、余裕ですね」
「えっ……!? そんな……ことは……きゃあっ!?」
 足をすくい上げられ、体が浮く。いとも簡単に持ち上げられた万里花は、楠神によってベッドまで運ばれた。
 細心の注意を払いながら万里花をゆっくりベッドに寝かせると、楠神は万里花をまたぎベッドに膝立ちになる。
 息を呑み楠神の行動を目で追う。シャツを脱ぎ捨て、曝け出されたその上半身は、万里花が想像していたものとはだいぶ違った。軽く盛り上がった胸筋や腹筋、血管が浮き出る上腕二頭筋。それと前腕部の筋肉の付き方は、日常的に鍛えていなければこうはならない。
(あれ……? 意外と筋トレとかするタイプなの……?)
 そんなことを思いつつ、目の前にある裸体に胸が跳ねる。男の色香をこれでもかと醸し出す楠神に自分は抱かれる。それを意識しすぎて、呼吸は既に荒くなっている。
「あ、の……楠神さ……」
「し。黙って」
 楠神の顔が近づいてきた。来る。と万里花が身構えた瞬間、楠神の唇が万里花のそれを塞ぐ。
「ん……っ」
 筋肉質な体から想像できないくらい、唇は柔らかく、キスは優しい。
 その感触に一瞬気持ちが緩んだ。しかし、すぐに楠神の薄い唇から肉厚な舌が差し込まれ、万里花の中にあった僅かな緩みはすぐに消えた。
 その舌は歯茎を舐め、奥に引っ込んでいた万里花の舌をツンとノックし、誘い出す。それに従い万里花がおずおずと舌を絡めに行くと、待ってましたと言わんばかりに楠神がそれに食らいつき、深く口づけされた。
(深い……!)
 舌を吸われ、絡められては、唇ごと食まれる。その激しさに戸惑い、万里花が顔を背けようとするも、すぐに楠神が逃がさない、とばかりに追い、唇を塞いでくる。
「んんっ……!!」
 吐息すら逃さない。そんな激しいキスの応酬に万里花は面食らう。
(なに、このキス……) 
 この人は本当に楠神なのだろうか。もしかしたら外見は楠神でも中身は別人なのでは。
 本気でこう疑い始めたとき。楠神が万里花のカットソーをいきなり胸の上までたくし上げた。
「あっ……」
「これ、外しますね」
 楠神がこう言ったのと、万里花の胸の締め付けがなくなったのはほぼ同時だった。ブラジャーを外され万里花の白い乳房が楠神の眼前にまろび出ると、彼は両手で手から溢れる乳房を掴み、指の腹を使っていやらしく揉みしだく。
「万里花先生、意外と着痩せするタイプだったんですね。驚きました」
「そっ……ああっ!」
 そんなことない、と言う間もなく、楠神に乳首を舐められ体が震えた。
「可愛いですね、ここ……もう、こんなに固い」
 楠神は万里花の乳首をじっくり観察しながら、指で摘まむ。固さを確認するように指の腹で弾いたり、二本の指で擦ったり、そこばかりをいやらしく攻め立てた。
 それだけで万里花は息が上がり、体の奥から熱がこみ上げてくる。
「あっ……ん、やあ……っ……」
 ピリピリとした甘い痺れに、思わず万里花が顎を上げる。
 そんな万里花に一瞬だけ視線を送ると、楠神は乳首を口に含み激しく舐めしゃぶった。ちゅぱちゅぱと音を立て、さながら赤子のように執拗にそこを吸い上げてくる。
「あっ、あ……!!」
 口の中で舐め転がされるたびに、腰が跳ね、万里花の体を揺らした。
 ざらついた舌が先端を掠めるたび、万里花の体が快感でぴくぴくと震える。それを視界の端で捉えながら、楠神は嬉しそうに目尻を下げた。
「感じてる? ……嬉しいな。万里花先生が俺の手と舌で気持ちよくなってくれるなんて」
 万里花の胸元で呟いた楠神が、ひときわ強く乳首を吸い上げる。
「ひゃあ……んッ!!」
 ベッドから浮くくらい腰が跳ね、万里花はぎゅっと目を瞑る。
 その快感はもはや電流のよう。胸先から全身を伝い、万里花から力を奪っていく。
「ああっ! んっ……!」
(……っ、気持ち、いいっ……)
 楠神は万里花の乳首をしゃぶりつつ、もう片方の乳首への愛撫を止めることはない。ぎゅっと強めに摘まんだり、たまに強く引っ張ってみたりと、常に万里花に快感を与え続けてくる。
「ああっ……だめっ、楠神さん……っ」
「……何がダメ、なんです? こんなにも敏感に感じているのに」
「だ、だって……」
 言いかけたけど、言えなかった。
 まだキスと胸への愛撫だけ。なのに、楠神の巧みなテクニックで万里花の秘部からはすっかり蜜が溢れ、すでにショーツはぐしょぐしょだ。
 股間のあたりがくすぐったくて、もどかしくてたまらない。
(どうしよう……濡れてきちゃった……)
 万里花が太股を擦り合わせ快感を逃していると、楠神がそれに気付く。
「ああ……こっちも触ってあげますね」
 乳首に舌を這わせながら、楠神の手が万里花の太股に延びる。
 スカートが乱れてすっかり露わになった太股を愛おしそうに撫でてから、楠神は万里花のスカートの奥に手を入れた。ショーツに包まれた恥丘を撫で、そのまま手を滑らせ長く骨張った指がショーツのクロッチ部分に触れた。
(あっ……)
 濡れていることを気付かれる。
 触れられた感触で万里花が小さく体を揺らすと、なぜか楠神の手が止まる。
「すみません。こんなになっているのに気がつかなくて」
 冗談とも本気ともわからない楠神の言葉に、かあっと万里花の顔が熱くなった。
「……っ、そんなの、謝らないでくださいっ……」
「ふふ。恥ずかしがる万里花先生、可愛いですね。……たまらない」
 楠神は嬉しそうにこう言いながら、クロッチ部分が色濃くなった薄いピンクのショーツを一気に膝までおろし、素早く脚から抜き取った。
「もっと気持ち良くしてあげますね」
 万里花の太股を掴んで脚を開かせた楠神が、身を屈めて股間に顔を近づける。その意味がわかった万里花は、恥ずかしさのあまり思わず両手で顔を覆った。
「ちょ……くすがみさ……っ、あっ……!!」
 楠神の舌が蜜口の辺りを丁寧に舐め、万里花の蜜を絡め取っていく。それは執拗に及び、万里花の羞恥が頂点に達するほどだった。
「ああ……万里花先生。すごく……いやらしい匂いがします……」
 くちゅ、ぴちゃ。
 股間に顔を埋める楠神の頭に手を添えたまま、万里花はイヤイヤと何度も首を横に振った。
「や、やめて……そんな……ああっ……!!」
 懇願する万里花に構わず、楠神は万里花の股間から顔を上げる気配は無い。それどころか、今度は蜜口の少し上にある襞を指で広げ、その奥にある濃いピンク色の蕾に照準を定め舌を這わせ始めた。
「ん、あっ!」
 繁みの奥にある蕾は、楠神に触れられ徐々に感度を増す。軽くツン、と舌先が当たっただけだというのに鋭い快感が万里花を襲い、腰がビクン、と大きく揺れてしまう。
「はあっ……ん」
 楠神に舐められていることが恥ずかしい。
 そんな僅かばかりの羞恥心など、今、万里花を襲う快感にたやすくかき消されてしまう。
 艶めかしい声を上げながら万里花が体を捩る。その姿は確実に楠神の興奮を煽っていく。
 すると楠神は、今度はその蕾にぴったりと口を当て、ピチャピチャと音を立てながら激しく舐めしゃぶった。
「やあ……っ、だめっ、そこばっかり……」
 激しい快感が波のように押し寄せ、万里花の絶頂を後押しする。
(こんな……こんなに激しくされたら、イッちゃう……!!)
 万里花は左右に体を捩らせつつ、必死で悶え続ける。
 楠神がひときわ強く蕾を吸い上げる。その瞬間、万里花の中で高まりつつあった快感が一気に膨らみ、弾けた。
「ああっ……!!」
 声を上げた瞬間、思考が飛んだ。反射的に足先をピンと伸ばし体を小さく震わせた万里花は、ぐったりとベッドに身を預けた。
(イッ、た……)
 こんな感覚、何年ぶりだろう。
 手の甲を額に当てたままぐったりしていると、ようやく楠神が股間から顔を上げた。
「万里花先生……イッちゃいましたね」
「は……」 
 万里花は呼吸を乱しながら、腰のあたりにいる楠神を見る。
 彼は万里花の蜜で濡れた口元を指で拭いながら、口元に笑みを浮かべ万里花を見下ろしていた。
「感じやすいんですね、すごく」
 指に絡みついた蜜をペロリと一舐めする。そんな楠神の仕草がひどく卑猥に見えて、万里花は脱力したままで、羞恥に悶えそうになる。
 体を起こし、ベッドの端に腰掛けた楠神は、ポケットから避妊具らしきパッケージを取り出すとそれを口に咥えた。そのままの格好で手早く穿いていたものを脱ぎ捨て、万里花の元へ戻ってきた。
 その股間にある猛々しい屹立に、万里花は思わず息を呑んだ。
 下腹にくっついてしまいそうなほど反り返ったそれは、赤黒く、長くて太い。ずっと万里花が勝手に想像していた、ド真面目なサラリーマンの姿からは想像できないほどの雄々しさだった。
 あれが今から自分の中に入るのだ。そう思ったら楠神を直視できず、万里花は彼から目を逸らした。
「……どうしました? 万里花先生」
 避妊具を手際よく被せ終えた楠神が、万里花の腕を引き体を起こす。そのまま流れるように万里花の服をすべて頭から引き抜き、続けて腰に引っかかっていたスカートも脱がせ、万里花を一糸まとわぬ姿にした。
「な、なんでもない、です……それより、その先生っていうの止めてください……」
「ああ、なんか悪いことしてるみたいな気になりますもんね」
 思っていたことをはっきり言われ、万里花は無言のまま楠神を見る。そんな万里花を、楠神が頭のてっぺんから足先まで視姦する。
 いたたまれなくて、万里花は思わず彼に向かって手のひらを向けた。
「そ、そんな……見ないで」
「どうして? こんなに美しいのに」
 真顔で返す楠神に、なにも言えない。
 羞恥から胸元を隠そうとすると、その腕を楠神に掴まれ、阻止される。
「万里花先生の体は、もう隅々までしっかり拝見しました。隠す必要などないくらい、どこも美しい……あとは……早くあなたの中に入りたい」
 楠神が万里花の二の腕を掴み、顔を近づけ唇を重ねてくる。下唇を何度か食むと、今度は少し顔を傾けながら深く口づけてきた。
「……っ、ん」
 楠神の舌使いに翻弄され、万里花の上半身が徐々に反っていく。楠神はその背に手を添えると、キスをしながら万里花をベッドに寝かせた。
「挿れますよ」
 唇を離した楠神が、万里花の耳元で呟く。
 来る、と身構え体を硬くした万里花の蜜口に、固い肉竿が押しつけられ、そのままズブッと差し込まれる。
(あ……)
 息を呑み、楠神が自分の中に入ってくるその感覚に意識を集中させる。
「んっ……ああっ……!!」
 熱くて大きな存在を下腹部に感じながら、万里花はビクビクと腰を揺らす。
 数年ぶりの行為で、もしかしたら痛みがあるかもしれない。と心配していた万里花だったが、そんなのは杞憂に終わる。
 これまでの愛撫ですっかり濡れていたそこは、楠神を難なく受け入れ、あっさりと奥に迎え入れた。
 下腹部に感じる楠神の存在と熱に、万里花は浅い呼吸を繰り返した。
(……っ、おなかの奥が……熱い……っ)
「ああ……すこしきついかな……でも、すごく気持ちいいですよ」 
 はっ……と吐息を漏らし眉根を寄せる楠神の表情を、万里花はうっすら目を開け盗み見る。
 自分の中に入り、恍惚とした表情を見せる楠神は、これまで万里花が見たことのないくらい艶めかしい。
 正直、こんな男性と自分が今一つになっていることが、まだ信じられない。なんだか淫靡な夢を見ているよう。万里花がそんなことを思っていると、楠神は腰を引き、一度奥まで入れた肉竿を引き戻し、浅いところを何度も往復する。
「っ、あっ……」
 膣の入り口付近を亀頭で擦られる。同時に襞の奥にある蕾を指でぐりぐりと押したり潰したりされ、電流のような快感が万里花を襲う。
「ひあっ……や、あ……っ!!」
 こんな恥ずかしい声が自分の口から出るなんて。
 そう思って口元を手で覆っても、楠神の手の動きに翻弄されて、あられもない声が出てしまう。
 万里花はすでに自分で自分をコントロールできないくらい、楠神に翻弄されていた。
「ここ弄られると気持ちいいですか? また濡れてきましたね」
 嬉しそうな楠神の声が聞こえ、万里花の顔がカッと熱くなる。
 気を良くしたのか、楠神は引き続き手でぷくりと膨らんだ蕾に刺激を与えつつ、一気に万里花の奥を突き上げた。
「あんっ!! あああ……っ!!」
「万里花先生……っ、すごく、いいっ……」
 弓なりに背中を反らせ、楠神を受け止めながら万里花は思う。
(だから、先生っていうの、止めてっ……!!)
 しかしそんな思考は、楠神の激しい責め立てに負け徐々に薄れていく。腰を掴みガンガン奥を突かれ続けると、さっき霧散したはずの快感が再び舞い戻ってきて、ちょっとばかりの羞恥心などどこかへ消えていった。
(気持ちいいっ……)
「んっ、あ、ああっ――だめ、もうっ……!!」
 万里花は首を左右に振りながら、ぎゅっと目を瞑った。
 さっき達したばかりなのに、もうイキそうになっている。
 自分でもこんなに感じまくっていることに驚きながら、万里花の子宮がキュッと楠神を締め付ける――が、なぜか、あと少しでイキそうだというタイミングで、楠神が肉竿を引き抜いてしまう。
「……っ、……え……?」
「万里花先生、イキそうになってたでしょう。締め付けがきつくなってきてましたからね、わかります」
 万里花がわかっているのならどうして、という顔で楠神を見つめる。
 彼はそんな万里花を見つめ少し口角を上げると、涼しい顔で額にかかる前髪を乱雑に掻き上げた。 
「ずっと憧れていた万里花先生とこうしているなんて、夢のようで……なので、もうちょっとお付き合い願えますか」
 楠神は万里花の体をひっくり返し、うつ伏せに寝かせる。
 万里花が肩越しに楠神を窺っていると、楠神がちゅうっと音を立てながら臀部にキスをした。
「綺麗な形のお尻ですね……白くて、手触りが良くて……」
 楠神がさわさわと臀部を撫でる。
 もしかしてお尻が好きなのだろうか。
 万里花がこう思い始めたとき。楠神が撫でるのをやめ、再び肉竿を挿入した。
「ん、ああッ……!」
 ビクンと背中を反らす万里花の骨盤のあたりを掴んだまま楠神は奥を突き、当たったところをぐりぐりと押しつける。
「あ、あ……んっ、そんな、奥っ……、は……」
 奥を擦られ、その気持ちよさに呼吸が浅くなってしまう。
「気持ちいいですか? では……これはどうですか」
 彼は万里花の敏感な場所を探るべく、小さく円を描くように竿を動かしたり、ちょっとずつ場所を変えて膣壁を擦る。
「んっ、や……あ……そこっ……!」
「ここ? ここが気持ちいいんですか?」
 楠神の問いかけに、万里花は慌ててコクコクと頷いた。
「気持、ちいいっ……ああんッ!」
 話し終える前にズン、とまた奥を突かれ、体が大きく跳ねた。
「よかった。じゃあ、動きますね」
 すると楠神が大きく腰をグラインドさせ、万里花を突き上げた。これまで確かめるようだった抽送が一定間隔に変わり、徐々に速度を増していく。
 万里花は枕を掴みながら、激しい突き上げと快感の応酬に悶え続けた。
「あっ、あ、ああッ……や、あんっ……!!」
「万里花先生っ……ああ、いいっ……俺も……イキそうですっ……」
 楠神の抽送が更に加速すると、万里花の思考が白け始めた。
(あ……もう、ダメっ……また、イくっ……)
「んっ……あっ……い、イッちゃ……ああっ……!!」
「万里花先生……万里花ッ……」
 パン、パン、という腰と腰のぶつかり合う音の感覚が徐々に狭まっていく。しかし、今の万里花にはその音すら届かない。
 さっきイッたばかりなのに、またイきそう。
 そんなことを思いながら快感に身を任せていると、絶頂はすぐにやってきた。
「あ、あ、ああ、んっ、イッちゃう……っ、あああっ――」
「は……ん、くっ……イくっ……!!」
 絶頂を迎えた瞬間、万里花の中できゅうっと締め付けられた楠神が、ビクビクと震えながら被膜越しに精を吐き出した。
 額に汗を浮かべた楠神が、天を仰ぎながら腰を強く万里花に押しつけてくる。
「うっ……、はあっ……」
 短く呻き体を震わせると、脱力した楠神が万里花の背中に覆い被さった。
 未だ絶頂の余韻に浸りながら万里花がぼんやりしていると、楠神が背にチュッとキスを落としてから、ズルリと肉竿を引き抜いた。
 避妊具の処理を済ませた楠神は、万里花と向かい合う形でベッドに横になる。距離を詰め、万里花の頭を愛おしそうに撫でてくる。
「万里花先生」
 視線を合わせ名前を呼ばれ、万里花の胸がドキンと跳ねる。
「……はい」
「相性、いいと思いませんか。少なくとも俺は、最高にいいと思いました」
 そもそもなぜ今夜急展開を迎えたのか。そのことを今になってようやく思い出した。
(そうだった、相性を見極めるためにこういうことになったんだった……)
 行為の最中は、相性がどうとか考えるような余裕は一切なかった。というより、与えてもらえなかった。それくらい、楠神とのセックスは万里花を無我夢中にさせた。
 それこそがつまり、相性がいい、ということなのではないか。
「……いい、と思いました……」
 はっきりと肯定するのもどうだかな、と思い、控えめに返事をした。だけど楠神は、万里花が思っていた以上に嬉しそうな顔をする。
「本当ですか」
「……本当です」
 頷くと、楠神が万里花の体に腕を巻き付けてきた。
「よかった。これでまたあなたを抱ける」
 何気なく彼が漏らした言葉に反応し、万里花の子宮がズクンと疼く。
(また……この人に抱かれる……)
 私達は交際しているのだから、そんなのは当たり前のこと。
 そう頭では理解しているのに、なぜこんなに彼を意識してしまうのか。
 結局その答えを出すことはできないまま、万里花は再び楠神に抱かれたのだった。

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