敏腕社長は定食屋のシンデレラを独占愛で永遠に離さない

書籍情報

敏腕社長は定食屋のシンデレラを独占愛で永遠に離さない


著者:黒羽緋翠
イラスト:天路ゆうつづ
発売日:2023年 4月28日
定価:620円+税

4歳の頃に両親を事故で亡くし、父方の祖父母と叔母に育てられた乃々果は定食屋で働く。
心優しく健気でしっかりしているので、お店の常連客に可愛がられていた。
特に、最近常連になった茂雄と年の離れた友達のように仲良くしてもらっていた。
そんなある日、泰成という男が店に来る。
彼は、乃々果が海辺で散歩をしていたときに見かけた人だった。
心臓が壊れそうなほど高鳴ったり、何かとテンパっていた乃々果は
食事を終えた泰成が書類の入った封筒を忘れていることに気づき、
彼を追いかけ書類を届けに……。
「今夜、書類を届けてくれたお礼に、食事をごちそうさせてくれないか?」
相手が泰成であるだけで心が揺れる乃々果は――!?

【人物紹介】

笹原乃々果(ささはら ののか)
26歳。
幼い頃に両親を交通事故で亡くし、父方の祖父母に大切に育てられ、
現在は叔母夫婦が継いだ定食屋で働いている。

堀川泰成(ほりかわ たいせい)
28歳。会社社長。
堀川財閥の御曹司だが自身で会社を立ち上げた敏腕青年実業家。
有能で野心家。乃々果を溺愛している。

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*取り扱いサイトは、各書店に掲載され次第、更新されます。

 

【試し読み】

 誰もいない海でふと口にする泰成の言葉に胸がずきりと痛む。そんな大切な場所に自分がいてもいいのかと思い悩んだその直後――泰成がその答えを言い放った。
「乃々果……、君が好きだ」
「えっ?」
 泰成の声は聞こえている。なのに言葉の意味がわからず、頭が真っ白になる。予想もしていない事態に混乱したのも束の間、唇に柔らかいものが触れていた。
(なっ、なにが起こっているのか理解できないよっ!)
 思わず心の中で叫んでしまうほど混乱するものの、徐々にキスをされているとわかり動揺が隠せない。
「俺の恋人になってくれないか? 乃々果」
「そんな、いきなり……」
「いきなりじゃない。これでも待ったほうだ」
 恋愛とは無縁だった乃々果からすれば、いきなりの展開に思考が追いつかない。
「ですが、私なんか……」
「その続きは明日の夜に聞くから、ゆっくり考えてほしい」
「…………」
 聞きたいことはたくさんある。けれど泰成の真剣な顔に、なにも言えずに黙り込む。この空気感から察することは、彼が真剣に言っていることだけだ。
 思い過ごしかもしれない。そう思いたいのに、初めて触れられた唇の熱さがそれを否定させてくれなかった。
「……いまはこれで十分だ」
「えっ?」
 頬をかすめた潮風と波の音のせいか、泰成の言葉が聞き取れず困惑する。そこでふたりの小さな子供を連れた、若い夫婦が海辺にやって来た。
 その姿を見ながら恥ずかしさがこみ上げ、頬が熱くてたまらない。
「今日はここまでにするから、明日は楽しみにしている。乃々果」
「……私も、花火大会を楽しみにしてます」
 この答えでよかったのかと思いながらも、話が中断される。先ほどのことが幻のようにすら思えて、乃々果は困惑するしかなかった。
 
 翌日――。花火大会に合わせて漁港が休日となり、それに合わせて店も休みになっていた。
 漁港で働く多くの人にとって数少ない二連休ということもあってか、とてもゆっくりした雰囲気に包まれている。そんな中で乃々果は日中、莉亜とビニールプールで遊んでから出かける準備をしていた。
 白地に涼しげな青系の桔梗柄の少し大人っぽい浴衣は、今年新調したものだ。
 小さい頃から浴衣を着るのが楽しみだった乃々果は、祖母に着付けをしてもらいお祭りに連れて行ってもらっていた。大人になったいまでは、自分でも着付けができるようになった。
 そんな乃々果が泰成から花火大会に誘われて、浴衣を選んだのは自然なことだったのかもしれない。そんなことを考え、着替え終わると祖父母のいるリビングに来ていた。
「すごく涼しげで、綺麗な浴衣を選んだじゃない」
「うん、一目惚れをして買ってみたの」
 乃々果の浴衣姿を見て感嘆とした声を上げてくれる祖母と、目を細めながら静かに微笑む祖父。そんなふたりを見て恥ずかしさがこみ上げる。
「堀川さんと一緒なら問題はないから、楽しんでこい」
「今日は靖子たちもいないから、ゆっくりしてきてもいいのよ」
「うん……、ありがとう」
 男性と花火大会に行くというのに、祖父母から快く送り出されてとまどう。だが、乃々果を連れ出す度、家族に丁寧に挨拶をする泰成なら、その反応はおかしくないのかもしれない。
 そこで店の扉が開く音が聞こえて慌てて向かうと、迎えに来てくれた泰成がいた。
 いつもならこの時間は食事にくる客で賑わっているのに、この空間にはふたりしかいないことが恥ずかしい。
「迎えに来た。乃々果」
「はい……」
 いつもならちょっと会話をするのに、今日に限っては泰成はそれしか言わない。それどころか目も合わせてくれないことが不安になる。
(浴衣なんて着ちゃったけど、似合わなかったのかな)
 誰よりも綺麗だと思ってほしい人だからこそ、胸が苦しい。そこでふいに手を繋がれたことに驚く。
「今日はスイートルームから花火を見よう」
「えっ?」
「ホテルから見るのが一番綺麗に見えると聞いたんだ」
 たしかに泰成の泊まっているスイートルームなら、美しい花火が見える特等席だと言われている。しかしその誘いがなにを意味しているのか気になり、落ち着かない。
『乃々果……、君が好きだ』
 意識して考えないようにしていた。が、自分がどうなってしまうのかわからない。
 そんなことを考えて頭が混乱する。なのに泰成の後についていくことしかできなかった。
 
 混雑した海岸線を車で走る中、花火大会が始まり夜空には光の華が打ち上げられていた。そんな中ホテルに到着し、急ぐように部屋に連れて行かれる。
「乃々果……」
 ドアが閉まると同時に掠れた声で名前を呼ばれ、真っ直ぐ見つめられて鼓動が跳ねる。
「自分で浴衣が着られないなら、綺麗すぎて脱がすことはできない」
「……えっ?」
「もしも俺の想いに答えてくれるのなら……今夜、君を抱く」
 選択肢を残した泰成の言葉に、乃々果はこの状況に大いに困惑する。このまま嘘をつけば、なにもないまま終わるだろう。
 このままでは終わりたくないという思いに心が支配され、涙目で泰成を見つめる。自分に嘘をつきたくないと思った乃々果は、迷う気持ちを振り切る決心をした。
「私は……、堀川さんが好きです」
 それは初めて泰成を見かけた時からだったと、いまならわかる――。吐息のような小さな声で告げるのが精一杯だったが、泰成には伝わっていたらしく、抱きしめられていた。
「その浴衣を誰にも見せたくなかったから、ここに連れて来た」
「え……?」
「綺麗だよ、乃々果」
 迎えに来てくれた時はなにも言わなかったのに、耳元で囁かれたせいで胸がドキリと高鳴る。こんな状況でずるいと思った瞬間、夜空に花火が打ち上がり唇が重なった。
 ふわふわとした甘いキスに翻弄されて身体をびくりと震わせる。
「窓際の特等席で、花火を楽しもう」
 耳元で囁かれた言葉に小さく頷くと、泰成は額にキスを落としてから、窓のそばに連れて行く。窓からは大輪の花が打ち上げられ、大きな音に耳を刺激される。
 こんな近くで花火を見た経験はなかったので、好きな人のそばで夢のような時間を過ごせることが嬉しかった。そんなことを考えていると後ろから抱きしめられ、首筋にちゅっとくちづけられる。
「ほっ、堀川さんっ! 花火を見ましょう」
「俺よりも花火に夢中になっていて」
「でも、こんなことは早すぎるから……」
「かわいい恋人を愛でたくなるのは当たり前だろう」
 お互いの気持ちを伝え合ったのだから、そうなってもおかしくない。しかし順序というものがあるような気がするのは、自分だけだろうか。
 そんなことを考えて泰成から意識をそらそうとするのに、細いうなじにキスをされて意識が引き戻される。
「恋人って……、私は堀川さんと釣り合う人間じゃありません」
「生まれた環境が違っても、俺たちの気持ちがひとつならそれでいい」
「でも……」
「君が俺を好きでいてくれるのなら問題はない。なにも考えなくていいんだ」
 腰を抱いていた手が上へと伸び、浴衣の上から胸を優しく触られる。そのことに驚いて身を竦ませた瞬間、乳房を揉みしだかれる。
「だめっ……。堀川さんも花火を楽しんでください」
「花火より俺を夢中にさせるものがここにあるから、しかたないだろう」
「そんなことっ……!」
 胸をもてあそんでいた手が掛け衿から忍び込み、じらすように肌をなぞってくる。しかも窓際で淫らなことをしているせいか、羞恥で身体が火照りだした。
「浴衣の下に下着をつけるものじゃないって、知っているか?」
「そんなの、知らないっ……」
「知らないなら、ちゃんとした着方を教えてあげる」
 背中に回した手がブラのホックを外し、素早く浴衣から抜き取られる。花火の明るさのせいでちらちらと胸が見え、泰成の目がそれを楽しんでいるかのように微笑む。
 その表情に男の色気が含まれており、乃々果は怖くて目尻に涙を滲ませた。少しずつ大胆に開かれた掛け衿から、さらに双丘が見え隠れする。
「こっちを向いて、乃々果」
 耳元に甘い声が響き、泰成のアシストによって乃々果は人形のように振り返る。隠したくてたまらないのに、身体が熱くてたまらなかった。
「み……見ないでください」
「そんなに恥ずかしがっても、俺の情欲を煽るだけだ」
 部屋が暗いことがせめてもの救いだと思う。なのに、夜空に美しい花火が打ち上げられるたびに部屋に光が差し込み、乃々果の羞恥を助長させる。
 ホテルの最上階にある部屋を、外から誰かに覗かれる心配はないだろう。そこでまとめていた髪が泰成の手によってほどかれ、甘いくちづけをされた。
 わずかに開いた唇の隙間から肉厚な舌が入り込み、歯列をなぞられる。
「ふぁ……んっ……」
 息が苦しくて言葉を発しても喘ぎの声に変わり、舌先を絡めとられる。徐々に身体の力が抜け、泰成に支えられていないと立っていられず、彼にしがみつく。
「寝室から花火を見よう」
「えっ、で、ですが……」
「寝室からも海が一望できるんだ。じっくりと堪能できるぞ」
 耳に響いた魅惑的な誘惑に翻弄され、乃々果は無意識に胸を昂ぶらせる。いまの状況で花火を堪能できるはずがないのは、乃々果にだってわかっていた。
 それでも泰成への恋心に嘘がつけず小さく頷くと、横抱きをされて寝室に連れて行かれる。ベッドに降ろされると泰成がネクタイを外し、シャツを脱ぎ捨て上半身裸になった。
 適度に引き締まった筋肉質の体躯を直視できずに窓に視線を向ける。海辺に打ち上げられた花火の光に彩られ、男の身体が窓に浮かび上がった。
「……脱がすよ」
 短い言葉を口にした泰成が器用に浴衣の帯をほどき、共衿を大きく開ける。逃げ出したいのに、すでにベッドで組み敷かれてしまい、身動きすらも取れない。
 自分がひどく淫らな女性になったようで、泣き出してしまいそうになる。
「乃々果が綺麗すぎて、浴衣を脱がすのがもったいない」
「はっ、恥ずかしいっ……」
「汚すわけにもいかないから、裸にしないといけないけどな」
「や、やだっ……」
 いやいやと首を横に振って身体を動かすほど、あられもない姿を晒してしまう。宥めるかのように、首筋に舌を這わせた泰成が喉にくちづけを落とす。
 初めて身体に教え込まれていく快楽に身を捩り、浴衣の襟がさらにはだけていく。
「色っぽいな、乃々果」
「ちがっ……」
「そんなに俺を煽ったら、どうなっても知らないからな」
 恥ずかしくて顔を手で覆っても、すぐに腕を取られてしまう。
「顔を隠したら、花火が見られなくなるぞ」
 すでに花火を見る余裕もないのに、顔を隠すことさえ禁じられてしまう。恥ずかしくて直視できない状況に困惑し、身体中が甘く蕩けるような愉悦に包まれた。
 淫らな指が鎖骨から滑り落ちて、乳房が手のひらに包まれる。
「あっ……やっ……」
「綺麗な胸が俺の手に吸いついてくる」
「ちがっ……」
「かたちも大きさも最高だな、乃々果」
 胸を揉みしだかれながらつぶやかれた言葉がさらに乃々果の羞恥を煽り、耳を舐めしゃぶる。怖くてたまらないのに、身体からあふれてくる甘い愉悦に翻弄されていく。
 胸の先端を指の腹で擦られ、白い背筋をのけぞらせる。淫らな泰成を見たことがないだけに、胸の鼓動が大きく跳ねた。
「ひゃっ!……んっ……」
「乃々果はこのかわいい乳首は感じやすいんだな」
「やっ……」
「舐めたらどんな反応をするんだろうな」
 泰成の唇が乳頭にちゅっと唇をつけ、乳暈を丁寧に舐められる。弾けるような法悦の波が押し寄せ、肢体が小刻みに震えた。
 円を描くように突起を舌でなぞりながら、獰猛なまなざしで見つめられて息が苦しい。なのに、泰成から逃れる術がなかった。
「こんなに乳首を赤く尖らせて、気持ちいいのか?」
「ひゃっ……!」
 自分のものとは思えないような嬌声を放ちながら背筋をしならせると背中に腕を回され、最後の砦だった浴衣を脱がされて一糸纏わぬ姿にされる。
「綺麗だ、乃々果」
 その言葉が言い放たれると同時にキスをされ、全身に甘く蕩けるような愛撫を与えられる。さざ波のような緩やかな刺激がもどかしく、太股に這わせていた指がぐちゅりとはしたない音を鳴らす。
「ふぁ……あっ……」
「乃々果は本当に感じやすいんだな」
「恥ずかし……」
「もっと気持ちよくしてあげるから、怖がらないで」
 淫猥の指が秘部をなぞり、小さな秘粒を捉える。その拍子に身体をのけぞらせると、舌先で割れ目を舐め取られて身悶えてしまう。
 敏感になった花芽を舌先で啄まれ、あふれてくる蜜液を啜られる。その刺激に耐えられず、焦れるような疼きが身体中に押し寄せた。
「こんなに濡らして、乃々果はいい子だな」
 優しい手で髪を撫でてから身体を離した泰成が、優しい瞳で乃々果を見る。その様子に落ち着きを取り戻すと、額にくちづけられた。
「怖いことはしないから、俺に身を委ねてほしい」
「堀川さん……」
「優しくするから、そんな不安そうな顔をするな」
 泰成に釣り合わないとわかっている。
 ――けれど、初めて恋をした人にならすべてを捧げたい。その気持ちを伝えたくて、真っ直ぐに泰成を見つめると額にくちづけられた。
「乃々果、君を抱きたい」
 耳元でささやく泰成の言葉に小さく頷くと、彼はスラックスをくつろげて肉茎を取り出して避妊具を装着する。そんな泰成の姿を直視できないまま、花襞に剛直を押し当てられる。
 蜜液が滴っている花洞にゆっくりと侵入する熱さに、身体の奥をじんと痺れていく。
「痛くないか?」
「はっ……い……」
 狭い隘路を蹂躙する亀頭に圧迫され、一瞬だけ顔を歪ませて額に汗が滲む。とてもじゃないけれど耐えられない破瓜の痛みに襲われる。
 なのにあやすようにくちづけられるだけで、泰成の優しさに涙がこぼれた。
「痛みは俺が快楽に変えてあげるから、すべてを預けてくれ」
「はっ……はいっ……」
「いい子だ。乃々果」
 なじませるようにゆっくりと腰を動かされ、媚肉を擦りつけて密壁の中でかさ増しする剛直に翻弄され、全身がゆるやかな快感の波に漂っていく。
 少しずつ慣らされたのか、もどかしくて肢体が揺れ動く。それが泰成に伝わったのか、肉竿がさらに奥へと穿ちはじめる。
「ほっ、……ほり、かわ……さん」
「名前で呼んでくれないか?」
「たい、せい……さん」
 収縮する蜜路を埋めている灼熱の楔がさらに膨らみ、最奥を突き上げる。少しずつ慣らされた身体に教え込むように、痛みに勝った甘い悦楽に支配された。
 目の前が霞み、背中をのけぞらせながら未知の愉悦に蕩けていく。しっかりと密着しながら、初めての官能に身悶えた。
「あっ……」
 少しずつ加速するのに痛みが薄れていき、小さな嬌声を漏らす。激しく内壁を擦られ、甘く蕩けるようなくちづけに身体がぞくりと戦慄く。
「気持ちよくなってきたようだな。乃々果」
「わかん……なっ……」
「わからないならしっかり教えてあげるから」
 肉茎を受け入れた場所から新たな愛蜜がこぼれ落ち、シーツを濡らす。身体が痙攣するような感覚に囚われ、耳を甘噛みされた。
「イっていいぞ、乃々果」
「いっ、いく?」
「気持ちよくなることなんだ」
 なにを言われているのかわからず、思考さえも真っ白に染まる。
 突き上げられるたび肌がびくりと震え、淫らに肢体を震わせていく。意識が朦朧としながら何度もキスをされ、膣奥に白濁液が注がれた。
 心地いい官能の波に揺られながら、泰成に抱きしめられる。それだけで心の底から安心し、乃々果は彼に身を委ねた。

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