
極上社長と嘘から始まる淫らで愛おしい契りを
著者:大江戸ウメコ
イラスト:南国ばなな
発売日:2023年 4月28日
定価:620円+税
地方の大学を卒業しそのまま地方で就職した芳里だったが、東京に支社ができると同時に移動になる。
取引先の祝賀会で榛の会社の社員とぶつかってしまい、芳里のドレスに飲み物がかかってしまったところを榛に助けられるが、
高校生の頃に付き合っていた元彼の榛は芳里に気づいた様子はない。
お詫びとして榛と飲みに行くことになった芳里は、榛から大企業の社長令嬢との見合いを悩んでいるという話を聞く。
令嬢のことを好きになれるか分からず、利害だけで結婚をしていいか迷っているという榛を見て、
過去の復讐のためにこの縁談を滅茶苦茶にしてやろうと決意した芳里は相談相手というポジションを勝ち取り、連絡先をゲットする。
「羽倉さんとなら、俺が楽しめるデートができる気がするんだ」
相談に乗っていくうちに、まさかそんなふうに誘われると思わず動揺する芳里は――!?
【人物紹介】
羽倉芳里(はくら かおり)
26歳。地味だった自分を変えるために、自分磨きをする。
そのまま地元の会社に就職するが、東京に支社が出来ると同時に移動。
榛と再会する。
和田守榛(わだもり しん)
27歳。大学卒場と同時にIT会社を立ち上げ、軌道に乗った。
高校生の時に、見栄を張って嘘をつき、
芳里を傷つけてしまったことをずっと気にしている。
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*取り扱いサイトは、各書店に掲載され次第、更新されます。
【試し読み】
眼前に広がる大自然。静かな景色に私の声はいやに響いて、誰かに聞かれてしまわないかと、私は必死で声を抑えた。
「やぁ、誰かに聞かれたら……っ」
「大丈夫だよ。離れの客室はこの部屋だけだから、周囲に人はいない」
そうは言っても、ここは露天風呂で野外なのだ。
どうしても思うまま声をあげる気になれず、私は口元を手で抑える。
「大丈夫だって言ってるのに」
シンくんはくすくす笑うと、親指と人差し指で強く胸の先端を摘まんだ。
「あっ!」
ぐりぐりとその部分を押しつぶされて思わず声をあげてしまう。
「声、もっと聞かせて」
シンくんは声を殺す私をあざ笑うように、敏感な部分を中心にぐりぐりと弄る。
胸を触っているのと反対側の手は下腹部へと伸びて、足のつけねをなぞりはじめた。
「ふっ……ぅんっ、ああっ、そこは、んんっ」
シンくんの手がタオルの内側へと入り込んでくる。
指先がいちばん敏感な場所を掠めて、びくりと身体が震えた。
触れられた箇所がぬるりとしているのは、水質のせいだけじゃない。
「芳里のココ、直接見てみたい」
「んっ、ああっ、直接?」
「前回は、下着、脱いでくれなかったでしょ。……タオル、取るよ」
そう言って、シンくんは私の身体を隠していたタオルをはぎ取った。
小さなタオルなんて、あってないようなものだ。
それでも、隠すものがなくなってしまうと、急に心細くなる。
お湯の中とはいえ、ここの温泉は透き通っている。
明るい日の光の下で身体を見られて、私は顔を赤くした。
「シンくん、恥ずかしい」
「大丈夫。すぐに、そんなの気にならなくなるから」
「え? ひゃっ!」
どういうことかと尋ねる前に、シンくんの指が私の中へと入り込んできた。
まだ狭い隘路を、ごつごつした指で押し広げられる。
「んっ、あっ、ひゃああっ」
シンくんは、まだ慣れていない私の中を探るように指を動かした。
もう片方の手は私の胸を弄り続ける。
「芳里が気持ちいい場所、俺に教えてよ」
「そんなの、分かんなっ、ああっ!」
「ん。ここかな。それとも、こっち?」
「あっ、やぁ……そこ、んんんっ!」
私の反応を探りながら、シンくんは執拗に何度も指を抽挿させた。
気がつけば私の中に入り込んだ指は二本に増えていて、狭い膣壁を押し広げながら奥まで進んでいる。
内側のざらりとした部分を擦られると、ぞくぞくして、ぴんと背中が反り返る。
そこはダメだ。身体の奥が熱くなって、なんだか、おかしくなりそう。
「シンくん、あっ、そこダメっ」
「ここ?」
「ダメだって、あっ、やぁ、んああっ」
ダメだと言ったのに、シンくんはその部分を重点的に刺激し始めた。
指の関節を折り曲げて、トントンと指先で内壁を叩かれると、熱の波に飲み込まれそうになる。
前回知ったこの感覚。私、イっちゃいそうなんだ。
「シンくんっ、あっ、イっちゃいそ……ああっ」
身体を犯す熱に飲み込まれそうになった瞬間、シンくんが耳元で意地悪に囁く。
「声出てるけど、良いの?」
「っ! んっ、ひゃっ、んんんっ!」
シンくんの言葉で、私はいつの間にか外れてしまっていた手を口に戻す。
どうにか声を出さないように耐えるが、上手く行かずに声が洩れてしまう。
私が必死に声を我慢しようとしているのに、シンくんは私を責める手を止めない。
奥深くへと指を突き込まれ、きゅっと胸の先を摘ままれると、身体の奥で快楽が弾けた。
「イっ、~~~んんんっ!」
大きな声が出そうになって、私は強い力で口を押える。
目の前がチカチカとして、きゅっと強くシンくんの指を締めつけた。
やがて波が過ぎ去ると、ふっと全身が重たくなって、私はぐったりと身体をシンくんに預ける。
「……シンくんの馬鹿。ダメだって言ったのに」
しかも、あのタイミングで声のことを指摘するなんて、絶対にわざとだ。
恨みがましい目でシンくんを睨んだけれど、彼は幸せそうにニコニコと笑うばかりであった。
「ごめん。必死で声を我慢しようとする君が、可愛くて」
「意地悪だね」
「意地悪されるのは、嫌い?」
嫌いだとすぐさま言い返せればよかったのだけれど、シンくんにされたことは嫌ではなかった。
「……できれば、優しくして欲しいな」
嫌いだという代わりに希望を伝えると、背後からぎゅっと強く抱きしめられた。
「それ、ズルい」
「ズルいって、何が」
「優しくするから、もっとシてもいい?」
もっとって、つまりこの先ってことだろうか。
先ほどから私のお尻には、欲望を主張するように、硬くなったシンくんの屹立があたっている。
「こ、ここでするのはダメだよ? ゴムもないし」
当然ながら、温泉の中にゴムを持ち込んでなどいない。
ベッドに移動してからと言おうとしたところで、彼は首を左右に振った。
「分かってる。芳里は初めてだって言っていたし、さすがにそんな無茶はしないよ。挿れたりはしないから、もう少し、芳里に触れていたい」
「触れるって、何をするの?」
「とりあえず、キスしたい」
そう言って、シンくんは私に唇を重ねた。
触れるだけの軽いキスを繰り返したあと、キスの位置は首へと下がっていく。
「もっと、全身にキスしてもいい?」
「い、良いけど」
「じゃあ、そこ座って」
シンくんに指示されて、私は浴槽の淵へと腰かけた。
少しのぼせ気味だったのか、お湯からあがって頭がすっきりとする。
私が檜風呂の淵に座ると、シンくんはお湯に入ったまま、私の正面へと回り込んだ。
「まずは、首」
そう言って、シンくんは私の首回りに顔を埋めた。首筋や鎖骨、肩のあたりにキスをされると、彼の髪が肌に触れる。
「ちょっとくすぐったいね」
「我慢して」
肌をなぞるような軽い口づけを繰り返してから、鎖骨に強く吸いつく。
「んっ」
少しぴりっとした刺激。シンくんが唇を離すと、そこには薄紅色の跡が残されていた。
シンくんの唇は下へと移動し、今度は胸元で赤い花を咲かせる。
「シンくん、あんまり跡を残すのは……」
「駄目?」
「もし、誰かに見られたら恥ずかしいし」
「誰かにって、誰がこんな場所を見るの。服で隠れるところばかりだよ」
シンくんは少しだけ眦を釣り上げると、再び私の胸へと吸いついた。
今度は胸の先に近い場所に跡を残され、びくりと身体が震える。
「俺以外にこんな場所、見せないよね?」
「み、見せないよ。でもほら、大浴場には行けなくなる」
客室の露天風呂とは別に、本館には大浴場があるのではなかっただろうか。
全身にキスマークがついていては、さすがに温泉に行きづらい。
「そういう理由なら、跡をつけるのはこれだけにしとく。代わりに……」
「え、あんんっ!」
キスの代わりとばかりに胸の先端に吸いつかれて、私はまたしても声をあげてしまった。
「芳里の身体、温泉の味がする。ちょっと苦い」
「あんっ、だったら舐めないで……あんっ!」
口内で胸の先端を軽く転がしてから、彼は舌で私の身体をなぞった。
彼の舌は胸からお臍のあたりに移動して、そのままさらに下がっていく。
「えっ、やっ、ちょっと待って! ひゃんっ」
シンくんの舌が私の中心へと触れる。
まさかそんな場所を舐められると思っておらず、私は咄嗟に膝を閉じようとする。
けれども、足の間にはシンくんの身体が割りこんでいて、どうすることもできなかった。
「シンくん、そんなのダメ、やぁんっ、あっ!」
ダメだと言いたいのに、その刺激は指で触れられるよりもずっと快楽を呼び起こした。
柔らかな舌がそこを往復するたびに、とても気持ちがよくて身体から力が抜けてしまう。
「ひゃぁ、あっ、駄目、はぁ、ぅん……あぁ」
「駄目じゃないよね。ここ、溢れてきてる」
「あああんっ」
ぐずぐずに溶けた蜜口を舐めとられ、舌を中へと差し込まれる。
さきほど達したばかりだというのに、またしてもすぐにあの感覚が近づいてきた。
大きな波に飲み込まれて、頭の中が真っ白になりそうな、あの感じ。
「んっ、ダメ……また、イっちゃうから……あああっ!」
首を振ってもシンくんが動きを止めてくれるはずもなく、そのまま達するまで舌で刺激されつづける。
きゅっとお腹に力が入って、全身が痙攣するようにびくびくと震えてしまう。
私がまたしてもあっけなく達したところで、やっとシンくんは顔をあげてくれた。
「芳里のここ、すごいことになってる」
指摘しながらシンくんが中心に指を這わせると、どろりとした愛液が彼の指を汚した。
「んっ、もっ、シンくんのせいだよ」
「分かってる」
シンくんは言いながら、またしても私の中央に指を埋める。
さっきと同じ行為。なのに、何度も絶頂させられた身体はその刺激だけでは物足りなくなってきている。
お腹のもっと奥のほう。子宮のあたりが熱くジンジンと疼いて、彼を求めているみたいだった。
信じられない。まだ経験がないのに、その先が欲しくなるなんて。
ねだるような視線は、彼の肢体へと向いた。
引き締まった身体の中心。シンくんのその部分は、硬くなっていて準備ができている。
「んっ、あ、……ぅん」
シンくんが欲しい。
そんな風に思ってしまったけれど、自らそれを口に出すなんて、できるはずない。
そもそも、ここでは駄目だと言ったばかりなのだ。ゴムだってない。
分かっているけど、身体の奥がもどかしくなって、切なげに彼の指を締めつけてしまう。
そんな私の反応に気がついたのか、シンくんが私の耳元に唇を寄せた。
「そろそろ、のぼせちゃった? 寝室に移動しようか」
それがどういう意味なのかを正確に理解して、私は頷いた。
その途端、シンくんは私の身体を横抱きにして温泉からあがる。
「わっ!」
突然抱きかかえられて、そのまま脱衣所へと連れていかれる。
私を下ろしたシンくんは、時間が惜しいとばかりに乱雑に身体を拭くと、すぐさまベッドルームへと移動して、柔らかな寝具の上に私を押し倒した。
そうして近くにあった鞄を引き寄せると、中から一枚の小さな袋を取り出す。
「芳里。このまま、挿れてもいい?」
手早くゴムを装着し、最後の確認とばかりに尋ねながら、引き下がるつもりはないとばかりに、シンくんの屹立は私の蜜口をつつく。
シンくんと一線を越える。
前回は、その覚悟ができなかった。
シンくんのことが好きだったのに、自分の気持ちがどこにあるか分からず、ただ憎しみだけを向けていた。だけど。
「シンくん。――好きだよ」
頷く代わりに、私は彼に気持ちを伝えた。
別れてからも、ずっと忘れられなかった。
行き場を失った愛情は憎悪に代わり、彼をずっと憎んでいた。
だけど、こうしてシンくんから愛情を向けられてしまっては、その憎悪も消えていく。
私はただ、ずっとこうして彼に愛されたかったのだ。
「俺も――好きだ。芳里、愛してる」
その言葉を合図に、シンくんが私の中へと入り込んできた。
「あっ、ああああっ!」
指で十分すぎるくらい慣らされていたとはいえ、凄まじい圧迫感だ。
ぎちぎちと身体を割られているような衝撃。
けれども、想像していたよりも痛みは少ない。
それよりも、シンくんと繋がっているという満足感が大きかった。
すごい。私の中に、シンくんがいる。
「痛くない?」
シンくんが心配するように私を見下ろす。
「うん。ちょっと苦しいけど、痛くないよ。なんだか、変な感じはするけど」
「良かった」
ほっとしたように彼は笑うと、すぐに動くようなことはせず、繋がったままの状態で私を抱きしめた。
肌と肌がくっついて、隙間なくぴったりと埋まる。
繋がったまま抱きしめられると、シンくんとひとつになっている感じがした。
「なんだか、夢みたいだ。こうして芳里と繋がれているなんて」
それはこちらの台詞だと思う。
まさか、シンくんとこんな関係になれると思わなかった。
憎いばかりで、もう一度恋人になるなんて思っていなかったのに。
「このままずっと、一緒にいたい」
愛を囁くシンくんは、本当に私を想ってくれているように見える。
だけど、シンくんはどうしてこんなにも私を愛してくれるのだろう。
彼なら他の女性だって自由に選べたはずだ。
「私も愛してる。……でも、本当に私で良いの?」
「どういう意味?」
「シンくんになら、もっと相応しい人はいっぱいいるのに」
私は本当にただのしがない会社員だ。
どこかの令嬢みたいなコネクションもないし、モデルや女優のように美しいわけでもない。
私がそう言うと、シンくんは眉間に皺を寄せた。
「芳里よりも愛せる人なんていないよ」
「でも」
「どれだけ俺が君を欲しかったか、身体で分からせてあげる」
シンくんはそういうと、ゆっくりと身体を動かしはじめた。
「あっ……んんっ」
「もし痛かったら、俺の背中に爪を立てていいから」
荒い息をはきながら、シンくんが腰を動かした。
指で解されていたときとは違う、確かな質量が私を貫く。
ゆっくりと動かされるたびに、慣れなかった圧迫感も薄れていき、代わりにジンと痺れるような快楽が湧き上がってきた。
「あっ、んっ、はぁ……んっ」
身体を揺すられる振動にあわせて、口から吐息が洩れる。
その動きは次第に早くなっていき、シンくんの表情からも余裕が消えていく。
「っ、はぁ、芳里……っ」
「あっ、んっ、あああっ」
熱っぽい声で名前を呼ばれながら、奥深くを揺らされた。
子宮の奥にシンくんの存在を刻みつけられているような気分だ。
深く繋がっているのに、まだこの先があるかのように、シンくんは懸命に腰を動かしている。
肌がぶつかるリズミカルな音。それが早くなるにつれて、何も考えられなくなって、目の前にあるシンくんの身体に必死でしがみついた。
耳元で、必死に私の名を呼ぶシンくんの声が聞こえる。
求められているがどうしようもなく嬉しくて、その喜びのまま、身体をかけめぐる熱に身を任せた。
「芳里、もう、そろそろ……くっ」
シンくんの動きがひときわ早くなって、彼がきゅっと眉を寄せた。
それとほぼ同時に私も熱に飲み込まれて、彼を抱きしめる手に力をこめた。
シンくんの身体が軽く痙攣して、動きが止まる。
もつれ込むようにしてベッドに倒れこんで、彼はそのまま私を抱きしめた。
終わったのだと思った瞬間、シンくんにキスをされていた。
私に触れるその動作ひとつひとつが優しくて、幸せな気持ちで満たされる。
この時間が、ずっと続けばいいのに。
彼の温もりに包まれながら、私はゆっくりと目を閉じた。