バリキャリ女子ですが、有能秘書の溢れる執愛に翻弄されています
著者:椋本梨戸
イラスト:石田恵美
発売日:2023年 11月24日
定価:630円+税
茉莉はカリスマモデル兼社長として、忙しい毎日を過ごしていた。
だが茉莉はその華やかな容姿やしっかりとした性格からか、
付き合う男性に「俺がいなくても平気だろ」と言われることも。
男運がないと嘆くなか、茉莉はバーで派手な男達に絡まれる。
その男たちが慕っていたのがカイだったが、どうやら彼は茉莉に興味を持ったようで――?
「可愛い反応をしますね」
そのまま茉莉はカイに強引にキスをし、トラブルをネタに自分を秘書として雇うように迫る。
最初はすぐにクビにしようと思っていた茉莉だったが、彼と過ごしていくなかで徐々に惹かれていって……。
【人物紹介】
七原茉莉(ななはら まつり)
カリスマモデルとして活躍する29歳。
一方でレディースブランドを立ち上げるなど、新進気鋭の女社長でもある。
素晴らしいスタイルと多くの人が憧れる美貌を持っており、性格もはっきりとしている。
綾瀬カイ(あやせ かい)
企業コンサル業等をしている31歳。
ひょんなことから茉莉の秘書として働くように。
高身長かつ、綺麗な顔立ちをしている。
表向きは物腰やわらかな好青年だが、俺様を感じる強気な部分も。
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【試し読み】
「待って綾瀬、わたし」
「静かに」
唇に彼の指が置かれて、それから唇が重ねられた。
「……っ」
鼓動が高鳴った。
やわらかな感触が、茉莉の唇を何度も味わう。そのたびに茉莉の体はびくりと跳ねた。
頭がぼうっとしてくる。思考が鈍り、指先から力が抜けていく。
「ん……ふぅ」
思わず声がもれて、ハッとする。けれど、もう遅い。綾瀬の舌が唇を割った。茉莉の歯列をなぞるように舐めてくる。ぞくぞくした快感が、背すじを走りぬけた。
抵抗できない。体が言うことをきかない。茉莉はただ受け入れるしかなかった。
やがて唇が離れていく。茉莉はぼんやりとした頭で、息を整えようとした。
「……あ」
気づけば、胸のふくらみを彼の手がまさぐっていた。コートの前合わせを割り、カーディガンの上から、ゆっくりと撫でられる。
「だめ――」
「どうして?」
綾瀬はゆったりとした笑みを浮かべている。けれど暗がりで光る目は、情欲に支配されていた。
「だってわたしたち、社長と秘書で……」
「それがなにか?」
「なにかって……。わたし、あなたのことなんて少しも……、んっ」
服ごしに乳首をつままれて、茉莉は甘い吐息をこぼした。そのまま優しくこすられ、背すじが甘く痺れていく。
「こんなふうに感じているのに、まだ否定するのですか」
「ちが……、ん……っ」
「違わないでしょう」
綾瀬は手のひらの部分で胸を揉みながら、指先で先端を刺激する。
「あ……ッ」
「ほら、もう立ってる」
「いや――」
「嘘つきだな」
綾瀬はカーディガンのボタンを外していく。キャミソールの裾から大きな手を潜り込ませ、腹部の肌を直接撫でた。
「あ……!」
茉莉は声を上げた。
その声ごと飲み込むように、綾瀬は茉莉にキスをした。舌を絡ませ、水音が立つほど激しく貪ってくる。
「んぅ……っ」
苦しくて、でも気持ちよくて、茉莉は鼻にかかった声をもらした。いつのまにかブラのホックが外されて、胸のふくらみを直に撫で回されている。
(やだ、なんでこんな。こんなこと)
でももうとめられない。茉莉は彼の腕のなかで、されるがままになってしまう。
「ふぁ……っ」
(だめなのに。こんなのいけないのに)
キスも、胸への愛撫も、綾瀬は執拗だった。執拗に、丁寧に、茉莉の体をとろけさせていく。
「あ……、あん……っ」
茉莉はいつしか自分からも綾瀬を求めていた。彼を求めて、舌を絡め合う。綾瀬の手が下腹部へ下りていき、スカートをたくし上げてショーツのなかに忍び込んだ。熱く潤む箇所を直に探られて、茉莉はぴくんと反応する。
綾瀬は小さく笑った。
「濡れていますよ」
「い、言わな――」
「そんなによかったですか?」
茉莉は必死に首を振る。
「そういうわけじゃ」
「でも、ここはもっとしてほしいみたいですよ」
「あ……っ」
敏感な芽を摘ままれて、腰が震えた。
「どうしました?」
「な、なんでも……、ない……」
「そうですか」
指の腹でその粒を転がされる。あまりの気持ちよさに、茉莉の腰がはねた。
「やめ、て……っ」
彼は刺激をやめない。茉莉の秘所をもてあそぶ。
「あっ、あぁっ……」
「正直に言ってください。もっとここをいじってほしいのでしょう?」
「やだ……言えな――」
「強情だな」
「ひぁッ!?」
強く擦られた瞬間、視界に火花が散った。達してしまいそうになって、綾瀬の体にしがみつく。
「だめ……!」
「イキそうなんでしょう? 我慢しないでください」
「でも、だって……っ」
「大丈夫。僕に任せて」
甘い声だ。茉莉はかぶりを振った。秘所を容赦なくいじられて、絶頂が近づいてくる。彼のもう片方の手が、胸のふくらみを揉みしだいた。
(もう無理、耐えられない)
茉莉はぎゅっと目を閉じた。そのとき、耳元でささやく声がした。
「僕だけを感じて」
「ッ――」
その声に促されて、茉莉は果てた。全身が痙攣する。
「……ぁ」
快楽の余韻に浸っているうちに、綾瀬は茉莉のストッキングとショーツを脱がせた。体を抱え上げ、膝の上に向かい合わせで座らされる。
「ま、待って」
茉莉は震える声で言った。
「待って、こんなところで」
綾瀬は薄く笑って、スラックスの前合わせをくつろげる。
「あ――」
張りつめきって、いまにも爆発しそうな彼の欲望を目にして、茉莉は声を失った。恥ずかしくて死にそうだ。真っ赤になった顔をそらす。
ビニールを開ける音がした。避妊具だろうか。生々しさに、茉莉は体を固くする。
「社長」
綾瀬の声は優しい。けれどその手は容赦なかった。茉莉の腰を強引に引き寄せると、いきり立った剛直に秘所をふれさせる。
「んっ……」
茉莉はびくりと肩を震わせた。
「社長」
また呼ばれる。彼の手が伸びて、頬にふれた。
「俺を見て」
その声に逆らえない。潤んだ視界に茉莉は恐るおそる綾瀬を映した。彼はほほ笑んでいたが、瞳は熱を帯びている。その熱が茉莉の心を揺さぶった。
茉莉は無意識に彼を見つめた。綾瀬はこちらを見据えたまま、ゆっくりと茉莉の腰を落としていく。熱い塊が茉莉の体内を押し広げた。
「ひぁ……っ」
あまりの圧迫感に、息がつまる。茉莉は思わず彼にしがみついた。すると彼の唇が、茉莉のそれをふさぐ。
「……っ」
舌が絡んでくる。茉莉は夢中でそれに応えた。
(だめなのに)
その圧迫感は、苦しい一方で途方もない快感を生んだ。
敏感な襞をあますところなくこすり上げられ、みっしりと満たされていく。呼吸を求め、唇を離した。隘路を割られ、すべてを収められたとき、茉莉は互いの熱い息遣いを感じた。
視線を交わしあったのち、どちらからともなく唇を重ねた。
「ん……」
綾瀬はキスをしながら、ゆるやかに腰を動かし始めた。彼の楔でなかをかき混ぜられるたび、甘美な感覚が茉莉の体内に湧き起こる。
「ふぅ……んっ」
唇が離れる。しかしすぐにまた塞がれた。今度は舌を吸われる。
「あ……ふぅ……ッ」
茉莉は綾瀬にしがみついた。綾瀬は両腕を回し、茉莉を抱きすくめる。その力強さに、心まで囚われた気がした。
彼の動きに、力強さが増していく。
「あ……あ……っ!」
「社長……」
激しく突き上げながら、綾瀬はうめくように言う。
「あなたが好きです」
茉莉は目を見開いた。
(だめ)
頭の芯が甘く痺れる。
(いま、そんなこと言われたら)
「や……」
やめて、と言おうとした。けれど口づけで封じられる。舌を絡ませているあいだも、彼は突き上げるのをやめない。
「んん……っ」
「好きです、社長。……茉莉」
「あ……っ」
名前で呼ばれて、ぞくりとした。体の奥が甘く疼いて、きゅうっと彼を強く締めつける。
「……ッ」
綾瀬はかすかなうめき声をもらした。茉莉を抱く腕に力が込められる。律動がさらに早まり、激しさを増した。
「あぁぁ……っ!」
「く……ッ」
次の瞬間、ふたりは同時に高みへと上りつめた。
「あ――」
茉莉は声にならない声を上げる。綾瀬の熱を受けとめた瞬間、頭が真っ白になり、意識が飛んだ。
翌朝茉莉は、モーニングコールより先に目が覚めた。
カーテンから差し込む朝の光。ベッドサイドの時計を見ると、午前五時になったばかりだ。いつもなら、まだ寝ている時間である。
(どうしてこんな時間に)
昨夜の記憶が曖昧だ。いつ眠ってしまったか覚えていない。
昨日は普通に帰宅して……、そう、綾瀬の運転で、いつもどおりマンションに送ってもらったはずで。
茉莉はのろのろと身を起こした。
そのとき初めて、ここが自分の部屋ではないことに気づく。
(どこ……?)
見回すと、ホテルの一室のような室内だった。広い部屋にキングサイズのベッドがあり、その上に茉莉はいた。
(どうしてこんなところに)
記憶をさかのぼる。
たしか、マンションの地下駐車場で綾瀬の車から降りようとして、それから――。
「あ……」
思い出した。
自分はあの男に抱かれたのだ。
信じられなかった。まさか自分が綾瀬とあのようなことをするなんて。
茉莉は蒼白になった。
「どうしよう……!」
「なにがです?」
右手から声をかけられて、茉莉は飛び上がった。振り向くと、バスローブ姿の綾瀬が立っている。
「なっ、なんでここにいるのよ?!」
「俺もこのシティホテルでひと晩過ごしたからですよ。あなたの隣でね」
ベッドに腰かけながら、意味ありげに綾瀬は笑う。バスローブのあいだからたくましい胸板が覗いて、茉莉は頬をあからめた。
(そういえばわたし、服――)
自分を見下ろすと、着崩れてはいるが、昨日と同じ服装だ。
「シャワーを浴びてきたらいかがですか?」
「……ここ、どこなの?」
「シティホテルの一室です。会社までは車で十五分もすれば着きますよ。出勤時間までまだ時間があるので、のんびり過ごしてください」
「のんびりって言われても」
「二度寝しても構わないですよ」
綾瀬の指が伸びて、茉莉の髪を梳く。茉莉の頬はますます熱くなった。
「ちょっと」
茉莉は眉根を寄せて、彼の手を払う。
「そういうの、やめてくれる?」
「どうしてですか?」
「だって、まるで恋人同士みたいじゃない」
「恋人同士でしょう?」
さも当然のように綾瀬は言う。
「違うわ!」
「では、こういうことはもうしません」
彼は笑みを浮かべたままだ。茉莉は言葉に詰まった。
「でも俺はしたいと思っています」
甘い声で告げられて、鼓動が跳ねる。
茉莉の動揺を見計らったように、綾瀬が唇に軽く口づけてきた。
「綾瀬……っ」
「俺のことが嫌いですか?」
至近距離でささやかれる。茉莉はうつむいた。
「それは」
「俺のことが嫌なら、はっきりそう言ってください」
鼓動は早鐘を打ち続ける。この場から逃げ出したいくらいだ。
「俺の気持ちを受け入れられないのであれば、二度とあなたの前に姿を現しません」
「え?」
茉莉は顔を上げた。彼はほほ笑んでいる。
「いつでも解雇してください。それで問題ないはずです」
「問題はあるわ」
しどろもどろに茉莉は反論した。
「だって、あなたが辞めてしまったらわたしの仕事が回らないもの」
「佐田さんがいるでしょう?」
「それはそうだけど。でも」
茉莉は綾瀬を必死に見上げた。
「やっぱり綾瀬じゃないとだめなのよ」
「俺の代わりはいないと?」
こくりとうなずく。すると綾瀬は茉莉のあごを指で上向かせ、ふたたび口づけた。
「ん……」
「社長にこういうことをする秘書でも?」
唇が離れて、親指でそこをなぞられる。ぞくぞくして、茉莉の目が潤んでいく。それからまた、小さくうなずいた。
綾瀬は満足げに笑った。
「いい子ですね」
そのままベッドに押し倒される。唇を奪われて、茉莉は抵抗できなくなった。
彼の手が剥き出しの胸を覆う。唇が首すじを這った。
「あ……っ」
肌に直接ふれられ、茉莉は身を震わせた。
「待って、綾瀬」
「なぜ? 昨夜はあんなに悦んでいたのに」
「あれは」
言いかけた言葉を遮るように、彼が耳元でささやく。
「もう一度見せて」
濡れた声に、逆らう意志を奪われていく。たくましい体に抱かれながら、茉莉は自分が彼に陥落したことを知った。