騎士団長と偽りのフィアンセ ~婚約破棄された没落令嬢は甘美な愛に充たされる~

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騎士団長と偽りのフィアンセ ~婚約破棄された没落令嬢は甘美な愛に充たされる~


著者:おうぎまちこ
イラスト:荒居すすぐ
発売日:2023年 9月15日
定価:630円+税

伯爵令嬢であるダリアは誰をも魅了する美貌と高い教養から、この国の王太子の妃に選ばれていた。
だが、王太子に大勢の前でダリアは男を誘惑したり他の公爵令嬢に嫌がらせをしていたと、でたらめな内容で糾弾され婚約破棄を言い渡されてしまう。
いわれのない罪で捕らえらそうになったダリアを救ったのは、見目麗しい近衛騎士団の団長のヴィクトルだった。
ダリアはヴィクトルの口添えもあり、そのまま公爵令嬢としての立場を守ることは出来たが、元々資産の少なかった伯爵家は没落寸前まで追い詰められてしまい……!?
そんな失意のダリアの前に現れたのは、あの日彼女を助けたヴィクトルだった。
ヴィクトルはダリアに一晩買おうと告げ、ダリアはそんな言葉に酷く失望するものの、家のためにと受け入れる。
翌日、ダリアがほろ苦い一晩のことを考えていれば、早朝に出ていったはずのヴィクトルが焦った様子で再び彼女の前に現れて……!?
「どうか、この俺の――近衛騎士団長ヴィクトルの妻になってほしい、ダリア・フェルト伯爵令嬢」
ダリアはヴィクトルから与えられる真っ直ぐな愛に心を揺り動かされていくが、なぜ求婚されたのか見当もつかなくて――?

【人物紹介】

ダリア・フェルト
金髪紅瞳、絶世の美貌の伯爵令嬢。
王太子の妃になるべく育てられてきたが、謂れのない罪で婚約破棄されてしまう。
生まれ持った華やかな見た目に、家業の関係で宝石に詳しかったことで派手好きと誤解されがちだが、本人の性格はいたって真面目で控えめ。
悪い噂を流されても毅然とした態度で振舞っていた。

ヴィクトル
女好きで評判の、傲岸不遜な騎士団長。
見目麗しいだけでなく秀でた武芸の持ち主であり、その気さくな性格からも女性たちからは引く手数多の存在である。
平民出身だが、その実力から国王直々に近衛騎士団の団長を任命された。

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【試し読み】

 その後、領民達から、特産品である葡萄でもてなされた後、私たちは領地を後にすることになった。
 もう陽は傾き始めているが、草原を駆け抜ける途中にある湖で、馬を休めることにしたのだった。
 季節柄もあるのか、あまり人気はなかった。
 ちゃぷり。
 水の中に手を浸けると、ひんやりと気持ちが良い。清らかな水で、心も洗われるような気がしてくる。
 ヴィクトル騎士団長が、座る私の隣に跪く気配を感じた。
「ダリア嬢、気持ちが良さそうだな……どれ、俺も……」
 そう言って、二人して水の中に手を浸けていると、なんだか溶けていって同質化していくような不思議な気持ちがしてくる。
 そっと水の中から抜け出すと、ヴィクトル騎士団長からいただいたハンカチーフで水を拭った。シルクで出来た布地に、薔薇の刺繍が施された愛らしいデザインのものだ。
(どんな顔をして、いつも買ってきてくださっているのかしら……?)
 彼の精悍な横顔をぼんやりと眺めてしまっていた。ふっとこちらを振り返った彼が破顔する。
「ダリア嬢、また俺の顔を眺めてたな」
 図星を指されてしまったし、やっぱり頬が赤らんでいくのが分かったけれど、視線はそらさないでいられた。
「領主からうかがいました。父や私のために本当にありがとうございます」
「いいや、別に皆のためなんてことじゃあないさ」
「でしたら……なぜ……」
「そんなの決まってるだろう? 貴女の気を惹くためにだったら、俺は何だってやるよ」
 彼の言葉の一つ一つが気恥ずかしくて仕方がない。
 落ち着かない心臓の高鳴りをなんとか抑えながら、私は彼に伝えた。
「そういえば、ヴィクトル様にいただいた指輪ですが……」
「なんだ?」
「海外から輸入された、とても希少な鉱石です。その……お父様からお母様にプレゼントしたものなのでしょうか?」
 すると――。
「知らない」
「知らない、のですか?」
 あっさりとした返答があった。
「ああ。だって、俺は、父親の顔を知らずに育ってきたからな」
「え?」
 湖面に映る彼の表情は、いつものように飄々としていて、いまいち感情を読み取ることが出来なかった。
「そういえば、ダリア嬢は、俺のことを知らないって気にしてたな」
「気にならないと言われれば、嘘になります……」
「だけど、貴女に聞かせても不快に思う内容かもしれない。それでも良いんなら、話をしても良いがな……」
「私も醜態を散々晒してきたので、今更気にならないかと……」
「そうかい……」
 凪いだ湖面を眺めながら、ヴィクトル騎士団長は口を開いた。
「じゃあ、また今度な」
 憂いを帯びた表情を浮かべる彼が、こちらを真っすぐに見つめてくることはない。
 相手の領域に踏み込みすぎるような発言をしてしまったかもしれない。
「ごめんなさい……あまり言いたくない過去に触れるような真似を……」
「いいや、貴女になら、どれだけ触れられても構わない……」
「だけど、私は……いつも自分のことしか考えられなくって……」
 俯いていると――彼の大きくて無骨な手が、私の手にそっと重ねられる。
「……ヴィクトル騎士団長……」
「……ダリア嬢……だったら……」
 彼の凜々しい顔がそっと私の方へと向かってくる。
 そうして――。
 唇同士が触れ合う。
 初めての夜の時のように、無理に暴かれるような激しいものではない――優しい優しい長いキス。
 そっと離れると、二人の間に穏やかな風が流れていった。
 だけど、妙に身体は火照ってしょうがない。
「俺に慈悲を与えてくれないか……?」
 彼の両手が私のうなじを掴んだかと思うと引き寄せられ、深く舌をねじ込まれる。
「……っあ……」
 何度も唇を貪られた後に彼が離れると、熱い吐息が冷気の中に溶けていく。
 同じ動作を何度か繰り返されている内に、女性の芯がだんだんと疼いてきてしょうがない。
 ゆっくりと唇が離れると、二人の間に銀糸がかかる。それを彼が舌で拭う動作が、あまりにも艶めかしく移って、下腹部がきゅうっと疼いてきた。
「すまない……ここで貴女のことを貪ってしまいたが、貴女に最高の二度目を与えてあげたい。だから、ここで留まることにするよ」
「あ……」
「物足りなかったか?」
「いいえッ……! そんなことは」
 真っ赤になりながら、両手をぎゅと握りしめつつ、返答した。
「ああ、貴女は本当にからかいがいのある女性だ――じゃあ、帰ってから続きだ」
「…………」
 なんだか気恥ずかしくて相手の顔が見れなかった。
 そうして、また馬の背に乗る。
 帰りの風がとても気持ちが良かった。
(ヴィクトル騎士団長となら、幸せな結婚生活を送れる気がする……)

 ***

 そうして、帰り着いた後、二人で湯浴みもそこそこに、口づけ合い、舌を絡ませ合いながら、私の部屋の白いベッドの中へと雪崩こんだ。
「ふあッ、ああッ……」
「綺麗だ……ほら、もっと俺に、貴女の悦ぶ顔を見せてくれ……」
 息継ぎも出来ないほどに深い口づけを施されながら、ドレスを剥ぎ取られていく。
 ドクンドクンドクン。
 初めての時とは違う、相手への期待に胸が高鳴っていき、勝手に頬が紅潮していく。
「今度はこの間よりも丁寧に抱くから……」

 寝ころんだ私の体の上に跨ったヴィクトル騎士団長が、性急な口づけを繰り返してくる中、長くて硬い指がシュミーズの肩紐に伸びてきた。なだらかな肩の上をしゅるりと落とされると、同年代の女性達よりも豊満な乳房がふるりと顕わになる。
 最初の時とは違う、彼の視界に映る自身の姿が綺麗であってほしいという思いが色濃く反映しているのかのように、真っ赤に染まった尖塔が求める彼の方へと向いていた。きめ細かな肌の上を、滑らかなシュミーズが、くびれた腰、臀部、太腿の上を滑り落ちていくと、生まれたままの姿になった。
「……あっ……」
「ああ、本当に綺麗だ……こんなに綺麗な花は見たことがない……」
 そう言いながら、服を全て脱ぎ捨てた彼が、私の身体の上に前進した後覆いかぶさるように乗り上げてきた。
「透き通るように白い肌……俺だけの色で染め上げたくなるな……」
そうして、彼の唇が鎖骨の上に落ちると、白い肌の上に赤い花びらが散りはじめる。
「あ……ん……」
 彼の熱のこもった唇が肌に触れるたびに、全身がピクンピクンと跳ね上がった。
「俺を誘う紅い果実も、触れただけでよがる腰も、俺に反応して跳ねる脚も――全部、全部、俺だけが知っている……」
 熱い吐息に言葉を乗せながら、彼が口づけを施してくると、今までに感じたことがないほどに気持ちが高揚していく。恥ずかしさの中、もっと彼に触れてほしいという思いがないまぜになり、どんどん昂ぶっていく。
 全身にくまなく口づけを落とされた頃には、すでに蜜口は潤い蜜を溢れさせているではないか。その中へと長い指をゆっくりと差し入れられると、狭穴を丹念に弄られていく。
「あっ、やあ……そこは……」
「この間、俺が無理に挿れた後の傷は、ちゃんと塞がっているな……」
「あ……あんまり、そこを弄らないでッ……んんっ……」
 けれども、彼の指は的確に気持ちが良い場所触れてトントンとつついていくるものだから、ビリビリと全身に快楽が駆け抜けていく。
「こんなに気持ちが良さそうなのに、か……?」
「あっ……」
 クスリと笑われると、羞恥が走る。彼に触れられたくてたまらない身体は、正直に蜜を溢れさせていた。気取られぬように、思わず顔を背けてしまう。
「そんなこと、言わないでくださいませ……」
「はは、悪かったな。部下に対してもそうなんだが……俺って、可愛いやつほど、いじめたくなる性なんだよな……」
 膨れ上がった芽に、剣蛸の出来た指が触れてくると、ビクンと全身が跳ね上がった。
「あッ……そこは……もっと、ダメッ……」
「本当にダメなのか? こんなに真っ赤に膨れ上がらせて、俺のことを誘ってきているが……」
 芽に何度も触れられると、芽が拡充していくのが自分でも分かってしまう。じんじんと口に気持ち良さを感じると、勝手に腰がよがって落ち着かなくなる。
「ああッ、やあッ、ダメッ、ダメなんですッ……あッ、あ……」
 彼の長い指が肉壁を弄ると同時に、芽を同時に弄られてしまい、断続的に喘ぐだけになってしまう。両脚が勝手にだらしなく弛緩してしまうけれど、足先には力がこもってしまった。しばらく弄られていく内に、頭の中がどんどん白んでいく。
「ふあッ、はッ、あッ、あ……ダメだって……言ってっ……」
「ああ、そろそろイキそうだな……」
「ああっ……!!」
 白い光が弾けると同時に、腰から頭や爪先まで、全身に快楽が駆け巡っていった。
 ビクビクと全身を戦慄かせている間、荒くなった呼吸を整えていると、ギシリとベッドの音が鳴る。同時に、心地よい拾うに包まれている私の身体の上に、柔らかな重みが重なってくる。
「……ダリア嬢、そろそろ俺も……我慢の限界だ……」
 熱を帯び膨張しきった杭が、蜜溝の上をヌルヌルと蠢く。
 前回の時よりも、彼を求める気持ちが増すのに同調してか、愛蜜が溢れて止まらない。
(この間は――私は、どうしていた……?)
 初めての時、無我夢中で彼にしがみついていた記憶しかない。二度目になるが、彼に自分がよりよく見えていてほしいと願ってしまう。
 荒くなった呼吸を整えながら、潤んだ瞳で相手を見据える。
「あ……」
「さて、良いか……?」
 前回は確認もそこそこに挿入されたというのに――今回はしっかりと確認をされた。
 ――早く彼と一つになりたい。
 ――彼とまた繋がって結ばれたいという思いが、浮上しては消えていく。
「は……い」
 こくりと頷くと、相手が喜色を浮かべると、彼の唇が近付いてきて、私の唇に一度だけ触れた。離れると、彼が蕩けるような微笑みをこちらに向けてくるものだから、きゅうっと女性の芯が疼く。
「ああ、また入れるなんて、幸せだな……挿くぞ……」
「あっ……!」
 荒ぶる獣の先端が、再び蜜池の中を蹂躙しはじめた。
「ああっ……!」
「今日も、えらく締まってくるな……俺としたことが、こうも手間取るとはな……」
そうは言いつつも、相手の猛攻は留まることを知らない。前回は痛みの方が強くて仕方がなかったが、彼に貫かれながらも、もっと奥に来て深いところで繋がりたいという思いが強く、気持ち良さの方が勝った。
「ふあっ、ああっ……」
「ほら、ちゃんと呼吸しな……そうだ、落ち着け……」
 そうして、最奥へと彼の分身が到達する。
 ヴィクトル騎士団長がはっと息を吐いた。
 膨張した質量に蜜道が圧迫され、下半身が全て彼に支配されてしまったかのような感覚に陥ってしまう。
 同時に、繋がっている場所から幸福感が拡がっていくような気がしてくる。
「また繋がることが出来た……本当に幸せだ、ダリア嬢」
「ヴィクトル騎士団長……」
 すべての指を絡められると、相手の熱が伝わってくる。
 何度も口づけを落とされる内に、じんわりと胸の内から全身へと温かさが拡がっていく。
「動くぞ」
 彼の熱杭が蠢き、何度か揺さぶられる。前回は貫かれた後、意識を失ってしまった。けれども、今度は目覚めていて、彼の動きを全身で感じた。
 今までに感じたことのない熱量と、突き動かされる衝撃とで、どんどん高みに昇りつめさせられる。
「ああっ、あっ、あ……ああっ……」
 彼の動きについていくので必死だ。痛みよりも、どうにか相手に応えたいという思いで必死に揺さぶりを受け入れていく。
内腿に力が入り、彼の象徴を締め付けた。
「締まるな……なあ、もっと、本当の貴女を、俺に見せてくれ……」
 そうして、彼に抱き寄せられたかと思うと、ぐるりと視界が反転した。
「あ……」
「こっちの方が、貴女の顔がよく見える――綺麗な貴女の顔がね……」
 互いに抱きしめ合う格好になった。
「ヴィクトルっ……あっ……」
 唇を塞がれると、口中にねじ込まれた舌で何度も何度も犯される。ぞくぞくとした感覚が全身を駆け抜けては消えていく。
(はしたないと思われるかもしれないけれど……もっとヴィクトル騎士団長とこうしていたい……)
 彼が言った通り、相手の表情がよく見えるし、より深く繋がっていることを実感出来た。
「今日は痛くないか?」
「はい、大丈夫です」
 髪を撫でられながら、労りの言葉をかけられると、彼の優しさを感じて、頬が勝手に緩んでしまう。
「良かった」
 しばらく啄むような口づけを何度も交わし合った。
「また動いても良いか?」
 彼の言葉を受けて、私は思わずキョトンとしてしまった。
「この態勢で動くのですか……?」
「ああ、そうだ」
 どうなるのだろうかと疑問に思いつつ、私はコクリと頷いた。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
 そうして、彼が腰を揺らし始めた。下腹の中心から脳髄まで一気に痺れが駆け巡る。座った体勢のまま、下から何度も突き上げられ、女性の象徴を何度も獣に揺さぶられた。

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