仮初の婚約者は冷徹従者に深愛を捧げられる
著者:椎名さえら
イラスト:木ノ下きの
発売日:2023年 9月29日
定価:630円+税
アレクサンドラは、病弱な母と暮す貧しい花売りだ。
いつものように花売りをしていた彼女のもとに眉目秀麗な青年グラントが花を買いに訪れる。
印象的な出会いを通し、アレクサンドラはひそかに彼に心惹かれる。
そんなある日、アレクサンドラの元に一人の男が訪れた。
彼曰く、アレクサンドラが生まれた時から持っているネックレスは有力貴族であるベッケル公爵家の落し胤の証らしい。
母の治療費のためにまとまった資金が必要なアレクサンドラは、ベッケル家に取り次ぐ代わりにオークニール伯爵の『仮初の婚約者』になれと迫られる。
そしてオークニール伯爵家で従者として紹介されたのは、心を寄せていたグラントで……!?
さらにオークニール伯爵は、グラントに「閨の教育」をするよう命じる。
どんなときでも彼は優しく、またアレクサンドラを気遣って閨教育も座学で行うことに。
冷徹にも見える表情とは異なり、彼の心が暖かいことを知ったアレクサンドラはますます思いを募らせる。
そしてアレクサンドラに恋人が居ないと知ったグラントが、彼女を引き寄せてキスをして――。
【人物紹介】
アレクサンドラ
病弱な母と二人で支え合いながら生きてきた、可憐な花売りの少女。
どんな時も笑顔を絶やさず、周りを気遣う優しい性格。
一度だけ客として訪れたグラントと、ある日運命的な再会を果たして……!?
グラント=オークニール
凛とした雰囲気をもつ、眉目秀麗な青年。
元々伯爵家の跡継ぎだったが叔父に家督を奪われ、現在は従者として勤めている。
普段は冷徹だが、アレクサンドラには笑顔を見せることも。
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【試し読み】
指定された時刻にオークニール伯爵家を訪れると、すぐに応接間に通された。
アレクサンドラが貴族の屋敷に足を踏み入れるのはこれが初めてのことだ。さすがに邸宅はアレクサンドラの家よりも広く、豪華にも思えたがその実、家具はそこまで新しいようには思えなかった。
ソファに座ると、しばらくしてウルリスが男性を連れて入ってきた。男性は焦げ茶色の髪に薄い緑の瞳で、顔立ちは整っているが、シャツははだけているしあまり清潔そうな印象を与えない。
年の頃は三十代半ばくらいだろうか。
男性は気だるそうな態度で、アレクサンドラの対面にあるソファに腰かけた。
ウルリスが、ぼんやりと視線を送っていたアレクサンドラをどやす。
「ブライアン=オークニール伯爵だ。おい、ぼけっとしていないでソファから立って挨拶しろ」
ブライアンが寛大なふりをしてウルリスを諌めた。
「かまわん。平民なんだから、しょうがない」
平民、という言い方に侮蔑が見え隠れした。アレクサンドラはスカートをぎゅっと握りしめる。
「まぁお前がそう言うならいいがな」
ウルリスがぶつくさ言いながら、ブライアンの隣に腰かけた。
「それでカーヴェイ、この娘が?」
顎でしゃくるようにブライアンがアレクサンドラを示した。
「ああ、間違いない。ベッケル公爵の落し胤のはずだ」
ブライアンがアレクサンドラの顔をじろじろとためつすがめつした。
不躾な視線に、彼女は思わず小さく身をすくめてしまう。ブライアンがふんと鼻を鳴らす。
「ベッケル公爵にはあまり似ていない気がするが、顔立ちは確かに悪くないな」
「かなりの上玉だろう? それに僕が信頼している情報屋がこの娘がベッケル公爵の落し胤だと太鼓判を押してるから間違いない」
「そうか」
「一番の決め手はこの娘が持っているネックレスだ」
ネックレス、という言葉に反応して彼女は小さく身体を震わせた。
確かにアレクサンドラは今までネックレスの存在をとりたてて隠したことがなく、常連客であれば彼女がそれをつけていることは知っている者もいる。
それが誰かの目に止まって、こうして情報として売られてしまったのだ。そのことにアレクサンドラは混じりけのない恐怖を感じた。
(こわい……)
「娘」
ブライアンがアレクサンドラを呼ぶ。
「お前がベッケル公爵の落し胤だと認めさせられれば、大金が手に入る。私たちが仲介するが、心配せずともお前にも取り分をやる。間違いなく、お前が一生かかっても稼げない額だ」
ブライアンはそこで酷薄そうな笑みを浮かべた。
「ただし、条件がある。お前には私の婚約者になってもらう。カーヴェイが相手でもいいが、残念ながら彼はもう妻帯者だからな」
アレクサンドラは目を見開く。
(こん、やくしゃ……? なにを……言って……?)
一瞬で青ざめたアレクサンドラをウルリスが鼻で笑った。
「まさか平民風情で本当の婚約者になれると思ってないよな? 偽装婚約だよ」
「ぎそう、こんやく……?」
震える声で呟くと、ブライアンが頷いた。
「ああ。要は、我が家に利のあるようにしてもらわないといけないからな。お前が当主である私の婚約者であれば、ベッケル公爵もオークニール家に金を払わずにいられない、というわけだ」
ブライアンが続けるにはオークニール家は資金難でこのままだと家督の存続も難しいかもしれない状況なのだそうだ。
「無事にベッケル公爵から金をせしめたら、しかるべきのちに〝婚約〟を破棄したと周囲に知らしめるつもりだ」
続きをウルリスが引き取った。
「だからこれはお互いに利のある話だと言ったろう? オークニール家の経済状況も助かり、お前も金が手に入るから母親にまともな治療を受けさせることができるぞ。薬だっていくらでも買えるだろうしな」
「――!」
当然アレクサンドラの今の状況を調べただろうから、内情を知っていてもおかしくはない。
アレクサンドラの脳裏を母の笑顔が過ぎった。
(私が少し我慢したら……、お母さんを助けることが出来る……? でも本当にお金をくださるのかしら)
目の前の男たちはちっとも信用できそうにない。
だが、彼らがアレクサンドラを利用して金を得ようとしているのは間違いない。だから少なくとも、彼女のことを必要とはしている。
その日暮らしのアレクサンドラにとって、まとまった資金を得ることができて母の治療にあてることができるのは、何よりの望みだ。
アレクサンドラが躊躇っていると、ウルリスが冷たく言った。
「何か勘違いしているようだが、お前に選択権はないぞ?」
それは昨日の去り際に彼が吐き捨てた脅しのことだろう。
(――お母さん……!)
アレクサンドラは俯くと、ぎゅっと目をつむり、それから微かに頷いた。
「ったく手こずらせる。庶民が望外な金をもらえるってのに何を躊躇うことがあるんだ」
ウルリスがぶつくさと吐き捨てた。
「いいじゃないかカーヴェイ。おかげで私たちも助かるのだから」
「まぁな……。そういえばバルバラ嬢のお怒りは解けたのか?」
「ああ、この前グラントに花を買いに行かせたからな。あれで一発だ。女ってのは単純でいいよな」
二人はまるでアレクサンドラがいないかのように話し始める。しかもその内容から察するに、ブライアンにはバルバラという恋人がいるらしい。
(それなのに私を婚約者に仕立てあげるなんて……!)
彼女は俯いたまま、小さく震えていた。
「そろそろグラントが来るだろうから、この娘の世話はあいつに任せよう」
「グラントに生娘の世話なんて出来るのか?」
「出来なくても、させる」
ブライアンが吐き捨てると同時に、ノックの音が部屋に響き渡った。
「入れ」
扉が開く音がして、足音が聞こえた。アレクサンドラは顔をあげることができなかったが、その人物はソファには腰かけず、途中で立ち止まる。
「お呼びですか」
その声に既視感を感じ、アレクサンドラはまるで誘われるように顔を上げると、そのまま固まった。
(この人は……!)
短めの黒髪と焦げ茶色の瞳。あの時よりもずっと冷たい表情であるが間違いなく――。
「グラント。お前に大事な仕事を任せようと思ってな」
「大事な仕事、ですか?」
グラントと呼ばれた彼は表情だけではなく、声にも温度が感じられない。
「我がオークニール家の将来にまつわる大仕事だ」
にやりと笑ったブライアンの前に立っているのは――あの日、スズランを渡した男性だった。
「この娘の教育だよ」
そういってブライアンがアレクサンドラを指さす。こちらに顔を向けたグラントと視線がぶつかると、彼が息を小さく呑みこみ、瞳が微かに見開かれた。
(貴方も、覚えて、くださっている……?)
とくん、と鼓動が高鳴った。
けれどグラントはそれ以上余計なことは何も言わず、ブライアンへと視線を戻した。
「この女性の、教育ですって……?」
「そうだ。お前もベッケル公爵の落し胤がこの街のどこかにいるという噂話を聞いたことがあるだろう? それに公爵がその娘を見つけ次第、大金を支払うと周囲に話していることを」
みるみるうちにグラントの口元が引き締まっていく。
「カーヴェイは優秀でな、ベッケル公爵の落し胤を見つけてくれたんだ――それが彼女だよ。なぁ、カーヴェイ?」
ブライアンに指さされて、アレクサンドラはびくりと身体を竦めた。
「ああ、間違いない。顔立ちもベッケル公爵の面影があるし、年齢もぴったり合う。何よりベッケル公爵が渡したとされている紋章入りのネックレスを持っていたのだ! 僕の情報網は素晴らしいだろう?」
何が面白いのか、ブライアンが大袈裟に手を叩いて笑う。
「はは、上等だ。そんなわけでグラント、彼女がこれから私の婚約者となる」
婚約者といった言葉が出ると同時にアレクサンドラは俯き、スカートをぎゅうっと握りしめる。
「婚約者、ですか……?」
グラントの声には困惑が混じっていた。
(そうよね、いきなり婚約者だなんて……! 私が乗り込んだと思われてもおかしくないもの……!)
たった一度きりの邂逅ではあったが好ましい印象を抱いていた男性に浅ましいと思われるかもしれない。けれどどうすることもできなくて、ますます強くスカートを握りしめるしかなかった。
「彼女を婚約者にするだけで、我が家に大金が転がり込むんだ。このみすぼらしい格好を見たら分かる通り、庶民だがな」
「オークニール、それは言ってやるなよ。器量は悪くないだろう」
ウルリスが笑いを含んだ声で一応は咎める。
ブライアンもそこで話がずれていることに気づいたらしく、小さく咳払いをした。
「ただ単に、契約上の婚約だ。目的達成したらすぐさま破棄する」
「本当に婚約破棄をするのでしょうね?」
訝しげなグラントの声がした。
「当たり前だろう? 私はもっと性的魅力にあふれる女性が好きだからね。こんな棒のような身体の娘、こちらから願い下げだ。なんでそんなことを聞く?」
「後で利用価値が出てきた、などと言われて気を変えられたら、彼女に申し訳ありませんから」
(彼女に……申し訳ない……?)
そこにはアレクサンドラを気遣う響きが感じられ、俯いたまま彼女は目を見開いた。
「うるさいな。この私が約束すると言っているんだ。それ以上何を求める?」
煩わしそうにブライアンが手をぞんざいに振った。
グラントが小さくため息をついたように思えた。
「その言葉を忘れないでくださいね」
「しつこい――それから、彼女の面倒はお前がみろ」
「は?」
グラントが呆気に取られたような声を出し、さすがにアレクサンドラも驚いて顔をあげた。
「察しが悪いな。お前が彼女の従者として働け」
「え、俺が、ですか……? ですが女性には女性の側仕えがつくのが普通で……」
ブライアンが舌打ちをした。
「他の側仕えをつけて秘密が漏れたらどうする。そうだ、お前の部屋の隣で寝起きさせろ」
「俺の部屋の隣ですか?」
「ああ。誰か入っていたら出せばいい。とにかくお前が責任を持って四六時中監視しろ」
「ですがそれでは使用人が気づいて、噂になっては問題かと……」
「うまくやれば大丈夫だろう。そもそも、そういった問題をなんとかするのがお前の仕事だろ」
完全に突き放したような口調だった。
諌めたグラントに対し、ブライアンは聞く耳を持っていないといった様子だ。
無理難題をつきつけられたグラントの表情には諦めが見え隠れしているように思えた。
(彼はオークニール様の側仕えなのかしら……? それにしてもいつもこんな感じなのかしら。なんて……傲慢な……)
そこへノックの音が響いて使用人がバーカートにお茶を積んで入ってきたが、ブライアンは酒を持ってくるように言いつけている。その隣でウルリスはジャケットから嗅ぎ煙草を取り出して、火をつけた。
使用人が出ていくと、ブライアンが再び口を開く。
「それからこの娘に貴族教育をする必要があるから、お前がしろ。秘密厳守だから家庭教師は頼むなよ」
嗅ぎ煙草を吸いながらウルリスがにやにやと笑っている。
グラントは言葉を失ったかのように立ち尽くしてブライアンを見下ろしている。
「いいか、とにかく貴族令嬢に見えるように仕立て上げろ。そうだな、期限は半年やる。私たちはその間にベッケル公爵に面会を申し込む手段を考える」
「……かしこ、まりました」
しばらくしてからグラントが承諾した。
ウルリスが面白がっている様子を隠そうともしないで、ブライアンに尋ねる。
「閨の教育はどうするんだ? 平民だからもう生娘ではないかもしれないがね」
「ああ、そんなことは考えてもいなかったな。だが確かに貴族の夜会で生娘らしく振る舞われるのも興ざめではあるが」
あまりにもあけすけな話題に、アレクサンドラの身体が羞恥で熱くなる。
(閨の教育……!? 仮初の婚約者なのにこの方たちは一体何を……!)
「グラント、閨の教育もちゃんとしておけよ。万が一彼女が他の貴族に連れ込まれる――こともないとはいえないだろうから、その時にボロが出ないようにしておけ」
(えっ……!?)
アレクサンドラはブライアンの言葉が信じられなかった。
「もちろん座学だけじゃなくてね」
ウルリスがうまそうに煙草を吸いながら、付け加えた。
「そうだ、もちろん座学だけでは駄目だ。堅物のお前が閨教育をするなんて見ものだな」
「童貞に閨教育が最後までできるのか楽しみだ」
二人はにやにや笑いながら、グラントを見上げている。普通だったら尊厳を傷つけられてしまいそうな低俗な言葉だったが、グラントの表情は微動だにしていない。
「承知いたしました」
その静かな口調には諦めと覚悟が見え隠れしているように感じられた。
***
アレクサンドラは今度こそ顔を真っ赤にして口をつぐんでしまった。
グラントは身を起こすと彼女を引き寄せ、唇を奪う。
最初の日は呼吸が出来なくて倒れかけてしまったアレクサンドラも今では彼に身を預けられるようになった。口づけは自然と熱を帯び、やがて舌を絡め合う深いものになる。
彼女がぎゅっと彼に抱きつくと、グラントの身体が震えた。
そこでグラントがぱっと顔をあげ、アレクサンドラから少しだけ距離を取った。
突然解放されて、まだ息が整わない。荒い呼吸の合間に彼の謝罪を耳にした。
「すまない」
アレクサンドラは何度も首を横に振った。
「閨の練習だというのに、夢中になってしまった」
「……ええ」
(でもそれは、私も……)
「俺はここで――」
言いかけたグラントが突然黙りこんだ。
『グラントはまさか接吻だけで終わらせていないだろうな』
(あの声は……!)
ブライアンとウルリスが笑いながらこの部屋に向かっているようだと気づき、アレクサンドラも身をこわばらせた。
『ちゃんと出来てなかったらどうするんだ?』
『そりゃ罰を考えなきゃな。水責めでも鞭打ちでもいいな』
どこまでが冗談でどこまでが本気か分からない。
(グラントさんが、私のせいで怒られちゃう……!)
咄嗟にアレクサンドラは彼を引き寄せた。
「お願い、もっと、してください」
耳元に囁くと、抱きついている彼の身体がさっと熱くなったのを感じた。
「私は大丈夫ですから……!」
グラントが口元をさっと引き結び、頷いてから彼女を抱き上げてベッドに押し倒した。
「サーシャッ……!」
彼がのしかかってきて、唇を奪われる。
「んっ……、ふっ……」
声がもれてしまい、恥ずかしくなる。だが、ブライアンたちに聞かせた方がいいのだと思って、アレクサンドラはその恥ずかしさに耐えた。
彼の手がおずおずと彼女の乳房の上に置かれ、ゆっくり動かされる。
「あっ」
服越しの接触だったが、アレクサンドラはびくんと震えてしまった。すると彼が手をぱっと離したが、大丈夫、と口の動きで続けた。
微かに頷いた彼の手が戻ってきて、躊躇いがちにそっと乳房をなぞる。
貴族令嬢のような何層にもなっているドレスではないため、彼の手の動きを如実に感じた。
「んっ……」
乳首を掠めたときに彼女が思わず声をあげると、グラントが再び手を離そうとした。
アレクサンドラはその手を掴むと、再度自分の胸に置いた。
「『閨の練習』ですから、どうぞ、もっとしてください」
(これは、グラントさんのためだもの)
覆い被さっている彼の背中に両手を回して抱きつく。グラントの身体がぴくりと震えた。
「……、すまない」
「……!」
グラントの手が彼女のスカートをたくし上げて、中に入ってくるとゆっくりと太腿を撫で上げられる。
「あっ……」
薄いストッキングを履いているだけだから、彼の手の熱さを感じる。それから、骨張った彼の手の大きさも。
アレクサンドラは彼の顔を引き寄せ、その唇を求めた。グラントの唇がすぐに彼女のそれを蹂躙し始める。
その間も彼の手は彼女の太腿を熱心にまさぐっている。
「ん、っ、あっ……」
「……サーシャ……」
キスの合間に、彼の掠れた声が響くと、アレクサンドラの奥がじゅんと濡れた。
「気持ちいいか……?」
グラントに尋ねられ、彼女はうんうんと頷く。
(ああ、もっと触って、欲しい……)
アレクサンドラは熱に浮かされつつある頭でそんなことをぼんやり思った。
「――!」
太腿に、彼の固くなっているものが押し当てられていることに彼女は気づいた。
(グラントさんも、興奮している……!?)
「……っ、申し訳ない!」
グラントが気づいたのか、さっと身を起こそうとした。そんな彼を彼女は咄嗟に引き寄せる。
「お願い、もっとして」
ねだるように呟くと、グラントの瞳にけぶるような熱が灯った。
「だが……怖くないか?」
「ええ」
アレクサンドラの顔色を真剣に見下ろしていたグラントが、しばらくして囁いた。
「サーシャ、触るぞ……?」
彼の手がそっと彼女の秘密の場所に忍びこむ。
「下着の上からでも濡れている……良かった」
彼の指がこすりあげるように上下の動きをすると、待ち望んでいた刺激にアレクサンドラは声を上げた。
「あっ、あん、あっ……」
布地の上からの愛撫がもどかしい。
(ああ、もっと、もっと欲しい……!)
グラントを見上げると、頬に赤みが差し、彼がとても興奮しているのが伝わってきた。
彼女はグラントを引き寄せ、再び深いキスを交わした。舌を絡めあいながら、ぴったりとくっつく。
彼女の秘所に、グラントの硬いものが押しつけられる。お互いに着衣のままで、布越しだというのに、興奮のあまり身震いした。
「んっ、ん……グラント、さん……!」
「サーシャ……!」
グラントの荒い息と、情欲に満ちた声にますます気持ちが高まる。