仮面夫婦から淫靡で甘い夫婦になるまで
著者:有允ひろみ
イラスト:つきのおまめ
発売日:2022年 6月24日
定価:620円+税
ホテル「オーキッドリージェンシー東京」の営業企画部で働く沙耶は、会社のCEOである賢人と利害の一致から偽装結婚をしている。
甘くはないが快適な結婚生活を送る二人だったが、沙耶は賢人に女の影を感じ、嫉妬している自分に気付いてしまう。
一方、賢人も沙耶が自分の中で大切な存在になっていると感じていて――。
「沙耶がこんなに淫らな子だとは思ってもみなかったな。……本当に可愛い……」
いつしか本当の夫婦のように愛し合うようになった沙耶と賢人。
しかし、そんな二人の仲を壊そうと画策する人物に、沙耶の心はかき乱されて……!?
【人物紹介】
一之瀬沙耶(いちのせ さや)
ホテル「オーキッドリージェンシー東京」の営業企画部で働くOL。
利害の一致から賢人と別居婚をした。
家事が苦手のためハウスキーパーを雇っている。
一之瀬賢人(いちのせ けんと)
ホテル「オーキッドリージェンシー東京」のCEO。
沙耶との結婚生活に満足しているが……。
趣味は料理で、その腕はプロ級。
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【試し読み】
今日は、なんだかいつもとは違う雰囲気がするのは気のせいだろうか?
もしかして、賢人を男性として意識してる?
沙耶は自問しながら、乱れた髪の毛を耳の後ろにかけた。
「ごめん。ありがとう」
「どういたしまして。金曜日だし、ゆっくりしたらいい。それとも、明日は何か予定が入ってる?」
「ううん、何もない。最近週末もバタついてたし、今週は予定入れなかったの」
「そうか。……よかったら、泊まってもいいしね」
何気なくそう言われ、図らずも心臓が跳ねた。
「うん、そうだね」
軽い感じで答えたものの、にわかに頬が熱くなり、それとなく下を向いて唇を噛む。
(ちょっ……何をドキドキしてるのよ。泊ったとしても寝るのはゲストルームに決まってるでしょ)
その部屋は、以前受験生だった彼の甥っ子が一時的に同居していた時に使っていた部屋で、ベッドもある。
それはさておき、ソファに座り直したあとも賢人の手はいまだ沙耶の肩に回ったままだ。
意識した途端、身体に緊張が走った。
急にどうしたのだろう?
我ながら不思議に思っていると、賢人が僅かに座る位置を動かして距離を縮めてきた。
腕に厚い胸板があたり、彼の体温をより身近に感じる。今まで、これほど近くに彼を感じた事などなかった。
焦る気持ちを悟られたくなくて、沙耶は咄嗟に思いついた話題を口にした。
「そ、そうだ。ついでに話しておくけど、私、少し前に駅前通りにある婦人科に行ってきたの。祖母に言われたからってわけじゃないけど、毎年の健康診断のついでに。そしたら、再検査になっちゃってね。調べたらちょっと卵巣の機能低下がみられますって言われたの」
「卵巣の機能低下?」
賢人が沙耶のほうに若干屈み込んだ姿勢になり、顔を覗き込んできた。
「うん。もともと毎月のものの周期が乱れがちだったんだけど、それがひどくなった感じかな。特に細胞異常とかないし、たぶんストレスが原因なんじゃないかって。症状が出てるわけじゃないから、とりあえず漢方を処方してもらって飲んでるの」
話を聞いた賢人が、沙耶を気遣うようなしぐさをして表情を曇らせる。
「ストレスか……。それは主に職場でのものだよな。ごめん、沙耶。僕がもっと早く対処できてたらよかったんだが……」
賢人が言うには、彼は会社の古く悪しき慣習や考え方について、入社当初から問題視していたという。それを改善すべく人事面での改革を行おうとしている最中だが、副社長一派の反対があり、思った以上に時間がかかっているのだ。
「夫でありながら妻を守れないなんて、男として最悪だ。……やはり、もっと強気に出る必要があるな。そうでないといつまでたっても体制を変えるための第一歩を踏み出せない」
話しながら、賢人が険しい表情を浮かべた。それと同時に、沙耶を抱き寄せる腕にも力が入る。
「週明けにでも社長と話してみるよ。もう少し待っててくれ。必ずいい方向に向かわせてみせる」
社長は革新派ではあるが、穏健なやり方を好むらしい。改革が遅れているのは、そのせいもあるのだ。
「賢人……。私なら大丈夫だから、あんまり無理をしないで」
まさか彼がここまで憤るとは……。
沙耶は少なからず驚いて、彼を宥めた。
「いや、そうはいかない。だけど、心配しなくてもゴリ押しはしないよ。そんな事をすると、頑固者達が余計頑なになるだろうしね」
一変して優しい声を出され、安堵してホッと胸を撫でおろす。以前賢人に聞いたところによると、副社長は陰であまりよろしくない人達とのかかわりがあるらしい。ただでさえ社長の盾になって副社長一派と攻防を繰り広げている賢人に、これ以上矢面に立ってほしくなかった。
「約束ね」
「ああ、約束するよ。それはそうと、身体は大事にしないと……。ストレスもだけど、食事面にも気をつけないとな。朝晩ちゃんと食べてるか? 忙しいからって昼を抜いたりしてないだろうね?」
「うん、まあ……。朝はコーヒーだけだったりする時もあるかな……。昼もたまに食べ損ねたり……。夜は疲れてると食べる前にお風呂入って、そのまま寝ちゃったりするかも――」
「沙耶、ちゃんと食べないとダメだ」
話している途中で背中を引き寄せられ、賢人と正面から目を合わせた。
「わ、わかった。食べます。ちゃんと食べる」
「本当か?」
「本当に。ふふっ……賢人って、お母さんみたいな事言うんだね」
「誰が、お母さんだ。大事な妻がロクな食生活を送っていないと聞いて、黙っていられるわけないだろう」
「えっ? ……大事な妻って……」
そんなふうに言われ、胸がドキッとした。
今までのクールな関係はどこへやら――二人の間が急接近した感じだ。
「結婚のきっかけはどうあれ、僕にとって君は大事な妻には違いない。夫婦だし、いろいろと心配するのは当たり前だ。そうだろう?」
見つめられ、心臓が早鐘を打つ。
いつもとはまるで違う魅惑的なまなざしに、沙耶の胸は甘い緊張で破裂しそうになっている。
「それはそうだけど――んっ……」
ふいに強く抱きすくめられ、唇にキスをされる。驚いたのも束の間、たちまち身体中が熱くなり、肌が熱くざわめきだす。
いったい何が起こったのだろう?
気がつけば沙耶は賢人の背中に手を回し、キスを返していた。
「沙耶……」
ほんの数センチ先に見える賢人の目が、こちらに問いかけてくるように細くなった。
いつしか二人の舌が絡み合い、身体の密着度が増すばかりになる。
賢人の指がブラウスの上からブラジャーのホックを外した。すぐに裾を捲られ、賢人の手が沙耶の左乳房を揉み込んでくる。
「あっ……!」
重ねた唇の隙間から声が漏れ、喘ぎながら首を仰け反らせた。首筋に舌を這わされ、ブラウスの前をはだけられる。賢人が片手でネクタイを緩め、それを待っていたかのように沙耶が彼のシャツのボタンを次々に外していく。
そのまま二人して床に敷かれたラグの上に倒れ込み、互いの唇を貪りながら着ているものを脱ぎ散らかす。脚を開き仰向けになった沙耶の上に、賢人が覆い被さってきた。
「ひぁっ……! あ、あああんっ、あんっ!」
左胸を押し上げるように揉まれながら、右胸の先に吸い付かれた。上顎と舌で乳嘴を挟み込まれ、すり潰すように愛撫される。それだけでつま先がギュッと内巻きになり、恥骨の奥に淫欲の種が芽吹くのがわかった。
両方の乳房に舌を這わされ、強く吸い付かれては緩く噛みつかれる。
男性とこんな状況になったのは、四年ぶりだ。下腹から込み上げるような欲望を感じて、沙耶の両足が自然と床を離れ、彼のふくらはぎに絡みつく。
溢れ出る蜜を指で確かめられ、思わず掠れた喘ぎ声が漏れた。
「ぁっ……あ……あ……」
熱く濡れそぼっている淫唇がヒクヒクと蠢き、賢人の唾液に濡れた乳嘴が硬くしこる。
沙耶は情動のままに彼の頭を両手で挟み、顔を上げた唇にキスを浴びせかけた。そうしている間に、賢人の硬い猛りが沙耶の秘裂にぴったりと寄り添ってきた。彼の腰がゆっくりと動き出し、先端の括れが腫れて敏感になった花芽を何度となく引っ掻いてくる。
もうこれ以上我慢できない――。
沙耶が賢人の腰に絡めた脚に力を込めた時、彼が屹立の先を蜜窟の縁に当てがった。
「挿れていいか?」
低い声で囁かれ、こっくりと頷く。
「避妊具、なしで?」
再度聞かれて、また首を縦に振る。腰をグッと前に進められ、身体の中に硬い熱の塊が押し入ってきた。
「ぁああっ! あっ……あ、あ、あっ……」
凄まじい圧迫感が喉元にまで押し寄せ、込み上げてくる快楽のせいで身体が小刻みに震えだす。
「っ……沙耶……」
名前を呼ばれ、いつの間にか閉じていた目蓋を上げると、賢人が眉間に縦皺を寄せて苦しげな表情を浮かべている。
「きつい……沙耶の中……すごく締めつけてる」
「……っ……あんっ!」
低い声で囁かれ、下腹から悦びが込み上げてくる。何か言おうにも身体が強張っていて、身動きが取れない。
「力を抜いて……息をするんだ、沙耶。呼吸……止まってるぞ」
言われてみて、はじめて自分の息が止まっているのに気づいた。おそらく、そのせいで交わっている部分が硬く強張り、屹立をきつく締め上げているみたいだ。
沙耶は息を吸おうとして顎を上に向けた。それに合わせるように賢人の腕が沙耶の腰を持ち上げ、上体が仰け反ると同時に大量の空気が喉の奥に流れ込んでくる。
「っく……はぁっ……はっ……」
賢人に見つめられながら息を吸ったり吐いたりするうちに、だんだんと身体の緊張がほぐれてきた。それとともに、切っ先がじわじわと奥に進み、蜜窟が彼のものでいっぱいになる。硬く閉じていた隘路が蜜でぬめり、屹立をさらに奥へと受け入れていく。ゆっくりと腰を振られ、刺激を受けた蜜壁がきゅうきゅうと収縮するのがわかった。
「あぁんっ! あんっ……! ああああっ!」
まだほんのわずかな時間しか経っていないのに、これまでに経験したセックスの中で一番気持ちいい。快楽を感じるほどに蜜が溢れ、淫ら過ぎる水音が沙耶の聴覚をくすぐる。
「声……すごく可愛いよ……。沙耶がこんな声を出すなんて知らなかった。もっと聞かせてくれるか?」
耳朶を食まれながら訊ねられ、唇にキスをされる。
小さく首を縦に振ると、賢人が沙耶を抱き寄せたまま上体を起こしソファの座面に自身の背中をもたれさせた。
彼の腰の上に跨るような姿勢になり、挿入が一段と深くなる。
「ゃあああんっ! 奥っ……んぁああああっ……!」
下から突き上げられると同時に、片方の乳房にぢゅっと吸い付かれ先端を舌先で転がされる。
得も言われぬ快感が脳天を突き抜け、沙耶は賢人の肩に腕を回して背中を仰け反らせた。
キスがもう片方の乳房に移動し、これ見よがしにぷっくりと膨らんだ乳暈を舐め回してくる。奥を突かれながら乳房まで愛撫され、身体中が愉悦の海にどっぷりと浸り込んだ。
「あ……賢人……胸……もっとして……ぁああっ! 気持ちいいっ……ああんっ!」
気がつけば賢人が乳房を愛撫するさまを見つめながら、自ら腰を揺らめかせていた。上目遣いにこちらを見た彼と目が合い、彼の肩に腕を絡ませて唇を求め合う。絡め合った舌がぴちゃぴちゃと音を立て、溢れ出た唾液が線となって顎を伝い落ちる。
「沙耶……いい顔だな……もっと気持ちよくしてやろうか?」
腰を動かしながら「うん」と返事をすると、賢人がにっこりと微笑んで沙耶をラグの上に押し戻した。そのままぐるりと身体を反転させられ、屹立の括れが襞をバラバラとめくり上げながら蜜窟の中を掻き混ぜてくる。
「ああああっ! あ……あ――」
起き上がる間もなく賢人に腰を高く引き上げられ、うつ伏せた背中が弓のようにしなった。突き出した腰を両手でしっかりと固定され、まるで杭を打ちつけるみたいにズンズンと深く穿たれる。
「っ……けん、と……ぁっ……、あ……ひ、ぃ……ひああああっ!」
リズミカルに腰を動かすと同時に、パンパンに膨れ上がった花芽を指の腹で押し潰すように愛撫される。
声も出せず押し寄せる愉悦に浸りきっていると、乳房を掌で包み込まれ乳嘴をキュッとねじられて一瞬天地がわからなくなった。
「ふぁっ……! ぁ……あ、あ――ぁんっ!」
強すぎる快感が全身を襲い、身体からすべての力が抜け落ちた。
もう何がなんだかわからない――。
身体がふわふわと浮いたようになり、沙耶は絶頂の余波に身を投じたまま荒い息を吐き続ける。
「沙耶、大丈夫か?」
優しく声をかけられ、唇に触れるだけのキスを貰う。瞬きをして前を見ると、賢人の微笑んだ顔が見えた。
「ん……へいき……ん、っ……」
話す唇をペロリと舐められ、チュッと吸われる。キスを返そうと思うのに、頭の中ばかりか全身が蕩けたようになっていて身動きができない。
「いきなり激しくして悪かったね。沙耶があんまり可愛いから、ついがっつくようなマネをしてしまった」
話ながら繰り返しキスをされ、乳房をそっと手の中に包み込まれた。ゆるゆると円を描くように掌を動かされる。
「さっき、イったね? 中がぎゅうぎゅうに締まって僕のものを舐めるようにして締め付けてた。覚えてる?」
少しずつ身体の感覚が戻りはじめ、乳房への刺激にまた呼吸が乱れだした。
「そ……んな……わかんない……ぁっ……あ、ん、ぅ……」
「そうか。……沙耶……君の全身を舐め回したい……いいか?」
「えっ……? 舐め……ん、ふ……ん……」
返事をする前に唇を重ねられ、睫毛が触れ合う近さでじっと見つめられる。その熱にほだされるようにして頷くと、すぐに口の中に熱い舌が入ってきた。絡め合った舌が出ていき、耳のうしろを通って首筋に下りた。鎖骨を食まれたあと、両方の二の腕を丁寧に舐められる。
くすぐったさにモジモジと身を捩ると、両手首を頭の上で重ねられた。
「このまま動かないで。……言う事を聞いてくれるね?」
いつになく甘い声でそう言われて、すぐに頷いてしまった。
「いい子だ」
唇にご褒美のキスをしたあと、賢人の舌がデコルテに移った。早速息が上がり始め、呼吸をするたびに胸が激しく上下する。唇と指で左右の胸の先を捕らわれ、まるでロリポップキャンディを舐めているみたいに何度となく舌で弾かれ、甘噛みをされた。
ものすごく気持ちよくて、達したばかりなのにもう身体の奥がむず痒くなり始める。
沙耶は両手を上げたまま身をくねらせた。
「胸……そんなにしちゃ、いやぁ……」
「どうして? さっきは、もっとしてって言っただろう?」
上目遣いの視線で見つめられ、舌先で乳暈の縁をそろそろとなぞられる。そんな淫らな光景を目にして、乳嘴がいっそう硬くしこった。
「い、言ったけど……。だ……だって、胸……恥ずかしいから……」
「なにが恥ずかしいんだ? ちょうどいい大きさだし、抜群に感度がいい。それにすごく綺麗だ……。ずっと口に含んでいたいくらいだし、実際に今そうしてるだろう?」
「あんっ! ……賢人っ……あっ……あっ……ああああん!」
左右の乳房に交互にかぶりつかれ、恥ずかしげもなく嬌声を上げた。賢人の愛撫に酔いしれているうちに、いつしか彼の舌が沙耶の内腿まで下がっていた。
沙耶はと言えば知らないうちに脚を大きく広げ、あろう事か自分で乳房を揉んで喘ぎ声を漏らしている。
「賢人……もっと舐めて……。私のぜんぶ……賢人にとろとろにされたいの――」
ついさっき恥ずかしがったばかりなのに、もう彼の愛撫がほしくてたまらない。
耳を疑うような言葉を漏らしながら、沙耶は自分の唇をゆっくりと舌で舐め回した。
腰はくねくねと揺れて一時もじっとしていないし、動くたびに秘裂から溢れ出た蜜が水音を立てている。
「賢人……お願い……」
賢人ともっと深く交わりたい――。
あたかも深く愛し合った夫婦のように沙耶は賢人とのセックスにどっぷりとはまり込み、羞恥などどこかに捨て置いてしまったみたいだ。
「沙耶がこんなに淫らな子だとは思ってもみなかったな。……本当に可愛い……」
賢人が乱れた前髪を掻き上げ、唇の隙間から舌先を覗かせる。
期待で胸がいっぱいになり、自然と目が潤んできた。
「お願いされるまでもなく、たっぷりと舐めてとろとろにしてあげるよ」
秘裂をペロリと舐め上げられ、二本の指で花芽の両脇を抑えられた。ピンク色の突端に口づけると、賢人がじゅるじゅると音を立てながらそこを強く吸い上げてくる。
唾液交じりの蜜が会陰を濡らし、後孔を伝う。その感触に肌が熱く粟立ち、秘部がキュッと縮こまる。
それに気づいたのか、賢人が沙耶の太ももを押し上げて肩の上に担ぎ上げた。
「あっ……やあんっ!」
ハッとして腰を上に逃がそうとしたが、見つめてくる瞳に気圧されてしまう。視線を合わせながら後孔から花芽に至るまでを一気に舐め上げられ、たちまちオーガズムの波に巻き込まれた。
「ぃや……そんなとこ……舐めちゃイヤ……見ちゃダメッ……あっ、ああああ……!」
どんなに顔を赤くして懇願しても、賢人はまるで言う事を聞く様子がない。秘裂の中を執拗に愛撫され、指を蜜窟の中に沈められる。中をグチュグチュと掻かれ、蜜がドッと溢れた。彼は音を立ててそれを啜ったあと、硬く尖らせた舌で会陰の薄皮を捏ねるようにくすぐってきた。
「ひっ……」
思わず腰を浮かせたが、太ももをしっかりと腕に抱えられており、すぐに元の位置に戻された。下手に動けば舌の位置がずれてしまう。
いくらなんでも、これ以上そんなところを舐められてはいけない。
沙耶は全身を火照らせ、賢人を見つめながらイヤイヤと首を横に振った。賢人がニンマリと微笑み、困ったような顔をする。
「どうしてもイヤか? もっと沙耶を舐めてイかせてあげたかったのにな」
おもむろに身を起こすと、賢人が沙耶の腰の位置で膝立ちになった。太い血管が浮き上がる屹立を見せつけられ、思わず舌なめずりをする。
それがほしい。
口に含んで思う存分舐め回したい――そうねだるする前に、ものほしそうに口を開いていた蜜窟にずぶ、と挿入されて悦びの声を上げた。
「沙耶……可愛い僕の奥さん……」
激しく腰を打ちつけながら、賢人がそう呟いた。
沙耶は夢中になって賢人に縋り付き、啼き声を上げる。
「あああっ! 賢人の……ほしい……中に出して……いっぱい――あん、んっ!」
「沙耶……なんて淫らで、はしたない事を言うんだ」
互いを見る目には色欲の炎が燃え盛り、静まる気配などなかった。嘘偽りのない剥き出しの性欲を晒し合い、ただ一心に身体を求め合っている。
「だって――あっあああああっ!」
沙耶の願いを聞き入れた賢人が、腰の動きを早くする。二人の息が混ざり合い、唇がぴったりと重なった。
「沙耶っ……」
二人同時に昇りつめ、賢人のものが沙耶の中で繰り返し脈打って内奥に熱い精を放った。
思えば、避妊具なしでのセックス自体はじめてだ。
それがこれほど気持ちのいいものだなんて、知らなかった。
「け……んと……」
蜜窟の中がうねるように蠢き、注ぎ込まれた精を子宮へと送り出しているのがわかる。
このまま賢人と抱き合っていたい――。
沙耶は心の底からそう願い、彼とキスをして舌を絡め合うのだった。