可愛げがないと婚約者に振られた私ですが、スパダリ社長の求愛に濡らされています

書籍情報

可愛げがないと婚約者に振られた私ですが、スパダリ社長の求愛に濡らされています


著者:篠原愛紀
イラスト:カトーナオ
発売日:2023年 10月27日
定価:620円+税

華菜美は婚約者の会社で秘書として働いていたが、婚約破棄と共に解雇を言い渡されてしまう。
会社のために尽くしてきたのに、可愛げがないと糾弾される華菜美。
恵士はそんな華菜美の手を引き、甘く誘って……!?
「悪いことするんだろ?」
淫らに求められ、愛に包まれていく華菜美。
一晩の関係かと思っていたが、恵士はどうやら本気だったようで――?
恵士に、まるで婚約者のように扱われてしまい戸惑う華菜美だったが、
彼の求愛によって傷ついた心も癒やされていく――。

【人物紹介】

小鳥遊華菜美(たかなし かなみ)
婚約者の会社で秘書をしていた27歳。
クールで真面目な美人で、可愛げがないと言われる。
だが実は少し鈍感で、可愛いものが好きな一面も。
婚約破棄されたところ、恵士に連れ出されて――!?

樫屋恵士(かしや けいし)
不動産投資会社を経営している、29歳。
爽やかな印象のある、彫りが深く目鼻立ちの整った美青年。
愛想もよく、おおらかな性格をしている。
実は華菜美ことを以前から知っていたようで……?

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【試し読み】

 天蓋付きのベッドは、紫色のレース。
 窓から見える景色は、すぐにカーテンで隠した。 先ほどのホテルよりも格が違うスイートルームに、甘い香りが立ちこめている。
 お姫様みたいなベッドの前で、彼が時計を外す。
 小さく音を鳴らしてサイドテーブルに置かれた時計。その横に、私も小さな鞄を置いた。コンタクトケースと携帯しか入っていない小さな鞄。
 ネクタイを外す、骨張った大きな手を見ていると、彼は私を見た。
「逃げてもいいよ」
 絹擦れの音と共にネクタイが床に放り投げる。
 薄暗い部屋の中、彼の表情は見えないが声はとびきりに甘く優しい。
「捕まえるから」
 どうして私、なの。
 一瞬、現実に戻りかけた言葉を呑み込む。
「なんか、やっぱ、貴方を利用しているみたいで――んっ」
 最後まで言う終わる前に、口付けをされた。
 少し顔を傾げ、私の目を見ながら、唇を離すともう一度唇に触れてきた。
「んぅっ」
 乾いていた唇がしっとりと濡れてきて、彼の匂いが私の鼻を掠めた。
「利用して、いいよ」
 キスだけで思考が停止してしまった私の耳に、甘く囁く。
「口説くと言っただろ?」
 優しく抱き締められ、彼の手が背中のファスナーに伸びていく。
 窮屈だと思っていた。
 可愛げのない後輩からも毒々しいと言われたワインレッドのタイトなドレス。
 祖父が選んでくれたから着ただけの、私の武装服だ。
 窮屈で、こんな服では私は息もできない。
 ゆっくりとファスナーが下ろされて、背中がしっとりした夜の空気に触れた。
「口説いて欲しい。私からはきっと難しいから」
 恋愛なんて、してこなかった。
 可愛げのない私には無理だと諦めて、敷かれたレールの上で不満げだったの。
 自分勝手で傲慢なのは私だ。
 晒される肩から、全て暴いて欲しい。
 逃げてきた私の目の前に、こんな風に都合良く現れるなんておかしい。
 床に落とされるギリギリで、ドレスを胸元で押さえて彼の顔を見上げた。
 私より可愛い子は、あの会場に沢山いた。佐伯さんなんて会社一の美人だ。
 同情でここまで攫ってくれたのなら、それでもいい。甘い言葉で騙してくれても良い。
 今はこの甘い夜に酔わせて惑わせてほしい。
「ああ。不器用な君が可愛いよ」
 騙してくれていいのに、彼の言葉は優しく甘かった。
 立っているのもやっとで、私の足は震えてた。
「悪いことするんだろ?」
 胸元を押さえていた私の手に、彼は何度も口付けする。胸元に顔を埋めて、何度も口付けを落とすので、身体に甘い電流が走る。
 力が抜けて、彼に片手を掴まれても振りほどくことはできなかった。
 両手の力が抜けると同時に、ドレスが床に落ちて両腕を捉えられた。
「おいで」
 抱えられベッドに寝かせられた。
 軋む音と共に、抱き締められ火照った私の体温と彼の香水が混じって甘い匂いが漂う。
 乱暴に服を脱ぎ捨てていく彼を見て、急に恥ずかしくなって下着姿の自分の身体を手で隠す。
 そんな私の行動を、彼は小さく笑った。
 余裕がありすぎる彼を睨み付けようと顔を見ると、甘く蕩けんばかりに微笑んだ彼の顔に固まる。
 艶やかで色気を漂わせ、私を魅了させていく。
 もう一度、あやすように落とされた口付け。
 私の緊張を和らげようとする口付けは、優しくて優しくて。
 首筋、肩、胸と落とされていくのを、私も笑いながら受け止めていた。
「華菜美さん」
 名前を呼ばれ、笑ってよじっていた身体を止め、息を整えていたら、彼が私の前髪を掻き上げくれた。
 あまりに甘く名前を呼ばれ、そのまま溶けていくかと思った。
 名前を呼ばれるだけでこんなに心が満たされていくとは思わず、不思議な甘酸っぱさが心地いい。
 視線も指先も口付けも、全て甘く蕩けてしまいそう。
「樫屋さーー」
 言い終わらないうちに、今度は深く口付けを落とされた。閉じていた唇を暴こうと、舌で割られ侵入される。腔内を舌が動く度に身体がどんどん熱を帯びて体中が痺れていく。
 下着をずらさて、胸を触られただけで足の指先がシーツを巻き込みながら丸まっていく。
 彼の動きに、ただただ身体が翻弄されていった。
「ぁっ」
 小さく零れた声に戸惑うと、可愛いよなんて囁かれ、真っ赤になる。
 声なんて漏らしたくないのに、彼が触れる度に唇から溢れてしまう。
「ひゃっ」
 胸の先端を指先でなぞられただけで、背中が大きくしなった。その反応を見逃さなかった彼が、もう一度胸を優しく刺激してくる。
 初めて他人から与えられる甘い刺激に、私の身体が作り替えられていくのが分かる。
 知らない身体のように全身に熱が広がり、下半身に集まってくる。
 こんな衝動、知らない。
 戸惑って視界がぼやけてくると、目尻にもキスが落とされた。
「嫌?」
「嫌じゃなくて、身体が変になってて」
 説明できない。だって全て初めてだから。
 ただ彼の愛撫で身体が初めての快感で震えるのは嫌ではない。少しだけ自分の身体ではないような恐怖はあるものの、胸は震えている。
 彼の背中に手を回しながら、身体は喜んでいた。
 これが悪いことと言うならば、楽しい。
 もっと求めて背中に回した手に力を込めると、彼の指が下へ下りていく。
 緊張して強張っている私の身体を擽ったり、撫でたり。
 こらえきれずに小さく笑うと、彼が優しく額に唇を押し付けた。
「ゆっくりするから、大丈夫だよ」
 次に唇が落とされたのは頬で、そして私の唇を何回か啄んだ後優しく首筋を吸われた。
 ふにゃふにゃと体の力が抜けると、彼も小さく笑った。
 下着の隙間から指が入り込むと、彼の愛撫ですっかり溢れてしまった蜜が、潤滑剤のように彼の指を濡らした。
 ゆっくり侵入してくる彼の指は、熱い。
 初めての感覚に、痛みを覚悟して目を閉じたが痛みは感じなかった。
 水音と共にほぐすように奥を暴こうと動く指が、ゆっくり前後に刺激を与えてくる。
 知らない快感に足が大きく動くと、彼の太ももが足の間に割って入り、閉じないように制された。
 二本に増やされた指の動きに、頭が真っ白になっていく。
「怖くない?」
 こうやって何度も気遣われると、勘違いしそうになる。とても大事にされている感覚に陥る。
 仕事で数回しか顔を合わせていない人と、婚約破棄したその日に、身体を重ねようとしているのに。
 まるでずっと恋人だったような甘い雰囲気に飲まれて、全て身を委ねようとしている。
「大丈夫だよ、華菜美さん」
 優しく諭すように言われ、恥ずかしいけれど頷くことしかできない。
 指で翻弄されている今、甘い言葉よりもその先の刺激への期待に身体が震えている。
 今の私は、彼にどんな風に映っているのだろう。 恋愛なんて経験ないと言い放った手前、みっともない姿を暴かれてしまっているようにも思える。 顔を見られたくなくて抱きついて背中に顔を埋める。
 すると彼の指の動きが少し早くなり、彼の息が荒くなっていくのが分かった。
「そんな風に可愛いのはずるいな」
 彼の指を伝い、シーツを濡らしていくのを感じ、真っ赤になりながらも、何を言えば良いのか分からへらりと笑った。
 すると彼の指が抜かれ、彼の腰に身体を引き寄せられた。
「ーーっ」
 彼の下半身の熱が宛がわれ、彼も興奮しているのが分かった。
 私の情けない姿でも、彼の身体は感じている。
 もう一度彼の顔を、勇気を出して見上げると、蕩けんばかりの甘い顔をしていて、息を飲んだ。
「華菜美さん、怖かったら言ってね」
 優しく指先に口付けされた後、手を背中に回すように促された。
 彼の背中を抱き締めると、彼は私の腰を引き寄せて、ゆっくりと濡れた私の中へ彼の熱が宛がわれた。
 左右を引き裂くように侵入してくる熱は、甘い痛みを伴った。
「あぁっ」
 甘い痛みと共に内側を擦られ刺激を与えられ、何度も腰がしなる。
 しなった腰を、逃がさないように彼が掴んで、ゆるゆると刺激を与えていく。甘い刺激がどんどん激しくなり、彼の動きと共に身体が揺れていく。甘い香りと、激しい律動に呑み込まれていく。
 もう頭は真っ白で、初めての快楽を身体に刻まれて作り替えられていくのを感じて、必死で彼にしがみつくことしかできなかった。
「ま、って。まって」
 熱で擦られ刺激を与えられ身体が大きく震えた。
 止めてくれないと爆発してしまう。
 焦る私を見て、樫屋さんはまた小さく笑った。
 でもその笑いは、最初の余裕のある笑いではない。滴る汗と共に艶を含んだ笑いに、魅せられる。
「ひゃ、ぁっんっ」
 何度も何度も奥を貫かれる。
 彼の背中やシーツを握りしめ、身体をよじっても快感は身体から逃げずに、私の身体中を電流のように甘く痺れさせる。
 彼の体温を全身で感じている。火傷するかのように熱く、私の理性を奪っていく。
 水音と共に体がぶつかり、ゆっくり引き抜かれるときに内襞を刺激され、足が痙攣するほどの快感が押し寄せてきた。
 激しいピストンも、私の身体を気遣うようなゆっくりと奥へ侵入してくる動きも、いまはただただ受け止めるだけで精いっぱいだ。
 次にくる動きに耐えられるよう、彼の背中を強く抱き締めていると小さく零れるような甘い吐息と共に彼が笑うのが分かった。
 背中に回していた私の手を引きはがすと、代わりに彼の指が絡まった。
 彼の指を絡めたまま、ベッドの上に押し付けられる。
「えっ――あっ、ひ、ぁっ」
 動きを制限されたせいで、貫かれる刺激を逃がすことができない。
 ギリギリまで引き抜いて、そして快楽を植え付けるようにゆっくりと奥に侵入していく。身体の一番奥まで到達しても、ぐりぐりと押し付けられ私さえ知らない最奥を暴かれ、刺激されていく。
「だ、だっめっ」
 首を横に小さく振ると、それ以上の侵入は止めてくれて代わりに何度もキスが落とされた。
「ごめんね。可愛すぎて」
 申し訳なさそうに謝ってくるので、また首を横に振る。
 嫌なわけじゃなくて、何知らなかった私が彼の熱や動きに翻弄されて乱れていくのが怖かっただけ。
 そして私だけこんなに必死で受け止めるだけなのにまだ余裕がある彼を見ると少しだけ悔しい。
 ちゃんと気持ちがいいこと伝えたくて、私からキスしようとすると力が入らなくて身体が起き上がらなかった。
 ぎりぎり彼の顎に唇を押し付けられたけれど、彼から笑顔が消える。
「煽られちゃったな」
 絡めた手の力が強くなり、大きく彼の身体が揺れた。

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