代役お見合いの末、策士な外科医と極上の愛を営みます

書籍情報

代役お見合いの末、策士な外科医と極上の愛を営みます


著者:雪宮凛
イラスト:すみ
発売日:2023年 1月27日
定価:680円+税

ケーキショップで先輩パティシエのアシスタント行を勤める双葉。
ある日実家から電話があり、姉のお見合いの代役をすることに。
お見合い当日、姉のフリをしてお見合いを続けなんとか当日を乗り切るのだが……。
「この前ぶりだな」
双葉の務めるケーキ屋に突然訪れたお見合い相手の宗悟に突然声をかけられて――!?

【人物紹介】

梅津双葉(うめづ ふたば)
パティシエ見習いの27歳。
大手企業の役職持ちな父を持つ少し裕福な家柄の生まれだが、
幼少期から姉と比較され内気な性格に。
しかし、進路は自分の意思で決めたという経緯も。

片桐宗悟(かたぎり そうご)
外科医。31歳。
人付き合いが少し苦手な仕事人間。
疑問を抱けば明確な答えを求めたくなる性格。
仕事や勉強を優先するあまり、恋愛も長続きしていなかった。

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*取り扱いサイトは、各書店に掲載され次第、更新されます。

 

【試し読み】

 恋愛経験ゼロの彼女にとって、自覚したばかりの恋心を自分の中で処理するだけでも大変な作業だ。
 そんな状況下で、即返事なんて出来るわけがない。
 ――なんて思っていたのに、「告白もキスも忘れろ」と言いかけた彼の唇を自分から奪ってしまった。
 ただ唇を押し付けた程度だから、奪ったと表現するのは微妙かもしれない。
 だけど、初めてのキスも告白も素直に嬉しいと思えた。
 せっかく告白してくれた片桐の気持ちを、なかったことになんてしたくなかった。
 彼に悲しい顔なんてさせたくなかった。
 様々な気持ちが、双葉の心の中でない交ぜになっていき、彼が、「忘れて」と言った瞬間、ボンっと爆ぜた。
 その結果があの拙いキスだ。
 あの後、自分がしでかしたことが恥ずかしすぎて、双葉はずっと俯いたままだった。
 そんな彼女の手を優しく握った片桐は、何も言わず車までエスコートしてくれた。
 そのまま二人で車に乗り込み、彼が一言、「帰るか」と呟いた言葉に、双葉は声無く頷き返すだけ。
 その様子をしっかり見ていたようで、彼は今前方を見つめたままハンドルを握っている。
(片桐さん、ごめんなさい)
 ――また貴方の優しさに甘えて、せっかくの告白への返事をうやむやにしてごめんなさい。
 だけどどうか許してください、と双葉は音無き声で、何度も隣に居る彼へ脳内で謝罪する。
 ――あと少しだけ、貴方からの想いを受け入れられるまで待っていてください。

 海辺を出発して一時間以上車を走らせれば、双葉が住むアパートに到着した。時間は夜の九時近く。辺りはすっかり暗くなり、数メートル間隔で設置された街頭が夜道を照らしている。
 そんな時間にも関わらず、片桐の姿は双葉と一緒に彼女が住むアパートの部屋の中にある。
「あの……もう少しだけ、時間いいですか?」
「……え?」
「その、えっと……今日は色々、お世話になったので。せめてもの、お礼にお茶を、ご馳走させてください」
 アパートのすぐ脇に整備された住人用の駐車場。車を持っていない双葉が客人用にと借りている駐車スペースに停められた車の中で、彼女は自分から片桐をお茶に誘った。
 突然のことに彼は瞳を見開き驚いていた。けれど、決して拒絶したりせず、双葉の案内で家に上がり、今もリビングで待っていてくれる。
(えっと、今あるのはブレンド茶と、紅茶。ココアもあるけど、お茶って言えるかな)
 キッチン内にある食器棚の前に立った双葉は、たまに使う来客用のティーカップへ視線を向けながら、片桐に提供出来る飲み物のラインナップを考えていく。
 甘党な彼ならココアもアリ、なんだろうかと頭の中に疑問を抱いた時、突然背中に自分じゃない熱を感じた。
「ひゃっ!」
 咄嗟に小さな悲鳴を発するのと同時に、条件反射で両肩が大きく震えた。
 前触れなくピトッと背中に大きな熱がひっついた。かと思えば、腰の辺りで服越しにスルッと何かがボディラインに沿うように滑っていく。
 一体何だと思って視線を向ければ、大きくて無骨な両手がお腹の辺りに触れている。
 手のひらから伸びる腕も一緒に目に留まった。そんな視覚的な情報も合わさったおかげか、最初に熱を感じてから数秒のタイムラグを経て、〝片桐が自分を後ろから抱きしめている〟と自分の身に何が起こったかを認識していく。
 その途端、体内を巡る血液がじわじわと熱くなっていく感覚を抱き、瞬く間に顔全体が火照りだすのがわかる。
「か、片桐、さん?」
 混乱しかない意識の中、かすれた声ですぐそばにいる片桐の名前を呼ぶ。
 すると彼は、呼びかけに応えるように双葉の耳元へ顔を寄せ、フーッと意地悪く耳に息を吹きかけた。
「夜ももう遅い。なのに男を一人で暮らす部屋に簡単にあげちゃ、ダメ、だろう?」
 そのまま囁くような声で、自分を自宅へあげた双葉の行動をとがめる。
 彼の言葉に驚いた双葉は咄嗟に反論しようとするものの、意地悪い攻撃を受けたせいで、「ンンッ」と鼻にかかった吐息が言葉の代わりに零れ落ちた。
「わた、私は、ただ今日のお礼をしたくてっ!」
「その気持ちは、ちゃんとわかってる。嬉しいよ、もちろん。あれだ……よく言うだろう? 男はオオカミだ、とか。だから本当気をつけろ、危機感なさすぎ……」
 やっとのことで抗議の声を出した双葉の主張も何のその。片桐は彼女を抱きしめたまま、真っ赤に火照った耳元でなおも喋り続ける。
 しかも、アタフタするだけの双葉を見て何を考えているのか、彼はおもむろに目の前にある赤らんだ耳の裏へ舌を這わせ、全体を甘く食む。
「ひゃ、ンンッ」
 耳に感じた生ぬるく湿った感覚に驚くあまり、また小さな悲鳴が零れる。
 慌てて彼の方へふり向こうにも、お腹にまわった両腕にやんわりと身体を拘束され身動きがとれない。
 どうにか片桐の腕をどかせないか思った双葉は、急いで腹部にまわった彼の手に自分の手を重ね掴もうとした。
 二人の手が重なった瞬間、何故か身体に巻きついた彼の腕の力が強まった気がする。
「海で、言っただろう。お前が好きだって。そんなこと言った男を家にあげるとか」
 ――期待させるようなこと、するなよ。
(……っ)
 また耳元で彼の囁きが聞こえ、双葉の心臓はドクンと大きく高鳴った。さっきの意地悪な囁きと違う、どこか苦しさが滲む彼の声に、胸の奥がキュっとしめつけられるように苦しくなった。

 しばらくして、不意に身体を拘束していた片桐の腕が離れたかと思うと、今度は手首をつかまれ、「こっち」と歩くよう促される。
 素直に彼の後に続いて移動すれば、帰宅直後に居たリビングに戻ってきていた。
 多くを語らず行動する様子に戸惑う双葉の手首をつかんだまま、彼はリビングにあるソファーに腰掛ける。
 何か話でもするのかと内心首を傾げれば、つかまれたままの手首を腕ごと引っ張られ、身体全体が前方――彼の胸元めがけ大きく傾いた。
「ひゃあっ!」
 今日何度目かわからない悲鳴をあげると同時に、無意識の自己防衛本能が瞳を閉じさせ視界が遮断された。
 真っ暗な世界で襲ってくるだろう衝撃に身体を縮こませたものの、大きくて広い熱に抱きとめられるような感覚に気づく。
「双葉」
 すぐ近くから聞こえる優しく自分を呼ぶ片桐の声に、恐る恐る目を開く。
 すると、浜辺で面と向かって話していた時よりも近く――たった数センチ先に彼の顔があることに気づいた。
 キッチンに居た頃から一向に引かない火照りが、さらに上塗りされたんじゃ……と思う程一瞬で体温が上がっていく。
「か、かたぎ――」
「好きだぞ、双葉」
 ものすごく距離が近すぎやしないかと思い、急いで彼の名前を呼ぼうと口を開く。
 けれど、その声は数センチ先に見える唇が発した声にかき消された。
「俺が好きなのはお前……和葉じゃない」
「――っ!」
 一体今、二人の間に何が起きているんだろう。
 なんて困惑するだけの双葉の耳に優しくて甘く、そして力強い声が彼女を射抜くような熱っぽい眼差しと一緒に届く。
 驚くあまり息を呑んだ双葉の唇に、彼女より熱がこもったかさつきが残る唇が重ねられた。

 照明が点いたままのリビング内に幾度となく片桐の甘い囁きが木霊していく。
 口を開けば、「かわいい」「好きだ」「愛してる」と、呼吸するのと同じ勢いで、彼は双葉に愛の言葉を送り続ける。
 かわいい、くらいならお店の皆がお世辞程度に言ってくれる声を何度か聞いた経験がある。
 だけど他――愛情百パーセントの言葉なんて、今日初めて言われたものばかり。はっきりいって双葉にとって、片桐の言葉は過剰攻撃でしかない。
 そんなものを幾度となく聞かされたせいで、双葉の全身は茹ダコのように真っ赤でアツアツに茹っている。
 そしてもう一点、双葉の羞恥の渦に閉じ込めている原因がある。
 双葉が座っているのは、ソファーに座る彼の膝の上だ。数分前まで着ていたカーディガンとインナーはカーペットの上に落ちている。
 腰に片腕を回され降りられない彼女の上半身を唯一隠しているのは、ホックを外されたブラジャーだけ。
「か、片桐さん、そこ舐めちゃダ……ひゃああっ」
 けれど、首元までずり上げられたそれはまったく機能していない。無防備に片桐の眼前に晒された乳房に、彼は喜々として吸い付く。
 この行動が一番の原因だとわかっているのに、双葉の口からは甘く熱のこもった嬌声しか出てこない。

 つい数分前。二度目のキスをした双葉は、唇が離れていく間、自分の身に起きたことに唖然とし、口を閉ざしたまま固まっていた。
 体感温度が熱いせいか脳まで茹るような錯覚を起こし、彼女は何も考えられない。
 我に返った時にはもう、彼の膝の上に座らされていた。

 ――今日のお礼がしたいって言うなら……俺はお茶より、双葉が欲しい。

 頭から湯気が出そうになる双葉を見て何を考えているのか、片桐はにんまりと口角をあげて笑い、彼女の耳元で囁き、ハムっと耳たぶを甘噛みする。
 突然感じた甘やかな痛みに、「ひゃあ」と双葉は小さく悲鳴をあげた。
 意識があやふやなせいか、自分を抱きしめる男に対する文句すら思い浮かんでこなかった。
 そんな状態の双葉へ、片桐は甘さしかない言葉責めを再開する。
 そのせいもあってか、一向に身体の熱が引く気配が無いし、意識もどこかふわふわして上手く考えがまとまらない。
「双葉は耳が弱いのか?」
「ン、ふぅ」
 クルっと丸め少し細く尖らせた片桐の舌が、こちょこちょと耳の表面を舐る。くすぐったさと一緒にやってくる知らない快感に、双葉は声を発せずハフハフと吐息を吐くだけ。
 せっかく質問をしたのに返ってくる答えが無い。けれど、片桐が機嫌を悪くする様子もなかった。
 耳元で止めどなく聞こえる愛の言葉、耳や頬を撫でる火照った肉厚な舌に、時折重ねられる唇。
 止む気配を見せないそれらは、双葉の心音を徐々に加速させていく。
 彼女の意識は自分の胸元でドクドク脈打つ心拍と、彼から与えられる予想出来ない愛撫に向くばかりだ。
「はぁ、はぁ……あっ、ふぅ」
 いつもは色白な双葉の頬に羞恥と無意識な興奮の赤みが差し込む様子を間近で観察する片桐は、ことさら目を細め、酸素を求めてパクパクと開閉をくり返す双葉の唇を奪っていく。
 そのまま、一瞬の隙をついた彼はスルリと小さな隙間から自身の舌を口内へ滑り込ませた。
「んんっ!」
 流石の事態にふわふわしていた双葉の意識が幾分か現実へ戻ってきた。
 彼女は慌てて片桐から離れようと、モゾモゾ身を捩って両手を彼の肩へかける。
 そのまま腰を引いて膝の上から逃げようと身体に力を入れた瞬間、口内を蠢く舌が一際敏感な粘膜を愛撫した。
「――っ!」
 すると身体の中心にピリッと電気が流れたような感覚に襲われ、ビクンと全身が強張る。 そのままゆっくり身体から力が抜けていく感覚を味わいながら、頭の中にわずかに芽生えたはずの逃走意識が飛散していくのがわかった。

 力の抜けた身体を片桐に預けたところで、彼の口づけ、愛撫が止む気配はない。
「時間? あぁ、車のトランクにいつも着替え一式積んであるんだ」
 相変わらず思考力が低下した脳を必死に働かせ、「明日も病院でしょう?」と暗に帰宅を促したところで特別彼は焦ったりしなかった。
 それどころか、「寝るのはソファーでいいから、今日泊めてくれ」なんて言い出す始末。
 今すぐにでも彼を自宅へ帰し、自分の家のベッドでゆっくり寝てもらいたい。そのためにどうすべきかと双葉は必死に考えた。
 なのに、言葉で、舌で、口付けで、絶え間なく与えられる愛情と快感が、ことごとく彼女の努力を無にしていった。
 少し理性が戻ったと思った双葉の思考は、気づけばあっという間にもう一度トロトロに溶けていく。
 いい歳した大人だから、恋愛経験こそなくても、こういった行為の知識がゼロというわけじゃない。
 一度腰に回されてからずっと解けない彼の腕を、双葉は無意識に言い訳として使っているのかもしれない。
(片桐さん、帰らないで……)
 キスの合間に囁かれる言葉と与えられる快感に意識のほとんどを持っていかれながら、双葉の頭の中では不規則に彼を返さなきゃという意識が浮上する。
 だが同時に、彼と過ごす時間の終わりを拒む自分にも気づき、今夜泊まらせて欲しいと強請る彼の言葉に甘えてしまいたいと思ってしまった。

 愛撫に翻弄された双葉が時折喘ぎながら狼狽える。そんな彼女の隙をついた片桐が器用に服を脱がせていたのか、気づけば彼女の上半身はほとんど裸と言ってもいい状態になっていた。
「あ、あっ、ど、どうして胸、舐め、ンッ、あぁっ」
 ホックが外れたブラが双葉の胸を包む片桐の無骨な手の甲によって押し上げられる。片方の胸を揉みしだき始めた彼は、もう片方――無防備に晒された乳首に舌を這わせていく。
 自分じゃない――しかも男の手と唇で形が変えられる乳房。その衝撃的な景色は嫌でも視界に入った。しかも、これまでと違う新たな快感にまで襲われ、双葉は思わず訝しげな声を上げ、咄嗟にほとんど胸元に埋まっているように見える彼の後頭部を掴んだ。
「双葉に、気持ち良くなって欲しい、から。大丈夫、最後まではしない。約束する」
「あ、ンンッ、片桐さ……あぁっ」
 ジュッ、ジュッと、一度吸い付いた乳首を一定のリズムで吸う彼が口にした願いに、下っ腹の奥――子宮の辺りがやけに疼いてしまう。
 しかも胸を揉みしだく力加減がやけに絶妙で、時折わずかな痛みを伴いながらも双葉を確実に快楽に落としていく。
 いつもの冷静な双葉なら、まず片桐に抱きかかえられた時点で彼の太ももから飛び降りている。
 けれど彼女はいまだ好意を自覚した相手の上に座っていて、嫌らしく胸を愛撫する彼の行為を止めない。
「ふぁ、あンっ! 片桐、さん……」
 喘ぐなんて慣れないことをしているせいか、軽く息の上がった双葉が不意に自分を責め立てる男の名前を呼ぶ。
 聞えたらしい片桐がモゾモゾと頭をふる動作を見て、咄嗟に彼の頭部を掴んでいた手を外した。
 自由になった彼が自分を見上げてくる。海辺でキスされた時と同じように熱く揺らぐ眼差しに射抜かれる。
「胸、ばっかりじゃなくて……こっち、も」
 お互いに相手を見つめあったまま、双葉は彼に向ってポツリと願いを零し、今しがたまで自分の胸を頬張っていた唇へ自分のそれを押し付ける。

 これまで何度、彼にキスをしただろう。きっと片手で数えられる前後くらいしかしていないそれは、片桐のキスとは比べ物にならない。拙さしかない自分の行動をキスと呼んでいいのか、双葉自身よくわかっていなかった。
 けれど二人の唇が重なった直後、これまでずっと腰に回されていた彼の腕にグッと力が入っていく。
 そして彼が顔を離したと思えば、今度は向こうから口づけられ、また易々と双葉の口内に欲情を隠さない舌が挿入り、彼女の敏感な粘膜を責めたてていく。
 口内を舌で愛撫する最中、手持ち無沙汰と言いたげに彼の片手がまた無防備にさらされた膨らみに触れる。
 ぷっくり膨れた蕾を抓まれ、思わず、「ンンッ」と身体が震えたのはきっと正常な反応なのだろう。
 しばらくして唇が離れたと安堵すれば、弄んでいない方の乳輪へ彼が舌をのばし舐めだす。一度止んだはずの刺激をまた与えられ、双葉は、「あっ、あぁっ」と時折声を上げて身体を震わせるばかりだ。嫌だと強く抵抗する様子は見られない。
 そんな状況をどう理解したのか、ふくらみを弄ぶ舌も指も一向に離れていかなかった。
「片、ぎりさ……胸、ばっかり、もう……んぁっ」
 さらに数分ほど経った頃、ようやく双葉が声をあげる。と言っても抵抗や拒絶というには弱々しい。けれど彼女の声はちゃんと届いたらしく、夢中で乳房を貪っていた片桐の動きがピタリと止まった。
 そして胸元から彼の顔と手が離れていくのを見て、双葉は今度こそ安堵の息を零した。
 はず、なのに――二人の視線が絡み合った瞬間、片桐は眩いほどの笑顔を浮かべる。
「悪い悪い。今度はこっち、な?」
「……へ?」
 苦笑まじりの謝罪が聞こえ、意味がわからずコテンと首を傾げてしまう。
 すると次の瞬間、呆ける双葉の下腹部へ片桐の手が伸びた。
 無骨で大きな彼の手が、スルッとスカンツの中へ侵入した感覚に気づき、双葉は大きく瞳を見開く。
 彼女が驚くのとほぼ同時に、彼の手のひらと指は下着のクロッチへ到達する。
 ――クチュリ。
 そして、クロッチの隙間から侵入した彼の指先に、ぬるりとした愛蜜が絡みつく音が嫌でも耳に届いた。
 長い時間片桐の愛撫によって快感を教え込まれたからか、すでに双葉の蜜口はよだれを垂らし、下着をグチョグチョに濡らしている。
「もうヌルヌルだな」
 その事実が至極嬉しいのか、クイっと濡れた指を折り曲げた彼は上機嫌に声を出す。
「んぁあっ!」
 折り曲げられた指の先が隠れていた秘豆にかすった瞬間、ピリリと全身を駆け抜けた一際強い快感が、これまでで一番双葉の身体を大きくビクつかせ、彼女を甘く啼かせた。

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