有能な強面御曹司は秘書の溺愛もカンペキです!?
著者:にしのムラサキ
イラスト:三廼
発売日:2023年 1月27日
定価:630円+税
母親のランジェリーメーカーに勤務する橙子。
社長である母親から経営者としてではなくお見合いをして
その相手に会社を継がせることを提案される。
しかし、橙子はお見合いを嫌がり、
会社の取引先である瑛太郎のもとで秘書として働くことに。
瑛太郎の無愛想な態度に悩む橙子は友人との飲みで酔いつぶれてしまい
目が覚めると瑛太郎の膝の上にいて……!?
「家まで送ります」
冷酷な人だと思っていた瑛太郎の意外な優しさを目の当たりにしてしまい――!?
【人物紹介】
月岡橙子(つきおか とうこ)
27歳副社長秘書。
大人っぽい美人でさっぱりとした性格。
両親と暮らした期間が少なく特殊な環境で育ったので
少し変わったところもあるが基本的に明るい。
笹倉瑛太郎(ささくら えいたろう)
28歳総合商社副社長。
真面目で無愛想。周りからも冷たい人だと思われている。
負けず嫌いなところもあり誤解されやすい性格だが意外と優しいところも?
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*取り扱いサイトは、各書店に掲載され次第、更新されます。
【試し読み】
岩室係長が戻ってきて、俺の前のローテーブルにコーヒーを置いた。俺は目で会釈をしながら彼に退勤を促すものの、彼は目尻に疲れを浮かべつつも首を振った。
「いえ副社長、お手伝いさせてください。連日午前様じゃないですか」
「……大丈夫です。むしろ岩室さんを付き合わせて申し訳ないくらいです」
なんとか彼を執務室から追い出しながら、内心では悔しさに唇を噛む。なぜ俺はこれくらいのことを綽々とこなせないんだ?
(親父なら……)
無意識のうちにまた自分と、社長である父親のことを比べて首を振った。自分にダメ出しをしたって仕方ない。目の前にあるものを乗り越えていくしかない……それしか。
デスクに重なる書類の確認を始めて、すぐにそれが既に優先順にされていると気がつく。そうして、それをしたのが月岡さんであることにも――
「使えない人であって欲しかった」
また小さく呟く。
仕事なんか適当に、コネ入社らしくやる気なくダラダラとしていて欲しかった。
そうしたら存在を無視できたのに。
妙に気になったりなんかせずに済んだのに。
あらかた仕事に目処が立ったのは、もう日付が変わろうとする時刻のことだった。
ひとつ大きく背伸びをして、ようやく退勤しようと鞄を掴んだ瞬間、社用のスマホが振動する。ディスプレイに浮かぶのは、月岡橙子のその四文字。
「……?」
なにかトラブルでも、と出てみればかなり泥酔しているらしく、要領を得ない。とにかくひとつ分かったのは、酒精でやられているらしい彼女がいま、外でひとりであるということだけだった。
「……………………」
一瞬、じゃない。本当に数分悩んだ後、俺は彼女を迎えに行くことにした。もしこれで何か事件に巻き込まれでもしたら、後味が悪い。そもそも瀬波社長から預かっている秘書なのだ、彼女は。
そうしてなんとか聞き出した場所に迎えに行ってみれば、バス停のベンチでぼうっと空を眺めている。ビル街の灯りで何も見えない梅雨前の夜空を。
ぱっと見は酔っ払っている様子はない――が、俺を見つけた瞬間に見たこともない笑顔を浮かべたことで、彼女が相当酔っていると分かった。
花の開くような笑顔だったから。
目を三日月にして、にっこりと笑った。
心臓が鷲掴みにされたかのように、大きく拍動した。
なんだこれ。
「あ、副社長〜。こっちですよう」
普段と全く違う少し舌足らずな口調に、あえて顔を顰めてみせる。
「……いい大人でしょうが。はしゃがない」
さあ立って、と促すも、月岡さんは立ち上がらない。にこにこと微笑みながら「立てない」と首を傾げた。
「立てないことはないだろ」
にへらにへらと脱力する笑顔を浮かべている彼女に、つい敬語を忘れてそう口にする。すると月岡さんは余計にニコニコと笑顔を深くした。普段のきりっとしたビジネススマイルとのギャップがすごい。
「あ、タメ口〜? 嬉しい」
「嬉しい?」
「はい」
だって、と酔いのせいで潤んだ瞳で彼女は続ける。
「副社長、私のこと嫌いですもん。距離すごいから……タメ口、ちょっと嬉しい」
「嫌いというわけでは」
思わず動揺してそう反論すると、月岡さんは上目がちに言う。
「ほんと? なら、好き?」
「――――ッ、月岡さん」
「はあい」
しぶしぶ、といった風情で立ち上がった彼女はその瞬間にたたらを踏む。慌てて支えると、やっぱり気の抜けるような笑顔で月岡さんは俺を見る。
「ありがとうございます」
心臓がギュン! とした。キュン、じゃないギュン! だ。
俺は何も返せない。ただ彼女を支えながら、車を停めたコインパーキングまで向かって……そうして助手席に座らせようとするも、しがみついて離れない。
「月岡さん!」
車の前で子供みたいに唇を尖らせて離れようとしない月岡さんに困り果てていると、隣に停めていた車の持ち主にじろじろと見られる。不審そうな目をしていた。前後不覚に陥った女性を持ち帰ろうとしているとでも言わんばかりの目つき……。
(……親切に迎えに来ただけなのに!)
これ以上視線に晒されたくないと、彼女を抱き上げ運転席に座った。
顎の下に月岡さんの形のいい頭がある。膝の上に感じる温かみ。熱く感じるのは、彼女が酔って体温が高いせいか? ……そのせいなのだろうか、シャンプーなのか香水なのか、ほのかに香る甘い匂い。
月岡さんの細い指が、俺のシャツを握り締めた。そうして俺の胸に猫みたいに擦り付いて楽しげに笑う。
「月岡さん……」
俺は両手を上げた。とんでもない据え膳だ。けれど抱き締めたりなんかしたら、止まらなくなる気がして――何が? 俺は慌てて頭に浮かんだ卑猥な妄想をかき消す。だめだ、セクハラだ……セクハラされているのは俺の方では? いや、どっちにせよ、我慢、我慢だ……。
だけれど密着した身体に柔らかなふたつの膨らみが押しつけられる。勝手に身体が反応する。白いシャツ越しに僅かに下着が透けて見える。真面目な彼女からは想像できない色――真紅だ。一瞬、脳内で想像してしまった。白い月岡さんの肌、それとコントラストを描くような鮮やかな真紅の下着。
「マジかよ、勘弁してくれ……」
煩悩と戦っている俺に、月岡さんが甘える声で呟いた。
「ちょっとだけ甘えさせてください……」
なんだこれ、ハニートラップ? ハニートラップなのか? 瀬波社長が、なぜ? いやそうなのだとしたら、月岡さんの普段のあのつっけんどんな態度はなんなんだ。
「分からない……瀬波社長はなぜ、あなたを俺の秘書にしたんだ?」
酔い潰れている今ならば素直に答えてくれるかも、と判断したのが半分、少し冷静になるように思考を持っていかないと恐らく彼女を連れ帰って抱いてしまうという危惧半分でそう問いかける。
月岡さんは「えー?」となぜかクスクス笑ったあと、俺を見上げて眉を下げ言った。
「わかりませえん」
「……そうですか」
「私はですねえ、副社長。私はた、孝志さんに一億円返さないといけないんですよう」
「……一億?」
眉を寄せ問い返した俺に、月岡さんはこくこく頷く。
「そうなんですよう。だからね、なんでも孝志さんの言うこと、きかないといけないんです」
「なんでも、って」
思わず反駁する。
なんでも言うことをきかないといけない……?
「だからあ、私のこと大嫌いで挨拶も毎日毎日無視する、邪魔者扱いして、嫌いだって態度をすっごい出してくる笹倉副社長の秘書だってえ、きちんとやり遂げないと……いけな……」
言っている途中でついに睡魔に負けたのか、すう、すう、と寝息が聞こえ始める。
「挨拶を無視、って」
しただろうか?
いやそれより、やはり瀬波社長との「一億円」だ。それは……。
「……俺が首を突っ込んでいい話じゃないか」
彼女は瀬波社長の愛人だか恋人だかのひとり、で……そう、おそらくはなんらかのトラブルで社内に置いておけなくなり、唐突に押し付けられた秘書。俺は適当にこなしてもらえばいい仕事だけを任せ、親しくならないように距離をおいて過ごす。
これからも。
(……なのに)
俺はつい、彼女の身体を抱き締める。
折れそうなほどに細い。温かい。すう、すう、と気持ち良さげに眠っている。
(なのに、どうしてこんなに胸が痛いんだろう?)
月岡さんの体温と、女性の身体特有の柔らかさを腕の中に閉じ込めながらそう考える。
それは、俺が冷たい対応をとろうと、どんな雑用を押し付けようと、責任を持ってきっちりこなしてくれる彼女に対する罪悪感なのだろうか?
「きっとそうなんだろう」
自分に言い聞かせるようにそう呟いて、それだけのはずなのに、どうしてか彼女を抱き締める腕の力を緩められそうにない。
甘い声に瞼を開くと、月岡さんと目が合った。ものすごい至近距離だった……もう少しで鼻先がついてしまうくらいの。
「瑛太郎さん」
月岡さんが蕩けるような声音で俺を呼ぶ。彼女の大きな瞳が三日月を描き、潤みながら俺を見つめていた。
「……え?」
間抜けな声しか出なかった。瑛太郎、……って。いつから俺をファーストネーム呼びに?
「どうしたんですか? 瑛太郎さん」
いや、ファーストネーム云々はまだいい。問題は、俺が不思議そうに表情を変えた月岡さんを押し倒している、そしてのしかかっている、という状況で──いや、というか、それだけじゃない……。
そっと視線を彼女の体の上、滑らせる。裸だった。白い肌、柔らかそうなふたつの膨らみ、細い腰……そして俺と繋がっている接合部はぬらぬらと濡れていた。
思わず身じろぐと、ナカがぎゅっと締まる。
「ぁんっ」
上ずった声に、頭の芯がびりびりと痺れる。屹立が彼女の蕩ける粘膜の熱さに包まれて、溶けていきそうなほど気持ちいい。
理性では、分かっていた。
やめるべきだ。抜くべきだ。
何があったか知らないが、どうして俺は月岡さんとセックスしているんだ……!?
なのに。
「えい、たろーさん」
月岡さんが少し舌足らずに俺の名前を呼ぶ。目を三日月にして、なのに眉は下げた物欲しそうな表情で。
「は、ぁ……っ、止まらないで……、切ないの」
月岡さんが腰を上げ、俺のを深く飲み込もうと動く。
「お願い、奥……っ、イきたくて、疼くの。痛い」
そうして俺の背中に手を回す。
耳元で繰り返される、淫らすぎる呼吸。呼吸と呼吸の合間に小さく喘ぎ声を零しながら、彼女は続けた。
「イきたいよ、瑛太郎さぁ……んっ」
限界だった。
耳元でそんな淫猥すぎることを甘すぎる声で囁かれて、冷静になれる男なんているのか?
俺は彼女の腰を掴み、ゴツゴツと最奥を貪る。いちばん奥が、抽送のたびに悦んでわななく。先端に当たるのは子宮口だろう。月岡さんの身体が、本能が、俺を受け入れるためだけに子宮を下げてきたのだと思うと、彼女を征服したような、ほの昏い充足感が胸を満たした。
たくさんイかせたい、と欲望が鎌をもたげる。達させて啼かせて、やめてと言われても腰を止めずイかせつづけたい。何度も絶頂に追いやって、俺で頭をいっぱいにしてやりたい。
ずるずると屹立が粘膜を擦る。ぐちょぐちょに濡れそぼったソコは、俺に絡みつきながらうねって吸い付く。
「あ、ぁあっ、はあっ、ふ、ぅっ」
月岡さんが足をバタつかせるから、膝裏を持って押し上げて固定した。
ごりっと突き上げる。突き上げたその最奥をかき混ぜるように動かした。
「ぁぁあ」
泣きそうな声で月岡さんは喘ぐ。
「それ、っ、だめぇ……っ、イく、イっちゃうっ」
「イきたかったくせにダメってなんだよ」
からかうように言うと、彼女の肉襞がきつく締まる。は、とあえて冷たく笑った。
「変態」
月岡さんの頬が更に赤くなる。首まで赤くして、全身の肌をしっとりと汗で湿らせて、自身の粘膜を潤ませて締め付け──
子宮口を屹立で押し潰しつつ、ぐっと陰核を潰すと、あっけなく彼女はイく。
つま先がぴん、と伸びて背を逸らせ、がくがくと震えた。堪りかねた接合部から溢れ出す温い水に、知らず唇の端を上げてしまう。
優しく彼女の下腹部を撫でた。
「イけてよかったな?」
そう声をかけると、とろんとした目で月岡さんが俺を見る。肩で速い呼吸を繰り返す彼女のナカは、未だに痙攣を続けている。
それが気持ちよくて、腰が甘く疼いた。
出したい。出したい──彼女のナカに。
本能が、身体を突き動かした。
一度抜いて後ろを向かせ、四つん這いにさせる。そうして隘路へ自身を埋める。奥へ奥へ、と導くような肉襞の動きに奥歯を嚙み締め、ゆっくりと腰を動かした。……今度は浅いところだけを意識して。自分がイきたい以上に、もっと月岡さんの乱れた顔が見たかった。
「ぁ、ぁあっ、あんっ、ふぅ、っ」
もどかしげな喘ぎ声に、興奮が高まる。
「ど、して……っ、瑛太郎さんっ、奥まで」
月岡さんが腰を高く突き出し、雌が雄を誘うかのごとく扇情的に腰をくねらせた。
「奥までシて……っ」
顔を半分枕に沈めつつ、必死な声で彼女は言う。ビクビクと震える太ももは、快楽に耐えているのか欲しがっているのか。
「分かったよ」
返事をし終わる前に、ごりっと子宮口を抉る。ひときわ大きく、腰と腰が当たる音がした。背を思い切り反らせ、月岡さんが甲高く叫んだ。「イく」とか「死ぬ」とか、そんなのが混じったものだった。
うねり続けるナカは、きゅうう、きゅううっ、と痙攣を繰り返し屹立を咥え込み包み込む。
背骨を指先で撫でる。舌で肩甲骨を舐め、甘くかぷりと噛む。
「あっ、……く」
肉襞が絡みついてくる。気持ち良すぎてバカになる。頭が真っ白になった俺は、抜けるギリギリまで腰を引き、次には最奥まで貫いた。何度も──引くとき月岡さんの肉厚な粘膜は出ていかないでと甘え、貫くときは歓迎するように締め付けた。
それはただ、吐精するためだけの動き。自分勝手な、雄の身勝手さを体現したような動きのはずなのに、月岡さんはシーツを握り身体をくねらせ、信じられないほどに感じ、悦び、枕に向かって泣き叫ぶ。
「うぁあっ、ぁぁあっ、ぁ……っ!」
もはや喘ぎというより、悲鳴だった。俺でそんなふうに乱れる彼女が……。
俺は、愛おしくて。
……愛おしい?
まさか、そんな……はずが!
「イくっ、またイくのっ……!」
混乱している俺の思考を、彼女の声がかき消していく。
「俺も……っ」
ガツガツと最奥に打ち付ける。腰が当たる音と粘膜が擦れるぬるいつた水音が鼓膜を震わせた。
月岡さんが上ずった声で啼いて全身を震わせ、ナカを健気に締め付けるのに合わせ、俺も上がってきた欲を全て吐き出す。
いちばん奥、子宮に塗り込むように緩く腰を動かしながらふと、気がつく。
もしかして、……コンドーム、してない……?
慌てて彼女から出て行く。
楔を失いシーツに身体を落とした彼女が、緩慢に振り返り目を三日月にして笑う。
「瑛太郎さん」
しどけない格好で、月岡さんが俺を呼ぶ。
俺は、ナマでしてしまったとか、そういうのを超越してどうしようもないほどに彼女が愛おしくて……ぎゅっと彼女を抱き締めた。
「月岡さん……! 必ず大事にしますから」
月岡さんをかき抱き、そう告げた次の瞬間──けたたましいアラームが鳴った。