御曹司の執着愛で淫らな愛撫から逃げられない
著者:ぐるもり
イラスト:北沢きょう
発売日:2023年 5月26日
定価:620円+税
ある日、志恩と遊びに出かけていた華はスマホを忘れていたことを思い出し家に帰ったところで
自身の姉と志恩の兄がセックスをしているところを偶然見てしまう。
いつもは聡明な姉が、志恩の兄を責め立てているのを見て男女間の複雑な関係を知ってしまう。
弟の志恩ももしかしてそんな性癖?とギクシャクしてしまい、華は志恩との関係に距離ができてしまったのだった。
その後、華は女子大に入学し一人暮らしを始め、現在は装丁デザイン事務所で勤務。
現在の職場でうまくいかず落ち込んでいた華は偶然志恩と再会し――。
「……華ちゃんが俺に会いたいって思ってくれたらいつだって駆けつけるよ」
その後、志恩の家で過ごすことになった華は……!?
【人物紹介】
白井華(しらい はな)
装丁デザイン事務所で勤務する29歳。
細かいことは気にしない。懐が深い。真面目で時々どん詰まりになる。
志恩がずっと好きだったが、近すぎて気づかなかった。
黒井志恩(くろい しおん)
29歳。KUROIグループの跡取り。
粘着質。例え自分が傷ついても遠回りしても確実な道を選ぶ。
近所に住んでいた白井家とは苗字が正反対で似ていることもあり交流が始まる。
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【試し読み】
不穏な願望を全身で感じながらも、私の鼓動はもうはち切れんばかりに早くなっている。ああ、私の好きな人だ。高校のとき、抱き留められたときからずっと会いたかった好きな人。それが今目の前にいる。
「うん」
なんて言ったらいいか分からない。だけど、もう知らない男の人じゃない。近づく志恩に少しだけ首を傾けて、キスを受け入れる。その間にも、器用な手は私の背中をまさぐっていて、散々恥ずかしがった下着も胸を支える位置からずれている。独特の拘束感から解放されると、手で隠しているのもばかばかしくなってしまった。
「そうそう。素直になって。これは二人にとって喜ばしいことなんだから」
自信満々な口調だが、私からブラジャーを取り去る手つきは壊れ物でも触るかのように優しい。もう少し体を起こしてキスをねだると、志恩は目を真ん丸にした。だけどすぐその目を嬉しそうに細めた。
「夢みたいだ」
「夢じゃないよ。私も、志恩もここにいるんだから」
触れ合う唇で互いの存在を確かめ合う。舌を絡めるキスはまだ慣れないけど、これから経験を重ねていけばいい。ブラジャーとワンピースが体を隠す意味を無くしたとき、志恩の手が胸に触れた。
「ひゃ、っこい」
志恩の手はいつも冷たい。心が優しい人は手が冷たいなんて迷信も今は本当なんだろうなってぼんやりした頭で考える。
「冷たい?」
「ううん。私が熱いくらいだから……」
互いの体が混ざり、心地よい温度に変わる。それを狙ったように大きな手が乳房の形を変えていく。
「っ、ん……」
喉の奥から甘い声が漏れる。最初は遠慮がちだった動きが少しずつ大胆さを増していく。
「もっと、聞かせて」
「あ……は、ぁ」
鼓膜をダイレクトに刺激され、体の力ががくんと抜けた。少し起こしていた体が倒れ、ベッドに身を預ける。魔法でもかけられたのかと思ってしまうほど、うまく動けない。
「かわいい。先端が赤くなってきてる」
「や、ぁ――んうっ!」
今しがた口にした場所をきゅっと捻られる。詳細に言わないでと反論しようとしたが、無理だった。痛くないけど、感じたことのない刺激だった。
「華ちゃん、かわいいよ。もっと俺にいろんな顔を見せて」
「わた、し今……」
どんな顔してる? そう尋ねるが志恩は教えてくれなかった。
「華ちゃんも知らない、俺だけが知ってる」
真っ黒い瞳が私をのぞき込んでいる。それだけで私の胸は高鳴って、自分ではどうしようもなくなる。はやく、もっと。なんて考えが浮かぶほどに。
「大丈夫。気持ちいってことだよ」
首筋にキスが落ちてくる。今気づいたけど、志恩がキスした場所がどこも赤く色づいている。赤い色を見つけるたび、志恩の執着を感じた。
「あ、ああっ、」
そうしている間に、熱い舌が肌の上を這う。全部食べるって言ったのは嘘でも比喩でもなんでもなくて、本当だった。首、鎖骨、乳房の上を通って、赤く腫れた先端にたどり着く。ねっとりと形と味を確かめるように舐められる。恥ずかしい、よりもどうしよう。こういうとき、どんな声を? なんて考えながらも丁寧な愛撫に私はすっかり骨抜きだ。
自分を取り繕うこともできず、志恩が舌を動かすたびに、子犬のように鳴くしかなかった。
「し、おん」
それでも合間に名前を呼ぶと、愛しい人は嬉しそうにキスをしてくれる。肌の触れ合いが増えるたび、お腹の奥底がずくずくと疼く。初めてだらけのことなのに、なんの疑問もなく受け入れてる私っておかしいのだろうか。でも、私の体を撫でる手も、舌も全部心地がいい。流され上等、だって私は志恩が……。
「――あっ!」
太ももの内側。一番柔らかいところにびりっとした痛みが走る。ジワリと広がる痛みから噛みつかれたのかもしれないと想像できた。
「何考えてる? 集中して。俺が好きなら、俺を見て」
ショーツ一枚残った下半身……足を持ち上げて、志恩が私を見下ろしていた。なんか、しろにいの気持ちが分かるかもしれない。いや、わかっちゃいけないのかもしれないけど、こうやって大好きな人が自分だけを見て欲しいと意地悪してくるの。あまり感じたことのない感情。
(優越感)
「っ、ひい」
噛まれたところをもう一度舐められた。痛みと一緒に体中にしびれが走る。体がしびれると、お腹の奥がまた疼く。そのずくずくとした感覚だけがまだ慣れなくて、怖い。熱が集まって、どうにもならなくなってくる。段々、その時間が長くなってくるのは志恩の愛撫が私のイイところを探り当てたからなのかもしれない。
「っ、ん、ぁ」
私でも知らない気持ちイイ場所。首筋、乳房の先端、左の脇腹、右の太ももの内側。志恩は重点的に舌で虐める。今まで一度も出したことないような声が喉の奥から湧き出てくる。
「そこ、やあっ――」
「本当に? 体は喜んでるよ?」
「うう、っ、ずる、い」
そんなに大きくもない乳房が形を変えている。どうやら私は左の乳首の方が弱いらしく、そっちを甘く噛まれると背中がのけぞってしまう。いやだけど、いやじゃない。これが複雑な乙女心。この年になって初めて知ったことだらけだ。気持ちいいことでいっぱいになると、自分の振る舞いにも余裕が無くなる。両方の手で顔を隠したり、(志恩にすぐに取っ払われてしまった)膝を立てて小さく縮こまろうとしたり、(これもすぐに志恩に解された)シーツをぎゅっと掴んだり……(その上からそっと手を結ばれて照れくさかった)とにかく自分でも何が何だか分からない。
(けど……)
私は所在なさげに視線をあちこちさ迷わしていたが、やっと本来の位置に戻るために努力した。
「し、お」
甘ったれな私のお願い。いつも清潔なシャツに身を包んで隙のない志恩。でも、こんなときにもそんな姿が見たくない。シャツの襟部分に指を差し込んで、布越しの熱を感じる。
「これ、やだあ」
「華ちゃん?」
私を見下ろしていた志恩の目が真ん丸になる。
「さみしい。ちゃんとぎゅっとして」
子供のような懇願だった。私は志恩のように器用ではないため、ボタンを外すのに苦労した。指が震えているため、外せない。
「できない……」
「ん。ごめんね」
私の腕と手を首に導くと、志恩は片手でボタンを外し始めた。ひとつ、ふたつ。少しずつ肌が露になって、志恩が腕を袖から抜いた瞬間、堪らなくなってひっくり返す勢いで抱き着いた。
「う、わ!」
今日一番志恩の驚いた声が響いた。シャツを脱ぐのに集中していたせいか大きな体がぐらつく。その勢いのまま私が志恩をベッドに押し倒す形になってしまった。けど、ひろ~いキングサイズのベッドは私達がじゃれたくらいではびくともしない。
結果として押し倒すような形になってしまったが、肌と肌のぶつかり合いには成功したようだ。目を真ん丸にした志恩を眼下に、一瞬だけ時が止まった。
「……し、お」
「はなちゃん……」
志恩の唇が私の名前を呼ぶ。その瞬間私は弾かれたように唇に吸い込まれた。少し口を開いて、舌を伸ばす。視界の最後に映った志恩の目はやっぱり驚きで真ん丸だった。けど、キスが始まってしまえば互いの舌がすぐに絡みあう。
「っ、ふ……ぁ、ん」
ぴちゃぴちゃと唾液が絡まる。互いの存在を確かめあうように何度もキスを繰り返した。上に乗っかっていたはずだが、いつの間にか姿勢が逆転して、私の上に大きな体がのしかかっている。重くって苦しいはずなのにキスで粘膜が触れ合い、肌が重なるとそんなことはどうでもいいと思ってしまう。
(きも、ちいい)
腹の奥が疼く。何かが足りないと叫んでいるようだ。重みに慣れてくると、下腹部に押し付けられている質量に気づく。
「っ、あ」
少しずつ分からせるように、押し付けられる。それが私の足りないものだって気づく。
「はな、ちゃん」
大きな手が内ももを撫でる。そしてその手がショーツのゴムにのびてくる。ゆっくり下ろされると、じっとりと濡れていることに気づく。足を少し上げると、いとも簡単に取り払われた。
「ああっ!」
長い指が誰も知らない場所に触れる。今までにない刺激に、私は一層高い声を漏らした。知らない水音が響いて、私は絶え間なく声を漏らす。堪らなくなって志恩を見つめると、真っ黒い瞳が私だけを見ている。吸い込まれそうだ。でも、これほど恋心を寄せる人が私だけに。そう思うと自然を口角が上がる。私こそ志恩を閉じ込めたい。
「っ、あっ」
ぐぷりと長い指が、ナカに入ってくる。感じたことのない質量と感覚。鈍い痛みと、圧迫感。でも、嫌じゃない。何も話さない志恩にも余裕が無いことは分かったが、私が辛くないようにしてくれている。いっそもう貫いて欲しいと思ってしまうほどにもどかしい。初めては痛い。それはきっと誰もが通る道だ。だけど、今はその瞬間が待ち遠しい。指の質量に慣れて、痛みの奥にある快楽を体が拾い始めた。苦しい声の中に甘い声が混じる。ああ、もう指の熱がもどかしい。体に押し付けられる、志恩の欲望が欲しい。
「ん、あ、しお……」
さみしいよお。絶え絶えになる呼吸の合間にそう願った。志恩が欲しいとばかりにダラダラと足を粘液が伝う。体も心も全部志恩を願ってやまない。
「華ちゃん。大好きだよ」
一層、深いキスが降ってくる。志恩の蕩けた嬉しそうな顔。私しか知らない。
「ん、ふ。私しか、知らない志恩」
嬉しくって思わず声に出してしまう。
「うん。全部、華ちゃんのだよ」
大きく足を持ち上げられる。互いに身に着けているものはもうない。志恩が体を起こす。大きな体に見下ろされ、もう私は手を伸ばした。
「ね、は、やく」
先ほどまで私を翻弄していた指が、見たことのない塊を擦っている。私の中心部から溢れた粘液が、志恩の塊と交ざる。
そんな光景に、私は酷く嫉妬してしまった。自分より先に……なんてバカなことを考えてしまうほどに私は飢えていた。
「華ちゃん。やっとだ」
多分、避妊具をつけていたんだと思う。薄くてらてらと濡れた塊が私の中心部に押し付けられた。
「……っ、あ」
入るのだろうか。本当に。一瞬だけ怖くなった。でもそれは本当に刹那で、あてがわれた熱を肌で感じた途端。
「ん、うう!」
体の中心を割かれるような痛みを感じる。
「っ、い」
痛い。そう叫びたくなった。でも、そんなことより大切なことがある。私は思い切り志恩を抱きしめて、ゆっくり口を開く。
「志恩、だいすき」
唇を寄せて、そう口にしてキスをする。
「俺も、華ちゃんだけを愛してる」
その瞬間、息が詰まるような重みを下腹部に感じた。ずん、と奥まで突かれてたのだ。痛い。めっちゃ痛い。この世にこんな痛みがあるのかっていうくらい痛い。
「華ちゃん、俺を見てて」
頭を撫でられ、甘い声が流れ込んでくる。そろりと目を開けると、真っ黒な瞳が私をのぞき込んでいる。ふうふうと荒い息を整えて、小さく頷く。
「痛いよね。ごめん……でも俺はすごく気持ちい。」
「うん……」
温かい唇が顔のあちこちに落ちてくる。大きな手で撫でられた体はすぐに痛みを忘れた。
「少し動くよ」
「、う、ん」
にちゃにちゃと聞いたことない音が下半身から聞こえる。体に痛みは残るけど、心はもっととねだってしまう。何よりいつも綺麗で余裕のある志恩の声がかすれている。耐えている、我慢している。そんなの気持ちがありありと伝わってくるのだ。そんな志恩の全てを受け入れたくて、私は自分の体を押し付ける。
「あっ、ん、ぅ……あぁ」
「はな、ちゃん」
控えめだった水音に、肉がぶつかる音が混じる。これも全然聞いたことない音で、初体験だらけ。ちょっと痛くて苦しい。だけど、満たされて止まない。嬉しい、幸せ……大好き。私はどうにもならないこの感情をぶつける場所が欲しかった。
「つかまって。俺だけに縋って」
奥を打たれる。優しく、出し入れする塊に私はすっかりとりこになっていた。長い間離れていた期間をやっと埋められた。私は思い切り志恩にしがみつく。一番深いところで繋がっているのに、それだけでは物足りない。だからもっとそばに。そんな強い思いが全身の隅々までいきわたる。そのせいで多分爪を立ててしまった。指先から伝わる何かに食い込む感触も初めてのこと。
「っ、あ、や……ご、」
「いい。そのまま。そのまま俺に刻み込んで」
そんなセリフに一瞬怯む。もしかして傷つけて欲しい? なんて冷静になってしまった。やっぱりおねえちゃんと……と思ってしまったところで、キスに思考を奪われた。ぬるぬると舌が口の中を犯していく。呼吸を奪われるようなキスに、懸念はすぐに消え去った。
「華ちゃん、ダメだよ。他の人のこと考えちゃ」
ずぐ、とお腹の奥に強い衝撃を感じた。
「中がきゅうきゅう俺のこと締め付けてくる」
前髪を掻き分けて、私を見下ろしてくる。その顔はとっても幸せそうだ。汗の流れる額から、一粒私の腹に水滴が落ちた。息も荒く、互いに余裕はない。
「あ、んう。し、お」
「華ちゃん、愛してる」
「あ、わたしも……」
一生離さない。君だけを見てる。誰にも渡さない。そんな独占欲を何度もぶつけられた。痛みに少しだけ縮こまっていた体も、すっかり解されて今は快楽を受け入れる器となった。初めてなのに、きもちいい。肌を撫でる手も、私のナカを虐める塊も、声も、目も全部が私を大好きだって言っている。言葉にしなくても分かる愛に私はすっかり骨抜きだ。
「あ、ああ……しおん、すき、すき」
気持ちよくって体が浮く。できた隙間に志恩の手が入り込んで支えてくれる。体勢が変われば気持ちいい場所も変わる。揺れる胸、志恩を求めていやらしく揺れる腰。なんだか知らない世界に連れていかれそうだ。
「こ、こわ、こわいよ」
「怖くないよ。気持ちいいから、一緒に頑張って」
ぐ、ぐ、とさらにナカに入り込んでくる。まだ来るの? どこまで入るの? そんな風に思っている間に、体がびくびくと跳ねた。
「あっ、ああ!」
「っ、引きちぎられそう、だ」
ぽたぽたと志恩の汗が私の肌の上を滑っていく。気持ちよくってもう自分を押さえていられなかった。半分叫びに近い喘ぎ声が出て、ナカからじゅわりと粘液がさらに溢れた。
「華ちゃん、俺も……」
「あ、来て! 来てぇ……!」
互いの肌をこれでもかとくっつけて、舌を絡める。肉のぶつかり合う高い音が響いて、キスの端から漏れる私の声とリンクする。
「っ、はな、華……」
最後、唇が離れた瞬間また名前を呼ばれた。志恩が呼んでくれるだけで自分の名前が特別になる。私もなんとか気力を振り絞って口を開く。
「だい、すき……」
かすれて、言葉にもならない音だった。けれども志恩はしっかり受け取ってくれた。最後にいつもの綺麗な笑みを見せて、薄い隔たり越しに白濁を体で受け止めた。