エリート御曹司の隠しきれない独占愛

書籍情報

エリート御曹司の隠しきれない独占愛


著者:雪宮凛
イラスト:旭炬
発売日:2021年 2月26日
定価:630円+税

会社の飲み会で珍しく酔いつぶれてしまった依紗は、意識を取り戻すと上司である匡輝に介抱されていた。
普段は厳しい彼の心配をよそに、仕事のことを相談することもできない依紗は、「彼氏ができなくて悩んでいる」と小さな嘘をついてしまう。
それを聞いた彼の態度は甘やかに一変し――その夜を境に、ただの上司と部下だった二人の関係が変わり始める。
「真面目なふりをして……本当はこういうことに燃えるのか?」
匡輝は甘く優しく、そして少し意地悪に依紗を口説き、情熱的に快感を教え込んでいき――!?

【人物紹介】

宮内依紗(みやうち いすず)
久我商事の企画部で教育係をしているが、上手くこなす事ができず悩んでいる。
距離を置かれがちの匡輝に対しては、仕事に対するストイックな姿に逆に好意的に見ていた。
飲み会の夜以来、匡輝が自分にだけ見せる優しい姿に戸惑いつつも惹かれ始めている。


久我匡輝(くが まさき)
久我商事の企画部の課長であり、御曹司。
しかし、家柄や後ろ盾に甘えておらず、仕事に手を抜かず厳しい姿勢が同僚や部下からは厳しい人として距離を置かれている。
ストイックな姿勢の反面、好きな女性は溺愛するタイプ。


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【試し読み】

(課長が……私を、好き?)
 度重なる精神への衝撃は、依紗の認識力、理解力を著しく低下させていく。
 しかも、衝撃がどれも大きすぎるせいで、脳内処理がまったく追いつかない。
 目の前で次々起こる現実を、数秒遅れで理解するのがやっと。そんな状態に、一際大きな爆弾を落とされたせいで、感情の処理が完全に止まった。
「…………」
 頭の中が真っ白になった依紗は、もちろん久我の宣言に反応なんて出来る訳もない。
 見開いた瞳に、ふと楽しそうに笑う上司の姿が映る。
 加えて、慈愛に満ち溢れた眼差しまで向けられてしまい、戸惑いの中にほんの少し気恥ずかしいような、嬉しいような、不思議な気持ちを抱いてしまう。
「……? おい、どうした?」
 無言のまま自分を見つめる部下の様子を不思議に思ったのか、こちらの様子をうかがう久我の声が聞こえる。
 思わず息を呑んだ依紗の脳裏には、無意識に反応したのか〝あの夜〟の記憶が鮮明によみがえっていく。
 柔らかくて熱く、ほんの少しカサついた彼の唇の感触。
 口内を蹂躙し、弱い所を責め立てる舌使いと、クチュクチュと木霊する淫靡な水音。
 一つ一つ思い出すたびに、全身が熱くなっていく。ドクドクと脈打つ心音が速くなる。
「あ……あ……っ」
 依紗の口から洩れ出るのは、問いかけの返事では無く、言葉にすらならない音だけ。
 大きな戸惑いが、彼女を壊れたロボットにしていく。
 そんな最中、久我は慈しむ視線をそのままに、自分の額を依紗のそれと重ねた。
 不意を突くように与えられる額からの熱に驚き、依紗は無意識に身体をビクつかせる。
「大丈夫だ、何もしない」
 額をくっつけたまま囁く彼の声が聞こえる。何もしないと言う癖に、おでこをくっつけたまま離れていかない上司。
 彼のチグハグな言動が、不思議と嫌と思えないのは何故か。
 依紗は頭の中に浮かんだ疑問を気にしながら、久我匡輝に対する印象と記憶を思い起こした。

 最初の印象は、他の社員たちと同じく〝怖い人〟だった。
 それでも、少しずつ仕事で関わるようになってからは、彼の叱責に織り交ぜられたアドバイスに気づき、自分へ向けられる厳しい言葉も、彼の本気だと理解した。
 久我の仕事に対する一途さと熱心さを知った依紗は、以来悪い印象を抱かなくなった。
 厳しい上司と、彼の不器用な優しさを知った部下。なんて関係が数年続いていたのに、二人の関係はあの飲み会の夜、確実に変わった。
 あの日の久我は、依紗が初めて見聞きする一面を惜しみなく見せてくれた。
 いつもの分かりにくい優しさと違う、戸惑いすら覚える甘く優しい言動をたくさん自分へ向けてくれた。
 彼が発する熱い言動と、溶けそうになるくらいの優しさに心の奥まで満たされた。
 あれ以来、気を抜くといつも久我を目で追いかけた。意識するなと思えば余計気になって、いつも一人でドキドキしていた。
 毎晩、ベッドに横たわるたび、依紗の中で〝あの日の記憶〟が鮮明によみがえる。記憶の中にいる久我は毎夜優しく笑い、意地悪く耳元で囁くと、部下の身体を容赦なく弄ぶ。
 記憶の中の久我が喋るたび、彼の舌や指先の感覚を思い出すたび、恥ずかしさとは違う熱が、依紗の体内から湧き上がった。
 その熱を逃がしたい一心で、彼女の手は無意識に胸元や股下へ伸び、依紗は毎夜声を押し殺しながら不慣れな自慰に耽っている。
(わたし、は――)
 これまでのことを思い返して、どこか宙ぶらりんでわざと目をそらしていた自分の気持ちに、依紗はようやく名前をつける。
 改めて、彼の顔を間近で見つめると、自分とは違う切れ長な瞳が色っぽく見えた。
 こちらの返事を待つのに手持ち無沙汰だったのか、彼の大きくて硬さのある指が、何度も優しい指使いで依紗の手の甲を滑っていく。
(もう。何もしないって言ったのに……)
 ついさっき聞いた宣言を思い出しながら「このくらいは許容範囲か」と、苦笑混じりの吐息が口から零れた。
 毎日思い出すだけだった熱が、感触が、肌を通して伝わってくる。仕事中は、出来るだけ見ないようにしていた視線を、今は間近で見つめられる。
 すぐそばに久我が居る。その小さな現実が、依紗の心をあたたかくし、震わせる。
 一度認めれば、心の中にあったしこりが取れてストンと〝二人の想い〟を受け入れられた。
 たった数秒か、それとも数分か。短くも、長くも感じる止まったままの時間を、依紗は少しずつ動かしていく。
 まだ長時間見つめられず、無意識に閉じた瞼をゆっくり押し上げると、触れてくる無骨な手をかわし、ぎこちなく持ち上げた両腕を彼の背中へ回した。
「……っ!」
 手のひらが、自分より大きな背中に触れた瞬間、今度は久我の身体がビクッと震える。
 次第に開けていく視界には、大きく目を見開いた彼の顔が見えた。
 お互いの目が合った次の瞬間、力強い腕に抱き込まれ、触れるだけだった口付けが一瞬で荒々しく濃厚なものへ変わっていった。

 その後、今が仕事中なことも、自分たちが会議室にいることも忘れ、二人はギュッと相手を抱きしめ、身体を密着させる。そして、休む間も惜しみながら、何度も唇を重ね合った。
 依紗が抱き着くまで久我が待っていたのは、きっと逃げるチャンスをくれたからだ。
 好きな女性を前にしても、最後の逃げ道をきちんと残してくれる優しさに感動し、思わず依紗の胸がキュンと高鳴る。
(課長……好きです。すき――)
 認めたばかりの想いを、自分から口にする勇気が持てず、少しでも気持ちが伝わるように、何度も口の中を愛撫する久我の舌へ、自分のものを絡めていく。
 舌が擦れるたび響く水音が、身体の奥から湧き上がる興奮と羞恥心を増幅させた。
「ん、ふ……んっ、はぁ……はぁ、はあ……」
「んっ……」
 久我が満足したのか、離れる一瞬さえ惜しんで重ねられた唇が離れていく。
 キスに夢中になるあまり、軽い酸欠状態だった依紗は、頬を上気させ、新鮮な酸素を求めて浅い呼吸を繰り返した。
 二人の唇を繋ぐ銀の糸は、あっという間に久我に舐め取られ、一度ペロッと自分の唇を舐めた彼は可愛らしいリップ音を響かせながら、また一瞬依紗へキスをする。
 酸欠状態でふらつく依紗が倒れないのは、腰に回された上司の力強い腕に抱き留められているからに違いない。
 激しく濃厚なキスのせいで、依紗の久我を見つめる瞳はすっかり蕩け、意識も少しぼんやりしている。
 口元は、すぐにでも舌の侵入を許す半開き状態で、彼女は蕩けた表情のまま彼を見上げた。
 すると、頭上から「可愛すぎるだろう。まったく」と、呆れと愛しさを含んだ独り言が聞こえてくる。
 その言葉が自分へ向けられた言葉と気づかない依紗が、コテンと首を傾げる姿に、久我はますます目を細め、口元の笑みを深くする。
 慣れないキスですっかり力の抜けた依紗は、呼吸が整うのを待ち、上司に支えられヨタヨタと歩き出す。
 久我が、一番近くにあるテーブルからパイプ椅子を引くと、一足先に自らが腰かける。
 その様子を見つめていれば、突然両脇の下を掴まれ、ふわっと身体が宙に浮いた。
 唐突すぎる浮遊感に「えっ!」と驚きの声を上げるのと同時に、今度はストンと何かの上に座らされる。
 一瞬、何が起きたのかわからず、ゆっくり状況を確認すれば、どういう訳か上司の膝の上に座っている自分がいた。
 しかも、向き合う形で座らされたせいで、依紗は久我の太ももを跨ぐ体勢になる。
 強制的に脚を開かされ、スカートの裾がずり上がっていくのがわかった。
「ふえっ! か、課長、何をしてるんですか!」
「こうした方が、離れなくていいだろう?」
 思いもよらない体勢に驚き、意識が置いてけぼり状態の依紗は狼狽えだす。そんな彼女を見つめる久我の瞳は、どこか満足げだ。
 一人でアタフタする依紗の視界に、ふと会議室内の光景が映り込んだ。
 その大半を愛する人で占める視界の端に数秒映り込んだ背景は、久我とのキスですっかり溶かされた理性の一部を復活させる。
(そ、そうだ。ここ、会議室じゃない!)
 そのまま忘れてはならない現実を思い出した依紗は、勢いよく後ろを振り向き、会議室のドアを凝視する。
 アタフタする彼女とは対照的に、久我は片腕で依紗を支えたまま、もう片方の手でずり上がったスカートの下から顔を覗かせる太ももを撫でていく。
「んっ! か、課長。誰か、来ちゃいますよっ」
「心配はいらない。ここは内側からしか施錠出来ないし、ちゃんと鍵はかけた。それに……使用中のプレートも出しておいた」
 恥ずかしさに任せて依紗は身体を捩り、抗議の声を上げる。彼女なりの精一杯の抵抗だが、久我は苦にする様子もなく、手をいやらしく動かすことを止めない。
「でも……でも、ここは会社で、今は仕事中……」
「だったら、今日は止めるか? 止めていいなら、な?」
 一部復活したものの、ほぼ理性が溶けた思考では、言葉で久我を負かすなど不可能。
 半分以上溶けた思考で必死に絞り出した言葉は軽くあしらわれ、彼は意味深な熱い視線を向けてくる。
 そして、今まで太ももを撫でていた彼の手は、スカートをグッと限界まで上に押し上げ、ストッキングに覆われた下着を露わにした。
 そのまま、いやらしい手つきでストッキングと下着、両方の内側へ滑り込んでいく。
「ひゃあっ!」
 突如、下着の中へ侵入してきた指に驚いた依紗は、小さな悲鳴を上げ、ビクビクと震え上がった。
 所在なさげにさ迷っていた彼女の両手が、安定感を求め、自分を抱きしめる久我の両肩へ伸び、キュッとスーツの肩口を掴む。
「か、課長、やめ、んんっ!」
「ほら、このまま噛んでいろ」
 二人の周囲にはあっという間に妖しい雰囲気が漂い、本能的にマズいと思った依紗が口を開くと、口元に角ばった人差し指が差し出され、そのままグイっと押し込まれる。
 強引に噛まされたのは、今しがたまで彼女の腰を支えていた久我の手、いや指だ。
 依紗が無意識にバランスを取ろうと自分の肩に手を置いたことに気づいて、久我は少しでも外へ漏れる声を抑えようと自分の指を噛ませた。
「ん、ん、ふー!」
 噛めと言われて、素直に出来るわけもない。
 依紗は、歯を立てちゃダメだと自分に言い聞かせながら、押し込まれた上司の指を唇で挟む。
 口を大きく開けようにも、口を開こうとするたびに指が奥へ押し込まれ、息苦しさが増すだけだった。
 戸惑いが消えず、必死に抗議の声を上げる。それでも、指が引き抜かれる気配はない。
 それどころか、大声を出さない依紗の様子を確認した久我は、下着の中に滑り込ませた指数本を動かしていく。
 彼の無骨な指は、秘部を覆う茂みをかき分け、奥にある溝をゆるゆると撫で上げる。そして、襞に覆われた秘芽と、そばにある蜜壺を探しあてれば、喜々として、すっかり涎を垂らしたそこを苛めだした。
「ふん! ん、ん、ンンー!」
 全身に駆け抜ける甘い刺激に驚いた依紗は、一瞬身体を硬直させる。だが数秒もすれば、断続的に続く久我の愛撫で、身体の至る所で緊張と緩和を無意識に繰り返してしまう。
 咄嗟に掴まった肩から手を離せず、プルプルと腕の筋肉を震わせる。
 猿ぐつわ代わりに押し込まれた久我の指。それを食む唇の端からは、飲み込めなかった唾液がツーっと筋状に溢れていった。
 依紗が声を上げたり、唾を飲み込むたびに、その反動で舌先が口内の指に触れる。
 ペロリと指を舐めるたび、嫌でも目の前にいる彼を意識させられ、新しい羞恥心が蓄積されていくのがわかる。
 それからしばらく、時折、彼女の声に混じって、ジュッ、ジュッと不思議な音が二人の間に響く。
 その正体が、唾液に浸った指を、自分が無意識に吸った音だと、彼女はまったく気づかない。
「もうグチャグチャじゃないか。真面目なふりをして……本当はこういうことに燃えるのか?」
「……っ!」
 何度言葉にならない声を上げても、久我からの愛撫は止まず、すっかり困り果てた依紗の耳元で、彼は至極楽しそうな声を上げた。
 彼の指摘に、思わず全身を強張らせた依紗の耳に、蜜壺から溢れた愛液をクチュクチュとかき回すいやらしい音が聞こえてくる。
 中でモゾモゾと上司の手が動くたび、決して厚くない下着の表面がデコボコと形を変えていく。その様子に驚く依紗の反応を楽しむように、久我はよりはっきり卑猥な音を奏で、彼女の蜜壺と秘豆を責め立てる。
(こんな、こんなこと……ここは会社で、今は仕事中、なのに――!)
 次々と襲い掛かる快感の波に、依紗は我慢出来ず両脚をバタバタ動かし、止めてと頭を振ってより一層激しく抗議する。
 一度理性を取り戻したせいで羞恥心は消えず、すでに彼女の顔は熱く火照り真っ赤になっていた。
「ほら、ここを触ると気持ちいいだろう?」
「んんっ!」
 狼狽えっぱなしの依紗の耳元へ、突如久我が顔を寄せ囁く。同時に蜜壺の縁をなぞられ、ゾクゾクと腰から脳へ快感が駆け抜ける。
 恥ずかしさのあまり、いつの間にか閉じていた目を開けば、間近でジッと自分を見つめる上司と目が合った。
 その途端、心の奥底から今まで感じたことのない想いが湧き上がってくる。
 平日の昼間。他の社員たちが仕事を頑張る最中に、自分たちはこうして人知れず二人きりの時間を過ごしている。
 しかも相手は、ついさっき好きだと自覚した仕事に厳しいと評判の上司。
 身長差のせいで、いつも見上げてばかりな彼の顔を、今、自分は彼の膝の上に座って見下ろしている。
 みんなに隠れて〝イケナイこと〟をしている背徳感に、じわじわ心を侵食され、威勢の良かった抵抗は次第に威力を失っていった。
 終いには、チュッチュッと甘えるように久我の指にわざと吸いつく程だ。
 目尻を下げて、瞳を蕩けさせる依紗の表情を見た久我は、ようやく彼女の口に突っ込んでいた指をゆっくりと引き抜いた。
「……ぁ、ん」
 ジュポッと淫靡な音を立てて引き抜かれた指を、無意識に目で追いかける。
 長い時間そこにあったモノが消えたからか、これまで久我の指を突いていた舌が何もない空間をさ迷う。
 チロチロと口内で舌を揺らす依紗の視線は、すっかり唾液でベトベトになった上司の指から離れない。
「……んっ、はぁ」
「な、なんでっ!」
 濡れた指を自分の口元へ持って来た彼は、まるで目の前にいる依紗に見せつけるように、唾液まみれのそれをジュルッと舐めた。
 その光景は、ただでさえ熱い依紗の身体を恥ずかしさで更に火照らせていく。
 短い疑問文しか口に出来ない彼女を前に、久我は指の付け根から指先まで何度も舌を往復させ、時々自ら指を口に含んで吸い付く。
「ん……だって、勿体ないだろう? お前の汗も、唾液も、涙も……余すことなくすべてが欲しいんだ」
 震える声で短く発した問いに、満足げに指から口を離した上司が答える。
 彼の口から紡がれる言葉は、色んな意味で衝撃的だ。
 ボッと頭が爆発する勢いで羞恥に身を焦がす依紗は、ドキドキする心音の煩さと軽いパニック状態のせいで言葉を返せず俯いてしまう。
「さて……こっちはどうするか」
「ひゃあっ!」
 少しの間無言になって、深呼吸でもして心を落ち着かせたい。なんて依紗の気持ちなど知らぬ久我は、一旦止めていたもう片方の手を再び動かす。
 愛液が染み出す下着の中で、バラバラと無造作に動く指が生みだす快感が、身体をビクつかせる。しかも今度は秘豆を重点的に責められ、先程より強い快感が依紗を襲った。
 強い衝撃に思わず久我の肩に置いていた手を放し、彼の首に腕を回して抱き着いた。
 絶え間なく襲い来る快感に「あっ、あっ、う、ンンッ」と、彼の耳元で小さく喘ぐ。
「依紗」
「……?」
 不意に愛撫が止むと名前を呼ばれ、何事かと、抱き着いた際に密着していた上半身を少しだけ離し、彼の顔を見つめる。
「声を我慢できるなら、一緒にイクか?」
 たった数センチの距離で提案された彼の言葉を、依紗は数秒遅れで理解した。
 そのせいで、再び湧き上がる恥ずかしさに、彼の太ももに自分の脚を擦りつけながら、モジモジと心の中で自問自答を繰り返す。
(今は仕事の時間、なんだから……こんな事してちゃ、イケないのに)
 頭の片隅でわずかに残っていた理性が、このままじゃいけないと引き留める。
 しかし、その比重は、依紗の心の中で本当に少しでしかない。
 ここへ来て、久我とキスを交わした時からずっと火照り続ける身体。
 キュウキュウと何かを求め、疼き続ける下半身の奥が切なくて仕方ない。彼ならきっと、この疼きを止めてくれるに違いないと、依紗には確信に近い思いがあった。
 そして何より、今ここで仕事に戻ってしまえば、好きだと自覚した彼との密会が終わってしまう。
(もっと、一緒に……)
「……ん」
 この人と、もっと一緒の時間を過ごしたい。
 本能に背中を押された依紗は、小さく肯定の声を上げ、コクリと一度だけ頷いた。

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