年上旦那さまの溺愛本性 〜淫らな欲望はもう隠さない〜

書籍情報

年上旦那さまの溺愛本性 〜淫らな欲望はもう隠さない〜

著者:斉河燈
イラスト:すみ
発売日:12月25日
定価:610円+税

おにぎり専門店で働く恋都は今日、十四歳年上で仕事もできる優しい美丈夫の桜亮と結婚する。
大好きな彼と結ばれて幸せな反面、恋都は桜亮がたまに見せる無機質な笑顔の理由が分からず、本音を隠されているようでもやもやしていた。
さらに、初夜にすら自分に触れようとしてくれない桜亮に恋都は、「本音を隠すみたいに笑うの、もうやめて……!」と涙ながらに訴える。
「俺の頭の中を知っても、逃げていかない?」
その言葉を皮切りに、美しい夫は本性を現して、恋都をみだらな妄想の世界に沈める——!?

【人物紹介】

久野谷 恋都(くのたに こと)
おにぎり専門店の店員で、そこで桜亮と出会う。
桜亮にもっと自分の前で隙を見せてほしいと願っている。
真面目すぎるがゆえに傷ついた過去があり、真面目と言われるのが苦手。

久野谷 桜亮(くのたに おうすけ)
鶯谷商事のマテリアルリソース本部で働くエリート商社マン。
長身と凛々しい相貌から硬質な印象を受けるが、物腰が柔らかく優しい

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*取り扱いサイトは、各書店に掲載され次第、更新されます。

【試し読み】

 囁く声が、わずかに反響している。シャワーがさあっと流れる音。浴室内だ。
 そう気づいて、閉じかけていた瞼を持ち上げる。
「ん……」
 頼りなく焦点を結んだのは、壁の半ばにある四角い窓のようなもの。
 そこには恥ずかしげもなく、脚を大胆に広げた女性がいる。誰だろう? わからないけれど、パックリと開かれた場所が赤く熟れて、てらてらと光るさまが神秘的なほど艶っぽくて……数秒後、それが鏡に映った自分だと理解し、やっと羞恥心で目が覚めた。
「やっ……!」
 そう。桜亮さんは立ったままわたしを前向きに抱えていた。
 わたしの太ももを摑み、左右に開きながら、だ。
「や、いや、桜亮さん、だめっ」
 慌てて脚を閉じようとしても、彼の両手はびくともしない。苦し紛れに両手で脚の付け根を隠したけれど、いやらしさにはかえって拍車がかかった。
 太ももには液が流れたあとがあるし、秘所を覆っても、脚を大きく開いた格好のままであることに変わりはないから。
「きれいなのに、どうして隠すんだ?」
 桜亮さんはわたしの耳の裏にちゅ、と口づけながら言う。
「そ、そんなの、恥ずかしいからに決まってます!」
 さあっと小雨のようにお湯が足先に降りかかる中、もがいて逃げ出そうとする。
 けれど、桜亮さんの腕は揺るがない。わたしの抵抗などものともせず、浴室の椅子に腰を下ろす。お尻に何か、硬いものがあたってどきっとしたのも束の間だ。彼はわたしの太ももの間に膝を割り込ませ、今度は脚でわたしの太ももをしっかりと開いてしまった。
 そうして自由を得た彼の両手は、わたしの両手を秘所から退かして――。
「ヤっ、離して、見ないで……ぇ」
「だめ。俺は見たいんだよ」
「ふ……っ、桜亮さんの、えっち……」
「うん、自覚してるよ。ありがたいとも思ってる」
「ありがたい……?」
 どういうことだろう。
 鏡越しにおずおず目を合わせると、柔らかく微笑まれた。
「俺は、恋都への気持ちを自覚するまで、男としてはもう枯れたと思っていた。ガツガツする年齢でもないし、たとえ恋ができたとしても、若い頃のようにがむしゃらに誰かを欲することはこの先もうないだろうってね」
 桜亮さんはすこし年齢を気にしすぎていると思う。式のときもそうだったけれど、自分をオジサンと簡単に言う。今どき四十歳で未婚の人は珍しくないし、桜亮さんはとくに若々しいのに。
「……桜亮さんは枯れてなんかいないです」
「いや、自虐じゃないからフォローはいらないよ。でも、やはり若い頃とはちがうんだ。きみへの欲求からして、変わったと自覚してる」
「変わった……んですか? わたしには、ムラムラしない……?」
「逆だよ。昔は肌を重ねて己の欲を発散するのがセックスだと解釈していたけど、今は……そうだな。きみが悦くなっているところをまず想像する。イくときの顔も、快感に震えるさまも、たっぷり感じて濡れた場所も、思い浮かべては脳内で蹂躙しつくして、やがて現実にしたくなる」
 想像――まだ理解できないわたしの背後、桜亮さんはくすっと笑って言う。
「俗っぽく言えば、ムッツリ、なんだろうな、俺は」
「む……⁉」
「そう。性欲は昔から強かったくせに、下世話な話は苦手でね。アウトプットするなら、頭の中で自由に妄想を膨らませていたかった。男友達が盛り上がっていても加わらずにいたりしたから、周囲からは潔癖だと思われていたみたいだけど」
 鏡越しに視線で脚の付け根を撫でられ、じわっと下腹部が熱くなった。
(ムッツリ……桜亮さんが)
 桜亮さんは外見からしてに爽やかだし、物腰も柔らかで、悶々といやらしいことを考えているふうにはすこしも見えない。ああ、うん、でも……思いあたるふしはいくつかあった。
 あの、無感情に近いやけに整った笑顔。
 彼があんなふうに笑うのは、たいがい、わたしと体が触れたときだった。薄着でそばにいるときも、うっかりうたたねしてしまったあともそう。桜亮さんがそのたび、頭の中でみだらな想像を膨らませていたと考えると、納得できる。
 そうか。そうだったんだ。
「よかった……」
「うん? よかった?」
「はい。だって、やっと、本当の桜亮さんを知れた気がします。わたしのこと、えっちな目で見ていてくれたなんて、うれしいです。ムッツリな桜亮さんも……だいすきです」
 頭だけで斜めに振り返ると、くすぐったそうな笑みがそこにあった。たまらないとでも言いたげに、軽く唇を重ねられる。
「まだまだ、現実にしたい妄想はたくさんあるよ。覚悟して」
「はい……」
「でも、困ったな。こうしていると、きみを洗えない」
 互いの手に手を塞がれた状態で、わたしたちは鏡越しに見つめ合う。
 シャワーヘッドから降り注ぐ雨粒のような水滴が、桜亮さんの脚とわたしの胸にさあさあと降りかかっていた。これだけ湯気が上がっていても、くっきりとわたしの恥ずかしい姿を写したままの鏡は、曇り止めの加工でもされているにちがいない。
「ああ、こうしようか」
 すると、桜亮さんは思い立ったように右脚を引いた。
 必然的に、わたしは彼の左の太ももに跨る格好になる。
 大胆な格好から解放されて、ほっとしたのも一瞬だった。桜亮さんはわたしを跨らせた左脚を、ふいにゆるりと揺らしてみせる。
「俺の脚で洗ってごらん。こうやって」
「や、ひゃんっ、お、桜亮さん、何を……っ」
「ほら、自分で腰を動かして。ぬるぬるの場所を、一旦きれいにしないと」
「待っ……きゃ、あ、ぁんっ」
 弾けたばかりで感じやすい秘所は、わたし自身のぬめりでよく滑る。ハンドソープで洗われていた手や胸もそうで、不安定なままわたしは前屈姿勢になり、桜亮さんの左足にいいように翻弄されてしまう。
「っあ、んぅ、本当にもう、力が入りません……っ」
 訴えると「そう」と言われ、見逃してもらえると思いきや、後ろから覆い被さられる。
「手、鏡に突いて」
「え、あ」
 腰を持ち上げられると、太ももには硬いものが当たった。桜亮さんのものだというのは、鏡で確認するまでもなくわかっていた。経験がなくても、予想くらいはつく。
 でも、本当に人の体の一部だろうか。まるで、太い骨でも内包しているかのように硬い。
(もしかして、このまま繋げるつもりなの……?)
 張り詰め切ったそれを深々と受け入れるのを想像すると、背すじが震える。ひとつになれるのはうれしいけれど、やはり怖い。だって、こんなの大きすぎる。すべて受け入れるだけの隙間が、自分の中にあるとは思えない。だけど――。
 期待と不安の中、それはとろりと滑ってごつごつした側面を割れ目に擦りつけた。
「ひぁ、っあ、あ」
「せっかく洗った意味がなくなってしまうかな」
 ゆるゆると動く屹立にはわずかな段差があって、そこがひっきりなしに蜜口にひっかかる。油断すると、今にも滑り込んで来そうだ。いつそうなってしまうのかわからない緊張感の中、とろけた自分の顔が間近に映って見えるから、くらくらした。
「気持ちいいなら、いいと言って」
 桜亮さんが腰を動かすたび、シャワーで濡れたまるい乳房がゆさりと揺れる。
「……っいい、です……気持ちいい……で、でも」
「でも?」
 そう言いながらくちっと入口を軽く掘られ、わたしはびくっと背すじを反らせる。心の準備なんて、まだできていないはずだった。それなのに浅く入り込まれたその場所は、切なさに喘ぐようにきゅうっとひくつく。
「あ、あ……っもぅ……よすぎる、からぁ……っ」
 中途半端に期待させないで。貫くならいっそ貫いて――そう言いたくて、唇が震える。けれど言葉にならなくて、上擦った声を浴室内に反響させてわたしは全身をびくつかせる。
(桜亮さんの、で、擦れて……っ、わたし、また……っ)
 そこで両胸の先を狙いすましたようにつままれると、耐えようもなくわたしは二度目の到達を迎えてしまった。
「……あ……ぁ、あ、あ」
 肩で息をしながらへたりこんだわたしを、桜亮さんは離さない。横抱きにされ、今度は湯船の中まで連れていかれる。温かいお湯の中、太ももを伝った指はゆっくりと足の付け根をまさぐり始めて……。
「っ……あ」
「大丈夫、全部俺に委ねて。心配はいらない」
 処女の場所を探り当てられたと思ったら、指先は浅くそこに入り込んできた。ひりつくような痛みを感じて縮こまると、様子を見るように抜き差しされる。同時に捏ね回された乳房は普段よりさらにふっくらと膨らみ、上部にキスマークまで与えられたさまは自分の目から見てもこのうえなく妖艶だった。

 バスタオルで巻かれ、寝室へ運ばれる間、わたしは蛹の気分だった。
 成体となるため、薄い膜にこもり、じっと動かずにいる期間。幼虫は蛹になる数日前から食事を断ち、閉じた蛹の中に余計なものを持ち込まないようにするらしい。
 バスルームで全身をくまなく洗われ、撫で尽くされたわたしも、余分なものを削ぎ落とされて身ひとつでここにいるのだと思えた。
 そして成熟した体は、別の個体と交わるために蛹を脱ぎ捨てる。
「のぼせた?」
 わたしのバスタオルを解きながら、桜亮さんは陶然と目を細める。
「色白の肌が紅潮して、きれいな桃色だ」
「わたし、すぐこうなっちゃうんです。マラソンのあととか、お酒に酔ったときも」
「知ってるよ」
 と、答えた唇は好ましそうに右胸の先に吸い寄せられる。ふっくらと盛り上がったその先端をぺろりと舐めて、こちらを見る。目が合っても、もう恥ずかしくはなかった。
 慣れたというより、暑さでぼうっとして深く考えられなかった。
「初めて一緒に食事をした晩もそうだった。ワイン一杯で頬を赤くしたきみは……本当に色っぽかった。興奮させたらどうなるだろうと、想像した」
 視線を重ねたまま胸の先を口に含む彼を、うっとりしながら見つめる。
「想像……どおりでしたか?」
「いや、俺の想像なんて追いつかないほどきれいだ」
 ばらばらに胸の膨らみを揉む指は、すっかりわたしの肌に馴染んでいた。泡だらけにして洗われ、お湯の中でも撫でられたり捏ねられたりしていた胸は、最初から桜亮さんの手のサイズに合わせてあしらわれたもののよう。
「身構えなくていいから」
 そう言って、彼はベッドのサイドテーブルに手を伸ばす。その先に避妊具があるのを見つけて、わたしはふるふるとかぶりを振った。
「つ……着けないでください……」
「いいの?」
「あの、桜亮さんは嫌、ですか?」
 遠慮がちに言うと、桜亮さんはにこりと、わずかに余裕のない笑みを見せる。
「嫌なわけがないだろう」
 膝の間に割り込まれたら、見た目以上にがっしりした体つきを感じて緊張が高まる。特別鍛えているという話は聞いていないけれど、到底努力を怠っている人の体ではなかった。
(肩の筋肉……きれい……)
 そうして見惚れている間に、脚の付け根に重みのあるものがあたって、とろりと滑った。
「すこし、焦らしてもいいかな」
「ん……っ」
 割れ目の上を、硬いものがゆるゆると動く。
 浴室で入口をほぐした細い指とは、何もかもがちがっていた。ごつごつした硬さも、張り詰めた大きさも、焦らしながらも入り込む隙をじっくりと窺っているところも。
「弾けそうなほど膨れてるね」
 屹立の先をぐっと押し付けられたのは、花弁の内の粒だった。左右に撫でられると、それはくりくりと逃げて熱い快感をわたしに与える。思わず、腰が浮いた。
「やっ、あ……!」
「もう一度、イくところが見たいな」
 はあっと息を吐きながら言われて、いやいやと首を振る。これ以上、空っぽなままでいるのは辛い。下腹部が切なくて、どんな悦を与えられてもきっともう苦しい。
「も……来て……っ」
「うん? もう一度言ってごらん」
「来て、桜亮さん、お願い。わたしのなか、きてくださ……いっ」
 泣きそうになりながらの懇願に、彼は満足そうに口角を上げる。その言葉を聞きたかったのだとでも言いたげに、きれいに。
 直後、蜜をこぼす入口を塞ぐように、丸いものがぐっと入り込んでくる。
「っ、ふ」
 一瞬、気が遠くなるほどの痛みが体の中心を駆けのぼった。埋まったのはわずかなのに、深々と胸のほうまで抉られたような。でも、やめてほしくはなかった。
 やっと、桜亮さんがわたしのなかに来てくれた。これで本当に、夫婦になれる。
「大丈夫。俺を見て、息を吐いて」
 思い出す。泣きたいくらい焦っていた夏祭りの日、同じように「大丈夫」と声を掛けてもらったことを。
「は……っ、ぁ、あ、桜亮さ……おうすけさん……っ」
「うん。いるよ。俺はここに……いるから」
 優しい言葉を聞きながら、痛みから逃れるように必死に彼の肩にしがみついた。
 はあ、と悩ましげな息を吐いて、桜亮さんは慎重に腰を進める。入り込んではすこし引いて、また奥をわずかずつ割り開いていく。
 そうするうちにわたしの内側には、痛みを中和するような心地よさが湧き始める。内壁で感じる彼が大きくなるたび、じわじわと鮮やかな熱が広がって体内を満たしていく。
 やがて汗ばんだ太ももがぴったりと重なったとき、わたしは、耳もとでとぷんと満水の音を聞いた気がした。
「ッ……頑張ったね。受け入れてくれてありがとう、恋都」
 ありがとう、はこちらの台詞だ。
 桜亮さんは今、もっとも弱い部分をまるごとわたしに預けてくれている。がむしゃらに動かず、じっとわたしが落ち着くのを待ってくれているのも、信頼の証のように感じた。
「ん……っ、ふ……」
 でも、お腹がぱんぱんで息が深く吸えず、言葉にならない。
 はくはくと唇を動かすわたしを見て、桜亮さんはこのままではいけないと思ったのだろう。ゆっくりと、重なった部分を動かし始めた。探るように小さく円を描き、内側からわたしを撫でてくれる。
「恋都、内側に神経を傾けてごらん」
 そうしてわたしを落ち着かせようとしてくれたのだと思う。けれどわたしは桜亮さんの動きがささやかで、優しいからこそ、中で感じる狂おしいほどの愉悦に混乱した。
「ひ、あ……ァっ、ん、やあ、待って……これ、へん……っ」
「痛い?」
「ちが……っ、いいの、ぉ……なかっ、ぜんぶ、よすぎて……わたしっ」
 おかしくなってしまう。弾け飛んでしまう。
 内側がさかんにひくついて、彼のものに絡みつく。すでにそこはいっぱいなのに、もっとほしいなんてどうかしている。でも、懇願してしまう。ほしい。止められない。
「ほしい……っほしぃの、っ桜亮さん……!」
「ああ……かわいいよ、恋都」
 桜亮さんはわずかに眉をひそめ、わたしの反応を真上から見つめた。波打つ乳房も、震える肩も、弛緩した唇も、涙ぐんだ瞳もだ。
「もっと乱れるきみが見たい。この手で、乱してやりたい」
 ベッドの揺れは、先へ先へと急ぐように大きくなっていく。深く入り込み、浅く戻って……かと思うと、浅い位置を焦らすように行き来した。
「んぁ、あっ」
 快すぎて、怖い。
 じゅぷじゅぷという絶え間ない水音の中、身をよじってシーツにしがみつく。乱れに乱れるわたしの奥に、まるい先端がいたずらにあたる。同時に、触れるか触れないかのところで胸を撫でる掌に、ぞくぞくする。
「あ、んんっ、いいの……っおうすけさん……きもちいぃ、奥……おくっ……」
「奥? こう?」
 奥の奥に屹立の先端を押しつけられ、撫で回されたら、視界が白く明滅した。
 背中が、弓なりに反る。突き出した胸の先には、すかさず唇が降りてくる。
 ちゅ、ちゅ、と音を立てて胸の先端をしゃぶられながら、のぼりつめていく。突起を強めに吸われ、パッと離されると、腰が跳ねて止まらない。
「あ、あ……いく……いく、ぅ」
「覚悟してイくんだよ。……残さず、与えるから」
「んん、欲し……っ、きて、桜亮さ……ぁっ、きてぇ、え」
 たくましい腕に縋ってねだっている間に愉悦は弾けて、全身をくまなくわななかせる。
「んあっ、あ、あぁあ、あっ」
 桜亮さんが動きを止め、ぐっと息を詰めたのはそのときだ。くる、と予感したらひくつきはひときわ激しくなって、忘我するほどの愉悦に呑み込まれた。
 ねっとりと注がれる視線まで心地よくて、わたしはひとしきり胸の膨らみを揺らして全身をくねらせたのだった。

 

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