
冷徹御曹司は初恋のお見合い妻を執着溺愛したい
著者:如月そら
イラスト:三廼
発売日:2025年 6月20日
定価:630円+税
由緒正しい三条家の一人娘・古都美は、ついに父のお眼鏡にかなった男性とお見合いをすることになった。
相手の男性は、月城ホールディングスの専務取締役・月城穂鷹。
彼は古都美に「月城の子供をできるだけ早く産んでほしい」という驚くべき条件を出してきて――!?
しかし、三条家の娘としていつかこの時がくると覚悟していた古都美は、それを受け入れ、2人は晴れて結婚することになった。
盛大な結婚式を終えて、ついに初夜がやってくるのだが――。
「悪いな。怖くても逃がしてやれない」
初めてのことに震える彼女を丁寧に抱いてくれたものの、冷静さを見せる穂鷹の様子に、心の壁を感じてしまった古都美。
粛々と始まった夫婦生活だったのだが、古都美は穂鷹のある行動にだんだん疑問を抱くようになる。
それは子作りの条件を出した穂鷹が、なぜか初夜以降一度も古都美の中に出していないことで――?
【人物紹介】
三条古都美(さんじょう ことみ)
由緒正しい三条家の大切な一人娘。23歳。
日本人形のような可愛い容姿をしている。
おっとりしていて優しい性格だが、自分の置かれた立場や役割を理解している賢い一面もある。
月城穂鷹(つきしろ ほだか)
月城ホールディングスの専務取締役を務める30歳。
文句なしの美青年なうえに、仕事もでき、めったに人を褒めない古都美の父のお眼鏡にかなった男性。
お見合いの日に出会ったと古都美は思っているが……?
●電子書籍 購入サイト
*取り扱いサイトは、各書店に掲載され次第、更新されます。
【試し読み】
「古都美……」
全身がまるで神経のようになっていたのだ。
名前を呼ばれただけで、身体がぴくんと揺れてしまった。
「怖いか?」
耳元で低く囁く声と、肩に触れる指。
「いえ……」
だってそれは条件の一つだ。古都美が月城の子を産むこと。
なんて約束をしてしまったんだろうと思う。
「悪いな。怖くても逃がしてやれない」
その声に思わず今まで背中を向けていた古都美は穂鷹の方を向く。
その時ベッドサイドの間接照明に照らされた穂鷹の表情は切なくて、なのに古都美が目を奪われるほど綺麗だったのだ。
この人にすべてを奪われてもいいと思うほどだった。
なにかを振り切るような表情を一瞬だけ見せて「怖がるな……」とまるで願うような低い声が響いてその吐息が耳にかかり、古都美の背中がぞくんとした時、くちゅっと耳元で音がした。
「……っん」
柔らかな湿った感触は耳元に口付けされたのだと分かる。古都美は思わず顔の横にあった枕をぎゅうっと掴んでしまう。
その掴んだ手の上から穂鷹が自分の手をそっと重ねた。古都美の手なんて包み込んでしまうほどの大きさだった。
覚悟はしていたけれど、未知の世界に少しだけ震えてしまっていた古都美の気持ちを察してくれたのかもしれなかった。包み込まれるその温かさに気持ちが解けるのが分かる。
穂鷹の唇は耳元から首筋、それから肩へと移っていく。
するりとナイトウェアが肌を滑っていった。前を開けられたのだと分かる。そうして古都美は肌が空気に触れることが、これほどまでに心もとないものなのだと初めて知った。
「あ……」
思わず手で胸元を隠してしまう。とても恥ずかしかった。
隠した手に穂鷹が触れる。
「いや?」
「恥ずか……しくて」
穂鷹は胸元の手に口付けをした。そんなことをされたらふにゃっと力が抜けてしまう。力が抜けたところをそっと手を動かされた。
ふるっと胸元が穂鷹の前に転がり出て、優しく穂鷹が唇で触れる。
強引なようでいて、優しい。つうっと舌先が先端に触れた時、ぴりっと痺れるような感覚が下肢にまで走り抜ける。
「ふ……あっ……」
こらえきれない声が漏れてしまった。
「約束、覚えているか?」
「あ……」
こくっと古都美は頷く。
『月城の子どもを産むこと』
「結婚したら、好きにしていいと言ったよな」
「言いました……けど」
「好きにさせてもらう」
尖ってしまった先端を甘噛みしながらそんなことを言う穂鷹は見たことがないほどに色香を溢れさせていた。
その上目遣いと輝く瞳に鼓動も気持ちも古都美は乱される。くすっと胸の上で笑ったような気配がしたのが分かった。
「ものすごく、どきどき言ってるな」
全くその通りで胸の上にいる穂鷹には隠しようもない。心臓が激しく鼓動を打って、緊張していることをしっかり知られてしまったらしい。
「緊張……してるんです」
「どきどきしていればいい」
(それはどれだけどきどきしていてもやめない……ということ?)
お見合いをした時はとても冷静そうな人に見えた。お風呂上がりにいい香りをさせて、低い声で囁やかれて不埒な視線で見られることが、これほどに鼓動を高鳴らせてしまうことだなんて知らなかった。
それに時折見せる優しい仕草も。
さっきは少しだけ怖がっている古都美に気づいて手を繋いでくれた。そんな人に気持ちを持っていかれないはずがない。
「普段、ツンと澄ました顔をしているくせして、こんな時にそんな蕩けたような顔をするのはズルくないか?」
耳元に注ぎ込むように聞こえた甘い声に古都美は判断力を失う。
(蕩けたような顔? 誰が……? 私?)
「誤解するぞ」
それは冷静そうに見えてこんな時ばかり熱っぽい表情を見せるこの人だって同じなのではないだろうか。
穂鷹が古都美の頬を撫でて、覆いかぶさり唇が重なる。柔らかく何度も甘く重ねられて、舌先が緩く唇を舐めた。その仕草に誘われて思わず開いてしまった口から入ってきた舌が古都美の舌に絡む。
他人の舌を気持ちよく感じるなんて想像もしていなかった。自分を味わわれていることに身を委ねたくなることがあるなんてことも。漏れる吐息が甘さと熱を含んでいたことに、古都美は気づいていなかった。
初めは触れて絡んでいただけだったキスはだんだん激しくなっていき、やがて口の中をまるで蹂躙されているかのように深く余すところなく舐められてゆく。
「……ん……っ」
少しでも古都美が感じるところは、執拗なまでに舐められた。
堪えきれず時折ピクっと揺れてしまう身体にも長くて綺麗な指が辿っていく。古都美の白い胸のふくらみに柔らかく触れた指は、その形をなぞるように肌の上を滑っていった。ピンク色の頂きにそっと指が触れるのを感じる。
「あっ……ぁ」
「綺麗だ」
胸の突起に指先が優しく触れ、すりすりと擦るようにされたら、そこがツンと尖ってくるのが古都美にも分かった。
「固くなってる……」
固くなっていることを知らしめるように、きゅっと摘まれる。
そのことがとても恥ずかしくて、古都美は真っ赤になってしまった。さっきも舌先で触れられてしまったけれど、指で触れられたらぷっくりと尖って、サイドテーブルのライトの薄暗い光の中で赤く扇情的に浮かび上がっていたから。
「恥ずかしい……の」
「もっと、感じればいい」
そう言って口を開けた穂鷹は古都美の尖った胸元を口に含む。温かく湿った口の中で舌先が固くなった先端を舐めているのが分かった。
「ん……んっ」
舐められているのは胸元のはずなのになぜか腰の辺りがきゅんとして、それに戸惑った古都美は焦れて腰を逃がそうとする。
「好きにして、いいんだよな?」
きらりと瞳を輝かせて、上目遣いで穂鷹が古都美を射抜くように見つめる。
それは確かにそう言ったけど。気づいたらシルク製のナイトウェアは乱れていて、古都美の身体に引っかかっているだけになっていた。薄暗い灯りの中でするりとナイトウェアのリボンを解かれ、ショーツを脱がされる。
穂鷹が古都美の隘路に長くてすらりとした指を滑らせた。奥からとろりと溢れてしまっている愛液が絡まって、くちゅっと濡れた音をさせる。
「っあ……そんなとこ……」
「慣らさなかったら入らないだろう」
古都美の手を取って、穂鷹は自分の固くなっているものに触れさせる。
一瞬逃げようとしても逃がさないように強く握らされた。思いがけない感触に古都美は抵抗を忘れる。
「あ……の……」
熱い。それに固くて思ったより大きい。これが、入る? どこへ?
「これが君の中に入る」
「え……だって」
今もどきどきしているが、それは先ほどまでのものとは違う。
(これは、無理なのでは……?)
「無理とか思っているか? 大丈夫。入る。けど慣らさなくてはいけないことは分かったな?」
穂鷹のものに触れて顔を赤くしつつ驚いた古都美の無理という思考を読まれたのか、軽く笑いながら言われた。慣らさなくてはいけないという言葉を反芻しながらも、古都美は余裕のある表情を見せる穂鷹を見上げる。
(慣らす……? 慣らすって?)
「でも……慣れとか、関係ありますか?」
「経験はないと知っているが、君は知識もないのか?」
ちょっと呆れたような声に返す古都美も声が小さくなってしまった。どこになにをどうするかは知っているが、具体的にどうかと言われると答えようがない。
「一応……あります。知識は……けど、破瓜が痛いとか、そういうことだけで」
「なるほど。君の中では痛くて我慢しなければいけないことだという認識なんだな」
古都美の狭間に触れていた指がそっと動いて、慎ましやかな花芽にゆるりと触れる。思いがけない強い刺激に古都美の背中が浮いてしまった。堪えきれない声まで漏れる。
「ここが気持ちいいということは?」
「知り……ませんっ……ぁんっ」
穂鷹の節ばった指が隘路の先にある濡れた芽を何度も行き来すると、くちゅくちゅと濡れた音が静かな寝室に響く。
先ほど胸を触れられていた時から蜜口に温かいものがこぼれてきている自覚はあった。そこに指が当てられてつぷっと中に入ってくる感覚がある。
「んっ……は……」
「力を抜いて。大丈夫だ。痛いことはしない。気持ちいいだけ」
指が入ってくる感じはもっと痛みがあるのかと思ったら、こぼれるほどに濡れていた蜜口に痛みはなく、大丈夫というあやすような声に甘やかされる。
指が内壁を探るように動く中、きゅっと秘芽を押しつぶされるようにされ、その刺激で古都美は腰がピクっと揺れてしまった。
「こっちのが気持ちいい?」
「や……、そんなこと……聞かないで」
どっちのが、なんて聞かれたとしても初めての経験で答えられるはずもない。
けれど優しく抜き差しされているうち、指を増やされていて、中の感じるところにその指が触れた瞬間、甘い声が漏れてしまった。声を抑えることができなかった。
「あっ……や、それ、ダメ……」
「ダメ? どこが? こんなに濡れていて?」
しっとりと濡れた指を目の前にかざされた。長く節ばったすらりとした指が濡れて液体をまとわりつかせているのは淫靡で古都美には目を逸らすことしかできない。
「この結婚の条件は覚えているだろう? 逃げられるなんて思うなよ。俺は君を逃がさない」
古都美の耳元で低く穂鷹が囁いた。その声だけで背中をぞくぞくとしたものが走る。
(──条件……っ)
そうなのだ。今さら逃げるつもりなどない。なのに逃がさないと穂鷹は古都美に囁くのだ。
(そんなに、信頼がないの?)
確かに政略結婚であることは間違いなく『子どもを産んでほしい』という穂鷹の強い意志はなにか事情があるように思えるのだけれど、穂鷹はそれを古都美に打ち明ける気はないようだった。事情を説明しないというところに古都美は穂鷹が誰にも心を許さない孤独を抱えていることを感じた。
結婚したからといってすぐに心を許すことなど難しいと思うが、それでもなにか事情があるのなら言ってほしいと思うのは、古都美は穂鷹とお互いに心を開き、思いやりをもって接する温かみのある家族になりたいからだ。なにかあればお互いに打ち明けて相談できるような関係だ。
そんなことを考えていたら穂鷹の張りつめた下肢が古都美のぬかるみに触れる。
「なにか他ごとを考えているのか? 余裕だな」
気づいたら穂鷹が古都美の上にいて真っすぐに見つめていた。
──怖い……っ!
顔を逸らし、ぎゅっと目を閉じて両手でシーツを掴んでいると古都美の頬を思いがけない優しさで穂鷹の指が触れた。
「力を抜けないか? 痛くさせたいわけじゃないんだ」
その穏やかな声に思わず古都美は目を開ける。
薄暗いライトの中に浮かぶ穂鷹の顔は端正で、それでいて孤独だと感じた。古都美は嫌でも自分の立場を痛いほどに見せつけられたのだ。決してその心が開いていないことが分かるから。
気づいたら、古都美の柔らかい頬に透明な涙がすうっと流れていた。泣きたくて泣いたわけではなくて、穂鷹の孤独に悲しくなってしまったのだ。
──私では癒してあげられない。
「悪いが、泣いてもやめることはできないぞ」
やめてほしくて涙がこぼれたわけでも、行為を恐れて泣いているわけでもない。ただ、古都美はもっと穂鷹に寄り添いたかっただけだ。泣いていてもやめなくていい。
この人が初めてでよかったのだ。
「やめなくて……いいです」
やめなくていいとは言ったものの、蜜口に熱を感じると初めてのことに古都美の身体は強ばってしまう。
「やめなくていいなら、力を抜いておけ」
こくりと頷いた古都美が必死で身体の力を抜こうとしていると、ふっと穂鷹が微笑んだ気配がして、優しく頬を指先で撫でられる。触れる指の優しさに緊張していた身体の力がすうっと抜けた。その瞬間を狙いすましたように穂鷹の熱杭が古都美の隘路を押し開きながら、ゆっくりと入ってくる。
「んん……っ」
「唇を噛み締めるな。呼吸して」
けれど、息をしたらなんだか声が出てしまいそうなのだ。
「だって……声でちゃいそうで……」
「出して構わない。俺しか聞いてない」
そう言った穂鷹はぐっと腰を押し進めて、古都美はそのメリメリと音がしそうなほどに押し拓かれていく未知の感覚に腰を震わせた。
「あ、あぁっ……」
ずぷんと怒張したものを挿れられて、とんと奥まで行きついた感覚がある。
「全部入った。大丈夫か……?」
聞いたことのない穂鷹の乱れた呼吸音と共に耳元で熱く囁かれた声に古都美は必死で首を縦に振る。
(全部、入ったのね……)
よかったと安心したのもつかの間だ。
「動くぞ」
そう言われてぐちゅりと音を立てながら、剛直が狭いぬかるみを行き来する。ずるりと引き抜かれたと思えば腰が当たるほどに奥を突かれて、古都美は荒波に翻弄されるかのようにされるがままになるしかなかった。
「古都……美っ……」
乱れた呼吸の中で名前を呼ばれて、古都美が握っていたシーツの上からいつの間にか穂鷹が手を繋いでくれていた。
包み込まれるようにされながら、奥を突かれる。
熱っぽい上擦ったような声で名前をよばれて、抱きしめられながら腰を使われて、堪えていたはずの声が古都美の口から漏れてしまう。
「はっ……あぁ、んっ……」
寝室に響く甘い声が自分のものだなんて信じられない。揺さぶられながらそっと目を開けると、古都美を見下ろす穂鷹の目が思わぬ熱さを孕んでいて、そんな淫らな目で見られていたのかと思うと、中がきゅうっと穂鷹を締め付けてしまった。
一瞬、穂鷹が眉根を寄せ、ふっと古都美に微笑みかけた。
「悪くはないな?」
緩く腰を使って奥をかき回される。
「ひゃ……あぁん……っ」
敏感な内壁をぐりっと抉られた。
古都美は今まで経験したことのない感覚に翻弄されるだけだ。
穂鷹のものがみっしりと古都美の中を埋めつくしていた。その律動は段々と激しさを増していく。
ぬかるみをかき回す音と、肌同士のぶつかる淫猥な音に古都美は耳まで犯されているかのようだった。
思わずぎゅっと目を閉じてしまうと、その頬に穂鷹が触れる。
「目を開けろ」
穂鷹は乱れた吐息を古都美の耳元に吹きかけながら言った。
「誰が古都美を抱いているのか、しっかり見ておけ」
「あ……んんっ……」
潤んだ瞳で穂鷹を見上げると、古都美の手を掴んで、自分の身体に回させる。
「掴まっていろ」
穂鷹の思うままに揺さぶられて、奥を容赦なく穿たれる。
(誰が……抱いているのか……)
男らしい顔にうっすらと汗を光らせているのがとてつもなく色っぽい。それが古都美を抱いている人だった。
ぎゅっと腕に力を入れて古都美は抱きつく。
何度も奥を突かれ、堪えきれないなにかを感じた時にぐりっと花芯を押されて弾けるような感覚があった。これまでとは比べ物にならない大きな波に攫われる。
「あっぁ……ああっ……」
きゅうっと昂りを締め付けてしまうと、びくびくと古都美の中で穂鷹のものが大きく蠢き、下腹部を濡らしたのが分かった。中で穂鷹がいってしまったその動きにさえ感じてしまって、後を追うように絶頂が押し寄せる。
その感覚は古都美に快感よりも愛おしさを伴った幸せのような気持ちを感じさせてくれたのだった。
古都美は乱れさせられてしまったけれどその一方で、穂鷹からはどこか冷静な部分を感じる。古都美の初めては、この人でよかったと嬉しく感じながらも穂鷹が古都美に対して心を開いていないことを改めて再確認する、少し苦いものとなった。
そしてまだ結婚したばかりだというのに翌朝、ホテルのベッドから穂鷹の姿は消えていたのだ。