元バリキャリ転生侍女は国王陛下の夜伽相手に拝命されました ~発情の呪いは甘々えっちで鎮めます!?~

F+

元バリキャリ転生侍女は国王陛下の夜伽相手に拝命されました ~発情の呪いは甘々えっちで鎮めます!?~

著者:熊野まゆ
イラスト:浅島ヨシユキ
発売日:2025年 2月21日
定価:630円+税

ファンタジー系ティーンズラブ漫画『発情の楔』の世界に転生し、ライア王国の国王付き侍女となったエリナにとって、「仕事人間・鉄壁処女・バリキャリ」という通り名は前世の話!
……だったはずが、いつの間にか今世でも仕事一筋の生活を送っている。
エリナにだけ甘えるような仕草を見せるルベルト陛下に、恋愛経験値の乏しいエリナはついドキドキしつつも、平和な日々が続いていた。
ある時、漫画の先の展開――式典でルベルト陛下が「発情の呪い」を受けることを思い出したエリナは、阻止しようと動くのだが……。
「エリナ。呪いを鎮めるのを……手伝ってくれるか」
頑張りも虚しく呪いを受けてしまったルベルト陛下。
苦しむ彼に呪いの鎮静の手伝いを求められてしまったエリナは――……!

【人物紹介】

エリナ・ソマーズ
TL漫画『発情の楔』の世界に転生した前世の記憶を持つ主人公。前世での通り名は「仕事人間・鉄壁処女・バリキャリ」。
没落寸前の伯爵家の娘だが、貧乏貴族なため国王付き侍女として働いている。
漫画の内容を完全に覚えているわけではなく、夢で先の展開を見ることで思い出している。

ルベルト・ライア
民に慕われるライア王国の国王陛下であり、TL漫画『発情の楔』のヒーロー。
整った顔立ちはエリナ曰く「今世の最高傑作」。
双子の弟であり閣下のウーノと時折入れ替わっているが、見抜けるのはエリナだけ。

●電子書籍 購入サイト

*取り扱いサイトは、各書店に掲載され次第、更新されます。

【試し読み】

 建国記念式典、当日。
 陛下が着ている黒い重厚な上着には金の刺繍が施され、重々しくも煌びやかな雰囲気を醸しだしていた。編み上げのロングブーツは陛下によく似合っている。
 国王然とした盛装だけれど、腰に提げられた大剣が力強さも演出している。
 あの剣は飾りではない。物理攻撃だけでなく魔術の類も斬ったり跳ね返したりすることができる優れものだ。
 陛下は城の広場に集まった民衆に手を振り、演説をしたあと、お城の大広間で有力貴族たちと言葉を交わし食事をした。
 公務が終わる頃になると、ほかの侍女や侍従は下がり、私だけが陛下のそばに残った。朝のティータイムと同じで、陛下はほかの従者を執務室から下がらせたのだ。
「エリナ。バルコニーへ行こうか。夜風にでも当たろう」
「バルコニーですか!?」
 つい大声を上げてしまったあとで、私は口を押さえながら「バルコニーは、いけません」と言った。
 ルベルト陛下が首を傾げるのも無理はない。
「その……陛下のお体が冷えてはいけませんから。今宵の夜風は、思いのほか冷たい、ですから……バルコニーへは行かれませんよう、お願いいたします」
 本当のことは言えない。前世の記憶があるなんて、すぐには信じてもらえないだろうし、よけいな心配をかけたくない。
 それにしても、体が冷えないようにだなんて――いかにも、とってつけたような理由だ。言い方もなんだか不自然になってしまった。
 でも、バルコニーはだめ。陛下が呪いを受けてしまう。
 陛下は、息を詰める私の顔をしばらく見つめていた。
「そんなにバルコニーが嫌なら、そうだな――俺の寝室にくるか? 窓から月でも眺めよう」
「はい、そのようにいたしましょう!」
 私は前のめりになる。
 夢の中で、発情の呪いは光となって直接、陛下の体に当たっていた。寝室でカーテンを閉め切ってしまえば、呪いの光は陛下に届かないはずだ。
「……いいのか? 夜の寝室で、俺とふたりきりだ」
「なにも問題ございません」
 私がきっぱり答えると、陛下は困惑顔になった。珍しく目を泳がせて、なにか言うのをためらっているようだった。
「――おまえがそう言うなら、俺は遠慮しないからな」
 開きなおったような言葉のあとすぐ、陛下に手を取られて執務室を出た。
 私はというと、バルコニーへ出るのを回避できたことに喜んでいた。
 陛下の着替えと湯浴みを手伝って、早々に寝かしつけてしまおう。
 発情の呪いをかけようとしているのは、おそらく式典のためにお城へ来ている貴族のだれかだ。
 呪いをかけるのは物理的にある程度、距離が近くなければならないのだと、その手の書物で読んだ。ゆえに、今夜を乗りきればひとまずは安心だと私は考えていた。
 寝室の前に立っていた衛兵に「お疲れ様です」と声をかけて室内へ入る。
 陛下の寝室は、普段となんら変わりない。一級の調度品が行儀よく並び、中央にキングサイズのベッドが鎮座している。
 ルベルト陛下は先ほどからなにも喋らず、ちらりちらりと私のほうを盗み見てくる。
「どうなさいました?」
「ん、いや……」
 歯切れ悪くそう答えたかと思うと、窓のほうへ歩いていった。
 彼が窓を開けようとするので、私は慌てて待ったをかける。
「お待ちください、陛下。部屋が冷えてしまいますから、窓は閉めていたほうがよろしいかと」
「暑いんだ」
 たしかに、陛下の頬はいつもより赤い。
「あの……では、カーテンは閉めたままにしても?」
 ほんの少し窓を開けて、風を入れるだけにしよう。
「かまわないが――なんだ? 人目でも気にしてるのか」
 頬を赤くして言うルベルト陛下に、私は「いいえ、人目は気にしておりません」と返した。気にしているのは、呪いの光だ。
 私はそっとカーテンを捲り、窓の外に異常がないのを確認したあとで、鍵を開けてほんの少しだけ窓を開けた。
 ふっ――と、風を感じた。シャラララッと、カーテンが動いたような音が聞こえた。
「あっ……!?」
 目を見開き、バッと勢いよく後ろを振り返る。
 窓の隙間を縫って侵入してきた紫色の光が、ルベルト陛下めがけて真っ直ぐに飛んでいく。光は瞬く間に陛下の体を貫いた。
「陛下!」
 己の浅はかさを瞬時に呪う。
 私はルベルト陛下のもとへ駆け寄った。陛下は光が直撃した胸元を押さえ、膝をつく。私もまたしゃがみ込み、陛下に寄り添った。
「う……っ。なん、だ……?」
 陛下の息が苦しげに荒くなる。背を丸めてうずくまる陛下を前に、私はなにもできないでいた。
 後悔の念が駆け巡る中、これからどうすべきなのか必死に考える。
「……エリナ。すまないが……いますぐ出ていってくれ」
 床のほうを向いたまま、唸るように陛下が言った。
 私は震え声で「いいえ」と答える。
 苦しそうなルベルト陛下をひとり置いて出ていくなんてできない。
 本来ならお医者様を呼ぶべきところだけど――。
 発情の呪いは、お医者様には治せない。かといってお医者様を呼ばないのも不自然だ――と、考えがいっこうにまとまらなかった。
「このままでは、おまえにひどいことをしてしまいそうなんだ。だから、早く――」
 彼が皆まで言う前に、私は「陛下は発情の呪いにかけられてしまったのです」と告げた。
 ルベルト陛下が顔を上げる。
 額に汗をかき、息遣いも荒いせいか、とんでもなく艶っぽい。
 私の発言を不審に思っているのは間違いない。
 でも、はっきり言わなくちゃ――出ていけって言われるばっかりになる。
「なぜ、そうだと言いきれる?」
「書物で読んだことがあるのです。先ほどの光といい、いまの陛下のご様子といい、発情の呪いの症状にぴったり当てはまります」
 私は「うん、うん」と大きく頷いて、陛下の背を摩った。
 苦し紛れにしては尤もらしい説明ができたと自己満足していると、陛下は瞳をとろんとさせて首を傾げた。
「まさか、おまえが仕掛けたのか」
 あまりの艶っぽさにドキッとする。私は「違います」と即答した。
 しかし、私が仕掛けたのだと疑われてもおかしくない状況だ。察しがよすぎるというか、我ながらうさんくさいというか――。
 ところが、それ以上は追及されなかった。
「わかった。信じよう。……その呪いとやらは、どうすれば解けるのか……知っているか?」
 話をするのも辛そうだった。
「呪いを解く方法はわかりませんが、鎮め方は知っています。それは、あの……女性の体を愛でて、吐精すること……です」
 話をしている途中で気恥ずかしくなって、声が尻すぼみになってしまった。
 陛下の呪いを鎮める方法は、わかっている。
 問題は、いったいだれがそれをするのかということ。
「エリナ。呪いを鎮めるのを……手伝ってくれるか」
「わっ、私では力不足です!」
 叫んだあとで、彼がほかの女性とえっちなことをする妄想をして、打ちのめされる。
 けど、侍女として一線を越えるわけにはいかない。
 私は両手で口を押さえ、どうするべきか考えを巡らせていた。
 すると陛下は私の両肩を掴み、大きく口を開けた。
「俺はおまえが――……」
 あとに続く言葉を、陛下はいっこうに紡がない。陛下の秀麗な眉間に、皺が寄っていく。
「……俺のどんな要望にも応えるおまえだというのに、珍しいな?」
 苦しげで、それでいてどこか挑発的な眼差しを向けられた。
「私、は……」
「この、呪いを……鎮めることは、侍女としての業務だと考えてくれていい」
 侍女としての、業務。
 とたんに気持ちが切り替わる。
 彼を好きな気持ちを殺して、業務として呪いを鎮める。
 陛下を発情の苦しみから解放するため、侍女としてできることをするのだ。
 やる気をみなぎらせて、私は「かしこまりました」と勢いよく頷いた。
「……いい返事だ」
 急に抱え上げられ、ベッドに転がされる。それまで陛下がじっとしていたものだから、やけに性急な動きに思えた。
 私は何度も瞬きをして、馬乗りになってきた陛下を見上げる。
 先ほどまでのやる気はどこへやら、ベッドに押したおされたことで尻込みしている。
「あ、あの……でも、私……どうすればいいのか、よく……わからない、のです」
 涙声になってしまった。
 こんなことではいけない。これは業務なのだから、しっかりしなければ。
 わかっているのにドキドキして、少し不安で、目の前がぼやけてくる。
「ああ、もう――」
 陛下が私の胸に顔を埋める。服の上からそうされているのに、胸がじわりと熱くなる。
 私は陛下が顔を伏せている理由がわからずにうろたえる。
「お気を悪くなさいましたか?」
 彼を悦ばせる手法も手腕も、私にはない。えっちなことなんて私には関係ないのだと思って、知ろうとしてこなかった。
「いや……違う」
 ルベルト陛下がゆっくりと顔を上げる。眉間には深い皺が寄せられていた。
「むしろ不慣れなほうがいい」
 なにかを必死に抑え込もうとしているような唸り声だった。
 女性に弄ばれるのは嫌――ということ?
 こうして話をしているあいだも、陛下は苦しんでいるに違いない。
「私は、なにをすればいいでしょうか」
 なにもせず手をこまねいているだけではいけない。
 陛下は困ったようにほほえむ。
「ありのまま、思うままに……振る舞えばいい。ひどいことはしないと誓うが――俺が国王だからと、遠慮しなくていいし萎縮もするな」
 その言葉で、不安な気持ちが吹き飛んだ。
 これは業務だというのに、陛下は私のことを気遣ってくださっている。それが嬉しくて、切なくもあって、胸が締めつけられる。
「不快に思えば、急所を蹴り上げて強制的に呪いを鎮めてもいい……ということだ」
「そっ、そのようなこと……! 絶対にいたしません」
 吐息混じりの声で「なぜ?」と尋ねられる。陛下の額は汗ばんでいる。官能的すぎてくらくらしてくる。
「それ、は……」
 あなたのことが好きだから。
 でも、言えない。言ってはいけない。
 漫画のヒロインがだれなのか夢に見ていないけれど、きっと私ではないのだ。
 侍女としてバリキャリを目指しているような――没落寸前の貧乏伯爵家の三女では――国王陛下に釣り合わない。
「その……国王陛下だということを度外視しても、尊敬しておりますから」
 苦し紛れに言えば、ルベルト陛下はきゅっと唇を引き結んだ。
「そんなふうに言われると、いいように解釈してしまう」
 顔と顔の距離が近づいていく。
「おまえになにをしても許されるような気がしてくるから、いけない」
 熱い吐息を肌で感じた。
「いい……です。なにを、なさっても……私、嫌では……ない、ので」
 私は発情の呪いを受けていないのに、息が上がる。胸が大きく上下する。
「……ふうん?」
 形のよい唇が弧を描く。陛下は苦しげな表情のまま、笑っている。
 そんな彼に魅入っていると、胸元を覆う白いレースを勢いよく下へ引っ張られた。
 ふたつの乳房がぷるんっと躍りでる。
「あっ」
 反射的に隠そうとしたものの、胸を覆う前に両方の手首を掴まれた。
「嫌では、ないんだろう? なにをされても」
「あ、う……ぅ、はい」
 二言はない。恥ずかしくて混乱しているだけで、嫌なわけではないのだ。
 それにしても、紺色の布の上に乳房が乗っかっているこの状態は、卑猥だ。
 仕事着のままこんなことをしてよいのだろうかという考えと、これも業務なのだから当たり前だという考えがせめぎあう。
 陛下は私の胸をじいっと見つめていた。無言なのが、いたたまれない。
 なにを考えていらっしゃるんだろう。
 さっぱりわからなくて、羞恥心ばかりが膨れ上がる。
「陛下……?」
 沈黙に耐えきれず呼びかけると、ルベルト陛下は「ん」と短く返事をした。
 息をつきながら、陛下は私の胸をふたつとも鷲掴みにする。
「ん、っ……!」
 侍女服の白い布を引き下ろされたときもそうだったけれど、胸を掴まれたのも唐突だった。
 発情の呪いに侵されていらっしゃるのだから。
 性急な動きになってしまうのはきっと仕方のないことだ。
 陛下は「は、ぁ」と声を漏らして私の胸をぐにぐにと揉む。大きさや重さを確かめられている――と感じるのは、気のせいに違いない。
「ふぅ……っ」
 大きな手のひらに包まれた乳房の形は、瞬きをするたびに変化する。
 私は自分の胸元を見ていられなくなって、ちらりと陛下の顔を見た。苦しげな表情は相変わらずだけれど、どこか好奇心のようなものも垣間見える。
 ――って、陛下ご自身が私に興味があってなさっていることではないのに。
 自意識過剰すぎる。
 自分を戒めなければと、私が俯いているあいだに、陛下の顔が間近に迫っていた。ばちっと目が合う。
 エメラルドの瞳に私が映り込んでいる。心臓がドクッと跳ね上がる。
 ちゅっ――と、私の頬に陛下の唇が当たる。
 キスされるかと思った……!
 いや、キスされるのを期待していたのかもしれない。興奮してしまったせいか、剥きだしの乳房が大きく上下する。
 息を荒くする私をよそに、ルベルト陛下は唇で肌を辿っていく。陛下は私の首筋にくちづけながらも、両手を休みなく動かして胸を揉んでいる。
 陛下の唇が膨らみに近づくにつれ、そこはかとない焦りが募る。
「あ、ぁ……」
 胸はもう見られているものの、ごく近い距離でそうされるのはまた別で、異様に恥ずかしくなる。
 つい首を横に振ってしまったけれど、陛下は気がついていないようだった。
 ルベルト陛下の視線は、胸の尖りきった部分に集中している。
 乳首を、ほとんどゼロ距離でまじまじと見られている。
 見すぎでは……!?
 抗議してよいものか悩んでいると、急に陛下が口を開いた。
「鮮やかだな。おまえの……ここ」
 尖った乳首を、指でつんつんっと素早く突かれる。
「ふぁっ、あっ……!」
 陛下の指が触れたのは乳首の根本。ほんの少しだった。
 それでもこんなに気持ちいいなんて……!
 いままでわからなかっただけで、私はひどく淫乱なのかもしれない。
 もっと触ってほしいと思ってしまう。恥ずかしいのに刺激が欲しくて、脚の付け根がきゅんきゅんと疼く。
 両手で口を押さえていなければ、もっといっぱい触ってくださいと、いまにも口走ってしまいそうだった。
「なぜ口を押さえている?」
 心底わからないといったようすで、陛下は眉根を寄せている。
「こうしていなければ……その、自分を見失ってしまいそうでして――」
 すると陛下は悩ましげに「はあ」と嘆息した。
「この……込み上げてくる衝動は、呪いのせい……か?」
 その言葉のあとすぐ、ぎゅっと乳首をつままれた。
「ひぁあっ!」
 口を押さえていられなくなった。下腹部になにかが響く。
「……いい声だ」
 熱に冒されたようなとろんとした瞳で、ルベルト陛下は「もっと聴きたい」と乞う。
「や、私……う、ふっ……」
 最初に触れられたのと同じ、乳首の根のほうを指先で小さく揺さぶられる。
「いくらでも見失えばいい、エリナ」
 熱っぽく告げられた言葉は、許されているようで残酷にも思える。
 仕事なのだから理性的でいたいのに、それができない。なのに陛下は「いい」と言う。
 追い打ちをかけるように、胸の頂をふたたびつままれ、きゅっと引っ張り上げられた。
「あぁ、あっ……んん……!」
 一度大声が出てしまえば、恥ずかしげもなく次々と嬌声が溢れだす。
「おまえが乱れているところを、見たい」
 もう乱れている。意図せず肩を揺らしてしまうのだ。乳首をつままれたまま、もっともっととせがむように乳房が横揺れする。
 ルベルト陛下は「ふ……」と艶めかしく息を漏らして、つまんだ乳首を小さく捏ねる。
「あ、んっ……うぅ」
 陛下の指先にはそれほど力が込められていない。探るような、ようすを窺っているような動きだ。
 でも、すごくいい。
 じわじわと快感が押し寄せてくる。私の口からはひっきりなしに「あぁ、ひぁっ、んん」と喘ぎ声が漏れていた。
「……困った。エリナの声を聴けば聴くほど疼きがひどくなる」
 苦悶した表情で、唸るようにルベルト陛下が言った。
 私も同じ。
 脚の付け根が、初めのころよりももっと疼いて、たまらない。
 業務なのにこんな反応をしてしまう自分が情けなくなったものの、これは業務上の正しい反応なのだと思い込むことにした。
「平気か? エリナ」
 とても『平気』ではないけれど、陛下が訊きたいのはきっと別のことだ。
 私が嫌な思いをしていないか、確かめようとなさってる。
 嬉しくて、やっぱり好きで、彼を不安にさせたくない気持ちでいっぱいになる。
 だから私はすぐに「平気です」と答えた。
「……そうか」
 陛下は安堵したように頬を緩めたけれど、額には汗が滲んでいて、やっぱり苦しげだ。
「陛下……」
 彼の頬にそっと触れる。しっとりとして滑らかで、熱い。

タイトルとURLをコピーしました