前世で宿敵だった旦那様に、苛烈な淫愛で絡めとられました

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前世で宿敵だった旦那様に、苛烈な淫愛で絡めとられました

著者:なとみ
イラスト:鈴ノ助
発売日:2024年 9月20日
定価:620円+税

オビラント国のミッテルラント子爵家令嬢・ブランシュには前世の記憶があった。
それは今から百年ほど前、帝国ルカ・バラのスパイとして敵国オビラントに紛れ、娼婦兼暗殺者として生きていたというもの。
ある日、スケーヴィング家のパーティに参加した彼女は、次期当主のアイガーと視線を交わしてしまう。
その瞬間、アイガーの前世がブランシュが潜入していた騎士団の長であることに気づき……。
相手も前世に気づいているかもしれないと、逃げようとするブランシュ。
体調不良であることを同行者の父に告げ、その場はことなきを得たはずだったのだが――?
後日、なぜかアイガーから正式な求婚を申し込まれてしまい……!?
彼の求婚はまっすぐで他に意図があるようには見えない。
それでも、安全だと確証が持てない以上、縁談が進まないようブランシュは暗躍する。
しかし、再び訪れたアイガーは縁談を諦めていないどころか、熱い眼差しで愛の言葉を向けてきて――。
手のうちようがなくなったブランシュは結婚式を迎えることに。
しかし結婚式の夜、アイガーの口から飛び出してきたのはブランシュが前世で使っていた名前だった……!?

【人物紹介】

ブランシュ・ミッテルラント
ミッテルラント子爵家令嬢。
前世は娼婦兼暗殺者として敵国に潜んでいたスパイ。
責任感もありしっかりしているが、割と楽観的な性格でもある。
アイガーの前世が宿敵の相手だと知って――?

アイガー・スケーヴィング
スケーヴィング侯爵家の次期跡取り。
前世はオビラント国の騎士団長を務めていた。
領地運営に奔走するだけでなく、軍でも功績を上げている。
女性に興味がないと思われていたが、ブランシュと出会うと突然彼女に熱烈に求婚してきて……!?

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【試し読み】

 目の前の男が悪魔に見える。ブランシュは強がって、ふんと鼻を鳴らした。
「だから、何が仰りたいのです」
「このまま大人しく俺の妻として生きたほうが賢いということだ」
 ブランシュの眉間の皺が深くなる。
 この男の狙いはいったい何だ。ブランシュの監視か? 利用か?
 だが、全てこの男の言う通りだ。もうここまで来てしまってはそうするしかない。
 アイガーはブランシュのその表情の変化に目聡く気づいた。
「合意だな。では、初夜としようか」
「え……っ!?」
 今、彼はなんと言った? この流れで?
 未だ戦闘状態のブランシュに、アイガーは微笑みかけている。
「す、するのですか?」
「当たり前だ」
(当たり前だ!?)
 アイガーはブランシュに手を差し伸べてくる。
 いやいや、全くもって当たり前ではない。ブランシュは一歩後ろに下がった。
 そして、だが、と考える。たしかに、この世で彼がブランシュに罰を与える理由はない。彼や侯爵家に被害を与えたわけでもないし、前世でもブランシュのほうが先に死んでしまったから、今さら復讐というのも考えにくい。
 この男と身体を重ねるのは初めてではないし、行為の最中に何か本音が見えれば、そこで対処をすればいい。
 長すぎる時間をかけて、ブランシュはおそるおそるその手を取った。
 だが、彼は動かない。
「どうした、の……?」
 ブランシュがそう尋ねたのは、アイガーが自分の手に置かれた彼女の手をじっと見ていたからだ。彼は小さく溜め息を落として、それを包み込んだ。
 どこかしんみりとした様子に思えたが、確かめようと思った時には、彼の表情は元の不敵な笑みに戻ってしまっていた。
「これは、いいのですか?」
 隠し持っていたのは彼が指摘した通り毒針だ。それを取り出して見せると、彼は興味がなさそうに言った。
「かまわん。不満があればいつでも使えばいい」
 ブランシュは眉を寄せた。私がこれを使わないと確信を持っているのだろうか。
 侮られていることは不満だったが、どこか肩透かしを食らった気持ちになって、素直にそれをサイドテーブルに置いた。
 彼の隣にかけると、優しいキスがこめかみに落とされた。前世で十分に慣れているはずなのに、むずがゆさを覚えてしまう。そして、やはり彼が何か仕掛けてくるのではないかという怖さもある。
「どうした。今さらだろう」
 先ほどより粗雑に顎を持ち上げられて、そんなふうに挑発される。初夜で妻に言う言葉ではないが、彼とブランシュに至っては間違ってはいない。
 どちらからともなく唇と重ね、舌を絡ませる。どうしても警戒心が拭い去れなくて身体に力が入っていたが、男の仕草は優しく、敵意はない。
 この身体ではこれからする行為は初めてだが、ブランシュにとっては慣れ親しんだ動きだ。濃厚に舌を絡め返すと、アイガーはうっとりと息を吐いた。
「そんなうぶな外見でこんなキスをしたら、普通の男は腰を抜かすぞ」
「あなたでなければ、こんなキスはしません」
 彼は目を細める。嬉しそうにも、どこか妖艶にも見える表情にどきりとする。
「慣れているといっても、身体は処女か?」
「ええ。お手柔らかに」
 アイガーはブランシュの夜着に指をかけると、はらりと肩から落とした。
「美しい」
「……どうも」
 なんとも、照れくさい。
 アイガーの熱い視線がブランシュの身体を辿る。そして反応を見逃したくないというように、再びブランシュの顔に戻ってくる。
 ブランシュは思い出していた。この男と身体を重ねるのは、あまり好きではなかった。まるで貪るような責め方で、イってもイっても離してもらえないのだ。
 そのキリのない快楽を思い出して、お腹の奥が疼く。
 そんなこちらの内心を知ってか知らずか、アイガーはブランシュをベッドに横たえ、その上に覆い被さった。
「お前は、ここをしつこくいじられるのが好きだっただろう」
 彼は服の胸元を咥えると、それを器用に広げた。中からふくよかな双丘が現れる。
「……っ」
 ブランシュはいやらしい光景から顔を背けた。
 普通なら、初夜でこんなエロティックな服の脱がせ方などしない。半ば呆れながら、跳ねる鼓動に気づかないふりをする。そして、次の瞬間。
「んんん……っ」
 胸の突起を舌でべろりと舐め上げられ、鼻にかかった声が出た。ふ、とアイガーが笑いを落としたかと思うと、今度は大きな口に含んで、舌で蹂躙し始めた。
「ああんっ」
 つい甘い声を出してしまった口を自分の手で塞ぐ。じわりと足の間が湿り気を帯び、そこをすり合わせた。
(まずい……)
 ますます、記憶が鮮明になってきた。
 姿形は違えども、やはりこの男はクレヴァスだ。前世共にしたベッドの上で、乱暴なのに官能を引き起こすこの男の性技を前に、なかなか隙を見つけられず困ったものだ。それに、今も変わらない人を見透かすようなこの目で見られると、なぜか身体が熱くなってしまう。
 お腹にキスをされ、下半身を覆っていた服も脱がされる。
 つうっと指で腿を辿られて、もう逃げ場もないからと溜め息をついて足を開いた。そこにどろりとした熱い視線を注がれている。
「十分、濡れているようだが」
「……っ」
 笑う男からまた顔を背けシーツを握りしめる。次にやってくる刺激が分かっていたからだ。
「んんっ、ん~~……っ」
 ぴちゃ、と音がして、唇で割れ目を覆われた。そして、くちゅり、くちゅり、と咀嚼するような音が鳴る。
 堪らない。
「ああっ、ちょっ、と……っ」
 相変わらずねちっこい愛撫だ。感じるところに気づかれたくない。だがこちらを観察する目がそれを許してくれない。
(そうだった、この、男……っ)
 彼はこうやって、ブランシュが好きな場所をすぐに見つけてしまうのだ。そしてその後は、満足するまでそこを貪られる。ブランシュは逃れようと身体を捻らせたが、力で押さえつけられてしまった。
「く、ぅ……っ」
 枕で顔を隠し快楽に耐えようとしたが、それもすぐに奪われてしまう。
「せっかくの初夜なんだ。全部見せろ」
「……っ」
 下唇を噛んで、潤んだ目で睨み付ける。彼はにやりと笑うと、口の周りを濡らした愛液をべろりと舐め取った。そうして、今度は耳元に顔を近づけて囁いてくる。
「やらしいな、尻まで垂れてるぞ」
「うぅ……っ」
 自分でも感じすぎていると分かっていた。淫らに煽る言葉に応えるように、蜜穴がひくひくと震えてしまう。アイガーがまたうっとりとした溜め息を吐いた。
「まったく、こんないやらしい身体でよく今まで耐えられたものだ」
 卑しめる言葉も、もはや興奮を煽るだけだ。ブランシュは、くぅん、とねだるような声を出してしまった。とうとう割れ目に指が伸びてくる。
「あ……っ」
 ねちゃ、ねちゃ、と陰核に愛液を塗り込むようにされる。経験のない身体を気遣ってくれているのか、その指使いは優しい。
「ん……っ、んッ」
 くちゅっ、くちゅっ、と鳴る音に耳を塞ぎたくなる。時折手のひらで円を描くように突起を刺激されて、ブランシュは堪らず背を反らせた。
「ああ……ッ」
「……挿れるぞ」
 アイガーの声は掠れている。ブランシュが短い息を繰り返し吐いて返事もできない中、太い指がぬかるみに埋め込まれた。
「うああん……っ」
 迎え入れるように腰が浮いた。濡れそぼったそこは、処女とは思えないほど滑らかにアイガーの指を吸い込んでいく。何も快楽を得ていないはずなのに、彼が低く呻いた。
「う……」
「ああっ、ああ、く……っ」
 ブランシュは首を横に振りながら喘いだ。前世とは違い異物感は強いが、ぐちゅっ、ぐちゅっ、と感じる所を的確に刺激されて、身体が快楽を拾う。
「前世でも、明らかに何か企んでいるお前を快楽に染めるのが大好きだったよ」
「……っ」
 いやらしい物言いに、ぞくぞくとした感覚が背筋を這っていく。
 彼を睨み付けようと目を開くと、欲情に追い立てられながら、加虐的な笑みを浮かべる顔がそこにあった。
「その顔、侯爵家の跡取りにはふさわしくないですわ……っ」
 組み敷いている女に生意気を言われているはずだが、アイガーは笑顔のままだ。だがその目がさらに狂暴なものになる。
「生涯お前しか見ないものだ。問題ない」
「……っ」
 こんな状況なのにまるで盛大な愛の告白をされたように感じてしまって、心臓がきゅうっとなる。
 ささくれ立った男の指を締め付けてしまったようで、アイガーがまた眉を寄せ苦しそうに呻いた。
「可愛い反応はやめてくれないか」
 彼はそう呟くと、二本に増やした指でまたブランシュを責め始めた。
「ん……っ、あッ」
 処女の身体には当然限界がある。だが、ブランシュは頭では女の身体の使い方を知っている。力を抜いたのが分かったのか、優しい笑みがこちらを向いた。
「上手だ」
 キッと彼を睨み上げる。身体は違えども、ブランシュには前世娼婦であるという一種のプライドがある。本当の処女のように扱われるのは好みではない。
 だが、ブランシュの強がりは長くは続かなかった。しつこく感じる所を刺激されて、もう声も出せなくなる。
「……っ、……ッ」
 強引に高みへ押し上げられていくのを感じながら、拳を口に当てて声にならない声を上げた。ぐちゅぐちゅという音は先ほどとは比較にならないほど激しい。ここまで丹念にほぐされると堪らない。
「あああ……ッ」
 ブランシュを甘い痺れが襲い、全身を陶酔感が包み込んだ。
 指での愛撫で達してしまったのだ。
「ん……っ、あ……」
 この身体で初めて感じる絶頂に、身体を震わせて耐える。
 上から「ああ」と、掠れた声が落ちてきた。
 ブランシュは、呆けたままそちらを見上げて後悔した。予想以上に恍惚とした表情の獣がこちらを見下ろしている。その熱すぎる視線に当てられて、ぞくぞくと快楽が背筋を這っていった。
 それから逃げるように視線を下ろし、ブランシュは息を呑んだ。彼の手は、グロテスクな雄を夜着から出し、こちらに見せつけるようにゆっくりとしごいている。
 そんな仕草は初夜にふさわしくない。だがブランシュはそのいやらしい動きに、ごくりと唾を飲み込んだ。
「いやらしいな、そんな目で見て」
「どっちが……、ああっ」
 男は歪めた笑みを浮かべ、固い屹立でぐちゅり、ぐちゅり、と濡れた穴の周りをこねる。
 ごりごりとしたその固さが彼の興奮を伝えてくる。それに触発され、ブランシュはつい腰を揺らめかせた。
「挿れるぞ」
 掠れた声をからかう余裕はブランシュにもない。
 ブランシュは頷いた。
「んんん……っ」
 彼が腰を進めてくる。ブランシュは雄の圧迫感に呻いた。
 丁寧にほぐされてよく濡れているとはいっても、やはり痛い。どうしても避けられないその痛みに眉を寄せて、深く呼吸を繰り返した。
「う」
 アイガーが呻く。ブランシュの中はぎゅうぎゅうと彼のものを締め付けていて、彼からすれば堪らないのだろう。
「……すまないな」
 申し訳なさそうな言葉に、顔を歪めながらもブランシュは笑みを浮かべた。彼はもっと威圧的な態度をとってもいい立場なのに、やけに紳士的だとおかしくなったのだ。
 アイガーはこちらを見て、なぜか切なそうに顔を歪める。
 彼は時たま腰を震わせながら、動きたいという衝動に耐えているようだ。
 しばらくそうしていると、やはり異物感はあるが、先ほどよりはマシになってきた。アイガーがうっとりと息を吐く。
「……よすぎる」
「……っ」
 困り切った顔で色気たっぷりにそう言われて、中がきゅんと反応してしまった。
 アイガーがまた呻き、そして「すまない」と断りを入れると、腰を微かに動かし始めた。
 激しい抽送ではないので痛みは感じない。だが、奥をこん、こん、と突くその動きに合わせて声が出てしまう。
「あっ、あんっ」
 咄嗟に口を塞いだ。アイガーはブランシュに覆い被さるとその手をどかせて、耳元で囁く。
「聞かせてくれ、どんな下品な声でもな」
 おそらくこれは、アイガーが高まるための動きではないだろう。ブランシュを快楽に導くことを優先したその刺激に触発されて、奥からどんどん愛液が溢れ出てきてしまう。
「ああっ、やぁ……っ、あ……ッ」
 アイガーの動きが、奥に打ちつけるようなピストンに変わっていく。ぐちゅぐちゅという水音が激しくなる。快楽の波が一気に押し寄せ、先ほど覚えたものよりも強い刺激がブランシュを襲った。
「ああああ……っ」
 ブランシュは背を反らせて叫んだ。
 びくびくと身体を痙攣させる。アイガーがまた苦しそうに呻いた。
 容赦なく追い打ちをかけられるかと思っていたが、彼はそうはしなかった。動きを止めてくれたおかげで、うっとりと快楽に浸る。
「イケて何よりだ」
 不敵に笑う男を睨み返すことまでできた。
「お、余裕が出てきたな」
「ちょっ……」
 だが、すぐにそれに気づかれてしまう。
「ああっ、あっ、まだぁ……っ」
 絶頂の余韻がまだ濃いのにごんごん奥を責められて、ブランシュの口から蕩けた喘ぎ声が出た。一度絶頂を知った身体は、容易に快楽を拾ってしまう。続けざまに達してしまい、歯を食いしばった。
「く……う……っ」
 シーツを握りしめ怒濤の刺激に耐えながら、ブランシュは思い出していた。
 前世でもこの男はこうだった。こんなに男根を固く猛らせ今にも欲を吐き出しそうなのに、彼はブランシュを何度もイかせるまで許してくれないのだ。
「だめぇっ、それだめっ、またイっちゃうぅ……っ」
 また高みに押し上げられていく。お腹の奥に気持ちよさが押し寄せ、今にも爆発しそうになる。
 だが、その時。
 アイガーは、ぴた、と動きを止めてしまった。
「ああ……っ!?」
 彼は獣のように唸りながら耐えている。快楽を拾おうとしてつい動いてしまった腰を、男の手が止めた。
「なん、で……っ」
「なぁ、ブランシュ、教えてくれ。お前の今の――主(あるじ)は誰だ」
「え……っ!?」
 蕩ける頭ではっとなる。アイガーの表情には、熱に浮かされた中にもどこか冷静さが混じっている。ブランシュは慌てて首を振った。
「なにも、ないわ……っ、本当に、ただ前世の記憶があるだけ……で……っ」
 ぶちゅっ、ぐちゅっ、とまたピストンが再開され、声にならない叫びを上げる。
「まさか。お前ほどの人間が? 今度の雇い主は誰だ。あの国とも繋がっているのか?」
「あれから……っ、どれだけ経ったと思ってるの……!? そんなはず……っ、あああ……っ」
 ずるりと屹立を抜かれたかと思うと、ブランシュは身体をひっくり返された。四つん這いの姿勢になったところに、また固いものがずぶずぶと埋め込まれる。
「だめぇっ、これだめぇ」
 初夜から行っていい体位ではない。なのに、ばちゅん、ばちゅん、と激しく腰が打ち付けられると、声が止まらない。
「あああああ……っ」

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