裏切りの皇太子は姫騎士を不埒な愛欲で捕らえて離さない

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裏切りの皇太子は姫騎士を不埒な愛欲で捕らえて離さない


著者:吉田行
イラスト:八美☆わん
発売日:2024年 3月22日
定価:630円+税

山の谷間でささやかに生きてきたタイタンの民に、シャンドリア帝国の兵が攻めてきていた。
タイタンの姫騎士であるアデレイドは彼らを迎え撃つ気持ちで戦前に立っていたのだが――!?
シャンドリア兵の中に、タイタンで世話をしていたロタリオの姿を見つけてしまい……?
兵力の差に敵わず、アデレイドを含めタイタンの民はシャンドリア兵に捕まることに。
アデレイドは、行方をくらましていたロタリオと再会を果たしたのだが――。
シャングリラ帝国の皇太子だと名乗った彼に唇を塞がれてしまい――!?
「こんな風に、抱きしめたかった」
ロタリオから激しく淫らな快感を与えられるアデレイド。
彼の裏切りに怒りや悲しみを抱きながらも、その触れる手にはなぜか愛情を感じてしまい――?
彼と過ごした穏やかで幸せだった記憶を遡り、それでもロタリオへの感情に名前をつけることはできなくて……。

【人物紹介】

アデレイド
タイタンの民の姫騎士。
気高い性格で、誇りに満ちあふれている。
ロタリオが裏切り者だと知ったアデレイドだったが――!?

ロタリオ
ジャンドリア帝国の皇太子。
優しく穏やかな性格をしている。
裏切ったはずなのに、アデレイドに触れる手には愛情が込められていて……?

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【試し読み】

 あの時と同じ灰色の目が、今は自分を嬲っている。
「こんな……こんなことを!」
 アデレイドは無口な女たちによって強引に湯あみをさせられた。抵抗したくとも両手両足を縛られているのでなにも出来ない。戦の泥が落とされ、白い肌がさらに艶やかになる。
 体の上から真っ白な寝間着をかけられ、細い紐で軽く縛られた。薄物は少し動いただけで前がはだけそうだ。
 そんな恰好のまま連れてこられたのは豪奢な寝室だった。部屋の中央には豪奢な天蓋付きの寝台が置かれ、窓には美しい刺繍のカーテンが下がっている。花瓶には花がふんだんに飾られていた。
「! なにをするの……!」
 女たちはアデレイドを天蓋付きの寝台に寝かせると、両手両足を手早く支柱に縛り付けた。自分の体は生贄のように開かれ、身動きが取れない。
「くそ、いったいここはどこなのです……!」
「私の寝室だ」
 静かに入ってきたロタリオも、ゆるやかな寝間着姿になっている。
「ごくろうだった、手間をかけたね。もう下がってよろしい」
 自分を縛り付けた女たちにロタリオは優しく声をかけた。彼女たちは礼儀正しく敬礼をすると部屋を出て行った。
「彼女たちは女兵士なのだ。普通の侍女ではお前を扱えないと思ってね」
「ふざけないで……」
 寝台にほぼ裸で縛り付けられている。これがなにを意味するのか、自分でも分かる。
(汚されたら、死ぬしかない)
 他国の男に抱かれた女は天国へ行けない。そのまま彼の子を宿したら――。
(その前に、死のう)
 もうロタリオに犯されることは避けられない。彼は自分の欲望を吐き出せば満足するはずだ。この縄も解かれるだろう。
 その時いさぎよく死ねばいい。死んで、父の語った天国へ行くのだ。汚された女でも自ら死ねば、きっと神は迎え入れてくれる。
(だから、早くして)
 ロタリオは寝台に腰かけるとアデレイドの髪を優しく撫でる。
「美しい……」
 そんな甘い言葉も耳に入らない。
(汚らわしい、裏切者)
 ほんの一時でも彼を側に置き、信頼していた時間が口惜しい。哀れみ、情けをかけたのに全て覆された。
「君を初めて見た時、タイタンにこんな美女がいたのかと思った」
 今更お世辞を言う彼が憎らしかった。
「最初からタイタンを滅ぼすつもりで来たのですね。私はまんまと騙されたわけだ」
 ロタリオはそれに答えず、アデレイドの寝間着の紐をほどいた。優しい侍女のような、穏やかな手つきだった。
「くっ……!」
 白い布の下から、同じくらい白い肌が現れる。
「君の怒りは分かる。だが、我々は早くエスタルを捕えなければならない。神殿の場所を言うつもりはないか」
「あるわけないでしょう」
 アデレイドは冷たい目で彼を見つめる。
「この体を好きにしたいなら、すればいい。だが私の信仰は奪うことは出来ない」
 ロタリオの表情は相変わらず優しく、やがて彼の指がすっと腹の縦線をなぞった。その瞬間びくっと戦慄が走る。
「体だけでは不完全だ。私は君の、全てが欲しい。心から私の味方にさせてみせる」
(嫌!)
 彼の手が寝間着の前をはだける。アデレイドの全てが露わになった。
 兵士として鍛えられた細い胴、その上に不釣り合いなほど大きな胸が乗っている。それはアデレイドが密かに気にしていた肉体だった。
(見ないで)
 自分の体が女のものに変わっていく――それが屈辱だった。
「綺麗な体だ……」
 ロタリアの手が胸の上に覆いかぶさった。
「……」
 アデレイドは声を堪えた。痛みではなくこんな感触に、どう抵抗したらいいのか分からない。ただ唇を噛んで、声を押しつぶした。
「そんな顔も、可愛いよ」
 不意に両方の乳房を掴まれる。彼の力はやわやわと繊細で、アデレイドの体内に眠っていた快楽の泉を沸き立たせようとしていた。
「くっ……やめなさいっ……」
 ただ犯されるだけではなく、快楽まで与えられたら――本当に天国に行けなくなってしまう。
(それが目的なのか)
 自分の心まで汚すこと、それがロタリオのやりたいことなのか。
(どうしてそこまで)
 自分は彼の命を助けた。それだけではない、タイタンで充分親切にしたはずなのに。
 アデレイドの黒い瞳に涙が浮かんだ。
「泣かないで……」
 ロタリオは指で涙をぬぐう。その声はタイタンでの優しさと同じだった。
(お前はいったい、どちらが本物なの)
 物静かで大人しかった、よく働く奴隷のロタリオ。
 それは全部嘘だったのか。
 不意に口をふさがれた。
 優しいキス――あの時と同じ。
 生まれて初めて、神や父への愛とは違うものを感じた、あの時。
「……心を手に入れてからキスをしようと思ったのに、我慢できなかった」
 ロタリオは照れ臭そうにいう、その微笑みが記憶をさらに鮮明にする。
(思い出させないで!)
「うっ」
 再び彼の顔が近づいてきた時、とっさに唇に噛みつく。それは嫌悪感からではなかった。
 あの時の思い出を、汚されたくなかったから。
 ロタリオは唇に滲んだ血を舌で舐めとり、なにか考え込んでいるようだ。
「……仕方ないな、タイタンのじゃじゃ馬を馴らすには私の力だけでは無理そうだ」
 彼はいったん離れると、小さな小瓶を持ってきた。細い筆が一本刺さっている。
「なんだ、それは」
 ロタリオは瓶から筆を取り出す。薄い色の液体がぽたぽたと垂れている。
「これは魔導士が使っている淫印を書くためのインクだ。下腹に呪文を書くと、自分の意思とは無関係に淫らな気分になる」
「なんですって……!」
 アデレイドは黒い瞳を大きく見開いた。だが縛られているので自分の下半身でなにが起きているのか見ることも出来ない。ロタリオははだけたアデレイドの下腹に筆をつける。ひやりとした感触に身が縮む。
「やめてっ、卑怯者……!」
 肌の上にすらすらとなにかが書かれていく。くすぐったくて、甘い感覚――。
「あっ……」
 再び胸を触れると、先端が勝手に尖っていく。軽く摘ままれるだけで感じてしまって――。
「効いてきたようだね」
 彼がおもしろそうに言う、その声が口惜しい。
「嘘ですっ、こんなもので、あ、ああっ」
 ロタリオが体の上に覆いかぶさり、乳首を唇の中に含む。繊細な舌先が突起に絡み、吸い上げる。
 それは、感じ始めた肉体にとっては拷問にも等しい快楽だった。
「ひゃう……!」
 自分の声ではないような音が唇から洩れる。反応したくないのに、全身から汗が噴き出た。
「や、やめっ……」
 固くしこった粒の、皺一本一本まで丹念に舐められてアデレイドの意識が遠くなっていく。感覚が胸に集中してなにも考えられない。
「ふ、ああ……」
 吐き出す自分の息すら熱くなっている。ロタリオの口の中でくちゅくちゅと転がされ、たっぷり嬲られた乳首は赤く染まっている。
「綺麗だ、白い肌に乳首がよく映えている」
 気が付くとロタリオは自分を見下ろして観察していた。その視線はまるで恋人を見るように熱っぽく、アデレイドにとっては火にあぶられているように苦痛だった。
「見ないでっ……」
 肌が焼けるような感覚、これも淫印の効果なのか。
「もっと、綺麗にしてあげる」
 彼は寝台の隅から大きなクッションを持ってきた。それをアデレイドの腰の下に入れようとする。
「嫌っ……こ、こんなっ……」
 両手両足を縛られた状態で腰を持ち上げられる。足の間の秘部が勝手に開いてしまう。
「やめて! 逃げたりしないから、縄をほどいて!」
 こんな屈辱的な格好だけは止めたい。だがロタリオは持ち上がった下腹を優しく撫でるだけだった。
「君はどこもかしこも綺麗だ、ここも、もうほんのり紅くなっているよ」
 彼の指先が前から谷間に滑り込んだ。そこは――信じられないことに――すでにぬるりと湿っていた。
「ひ……」
 唇を噛んで声を堪える。その間にも彼の指は無遠慮に進んでいく。
「胸をしゃぶられて、感じていたんだね。もうこんなに熱い」
 ぬるぬると秘肉を擦られて、そこがどんどん熱くなっていく。アデレイドは無言で身をよじった。
「んっ、く……」
「抵抗しても無駄だよ、もう淫印の効き目が出ているようだ」
 その言葉はアデレイドの心を折りそうになる。抵抗を止めて、快楽に身を任せたい――。
(駄目だ!)
 父のエスタルはいまだ民のため神殿で祈っているはずだ。娘である自分が堕落するわけにはいかない。
「気持ちよくなんか……ない……!」
 声を出さなければ、ばれないはずだ。男と違って女の体は変化しない――アデレイドはなにをされても無言を貫こうと決意した。
 すると、ロタリオは再びあの瓶を手に取る。
「嘘をつくのはよくないよ、もう君の体は反応しているのに」
「なに……」
 彼は筆にたっぷりインクを含ませると、谷間に差し込んだ。
「ひああ……!」
 つるりと筆先が肉の狭間に滑り込む。その瞬間、震えるような快楽が襲った。
「どうだい、この感触は」
「やめっ……やめてっ……」
 足の間に、飛び上がるほど感じる場所がある。そこを直接擦られてアデレイドは悶絶した。
(これは、いったい……どうして?)
 小さな一点を筆で擽られると、じんじんと熱くなってくる。生まれて初めて感じる奇妙な感覚。
(あ、だんだん……強くなる……!)
 体が燃え上がっていく。後戻りできない。
「や……あ、あ……!」
 声にならない、吐息が絶え間なく唇から洩れた。咽喉に力が入らない。
(変わっていく、神の子だった私が)
 タイタンの王エスタルの子供として生まれ、聖騎士として生きてきた自分が。
 汚らわしい淫印を与えられ、恥ずかしげもなくあえいでいる。
「嫌……いやあ……」
 アデレイドの目尻から涙が零れる。ロタリオは体の上に覆いかぶさると優しく頭を撫でた。
「どうして泣くの?」
 彼はキスで涙をぬぐう。
「もう……天国へ行けない……私は、汚れてしまった」
 神の子ではない男から快楽を与えられ、これから犯されるのだろう。
 天国の門は閉ざされてしまった。花が咲き、鳥が飛び交い、苦痛のない世界が。
 ロタリオは嘆くアデレイドを、美しい灰色の瞳でじっと見つめていた。
「大丈夫、私も地獄へ行くから」
 彼は縛られている彼女の右手に自分の左手を重ねる。
「私は君とずっと一緒だ、共に地獄へ行こう」
「なんですって……」
「君を欺いて、天国へ行こうとは思わない。偽りの罪で私も地獄へ行く」
 その言葉はまるで、まるで本心を打ち明けているようで。
「君とはずっと一緒だ」
 ロタリオはそう言うと掌を合わせ指と指を絡めて、ぎゅっと握りしめた。彼の顔が近づいてきて、キスをされる。恋人同士のような、優しいキス。
(地獄へ)
 不思議なことに、彼の言葉と仕草でふっと気持ちが楽になった。
(地獄へ行こう)
 もう後戻りはできないのだ。
 自分の運命は決まった。
(堕ちる)
 かたくなに抵抗していた気持ちが折れてしまった。
「あ、あ、ああ……!」
 再び筆が細かく動く。一番感じる場所を執拗に責めた。
(あ、なに、これ……?)
 自分の体が変わっていく、その一点が熱く膨れ上がって、自分で制御できない。
「駄目、もうっ……!」
 アデレイドはほの紅く染まった体を弓なりにする。薄く淫印が描かれた下腹が浮き上がった。
「やうっ……!」
 筆がぬるりと滑った瞬間、アデレイドの体はぶるっと震えた。
「あああーーっ!」
 全身が燃え上がった、一本の松明のように。
 今まで知らなかった箇所がきゅうっと収縮する。奥から熱が噴き出してくる。
(これは、なに?)
 痛みとも安らぎとも違う、自分が弾けて飛んでいくような感触。
「いったね……私の手でいかせた、嬉しいよ」
(これが、そうなの……)
 とうとう性の感触を教えられてしまった。しかも憎い裏切者の手で。
 聖姫騎士は、生まれて初めての絶頂を迎えたのだった。

「あっ……あああ……」
 アデレイドはすでに両手両足を拘束されてはなかった。ロタリオが太い縄を切ったのだ。
 だが、すでに体には抵抗の力は残っていない。
 何度もいかされ、体の芯から蕩けていた。
(これが私の体なの)
「ひゃう……そこ、だめえ……」
 筆によって蕩かされた果肉に、ロタリオはゆっくりと顔を近づけていく。恥ずかしいのにもう自分で足を動かすことも出来ない。
「たっぷり蜜が溢れているよ、君のここが」
 彼の唇がとうとうそこに直接触れる。
「きゃう……!」
 柔らかくほぐれた花弁をくちゅくちゅと掻き回され、大きく膨らんだ花芯を吸われる。
(もう、無理っ……)
 さっきあれほど嬲られた雌蕊があっという間に熱を持つ。優しい感触がかえって淫感をそそった。
「ひああっ」
 腿ががくがくと震えてアデレイドはあっけなく二度目の絶頂を迎える。それは一度目より深く、大きかった。足の間から絶え間なく蜜が溢れている。
「やうう、止めて……!」
 甘い振動がいつまでも収まらない。まだ感じている花弁をさらに嬲られる。
 彼の舌先が、体の奥へと入ってきた。
「ふあっ、そ、そんなところっ……!」
 自分でも触れたことのない、深い場所だった。男の長い舌が蛇のようにずるりと侵入していく。その感触にアデレイドは震えた。
(どこまで変えられるの)
 彼によって自分の肉体が変わっていく。それに抵抗することも出来ない。
「ひ……!」
 奥まで入り込んだ舌先が中を擽る。その瞬間、体内がきゅうっと収縮した。
「私のものに絡みついてきた……感じてきたんだね」
「くっ……」
 悔しかった、犯されるだけでなく、感じてしまうことが。
(どうして)
 こんなに感じてしまうのだろう、魔導士の調合したインクによる淫印のせいなのか。
(悪魔だ)
 ロタリアは悪魔なのかもしれない。人を堕落させ、神の国を汚すためにやってきた――。
(私は、もう悪魔に魅入られてしまった)
 悲しみに胸が押しつぶされそうだ。それなのにひくひくと蠢く体内は、更なる快楽を求めている。
 体の中に、貪欲な獣が産まれたようだ。
(私はいったい、どうなってしまったの)
「ふああ……」
 アデレイドの中までたっぷり味わったロタリオは、満足した肉食獣のように大きく息を吐きながら自分の服を脱ぎ、体を重ねてきた。
「君が欲しい」
 彼の下腹には男のものが隆々と起立している。
「君の中に、私のものを注ぎたい。全部私のものにするよ」
(終わる)
 ロタリオに、憎むべき男に犯される、自分は聖騎士ではなくなる。
 もう抵抗する力は残っていなかった。
(もう戻れないのだから)
 すでに自分の体は快楽を知ってしまった。タイタンには戻れない。
 戻っても、もう昔の自分ではない。
 ならば、とことん汚れてしまってもいいのではないか。
 すべて諦めてしまった方が、楽なのではないだろうか。
「ひあ……」
 とろとろに蕩けた中に、指が浅く差し込まれる。入り口付近はすでに抵抗は無くなっていた。
「凄く濡れていて、柔らかい……これなら入れられそうだ」
「くっ……早く、しなさいっ……」
 早く終わらせて欲しい、もう自分などどうなってもいい、アデレイドは目を瞑った。
 すると、不意に頬を手で包まれる。
「なに……」
 思わず目を開けると、ロタリアの顔がすぐ側にある。
「私を見て」
 その声は依然と変わらぬ優しさだった。灰色の瞳が優し気に自分を見つめている。その睫が金に光っていた。
「どうして」
「君が好きだから」
 ロタリオの目も、声も、依然と変わらず優しいままだ。そのことに胸が痛い。こんな時に何故そんなことを言うのだろう。
「嘘をつくなっ……」
 あの時囁かれた言葉。
 今は嘘だと分かったのに、それを繰り返すなんて。
「嘘じゃない、本当に君を愛している」
 すうっと気が遠くなった。裏切られ、汚れたと思った過去の思い出。それが再び蘇る。
(やめて)
 その優しいまなざしで見ないで欲しい。愛されていると勘違いしてしまう。

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