モブ令嬢に転生したはずが、攻略対象の王子から不埒な偏愛を注がれています
著者:逢矢沙希
イラスト:Shikiri
発売日:2024年 8月23日
定価:620円+税
ロレンス侯爵令嬢・アガーテは舞踏会の夜、自身の前世の記憶を思い出していた。
乙女ゲーム世界のモブ令嬢に転生したことを知り、会場から離れようとするアガーテ。
そんな彼女の前にエリック・ラ・イーベルスターが現れた……!?
彼はこの国の王太子で、ゲーム世界における攻略対象のメインヒーローでもあった。
そして、記憶が戻る前のアガーテは彼に鬱陶しがられるほどにつきまとっていて――。
顔を青ざめさせている様子にエリックから心配されるものの、アガーテはなんとか取り繕ってその場から立ち去る。
現在がゲーム中盤であることに気づいた彼女は、これからはエリックに近づくこと無く、結婚相手を見つけようと奮闘することに――。
結局、婚活では目立った成果を出すことができずゲームエンドの日を迎えたはず、なのだが……?
なぜかエリックは悪役令嬢キャラとの婚約を解消しており、その上ヒロインキャラも幼馴染との婚約が成立していた――!?
シナリオとは違う展開に驚くアガーテだったが、避けていたはずのエリックから熱烈に求婚されてしまい……?
「レディ・アガーテ。私はあなたに結婚を申し込む。どうかこの手を取って、私の妃になると約束してはくれないか」
辞退する彼女になおも迫るエリックは、隠していたアガーテへのある想いを打ち明けてきて――?
【人物紹介】
アガーテ・ロレンス
ロレンス侯爵家の令嬢。
高飛車な一方、常識人で小心者な一面も。
乙女ゲーム世界のモブ令嬢に転生したと気付き、婚活に奮闘するが――?
エリック・イーベルスター
イーベルスター王国の王太子殿下。
ゲーム世界ではメインの攻略対象キャラクターの一人。
品行方正な優等生に見えるが、実は特殊な性癖があったようで……?
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【試し読み】
「そうか……良かった」
彼の端正な顔に浮かんだホッとした笑みにこちらまで身体の力を抜いてしまったのが最後の敗因だっただろうか。
再び口付けられたのは、ほうと溜息交じりの吐息を吐いた、その直後だった。
「んんっ!?」
またも白目を剥いたが、今度は先ほど以上の抵抗にはならなかった。
と言うのもその口付けがこれまでよりも優しく柔らかく、それでいて甘いものだったからだ。
それと同時に指先で耳の下から首筋をなぞるようにそっと撫でられて、不覚にもぞくぞくっと肌の下を駆け抜ける刺激に身震いした。
こんな状況は望んではいないはずなのに、あろうことかその刺激を心地よいと思ってしまった。
そう、アガーテの身体は本人の意地とは関わりなく、快感を抱いたのだ。
そしてそのことがエリックに知られてしまっている。
無理もない、たったそれだけの触れ合いにアガーテの肌はすっかりと上気し、その表情が快楽に蕩け始めているのだから。
それは決して嫌っている相手に対する反応ではなかった。むしろその逆だ。
「ああ、良かった。私に触れられることに嫌悪感はなさそうだね」
「な、何を……お止めになって……」
拒絶の声が弱々しくなったのは指先での接触が、今は手の平全体を使うようにデコルテから覗く肌に触れられているからである。
自分よりも少し体温の高いその手に肌を擦られると、得も言えぬ感覚が肌の下の神経を痺れさせるように全身へと駆け巡って喉を震わせる。
「……あっ……」
意図せず、自分でも驚くほどの甘い声が漏れた。
それに気を良くしたのか、エリックは再びアガーテへと口付け、それは唇から頬へ、そして首筋へと移動しながらキスの雨を降らせてきた。
「だ、駄目、止めて……っ」
こんなつもりではなかったし、こんなはずではなかった。
そもそも何もかもが順序を無視していて、アガーテの心さえ置き去りになっている……そのはずなのに。
エリックの肩を押し返そうと手で突っ張るも、上手く力が入らない。
もっともそれ以前にアガーテの力程度では、のし掛かるエリックの想像よりも逞しい身体はびくともしないだろうが。
「本当に止めてほしい? その割には声が甘くなっているように思うけれど」
「わ、わたくしは、そんなに簡単に身体を許すような女では……!」
「もちろん承知している。あなたがこんなに素直に蕩けてしまうのは、私が相手だからだろう?」
なんという自信過剰な発言だろう。
自分が好かれているという絶対的な自信がなければ出てこないような言葉に、心の内を見透かされている気がして、かあっと頬が熱を持つ。
図星を突かれた羞恥と悔しさの両方で涙目になるアガーテだったが、すぐに呆けた顔になってしまった。
というのもエリックがそんな自分に、ひどく優しく、そして嬉しそうに微笑んだからだ。
「あっ……」
思わず見惚れている間に、無意識のうちに唇から甘い声が漏れる。
いつの間にかデコルテを撫でていた彼の手が、そのまま胸の上へと降りて、柔らかな膨らみを包み込んでいた。
「可愛らしいね、アガーテ」
無言で唇を引き結び、涙目のまま睨んだけれど、エリックはその視線を受けながら彼女の眦へと口付けを落とした。
別段暴力や権力で脅されているわけでもないし、この状況に戸惑っていても恐怖を覚えてはいない。本気で抵抗しようとすれば、きっとできるだろう。
それなのに強く突っぱねることができないのは、悔しいが彼の言う通り未練があるせいだろうか。たとえ一度限りでも、深く触れ合えるなら……と、そんな夢を抱いてしまうほど。
絶対に後で面倒なことになると判っているのに。
「アガーテ。……アガーテ」
熱っぽく名を呼ぶその声は、これまでアガーテが知っていた王太子の声とはまるで違っていた。
彼女から明確な抵抗がないことを知るとエリックの手はますます大胆になって、肩から強引にドレスの生地を引き下げてしまう。
あっ、と思った時にはもう素肌の胸が表にこぼれ出た後だ。
弾むように姿を現した形の良い乳房を、エリックがその手で包み込んでしまう。
やわやわと優しく揺らすように揉まれながら、ふっくらと尖り始めた先端の側面を親指で擦られると、びり、びりっと弱い電流のような刺激が走って、アガーテの背を浮かせた。
「あ、あ、ん……」
意図せずエリックの前に胸を突き出す姿勢になったその膨らみに彼の唇が落ちる。
片方の乳房を相変わらず優しく揉みながら、もう片方の乳房には肌を味わうように舌を這わされると、じわっと広がる愉悦にまた身体が震える。
エリックの口付けは胸の輪郭を辿るように脇から胸の下の付け根、そして内側へとぐるりと回ってやがて淡く色を増したその先端へと辿り着いた。
凝り始めたその場所へ彼が舌を伸ばすのと、もう片方の乳首を指で捻り上げるのとはほぼ同時だ。
「あぁんっ!!」
これまでよりも強く肩が跳ねるような強い刺激に、信じられない声が出た。
指でくりくりと捏ねられるのも気持ち良いが、濡れた熱い舌で舐られるのが特に気持ち良い。
身体中の産毛が逆立つような刺激に駄目だと判っていながら、身もだえするのを止められなかった。
「胸だけで随分気持ちよさそうだ。快楽に素直なあなたも可愛い」
可愛い、可愛いとエリックは蕩けそうな声で言うけれど、その言葉はどこまで本気なのだろう?
「やめ……お止めください、殿下……お願い……!」
左右に首を打ち振るう度に、アガーテの波打つ豊かな黒髪がシーツの上で踊る。
「あなたのお願いなら全て聞き届けてあげたいけれど、そのお願いは聞けないな」
強引に引き下げられたドレスはさらに腰の下までおろされて、露わになったなだらかな腹にも腰にも、エリックの両手がマッサージでもするように滑り降りる。
そうしながらこれまで以上に充血して自己主張する胸の先を強く吸い上げた。
「う、あっ、あぁっ……!」
全身が熱いがとりわけ腹の奥が熱い。
どろりととぐろを巻くように熱が燻ってそれが内側に宿る官能を高めていく。
いつしか互いの肌はしっとりと汗ばみ、触れる素肌同士が隙間をなくすように貼り付いて……それを無理に動かすことで生まれる強い摩擦による刺激が、さらなる快感を運んでくる。
まだ触れられてもいない場所がわななき、奥からどろりと溢れ出るものがあることにアガーテは気付いていた。
(……これは夢? そうよ、きっと夢だわ。そうでないと説明がつかないじゃない……)
こうしていると、自分がゲームの世界に転生したことも、モブの侯爵令嬢であることも、そしてエリックが何やら妙な性癖をカミングアウトしながら強引に迫ってくることも、それを自分が拒みきれないことも、全てが本当に夢のように思えてくる。
平たく言えばアガーテは現状について考えることを止めたとも言える。
何より考えようとしてもエリックがそれを阻害するように愛撫を加えてくるのだから、真っ当なことなんて考えられるはずがない。
「ん、あぁ……っ」
素肌を擦られるたび、胸に口付けを落とされるたび、そして敏感に尖った場所に舌と歯で刺激を与えられるたび、アガーテは悩ましくその身をくねらせた。
図らずともその動きがいっそう胸を強調し、エリックの目を楽しませることになる。
片方の乳首を充分に舐めしゃぶったら、今度はもう片方へ。
触れられる時間が長くなるにつれ、彼の愛撫もより大胆になってきた。
「や、ん、はぁ……っ、あ、んん……っ」
いつしかアガーテの両胸は彼の両手によって根元から絞り上げるように握られ、赤く充血した乳首をくびり出すように指で捏ねられながら、何度も何度も吸い、舐め上げられていた。
まるでそこから何かを吸い出そうとでもするかのように。
そんな風に、上半身の刺激に気を取られていたから、アガーテはいつの間にか身に纏っていたドレスやパニエ、下着が足元から脱ぎ落とされて全裸にされていたことに気付かなかった。気付いたのは両足を大きく割られた時だ。
「えっ、や、何を……!」
もっとも繊細な秘部を彼の目前に晒した状態で、何をするつもりかと問い質してもその質問に意味はない。
それでも襲い来る強烈な羞恥に慌てて身を捩って秘部を両手で隠そうとしたけれど、それよりもエリックの片手が降りてくる方が早かった。
「はぅっ!」
思わずビクッと腰が浮き上がったのは、既にしとどに濡れていたその場所に指を這わされたからだ。
「ああ、いいな……綺麗に濡れ光っている」
うっとりと呟きながらエリックはその場所に傷を付けないよう指の腹を襞の内側に潜り込ませながら、ゆっくりと撫で下ろした。
当然ながらこれまでの人生で……いや、前世の人生を合わせてもそんなところを異性に触れられた経験のないアガーテは、初めて感じる未知の刺激に思わず、はっと短い息を吐く。
もったりと柔らかな、それでいて無視できないぬるま湯に浸かるような愉悦だった。
もっと強く鋭い刺激がくるものなのかと思っていたけれど、そこまで暴力的な快感ではない……だが、優しく上下に擦られると、じんわりと熱が広がるような心地よさを覚えて、腰が小刻みに震えてしまう。
もっと、もっとといつまででも味わっていたくなるような気持ち良さだ。
「ぁ……ん、あぁ……」
声がこれまで以上に甘くなる。身体の奥からどろっとまた新たな雫がしたたり落ちて、それがさらなる潤滑油となりエリックの指の動きを助ける。
きっと彼は直接触れることで、アガーテの入り口が切なげに蠕動を始めたことに気付いているだろう。
わななく密口の浅い場所を擽るようになぞられると、ツキンと針で刺すような尖った快感が走って、また腰が右に左にと小さくくねってしまう。
「どうかな……少しは気持ち良いと思ってくれている?」
「……そんなこと……」
言えるわけがない。でも違うと否定することもできない。
上気して真っ赤になった顔で、唇を震わせながら閉ざすアガーテに、エリックは笑う。
優しく、けれどどこか倒錯的な笑みだと感じた。
「私は気持ち良い……あなたの肌が熱く吸い付くようで、どこもかしこも甘く感じる」
肌が甘く感じるなんてちょっと信じられない。でもやっぱり否定できずにアガーテは大きく喉を晒すように背を逸らせた。
エリックが言葉と同時に秘部の上部に隠れていた繊細な芽を、包皮の中から剥くように露わにしたからだ。
「ひ、あぁっ!」
顔を出したその場所を指でそっと撫でられると、びっくりして腰を引きそうになるほどの鋭い刺激に襲われる。
逃げる腰を追いかけるようにさらなる愛撫を加えられると、腹の奥で燻る炎が小さくぱちぱちと弾けるような、あるいは炎が温度を上げていくような感覚に理性を焼かれる気がした。
「や、あっ、そこ、だめ…………っ!」
「どんどん濡れてくる。入り口も綻んで……ほら、私の指が入ったのが判る?」
「やだ、変なこと言わないでっ……ああっ!」
ぬくり、と身体の中に割って入るものの存在にまたアガーテは頤を上げた。
一本沈んだと思ったら、すぐにもう一本。
狭い未開の場所に沈み込んだその指は、道を広げるように動いてアガーテの初心な膣壁を擦り上げる。
そうしながら表に顔を出した陰核も根元を揉みほぐすように扱き上げるのだからたまらない。
まだ快楽を拾うのに不慣れな身体でも、根気強く愛撫を繰り返されれば徐々に凝縮する熱の高まりと共に頂点へと押し上げられることはそう難しくはなかった。
「あ、あ、あっ、あ、あああっ!」
息が苦しい。指を差し入れられた内側から与えられるものはまだ快楽に遠い。
それなのに陰核は神経の固まりのようで、そっと撫でられる度に体温が上がっていく。
少し前まではほんのり湿る程度だった肌は、もう既に汗が珠を結び流れ落ちるほどに濡れそぼって、アガーテの呼吸を乱していた。
「いや、そこ、触らないでぇっ……!」
「怖がらなくて良い。一度達してしまおう。……ほら」
執拗に陰核を愛撫される。
そうしながら潜り込んだ指が腹の方に向かってトン、トンとノックするように内側から叩かれる。
と同時に、頭を低く下げたエリックが、あろうことかむき出しになった陰核に、ちゅうっと吸い付いた。
弾けたのはその直後のことだ。
「っっ!!」
上がりそうになる悲鳴のような喘ぎ声を咄嗟に奥歯を噛みしめることによって堪えたけれど、腰が大きく跳ね上がることまでは止められなかった。
全身の産毛が逆立つような、身体の中で何かが弾けるような感覚だった。
アガーテの意志に関わらず腰はまるで独自の意志を持ったみたいに二度、三度と浮き上がって、その後もピクピクと陸に上げられた魚のように細かく跳ねる。
内側に収められた指にぎゅうっと縋り付く様は、まるでそこから立ち退くことを許さぬと言わんばかりだ。
「っく……っ、は、はぁっ……!」
「上手に達したね。入り口も少し綻んできたみたいだ。これなら入るかな」
これ以上、何が入るというのだろう。
ただ一度達しただけでもう疲労困憊の身体を弛緩させるように投げ出していたアガーテは、そこでエリックがトラウザーズの中から取りだしたものを目の端に収めてしまい、途端にぎょっとする。
思わず身を引こうとするけれど、それを見越したようにエリックに腰を抱え込まれて逃げられない。
「あ、あ、で、殿下、止めて、だめ……!」
「本当に駄目? あなたがどうしても無理だというのなら仕方ないけれど……それで満足できる?」
まるで試すような問いだ。
こちらを挑発しているようなのに、彼自身の方が限界に近いような色めいた眼差しで問いかけながらその先端を入り口へと口付けるように押し当ててくる。
それだけでアガーテの膣壁がぞろりとざわめくのが自分でも判った。
「この奥にほしくないか? 切なくはない?」
「それは……」
ぎゅっと目を閉じた。エリックは片手でアガーテの腰を押さえながら、もう片手で己自身を支えて秘口の表面を擦り続ける。何とも淫蕩な仕草にアガーテの身体に一度弾けた熱が再び戻ってきて腹の奥を焼く。
何より……僅かにほころびかけたそこが、痛いくらいに疼いてどうしようもない。
くちり、と先端が浅い場所に沈んだ。