溺あま絶倫社長は極上エロス

書籍情報

可愛くおねだりしてごらん。俺が欲しいって。

溺あま絶倫社長は極上エロス

著者:久遠縄斗
イラスト:かずいち
発売日:4月24日
定価:630円+税

IT企業の社長である蓮司と三か月前から恋人同士になった智絵。
自らの盛んな性欲と妄想癖を隠している智絵は、なかなか進まない二人の関係にもどかしさを感じながら、彼との甘く切ない妄想を募らせていた。
そんなある日、蓮司が智絵との関係について話を切り出したことをきっかけに、二人の関係は急展開を迎えて……!?
「これから、いくらでも好きなだけ愛してやる」
激しく、蕩けきるくらいに愛されて、幸せな時間を過ごす二人。
現実での彼の愛は、妄想が入る隙もないくらいにだんだんと苛烈さを増していき――!?

【人物紹介】

来田智絵(らいたともえ)
低身長で幼く見えるが、大人の魅力も併せ持つ女性。
蓮司に想いを寄せれば寄せるほど、自らの性癖と妄想癖について彼に切り出せなくなっている。
清すぎる二人の関係に悶々としており、蓮司といるときも妄想に耽ってしまうことがある。

練馬蓮司(ねりまれんじ)
新進気鋭の企業として業界からも一目置かれているIT企業の社長。
優しく包容力があり、豊富な知識を蓄えている。
智絵が何か悩みを抱えていることを察し、距離を縮めかねている。

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【試し読み】


「ちょ……智絵!」

 柔らかな自分の胸に蓮司の手のひらが埋まる。冷静だった蓮司が初めて焦った声を出した。それを無視して智絵は手をそのままに蓮司を押し倒した。
 蓮司にのしかかり二人の唇が触れる寸前、蓮司が智絵の肩を押した。二人の間に距離ができ、智絵は不満げな顔で蓮司を見下ろす。

「…………嫌?」

 智絵の言葉に蓮司の瞳が揺れた。

「嫌なわけがない。でも、智絵は平気なのか? 怖いなら無理しなくても……」
「本当は蓮司さんに触れたくてしょうがない。蓮司さんに触ってほしくて、抱いてほしくて体が疼くの!」
「…………………………え?」

 かなりの間をおいて蓮司が掠れた声を出す。

「徹さんから何を聞いたのかは知らないけど、本当の私は凄くいやらしい子なの。毎日いやらしいこと考えてる。本当は毎日でもエッチしたい。蓮司さんに抱かれてる妄想して、一人でしちゃうこともあるくらいだし」
「……妄想」

 蓮司の呟きに智絵は正直に告げた。
 触れられた時、キスされた時、電話で話している間でさえ、妄想していると。いつもいやらしいことを考えていると。現実に戻って冷静な蓮司を見ると罪悪感に苛まれ、そのせいで挙動不審になる。顔が赤くなるのも、妄想内で蓮司にさんざんいじられているからだ。

「どうして、言ってくれなかったんだ」

 言う機会はいくらでもあった。言えなかったのは、やはり怖かったからだ。

「だって、前の彼氏は私に妄想癖があるって知ったら、気持ち悪いって振ったんだもん」
「…………」
「この見た目で性欲がありすぎるのも嫌だって」

 蓮司は何も言わず、沈黙を守っている。自分の心臓が耳にあるのではないかと錯覚するほど、心臓の音がやけに大きく聞こえる。

「蓮司さんはこんな私、嫌?」

 もう一度聞いてみた。答えの代わりに蓮司の手が動いて、胸を下から揉まれた。

「あっ!」

 思わず声が出て腰を揺らす。見下ろしている蓮司の瞳に色欲の光が宿る。

「智絵、もう我慢しなくていい。俺も自制するのはやめる」

 蓮司の手が後頭部に回され、唐突に引き寄せられた。強く引き合わされる唇。柔らかさを堪能する暇もなく、舌が侵入してきた。蓮司との初めての深いキス。息をつかせぬほどの噛みつくような口づけ。

「んん……」

 あまりの激しさに呼吸も忘れて智絵はそれを受け入れる。途中で思い出したように息継ぎをしようと離れれば、再び強く引かれてさらに深く探られる。頭の後ろを押さえる大きな手は逆らえないほどの力があり、智絵を離さない。角度を変えてさらに深くなる。舌を絡めて吸われ、頭が痺れた。
 唇を解放されたのは、智絵が息も絶え絶えになってからだった。

「欲しがってたのは俺だけじゃないってことなんだな」
「え?」

 今度は智絵が驚いて声を上げた。まじまじと蓮司を見下ろすがその瞳は真剣で揶揄っている様子はどこにもない。

「てっきり、智絵はセックスが嫌いなんだと思ってた。だから怖がらせないように離れて座ったりして、手が出そうになるのを必死で我慢してたのに」

 同じベッドで眠っても何も起こらなかったのは、蓮司が欲望を抑えてくれていたからだ。しかもすべて智絵を思ってのことだった。

「もう我慢しなくていいよ。いっぱい、して」

 智絵は期待と興奮に瞳を潤ませた。そうして今度は智絵から唇を合わせた。離れてまた触れ合う。先ほどの激しいキスとは違う、優しい口づけに蕩けそうになる。
 一度離れた唇が今度は柔らかさを堪能するように食まれた。じっくりと味わうように唇の形を辿って舌が這う。薄く唇を開けば、そこから舌が差し込まれた。智絵のそれと交わる。重ねられ、絡められ、撫でられて吸われる。吐息がどちらからともなく漏れた。
 甘いキスに酔いしれ、智絵は蓮司に体を完全に預けた。体に感じるのは硬い筋肉。引き締まった男性らしい胸板に頬をすり寄せた。

「妄想してたわりに、キスで腰が砕けてるな」
「妄想より、ずっと気持ちいい」

 甘く切ない妄想はもう何度となく繰り返してきたが、本物の蓮司はそれ以上に甘く優しい。

「もっと気持ちいいことをしてあげる」

 そう言って、今度は蓮司が智絵をソファに押し倒した。
 キスの雨が降る。智絵の髪に、額に、瞼に、頬に、鼻に、唇に。そうして口づけられた耳に舌を這わされて智絵の背筋が震えた。

「ん……」

 小さな吐息が智絵の唇から漏れた。それに気付いて、蓮司は智絵の耳たぶを食む。優しく食んだり、時々歯を当てて強弱をつける。智絵は弄られるたびに肩をピクリと揺らした。唇が首筋を辿り顎へと向かう。そして智絵の唇に口づける。
 蓮司の唇が少しずつ下に向かう。顎、首筋、鎖骨。すでにシャワーを浴びた智絵は締め付けのない部屋着に着替えていた。薄いシャツ越しに蓮司は鎖骨にキスを落とす。

「あれ、下着は着けたままか」

 シャワーを浴びたのにブラジャーの感触がして蓮司は思わず呟いた。

「それは夜用で……」

 眠っている間に崩れないようにと、型崩れ防止のためにいつもつけているナイトブラ。今夜ももちろんつけている。
 智絵は急に恥ずかしくなってバストを腕で押さえた。今つけているのはノンワイヤーのストレッチ素材でできた下着だ。夜用なので着心地重視なため、勝負下着とは天地の差がある。
 要するに、人に見せる用ではないので可愛くないのだ。
 まさか今夜こんなことになると予測していなかった。いつも通りの夜が訪れると思っていた。けれど誘ったのは智絵の方だ。勝負下着の時にお誘いすればよかったと後悔するが、もう知られてしまったものは仕方がない。
 それでも智絵は赤くなったまま視線を彷徨わせた。

「夜用の下着か。そういえばCMで見たことあるな」

 じっと智絵のバストを見ていた蓮司がにっこりと笑う。

「見せて」
「それは……」

 せめて普通の下着ならよかったのにと智絵はさらに顔を赤くした。なぜ最初に見られるのがナイトブラなのか。今から着替えることはきっと蓮司が阻むだろうし、かといって進んで見せるほど魅力的でも可愛くもない下着だ。

「どっちにしても見ることになるんだけど。智絵は脱がされたい? それとも自分から脱ぐ?」

 どうしようかと悩んでいる智絵に、蓮司は笑顔で迫る。先ほどの待っているという宣言はどこに行ったのかと思うほど、蓮司は智絵に答えを迫ってくる。
 小さくため息を吐き、蓮司の下から抜け出す。自分から脱ぐことを選んだのだ。蓮司に背中を向けて薄手のシャツを脱ぐ。スポーツブラのような布製のナイトブラは伸縮性があり背中や脇周りまでカバーできるように幅広く作られている。なので男性が喜ぶような仕様ではない。可愛くもなく官能的にも見えない、機能性一択の下着。
 背中に強い視線を感じて顔だけで振り向けば、蓮司の黒い瞳が智絵の背中から足へと順番に向けられている。その視線が上に来て目が合う。蓮司は何も言わないが、黒い瞳はズボンも脱いでと語っている。
 夜用ではあるが下着の上下が揃っていることがまだ救いだった。
 思い切ってズボンも脱ぎ、蓮司と向き合う。
 蓮司の視線が智絵の肌を這う。まるで触られているかと思うほどの強い視線。上から下までじっくりと眺める蓮司に、智絵は恥ずかしさに顔から火が出そうだった。
 蓮司が目を細める。その奥に淫靡な光が宿っているのを見つけて、智絵の体が芯から熱くなる。

「恥ずかしい?」
「……恥ずかしい」

 消え入りそうな声で小さく呟く。
 性欲があるからといって恥ずかしくないわけではない。妄想では何度も見られている体だが、実際見せるのは初めてなのだ。しかも可愛くもない機能性重視の夜用の下着だ。
 蓮司は手を差し伸べると智絵の右手を取った。そのまま手の甲へ口づける。柔らかな唇の感触に体が震えた。唇が指先へと滑り降り、手のひらへもキスされる。
 手の甲へのキスは親愛の証であり、手のひらへのキスは求愛の証だ。そして『すべてを受け入れる』という意味もある。
 意味を知ってやっているだろうことは、蓮司が意味ありげに見上げながら何度も唇を押し付けてくることからもわかった。
 きっと智絵がどんな格好をしていても蓮司は同じように手のひらにキスをしただろう。どんな性癖だろうと妄想癖を持っていようと、智絵のすべてを受け入れると触れてくるその唇が告げている。
 恥ずかしくて、けれどそれ以上に嬉しくて頬が緩んだ。そんな智絵を蓮司は引き寄せて抱きしめる。座ったままなのでちょうど智絵の胸に蓮司の顔が当たる。腰に回された腕は拘束するほど強くはなく、かといってすり抜けられるほど弱くもない。
 逃げる隙を与え無理強いするつもりはないという意思表示に、智絵は逆に蓮司に抱き着いた。頭を胸に抱いてぎゅっと抱きしめる。その胸の谷間をぺろりと舐められてびくりと体が跳ねた。
 胸のいたるところにキスをされて、快感よりもくすぐったさに身をよじる。くすくすと笑った瞬間、胸の頂を布越しに食まれた。

「あっ」

 甘い声が智絵から漏れる。強い刺激ではないが、甘い刺激が全身に広がった。それは体を熱くさせ、もっと欲しいと疼かせる。ねだるように蓮司を抱きしめる腕に力を込める。
 応えるように蓮司はそのまま唇で愛撫を続けた。智絵の声の色に甘さが増す。
 ナイトブラが上へとずらされた。ブラジャーから零れ落ちた胸は柔らかい。大きな胸とは対照的な小さな頂。しかし小さくともしっかりと主張するようにぷっくりと立ち上がっているそれを、蓮司は直接口に含んだ。

「んあ……あっ」

 ぬるりとした感触に体が震えた。熱い唇が蕾を吸い上げ、時にじっとりと舐め、周りにも舌を這わせ、時折歯を立てて噛む。じんじんと熱を持つような感覚が胸から全身に広がる。
 先端を強めに噛まれて痛みより快感に声が出る。弾力のある胸全体を舌で愛撫し、硬く立ち上がった先端を指で摘ままれる。
 智絵はそのたびに体をビクビクと震えさせた。快感に思わず腰を引けば、引き戻されてお仕置きのように蕾を甘噛みされる。

「ああ……あ、ん」
「可愛い声を出すね。それに凄く感じやすくて敏感だ」

 蓮司の大きな手にも持て余すほどのまろやかな胸。それを優しく揉まれると、智絵の体の中に火が灯る。まるで溶かされたロウのようにトロリと体から漏れるのは甘い蜜だ。
 蓮司が胸を揉むたび、先端に吸い付くたび、体を撫でるたび、それはとろとろと漏れ出る。
 左右の乳房を中央に寄せられると、両方の先端が真ん中で重なる。蓮司はそれを一度に口に含んで愛撫した。

「ふあぁ」

 舌が縦横無尽に先端を愛撫する。熱くねっとりと絡み付く舌で左右同時に攻められて智絵は背を反らせた。快感が胸から全身に広がり、また蜜が溢れる。
 確認しなくてもわかる。ショーツは蜜で濡れそぼっている。それを隠したくて智絵は両足にぎゅっと力を込めた。けれど蓮司の愛撫によってまた力が抜ける。
 それを繰り返してもじもじしていると、蓮司がふと笑みを浮かべた。

「気持ちいい? 太ももを擦り合わせて、誘ってるみたいだ」
「ち、違……」
「違うの?」

 恥ずかしさで否定すれば、蓮司がそう言って智絵の瞳をじっと見てくる。途端に智絵は顔を真っ赤に染めた。
 違うわけはないのだ。もっと触ってほしいし、もっといろんなことをしてほしい。

「どこを触ってほしい? 言ってごらん」
「そんな、恥ずかしいこと」
「言わないと、触れられないよ?」

 蓮司は言いながらクックと笑う。普段の優しい蓮司とは違う、淫靡な笑みで智絵を追い詰める。

「ち……」
「ち?」
「……くび」

 言い終わるかどうかのタイミングで、蓮司が智絵の胸の先端を指先で軽く弾いた。小さな痛みと、それを上回る快感に腰が震えた。

「他は? 他はどこがいい?」

 右手の指で胸の先端をくりくりと捏ねながら、蓮司はさらに聞く。快感の声を上げながら、智絵は腰を揺らす。
 蓮司の左手が胸から腹へと這っていき、太ももまで滑り降りる。ぐっしょりと濡れたショーツに触れられて太ももに力を入れれば、蓮司の手はそこを避けるように智絵の背中に回ってきて、抱き寄せられた。

「触れられなくて、残念そうな顔してる。触ってほしいんだろ? ほら、言ってごらん」

 智絵は口を開いたが、何も言えずにキュッと唇を引き結んだ。いたずらするように体の隅々を這いまわる蓮司の右手を捕まえて、自らの太ももへ押し付けた。そのまま導くようにショーツに触れさせる。
 濡れているショーツに長い指が触れ、蓮司の目が細まる。唇が笑みの形をかたどり、淫靡な表情がそこに浮かぶ。

「こんなに濡らして、いけない子だ」

 股間に添わせるように指を曲げ、蓮司はショーツ越しに触れて前後に動かした。湿ったショーツが素肌を擦る。それは智絵の隠された場所をも刺激した。
 途端に智絵の声が甘くなり、息が上がり始める。それを見計らったように、蓮司は下着のクロッチの隙間から中へと指を侵入させた。指が秘裂を割り開き、その奥に息づく花芽を探し当てるのに時間はかからなかった。

「あああっ、んっ……んあ、そこ」

 溢れる蜜で指を濡らし、さらに蓮司は花芽を擦る。指先で突き、腹で擦り付け、爪で引っかく。そのたびに智絵は嬌声を上げて背を反らせ、ビクビクと体を震わせた。
 胸の蕾と敏感な花芽を同時に刺激されて、蓮司の指を伝うほど蜜が溢れてくる。智絵の足から力が抜けそうになると、蓮司が腕に力を込めて智絵の腰を支えた。
 蓮司が与える快楽は、熱となって体の奥から絶え間なく送られてくる。それは血液に乗って体中を駆け巡る。
 いやらしい動きをする道具と人の手では全く感じ方が違う。どんなに気持ちよくても機械は機械だ。人のなめらかな動きを真似することはできない。
 久しぶりのその感覚を智絵の体は貪欲に求める。

「気持ちいい?」

 聞かれて素直にうなずけば、さらに指の動きが速くなる。蓮司の指の使い方は巧みだった。バラバラに動く指が胸と秘所を絶え間なく攻める。そしてそれは智絵の快感のポイントを的確に突いてくる。

「足から力が抜けてる。ちゃんと立ってないと、やめちゃうよ」
「だって……んっ、蓮司さんの指が……気持ちよすぎて」

 がくがく震える足を叱咤しても、あまりの気持ちのよさに勝手に力が抜けていく。立っていられないほどの快感に苛まれると、宣言通り蓮司の指は動きを止める。快感が収まって足に力を入れるとまた愛撫が再開される。そうしてまた足から力が抜けていく。
 そんな攻防を数回繰り返すと、蓮司の指が止まっても熱が下がらなくなってくる。快楽の波は引くことなく、智絵の体を勝手に熱くさせてさらに疼かせた。
 絶頂を知っている体は、それを求めて蓮司を欲した。

「……蓮司さん」

 甘えた声で呼びかければ、黒い瞳が楽しそうに細められた。

「ん? イきたいの?」

 小さく何度もうなずいて、智絵はイかせてほしいと目で訴える。それに返事はなく、代わりに蓮司の指の動きがさらに速まった。

「はっ、あ、ああっ!」
「いいよ、気持ちよくなって。イってる智絵の顔が見たい」

 快楽の波がぐっと高まる。つむった目の奥がチカチカと明滅していた。肌が粟立ち、何も考えられなくなる。

「ふ………んっああああぁぁぁっ!」

 そして快楽が白く弾けた。
 ぎゅっと体に力が入り、そしてくたりと力が抜ける。ふらついた智絵の腰を支え、蓮司は智絵をソファに横たえさせた。絶頂直後の気だるさと満足感。けれど体はもっと蓮司を感じたいと訴えている。

「蓮司さん」

 智絵は子供が親に甘えるように、両手を蓮司に差し出した。このまま抱きしめて、そして蓮司と一つになりたい。そう願ったが、蓮司は苦笑すると首を振る。

「夜は長いんだ。まだ、あげない」

 笑って蓮司は智絵の足元に跪く。右足を持ち上げ、膝から脛へと唇を寄せる。足首、くるぶしを経て、足の指にも口づけた。
 大切に、愛おしむように寄せられる唇。時々赤い舌が肌をくすぐり智絵は小さく喘ぐ。その唇が脛から太ももへ上がっていき、ショーツを避けてお腹から胸。胸から頬。頬から唇へと辿り着く。
 熱い吐息と共に甘いキスがあちこちに降り注ぐ。右手は皮膚の上を這いまわり、全身の快感を引き出していく。左手は胸にあって、やわやわと揉み込んでいる。時々硬くなった先端を掠める指先に体が跳ねた。
 何度も上から下へと唇が行き交い、全身が余すところなく愛撫される。肌は蓮司の唇に過敏に反応し、熱い手のひらに官能を揺さぶられる。
 もじもじと太ももを擦り合わせていると、蓮司の唇が膝に押し当てられた。そのまま太ももへと寄せられた唇が、最後にショーツに辿り着く。蓮司の指がショーツにかかり、するりと脱がされた。
 ゆっくりと太ももが左右に割り開かれ、足の間に蓮司が体を割り込ませた。

「凄く濡れてる」

 感動したように蓮司が声を震わせた。蓮司に大事な部分が見られていると思うと恥ずかしい。逃げたくとも逃げられず、足を閉じたくとも叶わない。
 蓮司は智絵の股間に顔をうずめると、茂みに口づけた。何度もそこにキスを繰り返されて、智絵は恥ずかしさに悶える。体に愛撫されたことは幾度もあるが、茂みをこんな丁寧に扱われたことは初めてだ。柔らかな羽毛に触れるように唇が上下に動く。やがてその茂みをかき分け、甘い蜜を湛える泉を露呈させた。そこにまた優しく何度もキスをする。
 蓮司の熱い吐息と間接的に触れる唇が、花芽をくすぐるように刺激する。それはじれったいほど弱い刺激で、だからこそその行為に全身がむずむずとしてくる。もっと直接的なものを欲しがって、智絵は身をよじらせた。

「綺麗だ、智絵。いやらしく濡れて光ってる」

 ゆっくりと秘裂を辿る指先。決定的な刺激のない愛撫がもどかしい。ふわふわした快感は現実味が薄く、自分の足の間で起きていることなのに、またこれが自分の生み出した妄想なのではないかと不安になった。
 その瞬間、蓮司の長い指が智絵の蜜壺に差し込まれた。

「はっ……あ、あっああぁぁ!」

 突然訪れた快楽に背を反らす。そのままゆっくりと抜き差しされて、智絵は身をよじった。ぐちゅぐちゅと水音をさせる泉の奥。智絵の感じる部分を指が掠めて背筋に快感が走り抜けた。

「ここか」

 智絵の反応を見逃さず、蓮司が呟きにやりと笑うと一気に指の速度を上げた。智絵の感じる部分を重点的に擦り上げ、溢れる蜜が蓮司の拳を濡らす。

「待って、蓮司さん! そこ、駄目……イっちゃう!」

 耐えがたい快楽に智絵は蓮司の腕を掴んだ。快感が体を駆け巡り、そうして突き抜ける。白く世界が輝き、智絵は嬌声を上げた。
 力の抜けた体を受け止めるソファが冷たく感じるほど智絵の体は熱くなっていた。痺れるような快感が体にあって、智絵は甘い吐息を吐く。

「蓮司さん、もう……来て」

 早く一つになりたい。蓮司にも気持ちよくなってほしい。そういう思いからねだれば、蓮司はふと笑って首を振った。

「やっ! 待って、駄目!」

 秘裂が広げられる感覚に、智絵は蓮司の行動を止めようと叫ぶ。体はまだ絶頂の余韻が残っていて、普段以上に敏感になっている。その体の中で最も鋭敏な場所に、蓮司は吸い付いた。

「あああああぁぁぁぁっ!」

 あまりの強烈な快感に智絵の開いた瞳から涙がこぼれた。剥き出しの花芽を強く吸われて一瞬意識が飛ぶ。その飛んだ意識を呼び覚ますのも強烈な快楽で、智絵は泣きながら何度も達した。
 中でうごめき、花芽を攻め立てる柔らかく熱い舌がようやく離れて、智絵は全身から力を抜いた。
 数え切れないほどイかされた体は溶けそうなほど熱く、蜜は零れてソファを濡らしている。声は掠れ、呼吸も荒い。
 与えられる深く壮絶な快楽は、元彼たちが与えてくれたものとは違う。もちろん妄想して一人でしていたものとも全く違う。
 全身の倦怠感と快楽。絶頂を迎えるたびに快感が体中を巡り、脳をも痺れさせる。今まで経験したことがないほど心地よく気持ちいい。

「蕩けそうな顔してるな」
「凄く……気持ちいい」
「じゃあ、もっと蕩けさせてあげる」

 蓮司は自らの衣服を脱ぎ捨てた。均整の取れた体つき。その裸体が惜しげもなくさらされる。その真ん中に雄々しく立ち上がる蓮司の象徴に智絵は驚いた。一目見ただけでもわかるほど硬く張り詰めている。
 入るだろうかと一瞬考えるほどの大きさと長さ。それに薄い膜がゆっくりとつけられていく。見せつけるような動作に智絵の喉がごくりと鳴った。

「欲しい?」

 言われて見上げれば、欲情の炎を灯した黒い瞳が智絵をまっすぐに見下ろしていた。その瞳に、頬を紅潮させ潤んだ瞳で見上げる智絵が映っている。智絵は大きくゆっくりとうなずいた。
 ドロドロに溶けている秘裂に剛直の先端が当てられる。薄い膜で覆われていてもその熱さが伝わってきた。
 欲しかったものが、欲しかった場所に当てられて、智絵は目を輝かせる。くちゅりくちゅりと音を立てて先端が擦り付けられた。それだけで快感が背筋を駆け上ってくる。
 早く欲しいと蓮司を見上げ、潤んだ瞳で訴えた。それに応えるように、蓮司はゆっくりと腰を進めた。

「あ、ああ……」

 入ってくる熱い塊に智絵は喉を反らせた。肉壁を押し広げながら、蓮司が入ってくる。その熱さと形をすべて感じようと体は勝手に反応する。

「んあっ、や、大きい……」

 少し入れては止まり、また進んでは止まる。焦らすようなゆっくりとした動作が快感を押し上げる。
 時間をかけて奥深くまで突き立てられた。肉壁をめいっぱいに広げられ、そこから熱い脈動が伝わってくる。繋がっているのは一部分だけなのに、体のすべてが繋がっている気がする。二人の体が溶け合って一つになっていくような感覚。

「ああ……蓮司さんでいっぱい」

 嬉しくてまた涙が溢れた。蓮司がそんな智絵の頬に唇を寄せた。頬を流れる涙の跡を辿って舌が動く。

「好きだ、智絵」

 形に慣れさせるようにじっとしていた蓮司が、そう言いながらゆっくりと腰をうごめかした。最奥を突いてからゆっくりと引き抜く。そしてまたゆるりと突いた。自らの熱を分け与えるように時間をかけて律動を繰り返す。
 その行為に慣れてきたころに、蓮司は腰の動きを少しずつ速めていく。

「ああ、あっあっ……あん……あああぁっ」

 智絵の嬌声が絶え間なく上がる。寄せては返す波のように一定のリズムで、時折深く浅くと攻める場所を変えながら、蓮司が智絵の中で暴れる。擦られるたびに快感が体を駆け抜け、呼吸が荒くなる。
 片足を抱えられ剛直を奥まで差し込まれる。硬く熱い塊が智絵のさらに奥深くを求めて抜き差しされる。

「ぅああっ、蓮司さん! 奥、もっと」

 自らも腰を振り、智絵は蓮司を求めた。奥を突かれて智絵は喉を反らした。

「気持ちいい?」

 何度目になるかわからない言葉に智絵は答える代わりに蓮司に抱き着いた。蓮司の腰に足を絡めて、もっと奥へと誘い込む。蓮司も何も言わず、最奥を突いたままぐりぐりと腰を押し付けた。
 唇を求められてそれに応える。舌が絡み合い、喘ぐ声も呼吸さえも吸われて苦しい。空気を求めて唇を離せば、蓮司はそれを許さないように追ってまたふさぐ。
 求められ攻められて、快楽の叫びを上げ快感にむせび泣く。
 ぐんっと奥を突かれて目の前に火花が散ったような衝撃が走った。一番感じる場所を擦り上げられて甘く啼く。キスをされて脳が痺れ、胸を弄られて体が跳ねた。
 繰り返される抽挿に肌にはしっとりと汗がにじみ、静かな部屋に肉同士を打ち付け合う音が響く。高い嬌声と低い呼吸音。
 体の奥からせり上がってくる感覚に、イきそうなのだと意識する。その意識を呑み込んで、快楽が脳天でスパークした。

「んっ、ああああぁぁぁ!」
「は……うくっ、智絵」

 智絵が絶頂を迎えると同時に、蓮司がゴムの中に欲望を吐き出した。ビクビクと体が震え、智絵はその深い快感に目をつむって酔いしれた。
 呼吸が整った直後、ずるりと熱い塊が引き抜かれた。中を埋めていた自分の一部とも思えるほどの大切なものがなくなる感覚に、智絵は目をつむったまま眉を下げた。
 ソファが軋み、蓮司が隣に座った気配を感じ智絵は小さく嘆息した。
 蓮司は先ほど欲望を吐き出した。一度出せば男性の性欲は著しく減退する。智絵がどれほどお願いしても縋っても、元彼たちはそれ以上をくれなかった。蓮司も同じなら、これで終わり。
 けれど、本当は――

「もっと蓮司さんが欲しい」

 吐息と共に零れた本音。聞こえるかどうかというくらい小さな呟き。

「じゃあ、おいで」

 その小さな呟きに応えるように蓮司が囁く。
 え? と振り仰げば、蓮司が智絵を見つめていた。瞳が濡れて光っていて、優美な中に色気がある。視線を下にずらした智絵の目が釘付けになった。
 先ほど性を解き放った剛直。けれどそれは萎えることなく直立している。新しい薄い膜をかぶせられ、智絵を今か今かと待ち構えていた。

「妄想……?」

 智絵は自分の目と耳をまず疑った。それに蓮司がククッと笑う。

「妄想かどうか、確かめてごらん」

 

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