力をなくした聖女ですが、美貌の辺境伯に独占欲で毎夜じっくり啼かされています
著者:宇奈月香
イラスト:あらいてるこ
発売日:2024年 5月24日
定価:630円+税
若くして聖女の務めを終えたヘイディアは、新しい門出の日に六歳年上の幼馴染み・フレデリクと再会する。
彼には婚約者がいるが女たらしという噂があり、幼い頃と変わってしまったフレデリク対して、ヘイディアは冷たくあしらってしまう。
するとフレデリクは、ヘイディアを彼の住むヴァルカ辺境伯家へと強引に連れ帰って……!?
彼の激しい求愛に困惑するヘイディア。なかなか自分の手に落ちない彼女を前に、なんとフレデリクは突然隠し持っていた毒の小瓶を呷り――!?
「――あぁ、駄目だ。ヘイディ、したい」
なんと彼が飲んだのは、毒ではなく媚薬……!? ヘイディアが欲しいと懇願するフレデリクの様子を、彼女は放っておくことができず……。
何度も何度も絶頂に押し上げられ、ヘイディアはついに彼の手中に落ちて快楽にすがってしまう。
フレデリクの婚約者の存在が頭にちらつくも、四六時中蕩けるほどに甘すぎる愛を注がれ、ヘイディアはだんだんと彼に絆されていき……。
【人物紹介】
ヘイディア
神聖力を失ったことをきっかけに、務めを終えた聖女。
一般市民だったが、初恋相手のフレデリクに見合う身分になるために聖女になった。
純真で心優しく、困っている人を放っておけない。
幼い頃から、自然と他者が自分に向ける感情を感じ取ることができる。
フレデリク・ラフル・ヴァルカ
父から爵位を受け継ぎ、ヴァルカ辺境伯を名乗っている、六歳年上のヘイディアの幼馴染み。
誠実で優しい人だったが、現在は女たらしという噂が流れている。
ヘイディアと再会し、彼女を甘く追い詰めていく。
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【試し読み】
「これが何かわかるか?」
小瓶を揺らしながらフレデリクが言った。
ヘイディアは小瓶に目を細め、怪訝な顔をした。
「毒だ。飲めばたちどころに命を奪う」
とんでもない代物に絶句する。目を剥き、小瓶を凝視した。
なんでそんなものが寝室に置いてあるのだろう。
衝撃が強すぎてどんな言葉も出てこなかった。
「ヘイディは俺を求めないんだろ。なら、俺が生きている意味はこの瞬間に潰えた」
そう言うなり、フレデリクが躊躇なく小瓶を呷った。
「きゃ――ッ、何をするの!!」
悲鳴を上げて、フレデリクに飛びつく。
何が起こったのかも理解できないくらい、一瞬、思考が停止した。
ぐらりと傾いだ身体を受け止めるも、ヘイディアは尋常でないくらい震えていた。
「やだ、どうしようっ。ラフル! 死んじゃ駄目っ。お願い、死なないで」
飲んだ毒を一刻も早く吐き出させようと、口の中に指を差し入れようとするも、フレデリク自身に拒まれた。
「なんで!? お願い、吐き出して! 早くっ」
叫びながら懇願する。
こんなことで、フレデリクを失いたくない。
「……俺が嫌い……なん、だろ」
苦しげな声が心臓を縮み上がらせる。
弱々しくなる声音に、不安と焦燥がこみ上げてくる。
フレデリクの命の火が消えかけているのだ。
「そんな――、どうしてこんなことっ」
目の前が真っ暗になりそうな絶望に、ヘイディアは「なんでよっ」と嘆いた。
今の自分では、彼を救えない。
神聖力がなければ、毒を浄化することすらできないのだ。
女神マザームの代行者である聖女だけが持つ神聖力。聖女はその力を使って、女神マザームが封じた悪しきものへの封印の修繕を行う。ヘイディアにもあった力なのに、今は欠片もない。
かつては容易くできたことが、今はこんなにも難しい。
どうしてこんなときに限って。
誰よりも救いたい人なのに、自分の無力さが恨めしい。溢れる涙を拭うことすら忘れ、ヘイディアはフレデリクを抱きしめ続けた。
(女神マザーム様、ううん、助けてくれるなら誰でもいい。何でもするから、フレデリクを助けて――ッ)
そう強く願ったときだった。
「……答え――ろ、よ」
肩口に顔を寄せ、フレデリクが吐息みたいなか細い声で乞うた。
「馬鹿っ、嫌いなわけないじゃない!」
涙声になりながら、フレデリクへの想いを叫んだ。その直後だ。
「――ふ、はは……」
フレデリクが肩に顔を埋めたまま、突然笑い出した。
いよいよ毒が回っておかしくなったのだ。
「ラフル、駄目よ……。しっかりして!!」
悲鳴じみた呼びかけに、ラフルがぎゅっとヘイディアにしがみついた。その身体は信じられないほど熱くなっていた。
「ヘイディ、キス……して」
「何でもしてあげるっ、だから死んじゃ駄目」
「早……く」
せがまれ、ヘイディアは彼の頭に口づけた。耳に肩、唇が当たる場所ならどこだってした。
フレデリクを逝かせたくないから。
なぜ今、神聖力がないのだろう。
「駄目、死なないで」
溢れる涙がフレデリクにも落ちる。頬をすり寄せ、「あぁ……」と嘆いた。
「……ないんだな」
フレデリクがかすれ声で呟くなり、ヘイディアをベッドに押し倒した。
(え――?)
毒を飲んだ者とは思えないほど、赤らんだ顔は生気に満ちていた。
「ラフル――?」
動揺で声がかすれた。
よく見れば、覆い被さる彼のアイスブルーの目は、ぎらぎらとしている。全身から噴き出す汗の量が尋常ではない。荒い息は獰猛な獣じみている。
先ほどとは明らかに違う症状だが、命にかかわるような苦しさは孕んでいない。
「あなた、何を飲んだの?」
毒ではないのかもしれない。
ならば、彼が飲んだものは……。
「多分、興奮剤」
にべもなく告げられた小瓶の中身に、ヘイディアは目を見開いた。
「多分って、中身を知らずに飲んだの!? 本当に毒だったらどうするつもりだったのよ」
「知るもんか。ヘイディに嫌われたまま生きていたくないだけだ」
呆れて開いた口が塞がらない。
無謀にもほどがある。
女一人口説き落とすために、命まで賭けたのか。
「……信じ、られない」
口から零れ落ちた呟きに、フレデリクが首をふるりと横に振った。
「ヘイディ、苦しい」
「ま、待って。今、人を呼んでくるから」
起き上がろうとするも、両肩をフレデリクに掴まれた。
「ヘイディが鎮めて。ヘイディの中以外、出したくない」
「な――っ」
あけすけな告白に、頭の中が一瞬真っ白になった。
これも興奮剤の影響なのだろうか。
(でも、毒でなくてよかった)
ほっとすると、胸の中にあった澱みたいなものがすうっと軽くなった気がした。すると頑なに彼を拒んでいた心も、幾分か柔らかくなった。
話している間も、フレデリクの目が虚ろになっていく。
「だ、大丈夫なの?」
「無理」
断言されて、ヘイディアは目を泳がせた。
こんなときはどうしたらしいのだろう。
人を呼ぶのは駄目で、彼はヘイディアを望んでいる。
けれど、ヘイディアにはフレデリクを受け入れられない事情がある。
切羽詰まる気持ちに追い立てられる。
「だ、だいたい、なんでそんなものがベッド脇にあるのよっ」
「どこかの令嬢が、寝室に忍び込んだときに隠したんだろ。女は叩き出したが、小瓶は処分し忘れてた」
「そんな気持ち悪いもの、どうして処分しなかったのっ」
「一度や二度ならするけど、何度もあると面倒くさくなるんだ。――あぁ、駄目だ。ヘイディ、したい」
「や……っ」
すり寄ってきた顔が、うなじをねっとりと舐め上げる。熱い息づかいと舌が肌を這う感覚にぞくぞくした。
「いい匂い……、ヘイディ好き」
「ば、馬鹿っ。何言って――ッ!?」
下腹部に押しつけられた欲望の熱さに、あっと息を呑んだ。
「早く、これを入れたい。もうすぐ夢が叶う」
「ゆ、夢!?」
忙しなく身体を弄り出した手が、ワンピースを乱暴に脱がせる。内股をなぞり、秘部に触れた。
「あ……やっ、ラフル。駄目っ」
「もう無理だ」
淡い茂みの感触を指で確かめたあと、媚肉を撫でられる。初めて感じる人の指の感触に、身体がびくりと跳ねた。
そんなところ、自分ですらろくに触ったことがないのに、フレデリクにためらいは感じられない。
「はぁ……。これが、ヘイディの」
むしろ、悦びすら感じている。
「ラフル、駄目よ。薬なんかに負けない、で」
今欲望に負けてしまったら、取り返しのつかないことになる。
後悔することだけはしてほしくなかった。
手首を掴み、駄目だと押しやろうとしたが、彼の腕はびくともしなかった。
「どうでもいいから、抱きたいっ。ヘイディ、助けて。限界なんだ」
「だったら、私じゃなくても……あぁっ」
ヘイディアの制止を無視して、指が媚肉の奥に潜む蜜穴に触れる。縁をなぞり花芯に当たると、信じられないような強烈な刺激が走った。
(なんでそんなところが)
気持ちいいと思ってしまうの。
「ヘイディじゃなきゃ嫌だ! ヘイディ、ヘイディア――」
懇願する声が切羽詰まっている。
縋るように求めてくるフレデリクが可哀想で、それ以上に可愛くて、放っておきたくない。
ヘイディアは彼の婚約者ではない。
けれど、彼はヘイディアがいいと言う。
薬に浮かされているのだ。それが苦しさから逃れるための嘘だとしても、必死に求められて見放すことなんてできない。
だって、他でもないフレデリクなのだ。
「何でもするって、言った……だろっ」
ついに駄々をこね始めた彼が、どうしようもなく愛おしかった。
上目遣いでこちらを見つめるまなざしが熱い。悶えるほどの劣情があるのだろう。食いしばるも、口の端から荒い息が漏れている。
彼は婚約者ではなく、ヘイディアがいいと言っているのだ。
(一度だけなら)
これ以上、フレデリクの苦しむ姿を見たくなかった。
「いいわよ、おいで。癒やしてあげる」
聖女ではなくなったけれど、興奮剤なら発散させればいずれ落ち着く。
今さらながらに、毒でなかったことに安堵した。
腕を伸ばして、彼の髪に触れた。
金色で細い髪が、指をするすると流れていく。
フレデリクがくしゃりと苦しげな顔を歪めた。
「なんで……っ」
自分で求めておきながら、おかしなことを言う。
だが、フレデリクが疑問じみた不満を口にしたのは、その一度きりだった。
動物の唸り声みたいな声を発すると、ヘイディアにむしゃぶりついてきた。
「あっ、あぁ……っ」
身体中のあらゆる場所に口づけが降っていく。ときおりちりっとした痛みを感じると、その場所に赤い痕がついた。怖いと思うほどの荒々しさだ。
でも、嫌だとは思わなかった。むしろ、求められていることに悦びすら感じた。
「は……っ、はっ、ヘイディ……ッ」
息を切らしながら、身体中を熱い舌が張っていく。
生温かい感触に、得も言われぬ感覚が走る。力任せにヘイディアの中に眠っている官能を呼び醒まそうとするような仕草が苦しくて、たまらなかった。
「は――っん、ンっ。そこ……はっ」
媚肉をいじっていた指の先端が、蜜穴を突く。
「せ、まい。すごい……」
興奮で上ずった声でフレデリクが感嘆を呟く。欲情に染まったアイスブルーの瞳は一心にある場所を見つめていた。
誰にも見せたことのないところを、フレデリクに見られている。
今なら、きっと羞恥で死ねるかもしれない。
「や……だ、見ない、で」
「美味そう」
は……、と吐息を零して、フレデリクがその場所へ舌を伸ばした。
「あぁ……っ!」
指とは違う柔らかくて生温かいものが触れる感覚に、腰が揺れた。
「駄目、逃げるな」
両手で抱えるように腰を掴むと、秘部に顔を押しつけてくる。
「そんな、待って……っ」
金色の髪に指を埋め、頭を押しやろうとするも、びくともしない。それどころか、蛭みたいに吸いつき、無心で舐めている。
「ラフル……、お願い待って」
初めてづくしの行為に、目を白黒させながら、フレデリクを呼ぶ。
他人に肌を見せることすら初めてなのだ。
もっとゆっくりしてくれないと、心臓が持たない。
舌が媚肉の奥に隠れる花芯を舐めている。そのたびに腰骨に走る刺激がもどかしくて、ヘイディアは腰を揺らめかしながら悶えた。滑った感触が生むじわじわとした快感も、ヘイディアが知らないもの。
(なんで、気持ち……いいの)
フレデリクに触れられている。
彼が自分を求めてくれている。
その事実に頭がくらくらする。
「ラル……フ、それ……はっ」
彼の指が再び蜜穴へとあてがわれると、ゆっくりと中へ入ってくる。ず……ずず、と侵入してくるものがある。
(なに、これ)
初めて受け入れる異物感に、目の奥がちかちかしている。
本当にみんなこんなことをしているのだろうか。
「あ、ああ……っ」
「中、締めつけてくる。温かくて、気持ちいい」
悦に入った声で、フレデリクがため息を零した。
初めて聞く異性の艶っぽい声音が腰骨に響く。
「ひ……ぁ、あ。駄目……抜い、て」
「一本でこの窮屈さなのか」
フレデリクの耳にヘイディアの懇願は届いていない。ゆっくりと動き出した指が蜜壁をこする。
これ以上、暴かないで。
知らない自分を見せないで。
(戻れなく、なるから)
覚えてしまったら、二度と以前の自分に戻れなくなる。
「やぁ……ん、ン」
何も知らなかった頃の自分が、快感で別物へと塗り替えられていく。
怖いのに、身体は何かを期待している。
目覚めてしまった欲望がフレデリクを欲していた。
(これは……治療なの、に)
口から零れた声は、聞いたことがないほど甘いものだった。
「俺のが入るとどうなるんだろ」
「そんなところで……喋ら、ないで……」
かかる息が唾液で濡れそぼった肌をくすぐる。中と花芯を同時に愛撫されていると、感じたことのない感覚がじわじわと足先からこみ上げてきた。
信じられないくらいの鮮烈な刺激に、ヘイディアは首を振った。
「い……あぁ、あっ、あぁ……んっ」
下腹部に集まる熱に、無意識に腰が持ち上がる。こんなはしたない醜態をさらしていいわけないのに、フレデリクがくれる快感に身体が言うことをきかない。
いつの間にか二本に増えた指が、密壁をこすりながら柔くある部分を押した。
「ひっ」
じん……と脳天まで響く刺激の心地よさに、子を孕む場所がきゅうっとなった。
「あっ……、あ――ぁん、んっ、や……何か、き……ちゃ、う」
あと少しで、何かが弾ける。
期待で胸が膨らんだ刹那。
ふいにすべての愛撫がやんだ。感じていたフレデリクの熱が離れていく。
「――え……?」
身体はこんなにも切なさを訴えているのに?
突然、放り出された寂しさに、ヘイディアは薄目を開けてフレデリクを探した。
そして、ヘイディアは見た。
フレデリクが手で扱いている彼自身の欲望の長大さに愕然となる。
知識としては知っていても、実物を見るのはこれが初めて。
「嘘……よね――?」
思わず確認してしまうほど、彼の欲望は大きかった。ひたりと腹部に乗せられたそれは、臍のすぐ下まであった。
ヘイディアが知らないだけで、これが標準なのだろうか。
フレデリクの尋常でない大きさに、ヘイディアは思わず「無理」と怯えた。
震え上がるヘイディアを見つめながら、欲望の先端が蜜穴に押し当てられた。
「入れる」
欲望でぎらつく顔に、止めるという選択肢は浮かんでいない。ただでさえ興奮剤で理性が削がれているのだ。今の彼は、欲望に忠実な獣も同然。
正常位からずぶり……と、フレデリクが入ってきた。
「――ッ!」