獣人殿下のもとを去ったのに、見つかって愛し子ごと甘い溺愛に捕まりました
著者：宮永レン
イラスト：浅島ヨシユキ
発売日：2024年 5月24日
定価：620円+税
王宮薬師であるフェリシエンヌはクロヴィス王子が、第一王位継承者として指名される叙任式に同席していた。
厄介な存在として敬遠される獣人であるクロヴィスのため、王宮薬師の代表たちが揃っていたのだ。
フェリシエンヌは儀式が恙無く進行したことに安堵し、宮殿の研究室に戻って一息ついていると――。
クロヴィスがいつもと同じように顔を見せたのだが、いつもとなぜか雰囲気が違っていて――？
「フェリ。何回でも言う――好きだよ」
甘い声でそう告げられたフェリシエンヌは彼にぎゅっと抱きしめられる。
心から想っているクロヴィスからのプロポーズと共に極上な一夜を過ごすことに……。
翌朝、彼の将来を考え、重荷にならないために姿を消すことを決めたフェシリエンヌ。
辺境の村へとたどり着いた彼女はそこで静かに暮らしていた。
それから五年後、クロヴィスと再会を果たすのだが、彼女の元には獣人の子供がいて――!?
【人物紹介】
フェリシエンヌ・アポリネール
元王宮薬師で現在は辺境の村に住んでいる。
真面目で優しく行動的な性格をしている。
五年ぶりにクロヴィスと再会したのだが……!?
クロヴィス・シャルル・リュクサンド
リュクサンド国の王太子で獣人。
幼い頃は内気で劣等感が強かったが、フェシリエンヌと出会ってから明るい性格に。
フェシリエンヌの前では甘える一面もあり、執着も強いようで――？
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【試し読み】
「とてもご立派でしたよ。皆さんも感激してました」
「ああ、よかった。フェリも見惚れてくれた？」
ホッと胸を撫で下ろしたクロヴィスは、にこりと人懐こい笑みを浮かべる。
「ええ。ですからご立派だと申し上げましたよ」
幼子の成長を褒めるように、フェリシエンヌは柔らかい口調で答えた。
見惚れるどころか、惚れ直したとは、恥ずかしいので口が裂けても言えない。
「フェリ。俺、真剣に聞いているんだけど」
クロヴィスは、椅子に座り直して不満そうに頬を膨らませた。
「私も真面目に答えていますけど？」
フェリシエンヌは平常心を保って、笑顔を作る。
彼が公の場で見せる真剣な表情も素敵だが、今のように時々子供っぽい態度に戻る瞬間が好きだ。
だがこれ以上そばにいると、離れがたくなってしまう。
フェリシエンヌは、迷いを断ち切るように本をぱたんと閉じた。
「それより、明日から早速公務が入っているのではありませんか？ 今夜はもうお休みになった方がいいですよ。私も調べ物はこの辺りにして――」
本を持って立ち上がり、それを本棚に戻すが、背後からすっと影が落ちてフェリシエンヌは言葉を切った。
「フェリ。何回でも言う――好きだよ」
耳元で低音の甘い声が響いて、フェリシエンヌは硬直した。
実際に後ろからぎゅっと抱きしめられて、身動きが取れない。
「で、殿下……？」
フェリシエンヌの新緑色の瞳がまん丸に開き、心臓が痛いほど高鳴りだした。
さらにきつく抱きしめられ、首元に顔をうずめられる。
「ああ……フェリの匂いだ。食べてしまいたい」
形のいい鼻先が首筋をなぞり、フェリシエンヌの肌がくすぐったさとは別の感覚でぞくぞくと粟立つ。
「クロヴィス殿下……いたずらはやめてください」
腕を解こうとするが、彼はまったく離れてくれなかった。
「いたずらじゃない。この部屋、入った時からずっと香水を蒔いたみたいに甘ったるい匂いがきつくて、おかしくなりそうだ。こんな匂いよりフェリをもっと感じさせて」
「甘ったるい……？」
フェリシエンヌは顔を巡らせたが、クロヴィスの清潔な服の香りしかわからなかった。
「ああ、フェリはミルクみたいに甘いね」
温かく柔らかな感触が首筋に触れたかと思うと、ちゅっと濡れた音が弾けた。
「や……っ、殿下！ いったい、どうなさったんですか？」
フェリシエンヌは怒ったように眉をきゅっと吊り上げたが、唇は動揺で震えていた。
「ずっと、こうしたかった。フェリを俺のものにしたかった」
クロヴィスはフェリシエンヌの髪を優しく撫でたり、指に絡ませたりしながら、首筋や耳朶に吸いついてくる。
「もう我慢できない。君が好きなんだ」
ぞくりとするほど艶のある囁きが、フェリシエンヌの鼓膜を震わせた。
（いつもの軽口のはずなのに）
なんだか変だ。妙に胸がざわざわする。彼の言う『好き』という意味を自分に都合のいいように解釈しそうになって、頬に髪が当たるほど頭を横に振った。
「もしかして酔っていらっしゃいます？」
念の為に尋ねてみたが、彼から酒の臭いが一切しないことくらい、フェリシエンヌにもわかっていた。
だが、そうでなければ、今の状況の説明がつかない。
クロヴィスのため息が耳元で聞こえた。
「毎日好きって言っても全然効果ないから、少し距離を置いたら寂しがってくれるかと思ったのに」
「え？」
フェリシエンヌは何度も瞬きを繰り返す。
最近よそよそしかったのは、将来の伴侶選びの為ではなく、フェリシエンヌの気を引く為だった――？
「フェリが欲しくてたまらない」
ゆっくりと首筋から顔を起こした彼は、フェリシエンヌの肩を抱いて振り向かせる。
やめてと手を払えばいいのに、フェリシエンヌは金縛りにあったみたいに動けなかった。
仄暗い青の瞳の奥に宿る炎よりも深い熱情が、彼女の心をちりちりと焦がす。
「……んぅっ」
おとがいを指で掬われ、わずかに上向きにさせられた顔にクロヴィスのものが重なり、二人の唇が触れ合った。
ぎこちなく押しつけられた唇は、不器用で温かく柔らかくて、まるで彼の心そのもののようだと思った。
胸がきゅっと切なく高鳴る。
きっと、ずっとこの瞬間を夢見ていた。
凛々しく成長するクロヴィスはもう弟みたいな存在ではなく、一人の男性として、フェリシエンヌの憧れの対象だったのだ。
けれど、二人の間には身分という超えられない壁があるのを知っていたから、叶わない想いには蓋をして、気づかないふりをして、この先も生きていくつもりだったのに――。
（殿下はどうしてしまったの……？）
人生で初めてのキスを心から慕う彼にされたことは嬉しいが、いくらなんでも態度が突然変わり過ぎだ。
（甘ったるい匂い……って言っていた？）
フェリシエンヌはハッとして、唇が離れた隙に、長机の上に目を走らせた。
細い花瓶に生けられた見知らぬ植物――つぼみだったはずのそれは、すべて大きく開花していた。
図鑑を読むのに没頭していて、まったく気づかなかった。花弁は五つで、中央には黄色い長いめしべと周囲にはおしべらしきものが垂れている。
甘い匂いはここからではフェリシエンヌには確認できないが、狼獣人であるクロヴィスは嗅覚が通常の人間の何倍も鋭い。
あの花の影響を敏感に受け取っていてもおかしくはない。
（興奮作用があるのかしら……）
だとすれば、あの花から遠ざかればこの行き過ぎたスキンシップをやめてくれるかもしれない。自分が妙にドキドキするのも、おそらく花の影響が少なからずあるのだとフェリシエンヌは分析した。
「あ……あの花を外へ。あれのせいでおかしくなっているだけですから」
クロヴィス殿下、と呼ぼうとしたのにまた唇を塞がれる。今度は少し性急に、角度を変えて繰り返し吸いつかれた。
「俺はおかしくないよ、ずっとこうしたかったんだから。フェリ……大好き」
かすれた声を漏らし、縋りつくような瞳で見つめられると、言葉が出てこない。
自分の意志が弱いのか、花の香りに毒されているのか、考えるほどわからなくなってきた。
「んっ……ふぁ……」
力の抜けた口腔内に彼のしなやかな舌が割り込んできて、歯の裏側や頬の内側をなぞられた。奥までたっぷりと舐め回されて、頭の芯が甘く痺れる。
ふわふわと雲の上を歩いているような感覚に、体が安定せず、後ろの本棚に背中が当たった。逃げ場を失ったフェリシエンヌを追い詰めるように、クロヴィスは遠慮なく体を密着させてくる。
「顔、赤くしてかわいいね」
クロヴィスはうっそりと笑い、フェリシエンヌの髪に手を差し込むと深く口づけてきた。
まるで別の生き物のようなクロヴィスの長い舌が、フェリシエンヌのものに絡みついてくる。
奥に引っ込めようとすると、すぐに絡めとられてしごかれる。ぴったりと唇を重ねられ、ぐちゅぐちゅと舌の根をかき回すように舐められると、下腹部がじくじくと疼いた。
「んんっ……ふ……は……っ」
「フェリの唇、柔らかくて気持ちいい」
ふっと嬉しそうに目を細めたクロヴィスは、濡れた自分の唇を舌で舐めた。その艶めかしい赤に、フェリシエンヌの鼓動が再び大きく跳ねる。
「ねえ、俺の他にその唇に触れたやつはいないよね？」
細められた瞳が一瞬冷たく光ったように見えたが、気のせいだろう。
フェリシエンヌは首を横に振る。
「クロヴィス殿下が初めて、です」
そう答えると、彼はもう一度唇を重ねてきた。
「嬉しいな」
そして、フェリシエンヌの服の上からふっくらとした胸に触れてくる。
形を確かめるように撫でるように触れていた指先が、フェリシエンヌの抵抗がないことを感じた上で力が込められていった。
「や……ぁっ」
指先で胸の頂きを撫で回され、びくっと肩が震える。
「こっちもすごく柔らかい。ここが気持ちいいの？」
機嫌のよさそうな声で聞かれるが、恥ずかしくて素直に頷けない。
「そんなの……よくわからない、です」
いやな感覚ではないことはわかるが、初めてのことに戸惑うばかりだ。
「もっとしてほしいかどうかってこと」
クロヴィスにそう囁かれて、フェリシエンヌは首を縦に振りそうになってこらえる。
そんな恥ずかしいことは答えられない。
「ああ。フェリは本当にかわいい」
唇や額、頬や耳朶にキスを繰り返しながら、クロヴィスはフェリシエンヌのブラウスのボタンを首元からもどかしそうに一つ一つ外していく。
「殿下……だめ……」
フェリシエンヌの言葉など聞かずに、開いた胸元に手が潜り込んできて、彼の手が直に乳房に触れた。
「あ……あぁ」
剣も握る力強く大きな手にひどく優しく捏ねられ、フェリシエンヌは肩を震わせる。
長い指が胸の先端を撫でたかと思えば、軽く摘まみ上げて擦り合わせられた。
そこからじんじんと甘い痺れが沸き起こり、フェリシエンヌは眉を寄せて声が漏れるのをこらえようとする。
「フェリ。我慢しなくていいんだよ？ すごく硬くなってきた、感じているんでしょ？」
「やぁ……んふ……っ」
否定しようとしたのに、口づけで言葉を塞がれてしまった。
唾液を混ぜ合わせながら舌を絡ませると、思考が蜂蜜のようにどろりと蕩けていく。
「は……っあ、ふぁ」
息をするのがやっとで、鼻から甘い声が抜けていく。
つかず離れずキスを繰り返しながら、気づけば胸当てが引き下ろされて両方の乳房がクロヴィスの手の中にあった。
「感じている声、もっと聞かせてよ」
きゅっと胸のつぼみを摘ままれて、フェリシエンヌはびくんと腰を揺らした。そうされると下腹部がじれったく疼いてきて、じっとしていられなくなる。
雪のように白い大きな二つのふくらみが夜気にさらされ、尖った薄紅色の頂きがつんと存在を主張していた。
「想像していた以上に大きくて綺麗だ」
クロヴィスは銀糸を引きながら唇を離すと、両手で胸を下から寄せ上げ、たぷたぷと揺らす。
「そ、想像……って」
「毎晩、フェリのことを想わない夜はなかったよ。服の上からじゃ、やっぱりわからないよね」
クロヴィスは怪しく笑う。
フェリシエンヌも子供ではない。薬師として働く以上、男女の体についても学ぶ機会はあった。性欲を満たすために、自分の体を慰める手段があるのも知っている。夫婦の子作りの方法についても知識としては頭に入っていた。触れ合いは男性を受け入れるために必要な準備と本に書かれていたが、実際に触れられるのがこんなに恥ずかしいものだと思わなかった。それに普通は寝室のベッドですることではないのだろうか。
「本物は、全然違うね」
長い指に捏ねられてさまざまな形に変えられる胸を見下ろしながら、フェリシエンヌの顔が真っ赤になった。
「あ……っや、あぁ」
恥ずかしさと甘い疼きで触れられていない場所がむずむずしてきて、太腿を擦り合わせる。
「本当にかわいい」
クロヴィスは熱のこもった瞳でフェリシエンヌを嬉しそうに見つめ、スカート部分の裾をたくし上げた。その指先が下着に触れる。
「だ、だめ……そんな所まで……っ」
自分以外の誰にも触れさせたことのない場所だ。しかし治まらない熱い疼きがその部分にあることも気づいている。
フェリシエンヌの言葉に迷いがあることを一瞬で見抜いたクロヴィスが、長い指をするりと下着の中に入れてきた。
「あっ……」
ぬる、としなやかな指先が秘裂をなぞる感覚があった。指が動くたびに、くちゅくちゅといやらしい水音が響いて、フェリシエンヌは息を詰めた。
「キスと胸を触っただけで、もうこんなに濡れているだなんて――嬉しいな」
クロヴィスが感慨深げにしっとりとした吐息をつく。
「人が来るかもしれません。おやめくださ……ぁあっ」
言いかけたところで、片方の手で乳嘴をくりくりと押しつぶされるように弄られ、また腰が揺れた。
「ふ……あったかい蜜が零れてきた」
機嫌よさそうに目を細めたクロヴィスは、濡れた指先を何度も秘裂に沿わせて愛蜜をかき混ぜる。
粘性を増した水音がフェリシエンヌの羞恥を煽るが、指先から与えられる官能の方が勝った。触れてもらったら疼きが落ち着くかと思っていたのに、下腹部の奥はさらに熱くなっていく。
「あ、あ……だめ、です……」
弱弱しくクロヴィスの肩にしがみつきながら、フェリシエンヌは瞳を潤ませた。
「だめなの？ 蜜はどんどん溢れてくるよ？」
もじもじと太腿を擦り合わせても、彼は手を引いてくれなかった。むしろ「フェリの太腿に挟まれるなんてご褒美でしかないんだけど」と、ますます上機嫌になる。
「もっと触ってあげる」
クロヴィスはそう言って内腿を幾筋も流れる蜜を掬い、花弁を割り開くように指を滑らせた。秘裂の上方に触れられた途端に、フェリシエンヌは強い愉悦を感じて体を硬直させた。
「あン……っ」
「ああ、この辺だね」
何が、と問う間もなく、クロヴィスの指の腹が和毛に埋もれていた突起に引っかかり、くりくりと優しく撫で回してくる。
「ひ……ぁっ、あ、あ」
頭の芯まで痺れるような強烈な快感に、フェリシエンヌは腰が勝手に動くのを止められなかった。
「フェリを悦ばせたくて、一人で勉強したんだよ。ここがすごく気持ちいいって本に書いてあったんだけど、本当みたいだね」
クロヴィスの説明が頭に入ってこないほど、フェリシエンヌの意識は彼の指の動きに翻弄されていた。
「いや、やぁ……っ、変になりそう……っ」
下腹部の奥、子供を宿す器官がきゅうきゅうとせつなく疼いて、秘裂は彼の指先に絞めつける。
だらだらと愛蜜がとめどなく溢れてきて、クロヴィスの手を濡らしていく。たっぷりとそれをまとった指先は、よりなめらかに秘粒を撫で回す。
クロヴィスはぷっくりと膨らんだ敏感な部分を優しく押しつぶしたり、二本の指で軽く摘まんでみたり、フェリシエンヌの反応を確かめるように異なる刺激を何度も与えてきた。
「もう、やだぁ……だめ……」
目尻に涙をためて、刺激を受けるたびに背中をのけぞらせると本棚に肩が当たる。
じんじんと強い愉悦から逃れたい気持ちがある一方で、この気持ちよすぎる快感をもっと欲しい自分もいて、両足に力が入らなくなって太腿が大きく開いていった。
「フェリ。大好きだよ」
追い打ちをかけるように、クロヴィスはフェリシエンヌの耳元で熱い吐息とともに囁いた。
硬くしこった乳嘴ごと乳房を大きな掌に包んで揉みこみながら、秘粒をぐしゅぐしゅと水音を立てて弄られる。
「やっ……殿下……」
耳朶を食まれ、耳殻を舌先で舐められ、フェリシエンヌは浅い呼吸を繰り返しながら、クロヴィスの服をぎゅっとつかんだ。
「達っていいよ、フェリ」
甘く艶やかな声は頭の中に直接響いたように思える。
「い……っ？」
問い返そうとしたが、ぎゅっと秘粒を摘ままれたのが、我慢の限界だった。
「あああぁ……っ」
