お転婆令嬢ですが、初恋騎士様の秘められた独占愛に熱くさらわれました ~みだらな花嫁教育お断り!~
著者:おうぎまちこ
イラスト:木ノ下きの
発売日:2024年 4月19日
定価:620円+税
田舎育ちのヴィオラは、ならず者に絡まれていたところを貴族騎士・ライナーに助けられる。
なんと彼は、コールネル伯爵の頼みでヴィオラを探していたと言う。
そして、ヴィオラが伯爵家の孫娘であり、国王の甥で年若く有望な人物として有名なライオネル公爵の婚約者なのだと告げるのだった。
突然の事実に驚いたヴィオラだが、コールネル伯爵はもう先が長くないと聞かされたことと、彼から出身の孤児院を守ってくれるという条件を出され、伯爵家に令嬢として戻ることに。
その日から二人きりの屋敷で、公爵に見合う淑女になるためのレッスンが始まって……!?
「これから先、お前のことをずっと護り続ける」
レッスンの傍ら、お互いを知っていくことで惹かれ合う二人。
ヴィオラはライナーの誠実な瞳に囚われて、優しく溶かされてしまう。
けれど彼と想いを通わせるのは、婚約者である公爵を裏切ることになるのではないかとヴィオラは思い悩む。
そんなとき、ライナーに恋人がいることを知り、ヴィオラは屋敷を飛び出して――!?
【人物紹介】
ヴィオラ
田舎育ち。物心ついたときには母親は亡くなっていて、父はヴィオラの前から姿を消し、孤児院に入っていた。
明るい性格だけれど、素直じゃない一面も。自分のことを好きだと言ってくれる、たった一人の人と添い遂げたいという思いがある。
ある日、コールネル伯爵の唯一の孫娘で、ライオネル公爵の婚約者だと知らされる。
ライナー
王家に仕える貴族騎士。面倒見が良く前向きな性格。
コールネル伯爵に恩義があり、孫であるヴィオラを探しに田舎へ訪れる。
ヴィオラの花嫁教育の教育係として、伯爵家に住み込むことに。ライオネル公爵とは面識があるそうだが……?
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【試し読み】
「おい、ヴィオラ、もう寝たのか?」
ドキンと心臓が大きく音を立てた。
父親のことがあって、行き場のない気持ちが胸の中を支配している。こういう時、気持ちの整理をどうつけて良いのか分からないのだ。
本当はライナーに色んな相談をしたかったが、これ以上彼を頼ったら、いよいよ引き返せないようなことになりかねない。
(このまま無視しましょう)
そう思ったヴィオラだったが、ライナーが声を上げた。
「隣の部屋にいるんだから、起きてることは知ってる。中に入れたくないなら、このまま俺の話だけでも聞いてほしい」
その台詞を聞いてヴィオラは観念するしかなかった。
「鍵空いてるから、入って良いわよ」
ドアノブが回る音が聞こえたかと思うと、ライナーが姿を現した。
そうして、さっそく本題に入っていく。
「なあ、昼間のことだけど……」
歯切れが悪くなっていくライナーの方へと向き直ると、肩をすくめながらヴィオラは語り始める。
「いくら由緒正しい貴族の血を引いてるって言っても、結局あんなクズが私の父親ってわけ」
自虐的な笑みが零れた。横顔には諦観の念がにじむ。
「それはそうだが」
「同じ穴の狢なのよ、私もあんな感じでしょうもない女なの」
「自分を卑下するな。お前の父親がどんな人物だろうが、俺は……それにあの人は……」
言いかけたライナーに間髪入れずにヴィオラは返す。
「ライナー、あんたこんな時でもお綺麗なお坊ちゃんよね」
「どうした、急に?」
怪訝な顔をするライナーの顔を一瞥すると、ヴィオラは嘲笑を浮かべると肩をすくめた。
「は、そういう純粋なところよ、私とは本当に合わないんだから」
「なんだよ、ヴィオラ、とにかく今は落ち着け」
話している間にライナーはヴィオラの手が届くところまで歩いてきていた。
その時、ヴィオラの中で張り詰めていた糸がプチンと切れる。
「どうしてなのよ?」
「ヴィオラ……?」
地の底を這うような低い声をヴィオラは吐き出したかと思うと、目の前に立つライナーを睨みつけるようにして叫んだ。
「どうして私を迎えに来たのよ!」
「おい、ヴィオラ、落ち着けって」
「落ち着けるわけないでしょう!? どれだけ外見を取り繕ったって一緒よ! あいつの血が私の中から消えるわけじゃない! 血のにじむような努力をしたって、結局はどうにもならない!」
「聞いているのか、ヴィオラ」
ものすごい剣幕で早口でまくしたてるヴィオラの言い分を、ライナーは黙って聞いた。
「これから先、伯爵令嬢だ、公爵夫人だって、社交界に出たとして、どうあがいても、他の皆はあの父親の話をしてくるわよ、噂だって言っても本当のことですもの、否定はできない」
ライナーは表情を変えないままヴィオラをまっすぐに見つめた。
「貴族の連中は、卑しい血を引いた女だって言ってくるわ。私と結婚したライオネル公爵様だってとばっちりを受けるわ。それに、それだけなら、まだ良い」
気づけば、ヴィオラは自身の震える身体をかき抱いていた。
「私の子どもも同じような目に遭うわ……いいえ、もっとひどい言い方をされるかもしれない」
もちろん、伯爵家の令嬢として生きると決めたのは自分自身だ。
だけど、どこか絵空事のように思っていたのも事実。
現実に公爵夫人となった際にどうなるのか、浮かれた自分は想像もしていなかった。
何より、己の出自や過去の自分、それらを全て否定して、新たな自分に生まれ変わることができる。
そんな風に錯覚してしまっていたのだ。
「ライナー」
ライナーを見上げたヴィオラの瞳からは涙が幾筋も零れてしまっていた。
「責任取りなさいよ! 私は……私は……好きな男の人と平凡な結婚がしたかったのに! なのに……」
もう言っていることが支離滅裂だった。
自分でも分かっているが感情の制御ができない。
今まで我慢していた何かが堰を切って溢れ出してくるかのようだ。
「うっ……ひくっ……」
抑えられずに蹲りかけたヴィオラの身体だったが――
「大丈夫だ」
ライナーに抱きしめられていたのだった。
「……っ、離しなさいよ」
「離さない」
相手の思わぬ返答にヴィオラは怒りを露わにする。
「離しなさいって言ってるでしょう!?」
「お前におかしなことを言う奴がいたら、俺が全部どうにかしてやる」
「何を、言って……? 私は……ライオネル公爵家に嫁ぐのよ、あんたがいつまでもそばにいるわけでもないでしょう? どうやって守るつもりなのよ!」
「お前が社交場に出る時には、ずっとそばにいてやる」
「それが意味が分からないって言ってるのよ……!」
だが、有無を言わさぬ口調でライナーが告げた。
「いいや、どんな手段を使ったんだとしても、俺はお前のそばにいる。社交界どころか国中がお前をあざ笑ったとしても、俺はお前のそばから離れない」
「……っ……」
ライナーの腕の中ヴィオラはびくりと戦慄いた。
そんな彼女の顎を彼の長い指が掴んだ。
「俺はお前を否定しない、自分よりも周りを優先して、いつでも明るく気丈に振舞って、本当は脆いとこもあるくせに虚勢を張って生きている……お前はお前のままで良いんだ、ヴィオラ……」
「綺麗ごとばっかり……」
「綺麗ごとと言われようが、事実は事実だ」
「どうせ嘘よ、あの父親みたいに、私のことを騙すつもりなんでしょう――っ……!」
突然、唇が何かに塞がれる。
「んうっ……」
それがライナーの唇だと気づくのに、しばらく時間がかかった。
柔らかな感触に困惑していると、ふっと相手の唇が離れる。
「何、を……」
真摯な碧い瞳を向けられると、鼓動が高まっていく。
「俺は……お前の父親とは違う。これから先、お前のことをずっと護り続ける」
「私は信じないわ」
頑なに信じようとしないヴィオラに向かってライナーが続けた。
「嘘じゃない。俺は騎士だ。嘘はつかない」
熱を孕んだ碧い瞳がヴィオラを穿つ。
「騎士としてお前に忠誠を誓う。ヴィオラ」
***
白い清潔なシーツが敷かれたベッドの上に、ヴィオラはまるで壊れ物のようにライナーの手によって横たえられた。
彼女の身体の上に、そっと彼の身体が覆いかぶさってくる。
騎士として鍛えぬいたライナーの両腕に囲われてしまい、ヴィオラは逃げ出すことができない。
いいや、相手は力づくで事に及ぼうとしているのではない。
逃げ出そうと思えば、いつだってできる。
だけど……。
卑しい血を引いていようがいまいが、ヴイオラだから良いのだと訴えてくるライナー。
そんな彼が自分のことを今まさに求めてくれていて……。
彼の想いに応えたいという気持ちが、どうしようもなく勝ってしまっていた。
(どうしてこんなに私のことを理解してくれるライナーが、私の婚約者じゃなかったんだろう……?)
ライナーに身を委ねながら、婚約者であるライオネル公爵の姿が浮かんでは消える。
(私は、あの人と結婚しなくちゃいけなくて……だけど、私は……ライナーのことが……)
罪悪感が胸を襲ってくる。
けれども、それ以上に、共に過ごしてきたライナーと結ばれたいという気持ちが勝ってしまっていたのだ。
これ以上はダメだと理性が訴えかけてくるが、それ以上に本能的にライナーのことが欲しくて欲しくてたまらない。
(これで最後にするから……)
端正な顔立ちをしたライナーがそっと近づいてきたかと思うと、唇を塞がれてしまった。
「んっ……」
ぎゅっと引き結んだ唇を割りいるように地厚い舌が入り込んでくる。
「ふあっ、あ……」
相手の唇に何度か唇を食まれた後、今度は舌を軽く食まれ、互いの舌先が何度も絡み合い、淫猥な水音を鳴らす。
唇同士が離れ、ふんわりとしたベッドの上にヴィオラの身体は押し倒されてしまった。
「ヴィオラ」
彼の長くて綺麗な指が、ドレスの前開きの部分の釦を、舐るように外していく。
「あ……」
彼の視界に、桃色に上記した乳房がふるりと露わになり、どんどん頬は林檎のように熟していった。二つの先端が彼の指を招くように尖ってしまう。
「ん……」
「俺のことを誘ってきてるな」
そうして、肩先から腰、太腿、足先にかけてドレスとシュミーズを一緒に脱がされていく。服を脱がされるたびに露わになった肌に口づけを落とされた。口づけを落とされるたびに、相手から大事にされているのが伝わってきて、どんどんどんどん体が火照っていく。
そうして、全てを剥ぎ取られ、生まれたままの姿になった頃には、全身が茹だってしまっていた。
相手から施された口づけだけで、花弁からは蜜がとろとろと溢れていた。
なんだか気恥ずかしいのを隠したくて軽口を叩く。
「ちょっと、なんで私だけ裸にされてんのよ」
「こんな時まで騒々しい女だな」
「この間だって、急だったし……なんだかいつも私ばっかり……余裕がないのが嫌なのよっ……!」
「ああ、分かったって、俺も脱ぐから」
そうして、彼が纏っていた騎士団の上衣を脱ぎ捨てると、逞しい胸板と鍛え抜かれた腕とかが眼に入ってきて、ヴィオラの鼓動が落ち着かなくなっていく。
ベルトを解く音がやけに卑猥に聞こえたかと思うと、そそり立つ局所が視界に入った。
「あ……」
先端からは先走りの雫が溢れているではないか。
「ああ、くそっ……恰好つけたいが、俺もお前と一緒で余裕がないんだよ……」
ライナーがバツが悪そうに赤面しながら毒づく姿を見ていると、なんだか無性に嬉しくなってしまう。
「俺も結構余裕がないんだがな……」
「ライナー……」
ライナーは少しだけ苦しそうに呼吸をしている。
彼の大きな掌が、彼女の両膝をゆっくりと割る。
開脚されたヴィオラの身体にライナーが局所ごと近づいてくる。
「ん……」
くちゅりと卑猥な水音を立て、二人の秘部同士が触れ合った。 花弁の間に淫茎の根がうずもれると、彼が腰を揺り動かしはじめ、間を何度も何度も擦りつけられた。
「ふあっ、ああっ……」
「ヴィオラ……」
紅く色づいた花弁が甘ったるい蜜を零しはじめた。間を動く熱茎の先端からも雫が滴る。液同士が混ざりあうと、卑猥な水音が室内に響き渡った。
「ああ、触れ合わせてるだけでも、気持ちが良いな……」
「ライナーっ……あっ、ああっ……あっ……」
艶めかしい彼女の声が室内に木霊する。
だんだんと激しさが増していき、どんどんライナーの上半身がヴィオラの上半身へと傾いてきた。
近づいてきた彼の首へと、彼女は自然と腕を回す。
しばらく二人の影が一緒になって揺れ動き続けている内に、快楽で頭がぼんやりしていく。
「あっ、ライナー……ライナーっ……」
下腹が切なく疼き続けた後、びくびくと身体が戦慄いた。
「ああっ……!」
ヴィオラの小さな悲鳴を聞くと、ライナーが動きを制止した。
「普段は気の強いお前が、こうやって愛らしく震えているのは、可愛いな……」
「……っ……変な言い方、しないで、ちょうだいっ……」
「はは……悪いな……」
その時、一瞬だけライナーが身震いをした。
「悪い……もう少しだけ余裕を見せたかったが……結構限界みたいだ……」
「え?」
「良ければ、早くお前の中に潜り込ませてほしい……」
先ほど以上に切迫した口調で懇願されると、断れそうにもない。
いよいよ彼と結ばれるのだと思うと、心臓がバクバクと跳ねて落ち着かない。
「ああ、これだけ濡れてれば頃合いだな」
そうして、熱を孕んだ瞳で穿たれる。
「ヴィオラ、お前のことを大事にする。今日、この日のことを俺は一生忘れない」
「ライナー……」