眠りの姫は寡黙な聖騎士の殉愛で目を覚ます

F+

眠りの姫は寡黙な聖騎士の殉愛で目を覚ます


著者:ひなのさくらこ
イラスト:木ノ下きの
発売日:2023年 12月29日
定価:1800円+税

マルグリットは国と国民を幸せにするという神託のもと産まれてきた王女である。
神の寵愛によって眠り続けることとなってしまったが、18年が経ったある日に目を覚ます。
そこでマルグリットは自分が目覚めるために力を尽くしてくれた、聖騎士のヨナスと出会う。
彼女は、ヨナスと自分が神託の都合上、形だけとはいえ、『夫婦』であることを知った。
神聖力の分け与えるための優しい触れ合い、共に過ごす時間を重ねて、二人は互いにどんどんと惹かれていく。
だが、国王を始めとする周りの者はヨナスのことがこころよく思っていないようだった。
ヨナスはマルグリットから距離を置こうとするが、マルグリットの体に異変が起きて――!?
マルグリットのまっすぐな思いと、ヨナスの秘めた熱情が少しずつ重なっていく――。

※1~4話の分冊版と、合本版がございます。重複購入にご注意ください。

【人物紹介】

マルグリット・ヴァレリー・シャヴァネル
国と国民を幸せにするという神託のもと産まれてきた王女。
心身ともに天使のように美しく、清廉。
神託によって18年間眠り続けてきたが、ヨナスの持つ神聖力によって目を覚ます。

ヨナス・ペルデン
神聖力を持つ聖騎士の青年。
恵まれた体格だけでなく、騎士としての能力も非常に優れている真面目な青年。
元々は辺境を彷徨う流民だったが、幼い頃に家族から引き離されマルグリットを現世に繋ぎとめる役目を負わされる。

●電子書籍 購入サイト

*取り扱いサイトは、各書店に掲載され次第、更新されます。

【試し読み】

 彼女は輝く金髪を背に流し、薄い夜着だけを身に着けている。ヨナスをまっすぐに見つめる瞳はきらめいていて、自分が彼女にとって特別な存在だと勘違いしてしまいそうだ。
 微妙に目を逸らしながら寝台に近寄ると、マルグリットは座ったまま後ずさり、上掛けをめくった。往生際悪く迷うヨナスは、視線をうろつかせながら羽織っただけの上着を脱ぐ。
 上掛けの下からちらりと見えた夜着の裾は短く、隠れているのは太ももの半ばまでだ。視線を上に遣ればいかにもやわらかそうな乳房が透けて見えそうで、ヨナスはマルグリットに背を向け、寝台に腰掛けた。
 ぎしりと軋む音の後は、漂う緊張感が産む沈黙しかない。呼吸すら憚られて息を詰めるヨナスの背後から小さな声がした。
「……こっちを向いて」
 ごくり、と喉を鳴らし、身を捩るようにして振り返った。
 奇跡のような美しさだ。
 目覚め、自分の意思で動き笑うマルグリットは、罪深いほどの引力でヨナスを惹きつける。
「どうして座ったままなの?」
 新緑の瞳を食い入るように見つめていたヨナスは、数拍置いてからぎこちなく寝台に上がった。しかし、身体を横たえようとしたところでまた声がかかる。
「そのまま、動かないで」
 何事かと静止した肩を押される。背中を寝台の頭につけたヨナスは、枕を尻に敷かないよう急いで左右に退かした。
「殿下」
「名前を呼んで」
 にじり寄るマルグリットを避けようにも退路はない。思わず視線を下げた先にあるのは、身を乗り出したせいでふるりと揺れた胸の谷間だ。ヨナスは焦り、だが押しのけることもできず口ごもった。
「殿下……マリー、なにを――」
「お願い、少しだけでいいの」
 マルグリットの両手が伸びてくる。白い手がシャツへかかり、釦をつまんだ。
 自分のドレスも女官に着せられているマルグリットだ。釦の扱いに慣れているはずもない。長い時間をかけて、ようやく全ての釦が外された。
「マリー……」
 息を吸ったせいで胸郭が持ち上がり、そこへ強い視線を感じる。呼吸を止めている間に前身頃が開かれ、白い手が胸にひたりと当てられた。
 ひんやりとした温度よりも物理的な刺激によって皮膚がざわめき、男の小さな乳首が収縮する。
 手が胸板をすべり、乳首をかすめる。はっと息を呑んだヨナスは、マルグリットの手に驚愕の眼差しを向けたが、舌がもつれて言葉を発することができない。
「今日は硬いのね」
 ヨナスはぎょっとして、痺れた頭を軽く振る。驚きすぎたせいで肉体は男の反応を示しておらず、それでも思わず自分の下肢に目を遣ってそれを確認した。
「硬い、とは、何が」
「あなたの胸が。……いつもはもっとやわらかいわ。そうでしょう?」
 抱きしめられて眠る時のことを思い出しているのか、胸板を手のひらで押された。胸筋から上腕、肩と僧帽筋までがぐうっと緊張する。
「あ……お腹も」
「マ、マリー!」
 くっきりと割れた腹の溝を爪の先でなぞられたヨナスは、たまらず華奢な肩を掴んで遠ざけた。
 きょとんとした表情のマルグリットは、肩で息をするヨナスの肌がわずかに汗ばんでいる原因も、琥珀色の瞳がギラついている理由にも気づいていないようだ。いや、むしろなぜ身体を遠ざけられたのかと不服そうですらある。
「じっとして、ってお願いしたのに」
「なぜ、突然このようなことを」
 責めるような口調で詰られたマルグリットは、ピンク色の唇を尖らせた。
「あなたに触りたいと思ったのだけれど……これはいけないこと?」
「未婚の女性が、無暗に男性に触れることは好ましくありません」
「わたしはあなたと結婚しているのよ」
「形式上のことです」
「……男性が、未婚の女性に触れるのは構わないの?」
 途端にひやり、と空気が冷える。
「誰かに触られたのですか? まさか……シャリル公子?」
「いいえ、違うわ」
 誤解を解こうとしたマルグリットは、ヨナスの腕に手を乗せた。身体の芯がいつも凍えているようなマルグリットは、手のひらから伝わる高い体温が好ましく、自然と身を寄せる形になる。
「わたしが眠っている間に、ヨナスが神聖力を与えてくれたのでしょう? その方法をお母さまから聞いたものだから……」
 うつむくマルグリットの金色のつむじを見ながら、ヨナスの全身がカッと熱くなる。
 王妃は何をどう伝えたのだろうか。ヨナスの脳裏に、あの生々しい淫夢が蘇った。
「……本来であれば私などが、王女殿下の尊い御身体に触れるなど許されないことです」
「そんなことを言わないで!」
 マルグリットは顔を上げ、ヨナスの瞳を正面から見返した。
「わたしが言いたいのはそんなことじゃないの。わたしはこうやって――」
 マルグリットは両手でヨナスの頬を包む。
「あなたに触れると嬉しいから、ヨナスも同じだといいと、そう思って……」
 途切れた語尾に混ざる吐息まで愛おしい。だがこのままでは非常にまずい事態を引き起こしてしまいそうだ。
 ヨナスは口内に溜まる唾液を数度飲み下し、自分が何を言うべきかもわからないまま口を開く。
「マリー、しかし、私は」
 ヨナスの視界で白い夜着がひらりと舞った。マルグリットがヨナスの身体を跨いだのだ。
 こんな破廉恥な体勢など夢想したこともない。咄嗟に支えた腰の細さと、漂う肌の匂いにめまいがした。
「ヨナス」
 マルグリットは黒い髪に指を差し込み、優しい手つきで梳いていく。ヨナスは心地よさを堪能するどころか、非現実的な状況に呆然とするばかりだ。
 ヨナスは眦が切れそうなほど目を見開き、ただマルグリットの顔と、熱心に動く白い手を見ていた。
 白い手は地肌をくすぐるように髪を梳き、耳たぶを軽く揉む。ぴくりと揺れた広い肩に視線を遣ったが、悪戯をやめる気はないようだ。人差し指と親指で耳の形を確かめるように触ると、今度はするりと首を撫でた。
「っ、マリー……」
「ヨナス」
 シャツが肩から滑り落ちる。現れた刺青を前に一瞬だけ動きを止めたマルグリットは、キュッと唇を引き結ぶと、ゆっくりと身を屈めていく。
「殿下、なにを――!」
 可憐な唇が、不吉の象徴である蛇の刺青を慈しむように口づける。信じられない光景に凍り付くヨナスが我に返るよりも早く、マルグリットは顔を上げた。
 いつもより赤味の強い唇が目の前にある。緑色の瞳はきらきらと輝き、強烈な引力でヨナスの視線を奪った。
「あなたは、わたしに……触りたくないの?」
 その言葉は凄まじい勢いでヨナスの理性を弾き飛ばした。のぼせたように全身が熱を帯びる。
 ――触りたくないのか、だと?
 ヨナスは手を伸ばし、マルグリットの頭をぐいと引き寄せた。
 どちらの吐息が震えていたのだろう。
 荒っぽく始まった口づけはすぐになまめかしく、色めいたものに変わっていく。
 絡まるシャツが邪魔で、腕を引き抜く。自由になった両腕が、優美な曲線を描く身体をなぞった。
 抱きしめているのは、自分にとってたった一人の女性だ。己の欲望を注意深く隠してきたヨナスの、秘められた願望が迸る。
 暴れる心臓が口から飛び出しそうだ。首にマルグリットの細い腕が柔く巻きつくのを感じながら、角度を変えて何度も何度も唇を合わせた。
 甘い唾液を舌で味わい、口蓋を嬲る。前歯の裏を舌先で撫でてから舌を吸い上げた。くくぐもった可愛い声がして、もっと聞きたくなって頬を両手で包んだ。
 すべらかな頬を親指で緩く撫でながら、鼻の先をこすり合わせるように口づけの角度を変える。ヨナスの手は頬の感触を堪能してから右手を耳へ、そして左手を背中へ回した。
「う……ん」
 薄く目を開くと、閉じられた長い睫毛が見える。桜貝のような耳たぶをつまんだ。仕返しとばかりにやわやわと揉めば肩が跳ねる。きっとくすぐったいのだろう。悪戯心を抑えて指を広げ、髪の中に差し入れた。
 ふわ……と、得も言われぬ香りが立ち込め、それを肺の奥まで吸い込む。
 マルグリットの髪の匂い。湯上りに塗り込まれた香油の匂い。そして、体温の上がったマルグリットの肌の匂いだ。
 ヨナスは左手を、背骨の窪みを確かめるように下へ移動させた。
 この美しい王女の身体の中に、自分と同じ武骨な骨があるとは信じられない。そんな考えが頭の片隅に浮かび、マルグリットが夜着のリボンを自ら解いたことで消え去った。
 はらり、とはだけられた絹の夜着が、頼りない質感で白い肩を滑り落ちていく。
 ちゅ、と音を立てて離れた唇と、乱れた金色の髪。ヨナスは食い入るようにそれを見つめながらかすかにあえいだ。
「……マリー……」
 マルグリットはヨナスの右手を持ち上げ、自分の鎖骨にそっと触れさせた。そして目を伏せ、ほんの少しだけ下に押し下げる。それがまた下がる。また、ほんの少し。
 手のひらに吸いつく、丸くやわらかな質感。
 ――ああ!
 目のくらむような勢いで全身の血が駆け巡る。ヨナスは自らの意志で、張りのある乳房を手で包んだ。
「あ……」
 目を閉じた彼女の淡いため息。いつか見た夢と同じ、とろけるような柔さの乳房。
 カッと頭が熱くなり、津波のような激情がヨナスを襲う。両手で乳房を揉みしだき、唇と同じ可憐な色の乳首にむしゃぶりついた。
「ああっ!」
 口の中でたちまち硬くなる乳首を吸い、尖らせた舌でこねる。ちゅぅっと吸い上げて口を離すと、紅を塗ったように色づきふるふると震えていた。そのあまりの健気さにもっと、もっとと愛撫を施す。
 ヨナスは舌を突き出し、尖った乳首をくりくりと舐る。反対側の乳房を揉みながら指の股で乳首を挟んだ。
 小さく悲鳴を上げたマルグリットが腰を捩じる。
「う……っ」
 ガチガチに硬くなった雄を丸い尻が刺激した。今すぐこれを突き入れて、思うさまに腰を振れたらどんなにいいだろう。
「ヨナス……」
 澄んだ瞳がきらめく。しかしその無垢な輝きが、男の征服欲をどうしようもないほど激しく揺さぶった。
「あっ!」
 ぐるりと体勢を入れ替えて女を組み敷いた。寝台の上に黄金の髪が雲のように広がる。
 鮮やかな新緑の瞳に湛えられた信頼の色。喜ばしいはずのそれが、今はなぜか苛立たしい。ヨナスはマルグリットの両手首を片手で掴み、頭の上で押さえつけた。
「……ヨナス?」
 彼女が身につけているのはもう下着だけだ。両手を押さえつけられているせいで、背を反らし胸を突き出している。
 ――どこもかしこも白い。……ああ、乳首は違うか。あとは耳たぶが……。
 ヨナスが散々しゃぶったせいで、乳首は色づきピンと尖っている。いじられて薄桃色になった耳たぶも髪の間から覗いている。みぞおちの奧がそわそわするような衝動が湧き、ヨナスは可愛らしい耳に顔を寄せた。
 耳殻を唇で辿る。吸い込むようにして耳たぶを口に含むと、くすぐったいのか肩をすくめた。チロチロと舌先で可愛がってから解放し、今度は耳の後ろに吸いつく。鼻先を髪に埋め、うなじを何度もついばんだ。
「……あ……はぁ……」
 背を震わせたマルグリットは小さく鳥肌を立てている。ヨナスは吐息であやすように肌を温めながら唇を移動した。顎のライン。細い首。鎖骨から肩先へ。
「きゃあっ!」
 マルグリットが小さく叫んだ。ヨナスが腋下を舐め上げたからだ。
「いや、いやよ……ヨナス、そこは……んんっ!」
 視線だけで顔を窺えば、ギュッと目を閉じて顔を背けている。頬は真っ赤に染まっていた。いい気分になったヨナスは気が済むまでそこを堪能すると、唇を移動させていく。
 次の標的は激しく上下する腹と、縦にへこんだ可憐な臍だ。
 まさか誰かの臍でこんなに興奮するとは思わなかった。いや、「誰か」ではなくマルグリットだからだ。彼女でなければ指一本、産毛や硬い歯の舌触りにまで欲情するはずがない。
 薄い腹と脇腹を舌で舐め、臍を突いた。腰を浮かせて拒む様さえ愛らしい。ヨナスはそれを無視し、れろれろと何度も舌を使う。
 やがて身を起こしたヨナスが手を解いても、マルグリットはぐったりと横たわったままだった。
 熟れた林檎のように赤い頬と、薄いピンク色に染まった身体を目で堪能したヨナスは、荒々しい仕草でマルグリットの下着を取り去った。膝を合わせる弱々しい抵抗は、騎士の前では何の役にも立たない。すんなりと伸びた脚を捕らえ、ぐいと引いて開かせた。
「ああ……」
 ヨナス思わず声を漏らした。
 たとえ流民であろうと、聖騎士で見目のよいヨナスが許せば女は近づいてくる。その気になれば刹那の関係を結ぶこともできただろう。しかし彼にとって女性はマルグリットただひとりだ。
 今までヨナスがマルグリットの肌に触れたのは、あくまでも力を与えるためだった。その時ですらこの秘められた場所に触れたことはない。ヨナスが初めて目にしたそこは、既に濡れて淡くほころんでいた。
 怖がらせないようにと、ただそれだけを思って顔を寄せる。内腿に緊張が走ったが、宥めるように撫でるとそれもやんだ。
 まともな思考能力はどこかに消えた。ただ、朝露を含んだような花弁が愛らしく、その味を確かめることしか考えられない。ヨナスは吸い寄せられるように秘所へ口づけた。
「ん……っ」
 マルグリットがつま先を跳ね上げた。ぬるぬると温かくぬめる愛液の源を夢中で舐める。女の味。いや、マルグリットの味だ。
 夢中になって蜜をすする。小さな襞まで余すところなく舐めしゃぶっていたヨナスは、花びらの頂点にある小さな突起に気がついた。
 浅く顎を引いてじっと見つめる。他の部分よりもわずかに色味の薄い、小さな粒。それが息づくように揺れていた。
 ――何だろう、これは……すごく、かわいいな……。
 男の強い視線を避けるように、その突起は今にも姿を隠そうとしていた。咄嗟に薄い下腹を軽く押して包皮を剥き、白い粒を指先でそっと撫でる。
「ああっ!」
 ぐん、と腰が持ち上がった。驚くヨナスと同じように、マルグリットも何が起こったのかわからない様子だ。だがヨナスはすぐにこの小さな器官が女の官能を引き出していることに気づく。
 聖騎士とはいえ男の集団だ。親しい者がいなくとも、それなりに話は聞こえてくる。曰く、どうやって恋人を満足させているか。どんな風に女を啼かせてきたのか。
 多分に誇張された武勇伝が蘇り、ヨナスは飢えた獣のようにその場所を凝視した。
「あ、だ、だめ、ヨナス……!」
 初めてはっきりと抵抗を示したマルグリットを無視して、ヨナスはその粒を唇で挟む。途端に上がる嬌声が、男の嗜虐心をどうしようもなく煽った。
 ちゅぷちゅぷと音をさせながら粒をしゃぶれば、蜜洞からこぼれた愛液が尻へと伝い、清潔なシーツに丸いしみを作った。
「ひっ、ヨナス、ああ……!」
 ちゅ……っ、と、粒に吸いついては離すことを繰り返す。真空になった口内で舌を動かすと、マルグリットの全身はたちまち硬直し、腰を大きくバウンドさせた。
 はあはあと胸を波打たせる姿を眺めながら、濡れた口元を手の甲で拭う。ヨナスの性器は今や鉄のように硬くそそり勃ち、熱く潤った場所を犯したいと主張している。彼は窮屈な釦を苦心しながら外し、下着ごと脱ぎ捨てた。
「マリー」
 呼びかけに反応したマルグリットがゆっくりと目を開ける。唇が震え、新緑の瞳が潤んでいった。
「ああ、マリー……!」
 胸にこみ上げる愛おしさのまま、ヨナスはマルグリットを抱き起こす。すぐに両腕が首に回され、裸の胸と胸がぴたりと合わさった。
 寝台の頭にヨナスがもたれ、太腿をマルグリットが跨いで座る姿は、最初の触れ合いと同じ体勢だ。だがあの時と違うのは二人が全裸であること、そして何より求め合う男女の間だけにある、淫靡な空気が部屋を満たしていることだ。
 二人は見つめ合い、そして口づけをする。互いの体液こそが命を繋ぐものであるかのような必死さで舌を絡め合った。
「すごい……熱い……」
 呼吸のために離したマルグリットの唇がうわ言のように囁く。下腹を押す男の象徴のことだ。彼女はわずかに身を離し、うつむいてそれを観察したが、恐がる様子も見せずにまた身体を密着させた。
 彼女が男性器についての知識を持っているのは明白で、それもおそらくはシメオンの言う「奇跡」に類するものなのだろう。
 マルグリットは下半身を揺らめかせ、熱杭へ小刻みに刺激を与えてくる。
 彼女はそれがどれほど危険な行為か――辛うじて残る自制が切れ、純潔を奪われるかもしれないことを知らないのだ。ヨナスは血管が千切れるのではないかと思うほど興奮し、細い腰を両手で掴んだ。
「じっとして」
 奥歯を噛み、荒い息を吐くヨナスを見て、マルグリットはふわりと笑った。
「……何が可笑しい?」
「『じっとして』って。それはわたしが最初に言ったことよ」
 確かにそうだった。瞬きをしたヨナスは微笑むマルグリットと額を合わせ、鼻先を触れさせる。マルグリットは唇を笑みの形にしたまま目を閉じた。口づけを待つ顔がたまらないほど愛おしい。
「あ……ヨナス」
「マリー……」
 唇を触れ合わせながら、細い腰を掴んでゆさゆさと揺さぶる。濡れた花びらと、先走りの滴る雄を密着させた。ヨナスは腰の曲線をなぞるようにして両手を尻に移し、上下に動かす。ぬちゃぬちゃと激しい水音が耳朶を刺激し、鋭い快感に頭の芯が痺れていった。

タイトルとURLをコピーしました