婚約解消された没落令嬢は、訳あり辺境伯の燃えるような熱愛に身も心も溶かされる

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婚約解消された没落令嬢は、訳あり辺境伯の燃えるような熱愛に身も心も溶かされる


著者:nori.
イラスト:森原八鹿
発売日:2023年 10月27日
定価:630円+税

伯爵令嬢であるエミリアは婚約者に心身ともに虐げられていた。
家のためにと我慢をしていた彼女だったが、ある日参加したパーティーで婚約破棄を言い渡される。
ショックで固まってしまった彼女に求婚したのは北方の辺境伯であり、先の戦争で武勲を立てたディアークで――?
エミリアは少しでもディアークに恩返ししようと「奉仕」をしようとするが断られてしまう。
「俺を喜ばせたいのなら、どうぞ笑ってください」
最初は戸惑っていたエミリアも、ディアークの優しさに触れて身も心も癒やされていく。
そして二人はお互いの傷に寄り添い、愛を深めていくなかで心身共に結ばれるが、ディアークにはどうやら怪しい噂があるようで……!?

【人物紹介】

エミリア・ロードリック
容姿端麗、繊細な印象を持つ伯爵令嬢。
婚約破棄されたところをディアークに求婚される。
元婚約者に傷つけられた心と体を、ディアークの優しさによって癒されていく。

ディアーク・ロードリック
北方の辺境伯で、力が強く戦いに長けた猛者。
目鼻立ちも非常に整っており、美丈夫である。
優しく、温和な性格をしているが、そんな彼にはどうやら秘密があるようで――?

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【試し読み】

 その夜。
 自室で寝支度を整えたエミリアは、不安そうに廊下の方を振り返った。
(ディアーク様……今夜は大丈夫でしょうか)
 するとまるで図ったかのように、ノックの音が聞こえてくる。
 扉を開けると、就寝用のシャツに着替えたディアークが廊下に立っていた。
「遅くにすみません。少しいいですか?」
「はい、もちろんです」
 室内のソファを勧めたが、ディアークは「すぐに終わるので」とその場で話し始めた。
「遅くなりましたが、昨日は本当にありがとうございました。貴方のおかげで、久しぶりにゆっくり眠れた気がします」
「お役に立てたのなら良かったです。ところで今日は――」
「昨日十分睡眠をとれたので、しばらくは問題ないかなと。戦いの間は、安心して眠れないこともしょっちゅうでしたし」
「そんな……」
「今度、俺の部屋の扉をもう少し厚みのあるものに変えておきます。そうすれば、夜中に貴方を起こしてしまうこともないと思いますので」
 それでは、と立ち去りかけたディアークの袖を、エミリアは慌てて摑んだ。
「ま、待ってください!」
「……?」
「と、扉まで変えなくて、大丈夫です」
「ですが貴方にご迷惑を――」
「それでしたらこれからずっと……い、一緒に寝れば良いのでは、ないでしょうか……。私たち、婚約者、なのですし……」
 思わず口にしたものの、エミリアは自分がとんでもなく大胆なことを言っていると気づき、じわじわと顔を赤らめる。照れているのはディアークも同じらしく、エミリアの言葉を聞くにつれ、徐々にその頬に朱を注いでいた。
「そ……れは、そうですが……。でもその、いいんですか?」
「わ、私でしたら、大丈夫です!」
「いや、俺が大丈夫じゃないんですが……」
 ディアークはこくりと息を吞み込むと、エミリアの瞳をじっと見つめた。
「その、昨日はなんとか我慢しましたが、正直……次は無理かもしれません」
「ディアーク……」
「すみません、本当は『そんなことしない』って断言出来たら良かったんですが……。俺もその……一応、男なので……」
「…………」
 彼の言わんとすることが伝わってきて、エミリアもまた恥ずかしさのあまり唇を噛みしめる。だが目の前にあった彼の手を取ると、そうっと握りしめた。
「それも……大丈夫です」
「……エミリア」
「貴方になら……いいです」
 エミリアの精一杯の告白に、ディアークはしばし言葉を失っていた。
 しかし繋いでいた手にゆっくりと力を込めると、少しだけ不安そうな声で尋ねる。
「……本当に?」
「……はい」
「後悔、しませんか?」
 こくっとエミリアが頷いたのを見て、ディアークはふうーっと長い息を吐き出した。繋いでいた手をほどくと、突然エミリアを横向きに抱き上げる。
「ディ、ディアーク!?」
「すみません、ちょっと――どうしたらいいのか、分からなくて」
 床に落ちないよう、エミリアは慌てて彼の首に両腕を回して抱きつく。
 ディアークは嬉しそうにベッドへ向かうと、新品のシーツの上に優しく下ろし、そのままエミリアの上に乗り上げた。
「すみません、ついはしゃいでしまいました……」
「い、いえ……」
「愛しています。俺の――エミリア」
 唇が下りてきて、ちゅっ、とことさら時間をかけてゆっくりと重なり合う。
 離れてもまたすぐに押し当てられ、その回数が増えるたびに、舌先から咥内へと触れ合う部分が深くなった。
「んっ……ディ……」
 夢中になって入り込んでくるディアークの舌を、エミリアは懸命に受け止める。同時にナイトドレスの胸元のリボンが緩められ、エミリアの小さな肩が露になった。
「あっ……」
「エミリア……」
 口づけを中断し、ディアークが顔を上げる。揃った歯列の間に彼の赤い舌がちらっと戻っていくのを、エミリアはぼんやりと見つめていた。
 すると今度はその舌が、エミリアの白い首筋に下りてくる。
「っ、あっ、ディアーク……っ」
「んっ……」
 ちゅ、ちゅっと押し当てられるリップ音と、自分を求めて興奮する彼の息遣いを肌で感じとり、エミリアは羞恥と期待でたまらず頬を染めた。
 時折「可愛い」と小さく漏らす声も聞こえる。
(ディアーク様……!)
 いつの間にかドレスは脇のあたりまでずり下ろされており、ディアークの手がエミリアの柔らかい双丘に置かれた。既に乳首は薄い生地を押し上げるように硬くなっており、彼の無骨な指先で布越しになぞられた瞬間、甘い電流がエミリアの体を貫く。
「あっ……!」
 両方をそれぞれ優しく撫でられ、先端はいっそう硬く屹立した。
 ユリウスに抱かれている時は生理現象でしかなかったそれが、今のエミリアには確かな快感として伝わってくる。ディアークはその反応を確認しつつ、何度も丁寧にその突起を人差し指で愛撫した。
「ここ、気持ちいいですか?」
「は、はい……」
「良かった。他にもして欲しいことがあれば言ってくださいね」
 にこっと嬉しそうに微笑んだあと、ディアークはエミリアのドレスをさらに下ろし、片方の乳房を露出させた。そのまま自身の体を下に移動させると、唇をすぼめて尖った乳首を強く吸い上げる。
「んんっ……!」
 ちゅう、ちゅうと恥ずかしい音が耳に入り、エミリアはたまらず身もだえする。
 指で触れられるのとは、まったく違うくすぐったさに腰を揺らしていると、ディアークがもう一方の乳首を指先で直に摘まみ上げた。
 痛くはない――だが確実に気持ちよさを与える絶妙な力加減で、くい、くいっと突起をしごき上げる。
「ディアーク、だめです、それっ……」
「痛みますか? 少し弱めた方がいいかな……」
「んっ、やっ、そうでは――」
 摘まんでいた指がいったん外れ、親指の腹で軽くふにふにと揺り動かされた。痛いほどに立ち上がったその部分を緩く刺激され、そのたびにたまらない官能がエミリアの下腹部に蓄積する。
 一方、彼の口の中に含まれていた先端は、舌での激しい愛撫に晒されていた。
(尖らせた舌先が……何度も、先っぽを……っ)
 口を大きく開け、乳輪部分までがっぽり頬張ったかと思うと、たっぷりの唾液と共にじゅる、じゅぱ、と執拗に吸い、舐め回される。
 夢中になっておっぱいにむしゃぶりつく彼の痴態に興奮していると、今度は硬くなった乳首の表面をれろれろ、と舌先で素早く往復された。
「っあ、やだ、それっ……!」
 そのあともじゅる、じゅっ、と執拗に舐められ、強く吸われ、意識を飛ばしかけたところで、もう一方の乳首を指先でこりこりといじめられる――交互に襲い掛かってくるその巧みな舌技と手技を前に、エミリアはたまらず太ももをすり合わせた。
(だめっ……さっきからお腹の奥がっ……!)
 やがてディアークはエミリアの胸から口を離し、ゆっくりと上体を起こした。落ちてきた前髪を掻き上げ、唾液で汚れた口元を手の甲で軽く拭う。
 苦しくなったのか、胸元のボタンを一つずつ外していく動作にはびっくりするほどの色気があり、エミリアはどんどん鼓動が早まっていくのを感じていた。
 すると彼はベッドの下側に移動し、そっとエミリアの両膝に手を置く。
「あの、良かったら……下も舐めていいですか?」
「……えっ?」
「えっ!? あっ、その、みんな、あんまりしないのかな……。その、女性は受け入れるのに痛みを伴うことがあるから、よく、してあげた方がいいって聞いて……」
「は、はい! だ、大丈夫です」
(下……?)
 オーケーとは言ったものの、エミリアはこの時点で、彼が何をしようとしているのかよく分かっていなかった。
 ユリウスとの夜では、そもそも胸への愛撫自体ほとんどされなかったし、いつも彼の望むタイミングでいきなり挿入されていたからだ。
(舐める……もしかして、足とかでしょうか……)
 だが予想とは裏腹に、ディアークはぐいっとエミリアの両足を押し広げると、その間に自身の顔を沈めた。
「ディ、ディアーク様!?」
 そこは、と制止する間もなく、ねっとりとした熱いものが秘部の割れ目に押し当てられる。間違いない。彼の舌だ。
「~~っ!!」
「……っ、すみません、痛かったですか?」
「い、いえ……」
「良かった……。ここは入念にほぐした方がいいそうなので、少しだけ我慢していただけると」
 そう言うとディアークは、その綺麗な顔をエミリアの股間にうずめたまま、ちゅる、じゅる、と舌を這わせ始めた。
 一方エミリアは、初めてのクンニリングスに戸惑いを隠せない。
(たしかに大切なところ、ですけども……まさか、舌でなんて……!)
 こんな行為、ユリウスにされたことなど一度としてない。
 だがよく考えてみれば、彼の男性器を口に含んで奉仕したことは、これまでに数えきれないほどあった。
 つまりこれはその逆で、男性が女性に奉仕するものなのだろう。
「っ、あ……だめですっ……そこは、汚いところで……」
「大丈夫です。貴方に汚れている部分なんて一つもありません」
「やっ……んんっ……!」
 手の甲で口を押さえ、エミリアはせり上がってくる官能を必死にやり過ごす。
 しかしディアークの舌での攻撃は止まらず、ついに割れ目を越えて、ひだの内側に侵入し始めた。くち、くちっという淫靡な水音が天蓋の中に満ち、同時に彼の鼻先が秘裂のすぐ上にあるクリトリスを強く刺激する。
「だめっ、……ディアーク、そこっ……」
「ん……っ……、はあ……何が、だめなんです……?」
 少しでも位置をずらそうと、エミリアは片手を伸ばして彼の髪を摑んだ。
 だがそれすら彼の興奮を煽る行為にしかならない。
「やだっ……もう、ディアーク、やだったら……あっ……んっ……!」
「……っ、ふっ、……んっ……」
 太く熱い舌が入り口をぬりゅ、ぬりゅ、と何度もなぞるたび、名状しがたい快感がお腹の奥に湧き上がった。次第に彼の唾液や吐息だけではなく、膣の内壁からじわじわと愛液が滲み出してくる。
 するとディアークはエミリアの膝に置いていた手を内もも側にすべらせ、両方の親指を大陰唇の左右に添えた。そのまま優しく割れ目をこじ開けると、これまでよりもずっと深い位置に舌をねじ込む。
「――っ、あ、あっ……!!」
 隅々まで征服される恐怖と快感に、エミリアは思わず両足をすり合わせた。
 だがそれはディアークの頬を太ももで柔く挟み込む形となり、結果彼の劣情をいっそう高ぶらせてしまう。
「……っ……はぁっ、エミリア……んっ、……」
 ディアークは顔を斜めに傾けながら、夢中になって舌を深く潜り込ませる。
 じゅるっ、じゅるる、と愛液を啜るいやらしい音が足の間から聞こえ、エミリアはいよいよ自身の羞恥の限界を感じ取った。
「ディアーク、お願い、もうだめです、許して、おねが――」
 だが秘部を舐ることの虜になっている彼には届かず、ついにディアークはぷっくりと膨らんだクリトリスに唇を伸ばした。ちゅ、んちゅ、と秘豆をついばむように口づけたかと思うと、今度は大きく口を開け、そのまま膣の入り口全体を食む。
 まるで本当に食べられているかのようで、エミリアはたまらず目に涙を浮かべた。
(だめ、もう、おかしくなっちゃ――)
 ディアークが舌を尖らせ、れろれろ、とクリトリスを小刻みに愛撫する。再度膣内に舌を挿入するのに合わせて、硬い親指の腹でぐり、ぐりっとそこを優しく押し潰した。
 その瞬間――エミリアの目の前が真っ白になる。
「っ――!」
 びくびくっと体が震え、そのままどっと全身の力が抜けた。
 突如ベッドにくずおれたエミリアを見て、ディアークが慌てて顔を上げる。
「エミリア、大丈夫ですか!?」
「す、すみません、今、いきなり体が、震えて……」
「……もしやそれは、達したということでしょうか」
「達っ……した?」
「はい。イク、ともいいますね」
(イクって……こういうことだったのですね……)
 絶頂。オーガズム。イく。言葉自体は、何度か聞いたことがあった。
 だがエミリアにとって性行為は苦痛を伴うものでしかなく、こうした全身を震わせるような充足感を得られるものではなかったのだ。
 こんな気持ちよいものだったなんて……と呆然とするエミリアをよそに、ディアークはようやく満足したかのように上体を起こした。親指の腹で濡れた唇を拭うと、エミリアの腰に手を添える。
「すみません、そろそろいいでしょうか。その、俺もちょっと限界で……」
「あっ、は、はい!」
 反射的に返事をしたものの、挿入の許可を取られたのだとあとから気づき、エミリアは慌てて自身の太ももを手で持ち上げようとした。
 しかしディアークは真っ赤になってそれを制する。
「やっ、その、お気遣いいただかなくて、大丈夫です!」
「えっ?」
「た、確かにあまり経験はありませんが、そこは俺に任せていただきたいと、思っていますので……」
 そう言うとディアークは上体を屈めると、乱れていたエミリアの前髪を手でずらし、その額にちゅっ、と軽く口づけた。
(私――)
 エミリアは何度かぱちぱちと瞬いていたが、やがてぽろりと涙を零す。
 当然ディアークはぎょっと目を剥いた。
「エ、エミリア!? すみません、嫌でしたら今日はここでやめても――」
「い、いえ、違うんです、その……嬉しくて……」
「……?」
「こんなに大切にしていただけるの、初めて、でしたから……」
 強く目を瞑るが、涙があとからあとから溢れて止まらない。
 どうしよう、と困惑するエミリアに対し、ディアークは優しく微笑んだ。
「大丈夫です、エミリア」
「ディアーク……」
「貴方が嫌がるようなことは、絶対にしません。どうしたら、もっと貴方が気持ちよくなれるのか、幸せを感じてもらえるのか、愛が伝わるのか――俺はただ、それだけを考えています」
「…………」
「怖いと思ったらすぐに教えてください。何も言われず、貴方から嫌われてしまうことの方が、俺には何倍も恐ろしいですから」
 ディアークは眦から零れ落ちるエミリアの涙を、そっとキスで受け止めた。
 心からの親愛を感じるその行為に、エミリアはようやく自覚する。
(私……この人のこと、好きなんだわ……)
 優しい言葉も、行動も、性格も。
 大きな手のひらも、厚い胸板も、広い背中も。
 汗ばんだ肌も、熱い吐息も――
(もっといっぱい……ディアーク様を感じたい……)
 気づけば涙は収まっており、エミリアはおずおずと彼の頬に手を伸ばした。

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