三嶋夫妻はもっと淫らに愛し合いたい ~夫婦の秘め事、永遠の蜜恋~

書籍情報

三嶋夫妻はもっと淫らに愛し合いたい ~夫婦の秘め事、永遠の蜜恋~


著者:桜月海羽
イラスト:rera
発売日:2023年 7月28日
定価:620円+税

二卵性双生児の航と蛍が生まれて四ヶ月、子どもが眠る寝室でキスをする美紅と彰史。
久しぶりに訪れた甘い雰囲気の中、美紅が「なんだか照れるね」と恥じらいを見せる。
ようやく夫婦の時間を持てたことにより、どことなくぎこちなさと緊張があるが、キスを重ねていくうちに欲情し合う。
甘いときも束の間、初めての子育てに奮闘していく中でゆっくりふたりきりの時間を取ることができなくなるが……。
「今日はこのまましようか。子どもたちがいつ起きるかわからないし、
あんまり抵抗されて寸止めになるのは嫌だからね」
周囲の協力のお陰で、育児の困難をなんとか乗り越えた二人は――!?

【人物紹介】

三嶋美紅(みしま みく)
カフェ『フルール』2号店のパートスタッフでもあり兼業主婦。
努力家で天真爛漫。素直で喜怒哀楽がわかりやすい性格。

三嶋彰史(みしま あきふみ)
大手食品メーカー『シブサワ堂』企画部課長。
仕事人間で真面目な性格だが、今は美紅のことが最優先。

●電子書籍 購入サイト

*取り扱いサイトは、各書店に掲載され次第、更新されます。

 

【試し読み】

 胸全体をまじまじと見つめられて、美紅の頬がかあっと熱くなる。
 確かに、短期間とはいえ毎日航と蛍に吸われていたそこは、わずかに大きくなったかもしれない。しかし、いざ指摘されると、今すぐに身体を隠したくなった。
「もう……そんなに見ないで……」
「久しぶりなんだから隅々まで見るよ。本当は何時間でも見ていたいくらいなのに」
 ふぅ……と息を吹きかけられ、身体が小さく跳ねる。彼は気を良くしたように瞳を緩め、ツンと尖った頂を飲み込んだ。
「んんっ……」
 いきなり果実をねぶられ、鋭い刺激が美紅の肌を刺す。甘切ない痺れは、すぐに快感に変わった。
 胸を揉みしだかれながら、右側の突起を舌で弄ばれ、もう片方は指で転がされる。異なる感覚は喜悦となって、美紅の身体と愛欲を力いっぱいくすぐった。
「やぁっ」
「こら、ふたりが起きるよ」
 たしなめるように歯を立てられ、腰が跳ねる。唇を噛みしめてなんとか声はこらえたが、そのせいで悦楽を上手く逃せなくなる。
 脆弱な粒を悪戯にカリッと噛まれると、もうたまらなかった。
「ふぅぅ……ん、ッ!」
 彰史は、美紅を追い詰めるように舌と手を動かしている。
 じっくりと舐めては歯でやわやわとしごき、二本の指を強くこすり合わせるようにしては時折キュッと摘まむ。
 両方の先っぽを歯と指で何度も引っ張られ、そのたびに下腹部がひどく疼いた。
 航や蛍に母乳をあげる時、そこを吸われてもなんともなかった。それなのに、彼の愛撫にはいとも簡単に反応してしまう。
 無意識にすり合わせている太ももは止まらず、膝同士までこすり合わせてしまう。脚を動かすたびに下肢が戦慄き、ショーツの中はすっかり濡れていた。
「こっちはどうかな。久しぶりだし、ちゃんと濡れているといいんだけど」
「待っ……!」
 制止するよりも早く、彰史の手がショートパンツとショーツを押しのけるように一気に入ってきた。
 その勢いのまま柔毛をかき分け、すぐさま秘部にたどりついてしまう。
「ああ、濡れているね。感じやすいままでよかった」
 うっとりとしたような低い声音が、美紅の鼓膜を揺らす。そこからも熱が広がっていき、全身どこもかしこも熱くてたまらなかった。
「まずは、ここでイかせてあげるよ」
 目を眇めた彰史が『ここ』と告げたのと同時に、秘めた真珠を探り当てられる。中指の腹が触れただけなのに、美紅の下肢がビクンッと大きく跳ね上がった。
「あんっ……」
「声、だめって言っているのに……。でも、感じやすい美紅には難しいか」
 彼はクスッと笑うと、美紅の唇をキスで塞いだ。思わず力が抜けそうになった美紅だが、花芽に当てられていた指を動かされてしまい、腰をのたうたせた。
「ふぅんっ……」
 捕らえられた舌が不自由になり、声が上手く出せない。そのせいで、愉悦を逃がす場所がどこにもなくなってしまう。
 彰史の左手は、胸を揉みながらその頂をかすめては押しつぶす。
 右手は、中指で幼気な蜜核を優しく転がしていく。上下左右にクリクリと回し、下からそっと持ち上げるように押し、秘孔から漏れる雫を掬っては淫芽に塗りつける。
 ショーツの中でこもっている淫靡な水音が、次第に大きくなっていった。
 切なさが強かった感覚はあっという間に甘さ一色になり、美紅の腰が悩ましげに動き出す。それは愛撫に合わせ、指に蜜芽を押しつけるように揺れていた。
 キスは深くなるばかりで、酸素が足りない。
 ぼんやりする頭の奥で、なにかが弾ける予感がする。
「ふっ、ぁ……ふぅ……んー、ッ、ふぅぅぅっ……!」
 直後、彼は胸の尖りをきつく摘まみ上げ、姫核をグリッ……と押し上げた。
 両手と唇の自由を奪われていた美紅が、背中を大きく仰け反らせる。爪先がギュッと丸まり、枕に頭をこすりつけるようにして果てた。
「ぁ……ふぁ……」
 ところが、ショーツの中ではまだ彰史の手がうごめいている。隠れた蜜玉の芯を暴くように、そっと包皮が剥かれた。
 声を出したいのに、唇が塞がれたままで。どうにか首を横に振っても、搦め取られたままの舌をたしなめるように吸い上げられるだけ。
 達したばかりで与えられる刺激は強過ぎて、剥き出しにされた花芯がビリビリと痺れた。
 目を開けたままの美紅の視界に映るのは、彰史のぼやけた輪郭。けれど、彼が嗤っていることだけはなんとなくわかる。
 もう無理だと訴える代わりに脚をばたつかせてみても、彰史が蜜芯から手を離すことはない。
 むしろ、脆弱なそこをいたぶることを、心底愉しんでいるようだった。
「ん、むぅ……んんっーーー……!」
 翻弄されるしかなかった身体に、二度目の絶頂が訪れる。
 一度目とは比べものにならないほど鋭く重く、暗い深海に沈められていくような感覚に包まれていると気づいた時には腰がガクガクと揺れていた。
 ようやくして唇が解放され、酸素が一気に入り込んでくる。
 肺いっぱいに空気を吸い込むように呼吸をするさなか、右手が秘所から離れていったかと思うと、ショートパンツごとショーツを取り払われてしまった。
 彰史が美紅に言うでもなく「暑いな」と零し、パジャマを脱いでしまう。
 軽く隆起した胸板に、美しく割れた腹筋。腹斜筋も綺麗に浮かび上がっており、二の腕は太くはないのに男性らしい逞しさがある。
 下肢はまだズボンを纏ったままだが、その中心が大きく盛り上がっていた。
 彼の全身から漂う艶めかしい空気が色香をいっそう増していて、ドキドキさせられる。
 美紅は、思わず喉を小さく鳴らしていた。
 彰史の裸なら、航と蛍をお風呂に入れてくれる時に見ることがある。
 ただ、その時はいつも子どもたちのことに気を取られていて、こんな風にゆっくりと彼を眺めることはなかった。
「美紅、見過ぎだよ。さすがに照れる」
 クスクスと笑われて、美紅は自分が彰史の半裸に見惚れていたことに気づかされた。
「あっ……彰史さんだって、いっぱい見たじゃない……」
「うん、そうだね。でも、愛する妻が目の前で裸になっているのに、見るなっていう方が無理な話だろう」
 共感はできるが、羞恥に邪魔をされて頷くことはできない。そんな美紅の気持ちなんて、彼はきっとお見通しなんだろうけれど。
 なんて考えていると、彰史が上半身を屈めるようにしながら美紅の脚を持ち上げた。膝裏を掬われた美紅は、意図せずに彼の眼前に秘部をさらすことになる。
「声、気をつけてね」
「ッ……」
 咄嗟に手を伸ばした時には、彰史の顔がそこに埋められていた。
「あぁっ……」
 熱い舌先が割れ目をそっとたどっていく。
 蜜口から襞を撫でながら上がり、小さな突起をクルリとくすぐっては戻る。それを数度繰り返されただけで、美紅は眦から涙を零すほど感じ入っていた。
「ここが好きなのは変わっていないね。いっぱい舐めて吸って、ナカもかき混ぜてあげるよ」
 うっとりとした声が、あわいにかかる。吐息の感触にも背筋が戦慄き、秘孔がぎゅうっとすぼまった。
 彼は有言実行と言わんばかりに、秘核を嬲っていく。舌先でつつき、裏側からそっと持ち上げ、唇で挟みながら舌で転がす。
 さらには、蜜液を搦めた指を入り口に浅く差し込んだ。クチュクチュといやらしい音を響かせながら、抜き差しを続ける。
 程なくして、ゆっくり、ゆっくりと奥へと進めた。
 まるで初めての時のような慎重さで挿入されていく指は、まだ一本とは思えないほどの圧迫感があった。
「狭いな……。美紅、痛かったら言ってね」
 そう言われても、痛みなんてない。
 苦しさはあるが、蜜芯を弄ばれている感覚の方が強過ぎて、異物が挿入されていることよりもそちらに気を取られていた。
 彰史は、美紅に痛みを与えないように舌を休めず、節くれだった指で隘路を解す。
 柔襞を丁寧にこすり、収縮する姫筒をかき分けるように奥を目指して。じっくりねっとりと撫で上げるようにしては、抵抗感をなくそうとする。
 そうしているうちに内壁が以前のような柔らかさを取り戻していき、二本目の指をするりと飲み込んだ。
 いたぶられ続けた真珠は、真っ赤に腫れて震えている。ぷっくりと大きく膨らんだそこは、今にも弾けてしまいそうだった。
 容赦のない舌に、優しいけれど止まらない指。
 次々と繰り出される刺激は過ぎた喜悦となって、美紅の身体を蹂躙していった。
「ふぅ……ンッ、あぁ……」
 美紅は唇を噛み、漏れ出る声を抑えるだけで精一杯だった。
 本当は、もう思い切り声を出したい。啼いて叫んで、なにも気にせずに感じたい。
 そう思う一方、視界の端に映るベビーベッドが理性を働かせる。
 ここで子どもたちが起きたら中断せざるを得ないのは明白で、次のチャンスはいつ訪れるかわからない。この先の快感を彼から嫌というほどに教え込まれている美紅の身体が、それに耐えられるとは思えない。
 なによりも、せっかく互いの気持ちを伝え合えたのだから、今夜はどうしても彰史とひとつになりたかった。
「あき、ふみさっ……。もっ、いいからぁ……」
 声を上げたくなるのをこらえ、小さく訴える。
「でも、まだ――」
「ほし、いッ……の……」
 指を止めない彼に、美紅は必死に首を横に振る。
「んっ……ぁ、ッ! 早く、ちょうだい……」
 どうにか上半身を持ち上げて彰史の手を掴めば、彼が眉を下げながら微笑んだ。
「まったく……。美紅は相変わらず俺を誘惑するのが上手いね。絶対に痛みを感じさせたくないのに、俺の意志なんて簡単に壊しにくるんだから」
「だって、もう……」
 なおも手を止めない彰史によって、蜜がかき出されていく。シーツは濡れそぼり、お尻の下がひんやりとしている。
 これだけ濡れているのだから、きっと痛みなんてない。たとえ痛くても、すぐに気持ちよくなれるはず。
「ね? お願い……」
 愛欲を止められない美紅は、涙目で彼を見つめてねだった。
「……ああ、もう!」
 俺だってこらえていたのに、と吐き捨てた彰史が、身体を起こす。
 手早くズボンとボクサーパンツを脱ぎ捨てると、雄の化身が美紅の目の前にさらされた。
 天を仰ぐようにそそり勃つそこは、ビクビクと脈打っているのがわかる。
 彼はベッドサイドのチェストから箱を取り出し、手早く雄芯に薄膜を被せていく。パツンッ……とゴムが弾けるような音を聞きながら、その光景から目が離せなかった。
 折り重ねられた身体の重みが、美紅にかかる。
 美紅が苦しくないように気遣われているため、ちっとも痛くはない。むしろ、心地好い重量感に胸が高鳴る。
「挿れるよ」
「うん……」
 彰史の言葉だけで、蜜口がひくついた。下腹部がぎゅうぅっ……と震え、彼が来てくれるのを待ちわびているのがわかる。
 美紅は逸る心を抑え切れず、ねだるように手を伸ばして彰史の首にしがみついた。
「んんっ……」
 蜜を零し続けていた入り口に、グッと圧迫感が与えられる。ぷっくりとした先端が引っかかる気がしたが、彼は抵抗を物ともせずに腰を押しつける。
 太く逞しい剛直は少しずつ先へと進み、あっという間に蜜路を埋め尽くした。
「ん、ふっ……」
 トン、と行き止まりを突かれる感覚に、美紅が唇を戦慄かせる。甘い吐息交じりの声が彰史の耳朶に触れたようで、彼が息を噛み殺したのがわかった。
「全部挿ったけど、きついな……。美紅、痛くない?」
「ん……へいき……」
 顔を覗き込まれて、美紅は息を細く吐きながら笑みを返す。
「じゃあ、動くよ? ゆっくりするから、力を抜いていて」
 小さく頷いたが、久しぶりに体内をみっちりと侵される感覚に呼吸が上手くできない。そのせいで、彰史が少し腰を引くだけでも疼痛のような痺れが走った。
「んっ、あぁっ、っ……」
「美紅、静かに……ね?」
 彼が腰をゆるゆると揺らしながら、目を眇める。その表情は嬉々としていて、早くも翻弄されている美紅を満足げに見下ろしていた。
 美紅は、緩やかでありながら甘い快楽にゆっくりと堕ちていく。優しい律動に合わせて自らの腰を揺らめかせるまでは、そう時間はかからなかった。
 彰史が唇の端を持ち上げ、「腰が動き出したね」と囁く。鼓膜をくすぐる低い声音に、蜜壁がきゅうきゅうと轟いた。
 繋がった場所から広がる喜悦に溺れ始めながらも、美紅の視線はつい子どもたちの方を向いてしまう。
「大丈夫、ぐっすり眠っているよ。でも、美紅が声を出すと起きるかもしれないね」
「っ……」
 こういう時の彼が意地悪だったことを、改めて思い知る。
 指摘されたことによって、余計に蜜洞をこすられる感覚が鮮明になった気がした。
「んっ、はぁ……ッ、ゆっくり、して……」
「それだと、ふたりともなかなかイけないと思うよ? 俺たちがイく前に、子どもたちが起きるんじゃないか?」
「だって……ぁ、っ」
「じゃあ、唇を塞ぎながらしようか」
「えっ……?」
 小首を傾げそうになった美紅の唇に、彰史がくちづける。最初は優しく触れ、唇をゆったりと啄み、そのまま舌を搦めていく。
 穏やかだった律動は、その間に徐々に速まっていった。
「ふぁっ……」
 さきほどと同じように、声が上手く出せない。不自由だとより感じやすくなるのか、じっくり丹念にこすられている蜜路はもとより、秘核までじんじんと疼く。
 けれど、うねりを増していく姫襞は、怒張に食いついて離れようとはしなかった。
 深くねっとりと舌が絡み合うキスと、淫靡な水音を奏でながらも強引ではない抽挿。どちらも激しくないはずなのに、子宮がジクジクと熱を持っていく。
 物足りなくて、けれど気持ちよくて。甘切ないのか愉悦なのかわからないのに、結合部からは絶えず蜜液が零れていた。
「ぁっ、ふぅ……んんっ」
「気持ちいい、ね」
 唇が触れ合ったまま囁かれ、美紅は答える代わりに自ら舌を搦めにいく。くすぐり合えば劣情が突き上げてきて、緩やかな刺激がもどかしくてたまらなくなった。
 揺らめかせていた腰を押しつける美紅に、彰史が蜜源をトントンと突く。すると、脳芯がぼんやりと白み始めた。
(あれ……? なん、で……?)
 よく知った激しさはどこにもないのに、悦楽の波が押し寄せてくる。熱く、静かに、確かな強さを持って、美紅の身体を包んでいく。
「んぁっ……ふっ、ぁぅ……」
 やがて、彼が子宮を抉るように腰を回せば、それは激流へと変貌した。
 スピードはほとんど変わらないままに、突き上げる重さだけが強くなる。柔壁をまんべんなく捏ねるように引っかきながら、最奥を甘やかに穿っては責める。
 蜜襞は楔にしがみついてはねぶり、その欲が放たれることを望んでいた。
 深い場所をグリグリと突かれるたび、結合部がこすれ合い、ツンと尖ったままの蜜粒も刺激される。
 彰史は故意にそうしていて、そこをあえて強く押しつけているようだった。
 外側と内側を甘やかされ過ぎた美紅の身体は、否応なく高みへと駆けていく。それを見透かしていたのか、彼が秘芯と奥処をガツンッ……と押し上げた。
「ふぁっ、ぁ、ぁ、ああっ……!」
 塞がれたままの唇から漏れ出た声は引き攣り、全身がビクビクと跳ねる。四肢から力が抜けた時、美紅は自分が達したのだと気づいた。
「ぅ、クッ……!」
 そのさなか、ぎゅうぅっ……と蠢動した蜜道が、滾りを全力で食い締める。
 抗うことなく欲を放出させた彰史は、法悦に陶酔するように苦しげに眉根を寄せた。
 甘やかな毒のような快感が、ゆっくりと引いていく。
 額に汗を滲ませる彼が、いつの間にか離れていた唇をそっと重ねた。
「……美紅、大丈夫? どこか痛かったりしないか?」
「平気……。でも、なんだか……身体が変なの……」
「ん?」
「激しくなかったのに、まだイってるみたいで……ナカが痺れて……ぁっ!」
 彰史が少し動くだけで、美紅は艶めかしく啼く。
 同時に収縮した隘路のせいで、吐精したはずの雄杭がまた硬さを取り戻し始める。
「あのさ、もう一回し――」
「ふぇっ……あぁー!」
 美紅と彼が恐らく同じ気持ちになった刹那、航がその邪魔をするかのように泣き声を上げた。
 顔を見合わせたふたりは、どちらからともなく笑みを零す。
「航は、俺にママを取られるのが嫌だったのかもしれないね」
 冗談めかしながら離れた彰史は、サッと後始末を済ませて手早くパジャマを羽織り、ベッドから下りた。
 その頃には蛍も泣き始めていたが、美紅はまだ動けそうにない。
「美紅はそこにいていいよ。きっと、ミルクだよね?」
「うん……。たぶん、そうだと思う」
「じゃあ、少し早いけど作ってくるよ。ふたりには待っていてもらおう」
 彼は美紅の額にキスをすると、「焦らなくていいよ」と言い置いて寝室から出ていった。
 その姿を見送った美紅は、だるい身体を起こしながら心が満たされているのを感じていた。

タイトルとURLをコピーしました