エリート警察官は初心な彼女を熱烈求愛し尽くします
著者:にしのムラサキ
イラスト:小島きいち
発売日:2023年 8月25日
定価:630円+税
渋谷の書店で働く美冬は、仕事の帰り道でサッカーの試合中継で盛り上がる群衆に巻き込まれていた。
酔っ払いに絡まれたりと最悪な状況に困っているところを警部補である羽犬塚さんに助けられる。
半年前電車で痴漢されたときに助けてくれた彼と同一人物だった。
翌日、書店の仕事をしながら羽犬塚さんにお礼をしたいと漠然と考えてみるものの手がかりが少なく、不安要素もあり悩んでいると
書店に訪れていた羽犬塚さんに偶然声をかけられ……。
「よければ……食事とかどうですか」
急な提案に戸惑いつつも彼からのお誘いが嬉しくて、二人で食事に行くことに――!?
【人物紹介】
田代美冬(たしろ みふゆ)
書店員で26歳。
控えめな性格で読書好き。小動物のような特徴も。
羽犬塚悟(はいぬづか さとる)
警察官(警視庁、機動隊、警部補)の27歳。
真面目で大柄で精悍。
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*取り扱いサイトは、各書店に掲載され次第、更新されます。
【試し読み】
指が増えたのだと、快楽に靄がかかった頭でなんとか理解する。
「ん、んっ、んんっ」
バラバラに動かしながら刺激されて、自分のナカの蕩けた肉が何度もうねるのが分かる。それは絶頂できそうで、できなくて、もどかしさに涙が溢れた。
「あっ、羽犬塚さんっ、イきたい、イきたいぃ……っ」
「かわいそうに。まだ中イキは難しいよな」
羽犬塚さんがつぶやいて、私は首を傾げた。「気にするな」と彼は笑い、その優しい笑顔のまま、親指の腹で肉芽をぐりっと潰した。
「あ、ぁぁあっ!」
ばちん、とお腹の中に溜まりに溜まった快楽が弾けた。発情しているのが丸わかりの声を上げ、私はイってしまう。足のつま先まで力が入る。
「あ、あっ、あ」
がくがくと身体が震えた。自分のナカから、何か溢れだしているのが分かる。
「ぅー……」
あまりにも恥ずかしくて、自分の顔を覆う。
「はー……可愛い。えぐい。可愛いに殺される……」
羽犬塚さんが低く言って、それから私の手を取って顔を覗き込む。
「イってるときの美冬の顔、大好きだ。だから隠さないでくれ」
な? と柔らかく諭され、私は小さく頷いた。羽犬塚さんは満足そうに微笑んで、そうしてボクサーパンツを脱ぎ捨てる。
思わず目を逸らす。
初めて見た男性器は、思っていた以上に大きくて、太くて、硬そうで――赤黒くて、肉ばった先端からは水のようなものが零れていた。それが鍛えられて筋肉で綺麗に割れたお腹に触れんばかりに昂っている。
羽犬塚さんは私の下腹部あたりを跨いで両膝立ちになり、私を見下ろした。
一瞬、入らないのではと怯みそうになる。けれどそんな思い以上に、彼と触れ合いたい感情のほうが大きかった。
「……触っても、いい?」
勇気を出して聞いてみると、羽犬塚さんが「ん」と頷く。
「美冬が嫌じゃないのなら。ちょっと怖いだろう?」
そんな顔してた、と羽犬塚さんは私を撫でてくれる。緩められた目元が、とても優しい。
きっと、私がひとこと「嫌」と言えば、彼はこの行為をやめてくれる。そんな人だと、確信があった。
だからこそ、好きになった。
彼に抱かれたい。
はっきりとそう思う。
「……そんなことない。好き、だから」
小さく、けれどきちんと言葉にしながら彼のものに指を伸ばす。
先端に人差し指で触れてみた。
「ん……思ったより、柔らかい」
ふにふにとしていた。これならそんなに痛くないのじゃないかなと少し安心する。
「あったかいんですね」
「そう、だな」
羽犬塚さんのきりっとした眉がぐっと寄る。私は人差し指をつうっと下に動かした。大きく肉ばった部分を過ぎ、太い幹の部分にも触れてみた。血管が浮き出たそれは、今度は思った以上に硬い。思い切って握ってみると、羽犬塚さんが「ぐっ」と喉のあたりで息を詰めた。喉仏が上下に動く。
「美冬……わざと?」
困ったように羽犬塚さんが笑う。
「ご、ごめんなさい。痛かった……?」
「逆。気持ちいい。出そう」
はー、と息を吐き出して羽犬塚さんは続けた。
「挿れたい」
「……っ」
息を呑んで、それから頷いた。
羽犬塚さんが何度もキスをしてくれる。
「痛かったら言ってくれ。やめるから」
「やだ。最後まで、して」
羽犬塚さんが目を丸くする。それから私をぎゅうっと抱きしめて、ベッドの下に落としたジーンズを拾い上げた。
ポケットから出てきたのは、保健体育の授業でしか見たことがなかったもの。
「あ、コンドーム……」
「……いや、ほんと、がっつくつもりはなくて。使うとは思ってなかった」
例のわんこみたいな顔の羽犬塚さんがやっぱり可愛くて、私は頬を緩める。
「使ってくれて、嬉しい」
「……本当、美冬は可愛いよな。良かった、他の男に取られる前で」
そう言いながら彼は器用にコンドームを装着して、私の膝裏をぐっと上げた。思い切り足を開いたポーズが、恥ずかしくてたまらない。足が震えてしまう。
「美冬。大丈夫だ、美冬――一生大切にするから、君をください」
真摯すぎる羽犬塚さんの瞳をじっと見つめながら頷く。
「私も、羽犬塚さんのこと大切にします」
「美冬」
肉ばった先端が、私の入り口に当たる。
ぬるり、とした感覚に微かに目を細めた。
「大好きだ。愛してる――」
そう言いながら、彼の先端が私のナカに埋まる。指とは大違いの圧迫感に低く呻いた。
「い、たぃ……!」
「っ」
羽犬塚さんが腰を止める。
「痛い、よな。ごめんな」
見上げると、羽犬塚さんは苦しそうな顔をしていた。私はさっき苦しかったのを思い出す。イきたくてイきたくて苦しくて、欲情するのって辛くもあるんだって分かった。
羽犬塚さんは、きっと、もっと我慢してくれている。
そう思うと、自然に力が抜けた。
「も、動いて大丈夫……」
「ん」
羽犬塚さんは少しだけ腰を動かす。
圧迫感が増していく。押し出されるように息を何度も吐き出した。どっと全身から汗が出る。
「これくらいに、しておこうか」
羽犬塚さんはそう言って私のお腹を撫でた。
「?」
羽犬塚さんが何度も私の下腹部を撫でる。
「怖いな、俺、美冬のこと壊しそうだ……」
声のトーンが真剣そうなものになる。
「ゆっくりするから……」
優しく微笑む彼の屹立は、多分半分くらいしか入ってない。
「ちゃんと羽犬塚さん、気持ちいい……?」
「気持ちいいに決まってる。大丈夫だ」
そう言って頭にキスをしてくれた。
「本当に、気持ちいい」
「そう?」
ホッとして微笑むと、羽犬塚さんがゆっくりと腰を引く。それから恥骨の裏側の、さっき気持ちよくてもどかしかったところを先端で擦るように動いた。
「あ、ぁ、あっ」
「ここ、気持ちいいな? きゅって締まって……可愛い」
嬉しそうに羽犬塚さんは言う。
ナカで彼のが動いているのが分かる。彼が動くたび、くちゅくちゅと水音が出た。
「や、ぁ……っ」
びくっと腰が動いて、その動きのせいで彼の屹立がさっきより深く挿入ってしまう。
「ぁんっ!」
爪先が跳ねた。
お腹が内側から押し拡げられている、感覚……!
「はぁっ、あっ」
強く眉根が寄ってしまう。怪我するような痛みというより、重く、ずんとくる痛みだった。
「っ、美冬」
慌てたように羽犬塚さんが腰を引く。
「痛いか?」
「ん……でも、大丈夫」
私は唇を一生懸命に上げた。
「羽犬塚さんの気持ちいいように、して、ほしい……」
「美冬」
羽犬塚さんは息を吐いたあと、ゆっくりと私を撫でながら、また浅い抽送を繰り返す。
「あ、あんっ」
「美冬、これくらいなら……気持ちいい?」
彼の声にこくこくと頷く。
「ん、んっ、きもち、ぃ」
「良かった」
心底安心したように羽犬塚さんは言って、少し腰の動きを速める。
「もう、俺もイくから」
そう言いながら彼は私の肉芽をギュッと摘む。
「あ……――!」
顎が上がる。
知らず腰が動いて深く彼を受け入れようとするのを、彼は片手で内ももを押して防いだ。そのまままた浅く抽送し、肉芽を擦る。
「一緒に、イこうな?」
穏やかな声が掠れていた。彼も気持ちいいんだって、そう思うとたまらなく嬉しくて愛おしい。
「ここ、手で持てる? そう」
彼に導かれるように、私は自らの股間の――入り切れていない彼の屹立を両手で握る。
「あ、やば、気持ちいい」
手の中を彼の幹が動く。私から溢れた液体が幹にまとわりついていて、恥ずかしくて心臓がギュッとなった。
羽犬塚さんが私の肉芽をぐうっと指の腹で押しつぶす。
「あ、だめ、イ、くっ……!」
頭の中が、電気がぐるぐると動き回るように痺れて視界が歪む。足先が宙を蹴った。
自分のナカが、ぎゅうっと彼のものを締め付けてうねり、痙攣するのを知覚する。
「っ、出る……」
そう言いながら彼がほんの少しだけ奥に屹立を進めた。うっ、と反射的に喘いでしまう。彼のものがどくん、と拍動したのが分かる。手の中で彼の血管がドクドクとしているのが、妙に艶かしい。
「は、あ……」
彼は私の頭の横に両手をつき直し、ぎゅうっとシーツを握りしめる。何度か腰を動かして、それからゆっくりと出て行った。
「手。もう、大丈夫」
頭を撫でられながら言われて、慌てて手を離す。手のひらを見てみると、ぬるついた透明の液体に血が混じっていた。
「美冬。痛かったよな。大丈夫か?」
コンドームを外し、私の手のひらをティッシュで拭いてくれた彼の声に焦燥が混じる。
「っ、こんなに血が」
「え、だ、大丈夫……今そんなに痛くないですし」
お腹に残る微かな違和感と、軽い生理痛のような痛み。それに血は生理で見慣れているせいか、そんなに多いと思わなかった。
「本当に? シャワーは少し休んでからにしようか」
羽犬塚さんはそう言って、シャワールームからタオルを持ってきてくれた。お湯に浸して絞ってくれたそれは、温かくて気持ちいい。
「ご、ごめんなさい。自分で……」
慌てて上半身を起こす。
「させてくれ」
真剣な声で言われて、私はこくっと頷いた。恥ずかしいけれど、足の付け根まで綺麗に拭いてもらう。
バスローブを着せられて、またベッドにゆっくりと横たえさせられる。
「キツくないか?」
ん、と頷いた。同じくバスローブ姿の羽犬塚さんが目をゆっくりと細める。
「幸せだ」
私は目を瞠る。
本当に、大切にされていると思う。
羽犬塚さんが私の横に入ってきて、ベッドはちょっと狭くなる。ぎゅうっと大きな身体に包み込まれるように抱きしめられると、信じられないくらいの安心感で胸がいっぱいになった。
「大好き」
ぽつりと呟くと「俺も」と返ってくる。
どきどきして、嬉しくて切なくて、幸せで――
だから、気がついてなかった。
羽犬塚さんがどれだけ我慢してくれているのか。
このあとも、私と彼はときおり身体を重ねた。とても大切にされて、何回もイかせてくれて、それを見て羽犬塚さんはとっても幸せそうで。
「俺も気持ちいいよ」
いつもそう言ってくれるから、私はその言葉を額面通りに受け取っていた。
……彼が、ひとりでシているのを見てしまうまでは。
「……っ、ふ、美冬」
切なげな彼の声に胸が痛む。
桜の花が咲き始めたころのことだった。
普段は警察の独身寮に住んでいる羽犬塚さんだけれど、お互いのスケジュールが合えば私の家に泊まりに来てくれるようになっていた。ワンルームの狭い我が家に大きな彼が来ると、とても狭く感じる。けれどそれが却って嬉しくて、ちょっと照れたりする。自分の部屋に恋人がいるのって、とても嬉しい。
そこでいつも通り、甘やかに、大切に抱かれて――抱かれたあとは、私は疲れてぐっすり眠ってしまうのが常のことだった。
ふと目が覚めたのは、夕食後に飲んだコーヒーのせいだったのか、どうなのか。
「悟くん?」
彼を名前で呼ぶようになっていた私は、私のことを宝物みたいに抱きしめて眠る彼が横にいないことに気がつき、狭い部屋を見回した。
「……っ」
トイレから聞こえた何かに耐えるような羽犬塚さん……悟くんの声に、慌ててベッドを降りる。お腹でも痛いのかなと思ったのだ。
声をかけようとして、音や雰囲気が少し違うことに気がついた。ドアの隙間が少し開いていて、私は彼がひとりでシているのを見てしまう。
「……!」
思わず口に手を当てた。
どうしよう、変なところを見てしまった!
慌ててベッドに戻り布団に包まる。
(え? えっ? え、悟くん……さっき、イってたよ、ね?)
頭の中でそんな考えがぐるぐるとまわる。私じゃ満足できてないの? 本当は気持ちよくなんか、なかったの?
聞いちゃダメだとわかっているのに、トイレからの荒い息遣いだとか、彼が手を動かす音だとかがかえってまざまざと聞き取れてしまう。
(き、聞いちゃダメ、ダメ)
耳を塞ぐ。それでもその瞬間、はっきりと聞こえた。
「美冬……っ」
胸を突かれる思いがした。
私はきゅっと目を閉じて考える。
(私が、小さいから)
……彼はいつも言う。
『いつか美冬を壊してしまいそうで怖い』
だから、彼は本気で私が抱けないんだ。
本当は、まだシたいんだろう。一回じゃ足りないんだと思う。もっと激しく動きたいのかもしれない。だって彼のものは、全部入ったことすらないのだ。
でも私があんなに優しい優しいエッチですら、疲れ切って寝てしまうから、悟くんはいつも気を使って……。
と、トイレから水を流す音が聞こえた。
ややあって、彼が私の横に滑り込んでくる。きゅうっと抱きしめる彼の身体は冷えていて、寂しくなる。私のせいで……。
寝たフリをしながら、彼の胸元に顔を埋める。ちゅ、と頭の上にキスが落ちてくる。
静かな優しい声で、彼はそうっと呟く。
「美冬、愛してる」
その声を聞きながら、私は心に決めた。
――絶対に、悟くんが大満足できるエッチをして見せるんだから!